あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの教師-03

 ルイズの再召喚に立ち会っていたコルベールは、先程の、学院長にしては珍しい(本当に珍しい。高貴な来賓客を扱うような)姿に対し、疑問を持ちながらそれを口に出来なかった己に、少し後悔をしていた。
 学院長の口ぶりから、思わずルイズを連れ出してしまったが、サモンサーヴァントに対する基礎的な知識を、学院長が失している訳がないのだ。
 それに、自分も説明を求めるアティに対し言ったではないか。

 召喚されたアティか、召喚したルイズが死なない限り、その召喚されたものは決して帰る事が出来ないと。

 これはサモン・サーヴァントという召喚魔法に対する基礎的な規則である。
 過去に二重召喚を犯してしまった術師の記録はないが、おそらくは術師に対しても、召喚された存在に対しても、魔術の違法行使として何らかのペナルティがあるだろう事は想像に難くない。
 でなければ、魔法という、6000年以前より連綿と続く、この業の基礎理論に二重召喚を禁じる、などという文章が記される事はなかったのだから。

 しかし、ルイズは再び召喚を成功させ、続けてコントラクト・サーヴァントによる対象との契約も成功させた。

 今のルイズの状況は、古来より禁忌とされていた二重召喚のそれと、一体何が変わるというのだろうか。



ゼロの教師 3.



「臨時講師、ですか」

 ルイズの2度目の召喚儀式の後、再びコルベールを交えた3者での話し合いの中で、オスマンが提案したのは、アティを臨時講師として、トリステイン魔法学院で教鞭を執ってくれないだろうか、というものだった。
 オスマンとコルベールの2人は、既にアティを貴人として扱う事を決定しており、現在学院を駆け巡っているアティに対する風聞も、大筋でそれを認める事で彼女の立場を確立する事にしている。
 つまり、この学院でのアティの立場は、ルイズの召喚魔法の失敗によって遠い異国、東の世界(ロバ・アル・カリイエ)から呼び出された小貴族という事である。
 何故ロバ・アル・カリイエ出身にしたのかと言えば、国交のある国々の貴族という設定では、召喚直後のコルベール等が心配したような、外交問題に直結してしまい、結果として王宮に話が伝わり、
 彼女がどの国にも存在しない、この世界の住民でない事が明るみに出てしまうからだ。そのような事になれば、さしものオスマンと言えど、アティの存在を隠匿する事は不可能だ。最悪、アカデミーで研究生物扱いされてしまう可能性すら生まれてしまう。
 ならば、未だ国交の無い、いや存在すらしない国から呼ばれたならどうだろうか。
 エルフの土地を挟んだ東の国々は、その存在こそ実しやかに囁かれているが、それが実在していると証明した者は未だ居ない。
 そんな国からの召喚であるとすれば、少なくとも当面の時間稼ぎには使える筈だろう、というのが、オスマンとコルベールの判断である。
 そこに、アティの言葉で、自身が領地すら持たない小貴族の、しかも末子であり小さな村で教師をやっていただけにすぎない。と言えば更に問題は減少するだろう。
 穴だらけの取り繕いではあるが、召喚された本人であるアティが問題ないと言う以上、王宮に報告する義務もない。とオスマンは判断した。という事にする事で、ひとまず3者はこの問題を棚上げした。
 アティとしては、問題が大きくなるのであれば、素直にそれなりの場所に申し立てた方が良いのではと考えていたが、
 オスマンやコルベールは、王宮やアカデミーに対して良い感情を抱いていないようだし、自分の身を案じて思案してくれた結果を尊重したいと思い、その考えを口にする事はしなかった。
 実際問題として、これ以上の方策が浮かばなかった事もあるが。
 アティの出自の設定を確かにした後に、オスマンとコルベールの両者は、アティを貴賓として、それなりの配慮を以って、帰還する為の手段を得る日まで歓待すると言うと、そこで初めてアティは2人に対して口を開いた。
 曰く、そこまで迷惑をかける訳にはいかない。というものだったが、2人としては非が完全に自分達にある事を理解していたので、その程度の待遇では足りない程ではないかというものだ。
 しきりに遠慮するアティは、なら自分に何かできる事はないかと尋ね、そしてオスマンがアティを臨時講師に雇いたい、という点に話は戻る。

「そうじゃ。ミスタ・コルベールによればアティ殿は我々と異なる術を使うと聞くのでの。それを生徒達に教えては貰えんじゃろうか」

 オスマンの依頼に対し、アティは一度明るい顔を浮かべ首肯しようとしたが、咄嗟にその動きを停止した。

「喜んで承りたいのは確かなのですが……。
 初めにお聞きしますが、この世界にサモナイト石……えっと、魔力の篭った特殊な5色の石なのですが、それは存在しますか?」
「サモナイト石、というものに聞き覚えはありませんが、魔力の込められた石であれば、各王家の所有する始祖伝来のルビーや、精霊の力の込められた様々な宝石が存在していますな」

 それは、遠回しな否定だろうとアティは判断し、話を続ける。

「私達の扱う召喚術には、そのサモナイト石が必要不可欠なんです。こちらの世界の魔法が杖を持たなければ使用できないのと同じで、サモナイト石がないとどんな高度な術師でも召喚術の行使は不可能なんです。
 ですので……臨時とは言え、講師となると、おそらく多くの子達に教授する立場になりますし、残念ながら、手持ちのサモナイト石にそれだけの数がないんです」

 アティの説明に対し、オスマンとコルベールは、それならば実技を伴わない座学でも構わないし、異国(異界のでもあるが)の文化などの授業でも一向に構わないし、進級の為の単位に関係の無い自由講義という形にすると提案し、アティはそれを了承した。
 その際、アティの召喚術に対して異常な興味を持ったコルベールに対し、アティは生徒達よりも先にコルベールに対し、召喚術の初授業をする事になった。



 アティの元居た世界、リィンバウムはその周囲に4つの異世界が取り巻く構図になっており、そしてリィンバウムを含めた5つの世界に存在する全ての生命は、
 このリィンバウムを取り巻く4つの世界を廻る形で、魂の循環ともいえる輪廻を繰り返している。
 リィンバウムはこの輪廻の循環から外れた場所に位置し、選ばれた魂の集う楽園とも、輪廻から外れた魂の行き着く地獄でもあるとされているが、それらの真偽は定かでない。
 4つの異世界は、それぞれ名前とその世界の特徴が異なり、召喚術の召喚対象として、明確に確立されているのもまた、その4つの世界だけである。
 機械文明の高度に発達し、意識ある機械が大半を占め、過去の大戦によりほとんどの生命の絶滅した機界ロレイラル。
 4つの世界でも、唯一リィンバウムと近い人類が生息し、妖怪や鬼など、亜人とも違う特殊な生物と人とが調和した、特異な文化を構築している鬼妖界シルターン。
 天使や悪魔、亡霊など実体の伴わない霊的な存在の集まる世界、霊界サプレス。
 そして最後に、世界の大半を緑に覆われ、様々な動植物、幻獣や精霊そして獣の特徴を持った亜人の住む幻獣界メイトルパ。
 これら4つの異世界の存在を、術者の存在するリィンバウムへ呼び出す技術が、総じて召喚術と呼ばれている。
 具体的には、サモナイト石と呼ばれる特殊な石に魔力を送る事で、その石と接続された異界へと通じる門を開き、そうして開けられた門から異世界の存在を呼び出し、命令を与えて使役する術。それが召喚術と呼ばれるものだ。

 詳しく話し続けると、それだけで随分と長い話になってしまう事もあり、アティのした説明は簡易的なものだったが、未知の魔法に触れられた事の方がコルベールには大事だったらしく、
 説明から生じた疑問を矢継ぎ早にアティに浴びせたが、オスマンの注意のおかげで、さほど長いものにはならなかった。

 学院長室でのやり取りの後、アティにはひとまずとして、来賓用の客室が宛がわれる事になった。
 追々宿舎に個人用の部屋を用意する手筈は整えるが、それまではその部屋がアティの居室となるようだ。




「では、先程のルイズさんは、えっと、また人間を……?」

 その道すがら、2人の話題にはアティを召喚したルイズの事が挙がっていた。

「はい。しかしその子、我が校の生徒と変わらない男の子ですが、どうやら平民のようです。突然呼ばれて泡を食っていたようですが、
 まあ、我々としては、貴女のような方を再び呼んでしまったのかと冷や冷やしてしまいました」

 自分は使い魔にした時の危険性を考慮されたのに、何故その少年は何の問題もなく使い魔とされてしまったのか、
 そんな疑問がアティの頭を過ぎったが、教師であるコルベールが問題ないと言っているのだから、きっと問題ないだろうと判断した。
 実際は、コルベールが何か言うよりも先に、これ以上の問題は勘弁だとしたルイズが、ファーストキスだとか、羞恥心だとか、苛々だとかその他諸々の感情を遥か彼方に放り投げ、
 速やかにコントラクト・サーヴァントのキスを行い、それが成功しただけだったりする。
 ルイズの話題が挙がったからか、コルベールは思い出したように、アティに向き直り、口を開いた。

「ミス・アティ。臨時講師として教壇に立つ貴女に対して、言っておかなければならない事があります」

 そうして、コルベールが語り始めたのはやはり、ルイズの事だった。
 誰よりも努力し、誰よりも勤勉で、誰よりも貴族という生き方に忠実で、そして誰よりも魔法の才の無い少女。
 そして、それ故に誰とも交わる事無く孤独であり続け、それが更に周囲との確執を生み続けている。

「私には、彼女がミス・アティを呼んだ事に何か意味があるのだと思いたい。
 個人贔屓は教師にあるまじき事と存じ上げますが、どうかミス・ヴァリエールの事を見守って頂きたい」

 コルベールの言葉に、アティは改めて、先程まで居た小さな少女の事を思い返した。小さな身体に精一杯の強がりを背負い、強気な瞳をした、
 そしておそらくは実際に強気であろう少女の姿に、アティはかつてまだ自分が教師としても、一人の人間としても拙い頃に出会った、初めての生徒の事を思い出していた。
 そう言えば、あの子も最初はルイズのように、自分に対して噛み付くような態度をとっていたっけ。
 そう考えると、不思議とアティはどうにかなると、無意識の内にそんな確信を持った。
 心を込めた言葉を交わせば、きっと。

「勿論です。
 それに私、予感がするんですよ」
「予感、と言いますと?」
「きっと、私達は良い関係を築けるって、そんな気がするんです」

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