あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Zero ed una bambola   ゼロと人形-31


 何故魔法が使いたかったのだろうか。
 ルイズは一人悩んでいた。
 皆に認められたかった。
 家族に…母や姉に褒めてもらいたかった。
 でもそれだけ。わたしにとっての魔法はそれだけの価値しかないのだろうか。
 わからない……。
 子供のころは良かった。何も考えずに無邪気でいられたから……。
 もし叶うなら子供のときのように……大切なあの人に会いたい。



「ルイズさん。どうかしましたか?」

 ルイズが一人物思いに耽っているとアンジェリカが心配して声をかけてきた。

「何でもないわ」

 精一杯の作り笑顔を浮かべてアンジェリカに言葉を返した。

「ねえ、アンジェ」
「はい?」
「アンジェはこれから何かしたいことある?」
「これからもルイズさんのお役に立ちたいです!」

 アンジェリカは質問に満面の笑みを浮かべて答えた。
 だがルイズは少し困ったような顔を見せたのだ。

「あのね、そういうことを聞いてるんじゃないの……」

 ちょうどその時扉を叩く音がした。長く二回、短く三回。聞き覚えのある子供じみた暗号。
 急いでドアを開け、そこにいるであろう人を招き入れる。
 黒い頭巾をかぶった少女が部屋に滑り込み、杖を振るった。
 呟かれたルーンの声の主に心当たりはある。

「姫殿下!」

 ルイズの言葉に促されるかのように頭巾取り、その手を取った。

「久しぶりね。ルイズ」

 その顔を見たルイズは膝をつく。

「どうしてこのようなところに…」
「わたくしたちお友達でしょう? 友達に会うのに理由は要らないわ」

 アンリエッタはルイズを立たせると抱きついた。

「アンリエッタ姫殿下…」
「やめて! ここには枢機卿も宮廷貴族もいないのよ。昔のように呼んでちょうだい…」

 感慨に咽ぶルイズが姫殿下と口を開いた瞬間、急速にアンリエッタの表情が曇る。

「で、でも…」

 尚を渋るルイズに今度は少し悲しそうな声をアンリエッタは出した。

「幼いころ、泥だらけになって遊んだのに…。あなたはそれを忘れたの?」
「ひ、姫様」
「ルイズ!」

 悲しそうな顔を見せるアンリエッタ。それをアンジェリカはあっけに取られながら見ていた。

「ヘンリエッタ?」
「違うわ。アンリエッタ姫殿下よ」

 アンジェリカの呟きを聞いたルイズは訂正する。

「ルイズ、その子は?」
「この子はわたしの使い魔です。アンジェ、挨拶なさい」

 ルイズに促され、笑みを浮かべてアンリエッタに挨拶をした。  

「アンリエッタちゃん、はじめまして。アンジェリカです」
「アンジェ! 失礼よ!」

 ルイズは初対面で、しかも姫様にいきなりちゃん付けするアンジェリカを叱る。

「姫様?」
「ルイズ…二人っきりの時はエッタと呼んでって何回も言ってるでしょ?」

 どこか諦め、悲痛な面持ちで小さく息を吐いた。

「アンジェ、少し二人っきりでお話したいから、少しの間席を外してくれない?」
「わかりました」

 アンジェリカはまたねとアンリエッタに手を振って部屋を出て行った。
 それを見届けたルイズは小さく呟いた。

「……エッタ…」

 小さな呟きだったがアンリエッタはそれを聞き逃さない。
 先ほどとは打って変わり満面の笑みを浮かべて…その目元には小さな雫をためて……。

「まぁルイズ! 覚えていてくれたのね!わたくしたちがアミアンの包囲戦と呼んでいるアレを!」
「もちろんです! あの時は…」



Zero ed una bambola   ゼロと人形



 そうそれはまだ二人が幼かったころの話。
 身分の上下などさほど気にもせず楽しく過ごしていた大切な思い出。


「ねぇ、ひめさま」
「なぁに?」

 今日もアンリエッタの元へ母と姉に連れられ遊びに来たルイズ。その手の後ろに何かを隠しているよう だったが、小さな体には隠れきるはずもなく、アンリエッタにすぐに見つかってしまった。

「あー! ルイズそれなに!」

 ニコニコと笑いながらアンリエッタの前に、隠していたドレスを自慢げに掲げた。

「すごーい。それどうしたの?」
「ちぃねえさまのおへやからとってきたの。きれいでしょー」
「うん。きれいだねー」

 二人でしばらくドレスを眺めたり触ったりしていたがアンリエッタがふと疑問に思ったことを口にした。

「ルイズ、きょうはこれであそぶの?」
「そーだよ。きゅうていごっこしてあそびましょ」
「きゅうていごっこ?」

 首をかしげるアンリエッタに、ルイズは小さな胸を張って答える。

「おひめさまとじじょのやくにわかれるのよ!」

 ルイズがそういうとアンリエッタはドレスを掴んだ。

「わたくしがおひめさまのやくやるー!」

 ルイズも負けじとドレスを引っ張る。

「だめよ。わたしがやるのー!」

 ふたりはドレスを引っ張り合い、裾が伸びはじめ、ビリッと布が裂ける音がした。

「いつもルイズばっかりずるいー」

 アンリエッタの言葉を皮切りに取っ組み合いに発展した二人の小さな争い。

「わたしー!」
「わたくしなのー!」

 アンリエッタが放った一撃が偶然ルイズのお腹にいい具合に入った。

「ひでぶぅ」

 そんな声とともにルイズは部屋の絨毯に沈んだ。

「きょうはわたくしがかちましたわ!」

 アンリエッタは床に倒れたルイズを気にもせず、嬉しそうにブカブカのドレスを着た。

「さぁルイズ。きょうはわたくしがおひめさまのやくよ!あなたはじじょよ」

 ルイズは苦しそうにお腹を押さえて顔を上げた。

「ひぐ、うぇーん」

 大粒の涙を流しながら泣き出した。アンリエッタは慌ててしまう。今まで一度だってルイズを泣かしたことなどなかったのだ。

「あうう、ルイズ泣かないでよ」

 アンリエッタは泣き出すルイズにどうすればよいのかわからず、おろおろと右往左往するしかなかった。

「泣かないでよルイズ。うぅ…」

 泣き喚くルイズにつられてアンリエッタまで涙を浮かび始める始末。
 唐突に何か思いついたアンリエッタが涙を拭って話しかけた。

「ルイズ、なきやんだらわたくしをエッタってあだなでよんでもいいわよ」

 さも名案だと言わんばかりに、自信たっぷりに言うアンリエッタ。
 ルイズは涙を拭いながらも口を開いた。

「ぐす、エッタ?」
「そうよ。わたくしたちはしんゆうなんですからね! エッタってよばないとぜっこうよ!」
「ぜっこうはいや!」

 泣き止んだルイズが立ち上がって怒鳴るが、アンリエッタはやさしく答えた。

「ぜっこうがいやならエッタってよんで」
「でもエッタってよんだら、かあさまとかにおこられるかも…」

 不安そうな顔を見せるルイズにアンリエッタはしばし考え込む。

「じゃあ、ふたりっきりのときにはエッタってよんで! それならいいでしょ?」
「うん! いいよ!」

 泣いた子がもう笑った。二人は楽しそうにはしゃぎまわる。

「つぎはるいずのばんね」

 そいうとアンリエッタはドレスを脱ぎ、ルイズに渡した。

「エッタ、いいの?」
「うん、いいの」
「ありがとー」

 ルイズは受け取ったドレスを嬉しそうに着た。
 楽しい時間、だがそれも長くは続かない。
 誰かがノックをして部屋に入ってきたのだ。

「ち、ちぃねえさま…」

 ルイズは一歩後ずさる。

「あらあらあら? ルイズ可愛いドレス着ているわね。どうしたのかな?かな?」

 笑顔を浮かべているが怖い。アンリエッタは動けずにいた。

「あの、ち、ちぃねえさま? ちょっとかりただけ…」

 必死に弁明するも聞き入れられるはずがない。
 カトレアは問答無用とルイズの襟首を掴んで部屋を後にしようとする。

「え、エッタ。たすけ…」
「まぁ失礼でしょう? ちゃんと姫様と呼びなさい」

 ルイズにいけませんと叱るカトレア。部屋を出る間際、アンリエッタに向かってにっこり微笑んだ。

「それでは姫様失礼します」

『ルイズ…ごめんなさい』
 去り行くルイズを為す術もなく見送るしかなかったアンリエッタは心の中で謝った。


 これがのちに、二人が『アミアンの包囲戦』と名付けた出来事である。
 この日以来、ルイズが姫様と呼んでもアンリエッタは返事をしなくなったのだ。
 幼き日の忘れられない、ほんの小さな出来事である。


Episodio 31

Una guerra di assedio di Amiens
アミアンの包囲戦




Intermissione



 月が大地を照らす光を頼りにロングビルは怪我をおして、一人夜道を駆けていた。目的地はアルビオンのウエスト・ウッド。道のりは長い。
 強行軍と分かっていながらも馬を走らせていた。
 テファニアが心配で早く会いたいという思いも確かにある。しかし急いだからといって、目的地へ早く着く訳ではない。アルビオンへ船が出る日は決まっている。どんなに急いでもラ・シェールで足止めされるのが目に見えている。急いでも余り意味が無いのだ。
 ならば何故こうも急ぐのか。急がなければ危ない。学院から離れなければならない、直感的にそう感じたからだ。
 今まで何度もその直感に従い行動してきた。それによって何度か危機を脱したこともある。
 今回も当然直感に従った。それがこの状況。痛みを押し殺し馬を走らせている。じりじりと体力が消耗されるが速度は緩めずに走り続けた。
 果たしてこの行動が吉と出るか凶と出るか……何事も無いようにと願わざるを得ない。

 唐突にロングビルは今まで緩めることのなかった馬の速度を落とし、辺りを窺い始めた。
静か過ぎる。いくら深夜といえども虫の声の一つもしない。
 草原に、辺りの生物を全て殺しつくさんとも言わんばかりの冷たい空気が流れ込む。
 風が音もなく吹き曝し、雲は月を覆い隠す。
 その時、何を思ったのかロングビルは馬から飛び降りた。
 飛び降りたというのは語弊がある、ロングビルは無様に背中から地面に、彼女の意思で落ちたのだ。
 別段気が狂ったわけでもない。風の刃が真正面から襲い掛かり、馬の首ごとなぎ払う。
 風の刃が通り過ぎた後には、首のない馬が切り口から血を噴出し、どす黒い水溜りを作った。
 地面から身を起こしたロングビルは未だに立ち尽くす首のない馬を引きずり倒し、無理やり遮蔽物を作りだすと、前方を睨む。
 淡い月の光は雲を突き抜けることなど叶わず、僅かに人影が確認できるだけだった。
 条件は同じ、いや相手は月明かりが無い中、正確に攻撃してきた。そして襲い掛かった悪意は紛れも無い魔法、つまり敵はメイジだ。
 こちらの位置はすでにばれている言っても過言ではないだろう。
 それに対してこちらは戦う前から手負い。条件が悪い。黙っていてもメリットが無い。そう判断したロングビルはようやく口を開いた。
 呼びかけに応答せずに攻撃するか……それとも何かしら答えて正体が分かれば御の字。

「誰なの!」

 大声を出すと折れた腕が痛む。その痛みをこらえて前方を凝視する。敵は……一人?
 一陣の風が吹き、雲を動かす。淡い月の光が緩やかに大地を照らす。
 次第にはっきりとしていくシルエット、ロングビルの行く手を遮るのは年若い女性……。

「こんばんは、こんな夜更けにどこに行くのかしら? ミス・ロングビル。いえ、土くれのフーケさん?」

 ルイズの姉、エレオノールその人だった……。





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