あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

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何が起こったのか、よく解らなかった。
いつもいつも失敗してばかりだった魔法。今日この日こそと挑んだ『サモン・サーヴァント』。
幸いにも魔法は成功し、ゼロのルイズと呼ばれる彼女は、漸く生涯を共にする使い魔と出会えた――はずだった。
だが、しかし。
ゼロの名とは無関係に、事は起こってしまった。

爆発による砂埃が晴れると、そのクレーターの中心に、何かが蹲っているのが見えた。
痩せっぽちで、生まれて間もない赤子に見えるほどに小さい身体。
病的に白い、紫がかった肌。その中に浮いて見える、紫色の長い尾と丸い腹部。
リザードマンにも竜のようにも見える、しかしそれらの種族には生えていない、角のようなものが目立つ頭部。
筋肉がついているとは到底思えない、細い腕。それとは対照的な、ウサギのような脚。
異形。そんな言葉が、ちらと皆の頭をよぎった。
ルイズは元より、その場にいた他の生徒も、コルベールすらも見た事のない、奇異な生き物であった。否、生き物であるかすらも疑わしい。
囁き声は集まりあい、やがてざわめきとなって広場を包んだ。
何より困ったのは、召喚した張本人であるルイズだった。
とりあえず、ナニカを呼ぶ事は出来た。だがそのナニカは、ナニカ解らない。
これは果たして成功と言えるのか、それとも――
一先ず近づかなければ話にならない。そう思い、ルイズが一歩踏み出したその瞬間。

「――げほッ」

びちゃり。草むらに、ソレの体液が毀れた。
腹に力が入らないのか、弱弱しい咳が続く。
肌は強烈な秘薬に触れたかのように赤く爛れ、尾は引き攣りびくびくと痙攣した。
足が、動かない。一歩踏み出したまま、ルイズは唯、呆然とその様を見ていることしか出来なかった。
「いけない……! 水の魔法を! それに秘薬を! 急いで!」
コルベールの声に漸く我を取り戻したルイズはソレに近づこうとした。
だがその痙攣を続ける身体はフライで運ばれ、医務室へと消えていった。

ルイズがソレと対面したのは、それから数刻が過ぎたときだった。
ソレは水で満たされた巨大な水槽の中で、静かに身体を丸め、目を閉じていた。
幸いにも、辛そうな表情はしていなかった。楽しそうでもなかったが。
「ミス・ヴァリエール……少々酷な話だが……」
コルベールは曇った眼鏡の位置を直すと、ルイズに向かい合った。
「彼はまだ、外で暮らせるまでに育っていない」
「え?」
ルイズは耳を疑った。育っていない? どういう意味だ、それは。
「……ミス・ヴァリエールは、子どもがどんな風に生まれてくるのか……その仕組みはもう、勉強済みだったかな」
基本的には、大体。だが、それとコレとの関係性が、見つからない。
「彼はいわば、まだ母親の胎内で眠っている状態に等しいんだ。しかも……その身体は、とても脆い。
だから、外気に触れようとすれば……またさっきの様な事に……」
嘘、だ。
ルイズの世界がぐるりと回った。
つまり、自分は。赤ん坊、よりもまだ幼い、胎児を――
「今は応急処置として、魔術と秘薬で清めた水に浸している。ちょうど、母親の胎内の成分に整えてある水にね。今は安定しているけど、育つまでは外では……」
頭の奥がぐらぐらする。そんな子を、召喚してしまったなんて。
「『コントラクト・サーヴァント』は、彼の身体が成長した時で構わないよ、ミス・ヴァリエール。外に出ても平気になってからで。それに……」
そこで、コルベールは言葉を呑んだが、ルイズにはその後が嫌でも分かった。
死ねば、また再召喚すればいい、と。


ルイズは待ちます、と答えた。
この子が育つまで、元気に外で、一緒に生きることが出来るようになるまで待ちます、と。
胎から途中で取り出してしまった赤子を、見捨てるわけにはいかなかった。


コルベールが去り、医務室にはルイズと、巨大な水槽にいる彼だけが残された。
ぷかぷかと浮いている様はまるで金魚のようだったが、彼はそんなに生易しい、軽いものではない。
今もずっと目を閉じ、眠り続けている。
「……名前……決めないと」
ルイズは、そう呟いた。
いつまでも「ソレ」とか「彼」では、収まりが悪い。何より、かわいそうだ。
「よし……決めたわ、貴方の名前。貴方は――」

「彼」は、もう、起きていた。
身体は眠っていたが、心は、もう目覚めていた。
生まれた地ではエスパータイプに分類される「彼」は、その心の目で、辺りを見回していた。
冷たい水。薄ぼんやりとした視界。暗い影。ノイズ交じりの、意味不明な音。
そして――優しい、桃の花の色。
闇の中で、「彼」の心が躍った。
アレを、知っている。あの色を知っている。はやく、はやく話さないと。はやく――


一瞬、水面が揺れた。ぽこりと小さな泡が、「彼」の口から漏れる。
「……ッ!」
ルイズは目を見開いて、水槽に近づいた。
そして――彼の囁く声を聞いた。


『ここは、どこ? ボクは、だれ? どうしてボクは、ここにいるの……?』


彼の地でツーの称号を与えられた者。この地でゼロの称号を与えられた者。
二人は、こうして出会った。

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