第三話「約束のオーガンランサー」
爆発騒ぎのせいで授業は中止となり、生徒たちとその使い魔たちは教室を出ていた。
オーガンが代わりの教卓を取りに行ったので、教室にはルイズとシュヴルーズの二人だけが残っていた。
壊れた教卓を屋外へ放り出した直後、ルイズはうなだれていた。
「どうして…、サモン・サーヴァントは一回で成功したのに…、爆発しなかったのに…、オーガンを召喚できたのに」
そんなルイズを、シュヴルーズは見守る事しか出来なかった。
そこへ、新しい教卓を抱えたオーガンが戻ってきた。
「教卓を持ってきました。……御主人様」
ルイズに声をかけようとしたオーガンは、途中でシュヴルーズに止められた。
「ミス・シュヴルーズ、何を!?」
「もう少しそっとしてあげなさいな」
二分ほどして、ルイズはオーガンたちのほうを向いた。
目の周りが少しはれていた。
「どうしてかな…、昨日は成功したのに…、今日もうまくいくと思ったのに…」
オーガンは、ルイズをそっと抱きしめた。
「オーガン!?」
「御主人様、こうすれば、泣いている顔を見られる心配はありません」
ルイズは抱きしめられた状態で泣いた。
シュヴルーズはその光景を見て、そっと教室を後にした。
ルイズが泣き止んだのは、それから数分後であった。
オーガンが代わりの教卓を取りに行ったので、教室にはルイズとシュヴルーズの二人だけが残っていた。
壊れた教卓を屋外へ放り出した直後、ルイズはうなだれていた。
「どうして…、サモン・サーヴァントは一回で成功したのに…、爆発しなかったのに…、オーガンを召喚できたのに」
そんなルイズを、シュヴルーズは見守る事しか出来なかった。
そこへ、新しい教卓を抱えたオーガンが戻ってきた。
「教卓を持ってきました。……御主人様」
ルイズに声をかけようとしたオーガンは、途中でシュヴルーズに止められた。
「ミス・シュヴルーズ、何を!?」
「もう少しそっとしてあげなさいな」
二分ほどして、ルイズはオーガンたちのほうを向いた。
目の周りが少しはれていた。
「どうしてかな…、昨日は成功したのに…、今日もうまくいくと思ったのに…」
オーガンは、ルイズをそっと抱きしめた。
「オーガン!?」
「御主人様、こうすれば、泣いている顔を見られる心配はありません」
ルイズは抱きしめられた状態で泣いた。
シュヴルーズはその光景を見て、そっと教室を後にした。
ルイズが泣き止んだのは、それから数分後であった。
時間は過ぎて、お昼時。
オーガンは再び人間の姿に化け(オーガンは人間に化けないと飲み食いが出来ない)、厨房で昼食にありついていた。
(メイジが魔法を失敗するところは何度も見たが、主のように爆発が起きた事は無かった。こんな時、フレッシュ・オスマンがいてくれたら…)
マルトー親方の料理に舌鼓を打ちつつも、悩むオーガンであった。
そんなオーガンの悩みをよそに、シエスタがオーガンに話しかけた。
「オーガンさん、お味はどうですか?」
「今朝同様とても美味しいよ。中でも「テンドン」は格別だ。親方さんの腕には感服するよ」
人間に化ける能力を習得してから、色々なものを食べてきたオーガンだったが、あいにく「天丼」にはお目にかかっていなかった。
「あらら…」
「まいったなぁ…」
オーガンの正直な感想に、シエスタとマルトー親方は困ったような笑顔を見せた。
「? シエスタに…、親方さん?」
「その、実はな、お前さんに出したメシの中で、テンドンだけは半分以上シエスタに手伝ってもらったんだ」
マルトー親方のその一言で、オーガンは見事に固まった。
「おーい、どうしたー!」
しかし、マルトー親方の必死の呼びかけですぐに正気に戻った。
「はっ!」
「おお、元に戻ったかぁ!」
「すまない、必要以上に驚いてしまった」
「まぁ、気にするな」
「それにしても、親方さんの腕でも難しいものなのか、テンドンは…」
「難しいどうこう以前だな。ダルフ村の名物料理の中でも、作り方が特殊なことで有名な「ドンブリモノ」の代表格でな、まだコツを掴みきれていないんだ。特に「ベイハン」と「コロモ」は未だに一人じゃろくなモノが作れねぇし。自信失くすぜ…」
普通に落ち込むマルトー親方に、オーガンもシエスタもどう声をかけていいのか分からなかった。
「えーっと、ごちそうさまでした。そうだ、親方さん、シエスタ、何か手伝う事は無いか?」
オーガンのその言葉が、場に流れる気まずい空気から退散するためのものだと瞬時に理解したシエスタは即答した。
「それでは、デザート運びを手伝ってください」
オーガンは再び人間の姿に化け(オーガンは人間に化けないと飲み食いが出来ない)、厨房で昼食にありついていた。
(メイジが魔法を失敗するところは何度も見たが、主のように爆発が起きた事は無かった。こんな時、フレッシュ・オスマンがいてくれたら…)
マルトー親方の料理に舌鼓を打ちつつも、悩むオーガンであった。
そんなオーガンの悩みをよそに、シエスタがオーガンに話しかけた。
「オーガンさん、お味はどうですか?」
「今朝同様とても美味しいよ。中でも「テンドン」は格別だ。親方さんの腕には感服するよ」
人間に化ける能力を習得してから、色々なものを食べてきたオーガンだったが、あいにく「天丼」にはお目にかかっていなかった。
「あらら…」
「まいったなぁ…」
オーガンの正直な感想に、シエスタとマルトー親方は困ったような笑顔を見せた。
「? シエスタに…、親方さん?」
「その、実はな、お前さんに出したメシの中で、テンドンだけは半分以上シエスタに手伝ってもらったんだ」
マルトー親方のその一言で、オーガンは見事に固まった。
「おーい、どうしたー!」
しかし、マルトー親方の必死の呼びかけですぐに正気に戻った。
「はっ!」
「おお、元に戻ったかぁ!」
「すまない、必要以上に驚いてしまった」
「まぁ、気にするな」
「それにしても、親方さんの腕でも難しいものなのか、テンドンは…」
「難しいどうこう以前だな。ダルフ村の名物料理の中でも、作り方が特殊なことで有名な「ドンブリモノ」の代表格でな、まだコツを掴みきれていないんだ。特に「ベイハン」と「コロモ」は未だに一人じゃろくなモノが作れねぇし。自信失くすぜ…」
普通に落ち込むマルトー親方に、オーガンもシエスタもどう声をかけていいのか分からなかった。
「えーっと、ごちそうさまでした。そうだ、親方さん、シエスタ、何か手伝う事は無いか?」
オーガンのその言葉が、場に流れる気まずい空気から退散するためのものだと瞬時に理解したシエスタは即答した。
「それでは、デザート運びを手伝ってください」
マルトー親方と他の面子を残し、オーガンとシエスタはデザート配りのためにアルヴィーズの食堂へと向かった(逃げたとも言う)。
その途中、シエスタは今朝から気になっていた事を口にした。
「オーガンさんって、ずいぶん変なジャケットを着ているんですね」
「変なジャケット? これが?」
自分が着ている「ボマージャケット」の襟を指差すオーガンに、シエスタはきっぱりと答えた。
「そうですよ」
「どこが?」
「ポケットがいっぱい付いているところが、です」
ちなみに、(人間に化けている)オーガンの服装は執事服にボマージャケットという、まさかの組み合わせである。
そんな会話を終わらせ、二人は食堂の中に入り、デザートを配り始めた。
地味にテキパキと配っているシエスタとは対照的に、踊るように軽やかなステップで手早く配るオーガンの姿は、生徒たちの視線を釘付けにした。
その光景を、ルイズとキュルケは呆然と見ていた。
そんな光景を他所に、デザートを食べ終えたギーシュ・ド・グラモンは友人たちと談笑していた。
「ギーシュ、いったい誰と付き合っているんだ?」
「そうだそうだ、教えろよ」
「おいおい、そんなことできるわけ無いだろ。第一、僕は大勢の女性を楽しませる薔薇だ。故に、特定する事は出来ないなぁ」
友人たちの質問をのらりくらりとかわすギーシュ。
そんな彼のポケットから紫色の液体が入った小瓶が落ちたが、当のギーシュ本人はそのことに気付いているのに、気付いていないフリをした。
さらに、その一部始終を見てしまったシエスタは小瓶を拾ってギーシュに声をかけた。
「あの、落としましたよ」
聞こえないフリをするギーシュだったが、友人たちの言葉であっさり無駄なあがきに終わった。
「その紫色の液体、モンモランシーの特製香水じゃないか」
「本当だ。ということは、ギーシュ、お前モンモランシーと…」
はやし立てる友人たち、あせるギーシュ。
そして一人の少女が近づいてきた。
どこで調達したのか、堅そうな棒切れを手に持っていた。
「やぁ……ケティ…」
ギーシュの呼びかけにも答えず、ケティ・ド・ロッタは棒切れをギーシュ目掛けて振り下ろした。
「さよなら」
ケティがそういって去った頃には、ギーシュは顔面をアザだらけにして倒れていた。
何とか立ち上がった直後、今度はモンモランシーがギーシュに近づいた。
何故か両手にメリケンサックを装着して。
「や、やぁ、麗しのモンモランシー…」
「ギーシュ、今の子はだぁれ?」
そう言い終った直後には、ギーシュの鳩尾に鉄拳を叩き込み始めたモンモランシーであった。
数十発の鉄拳を叩き込まれたギーシュは、再び倒れた。
「この……浮気者ォッ!!」
そう叫んだ直後に、倒れているギーシュの顔面を蹴ったモンモランシーはそのまま食堂を後にした。
数分後、気合で起き上がったギーシュは、自分を心配そうに見るシエスタに食って掛かった。
「き、君は…ゴホッ、自分が何をしたのか分かっているのかい!? 君のせいで二人のレディの名誉が傷ついたじゃないか! ……ゴホゴホッ!」
どう見ても八つ当たりである。
シエスタの方は思わず涙目になっている。
「も、申し訳ありません!」
「謝ったぐらいで……、な!?」
シエスタを庇うように、オーガンは彼女とギーシュの間に割って入った。
「やめたまえ。君のしていることは完全な八つ当たりだ」
「何だと!」
「事実を言ったまでだ。見っとも無い真似をする暇があるなら、さっきの二人に謝るべきだ」
「君は貴族への礼儀がなっていない様だな…」
「礼儀どうこうは関係ないだろう」
「うるさい! 決闘だ! 決闘を申し込む!」
もはや半狂乱状態のギーシュの絶叫にオーガンは即答した。
「いいだろう」
「では場所を変えよう。ついてきたまえ!」
その途中、シエスタは今朝から気になっていた事を口にした。
「オーガンさんって、ずいぶん変なジャケットを着ているんですね」
「変なジャケット? これが?」
自分が着ている「ボマージャケット」の襟を指差すオーガンに、シエスタはきっぱりと答えた。
「そうですよ」
「どこが?」
「ポケットがいっぱい付いているところが、です」
ちなみに、(人間に化けている)オーガンの服装は執事服にボマージャケットという、まさかの組み合わせである。
そんな会話を終わらせ、二人は食堂の中に入り、デザートを配り始めた。
地味にテキパキと配っているシエスタとは対照的に、踊るように軽やかなステップで手早く配るオーガンの姿は、生徒たちの視線を釘付けにした。
その光景を、ルイズとキュルケは呆然と見ていた。
そんな光景を他所に、デザートを食べ終えたギーシュ・ド・グラモンは友人たちと談笑していた。
「ギーシュ、いったい誰と付き合っているんだ?」
「そうだそうだ、教えろよ」
「おいおい、そんなことできるわけ無いだろ。第一、僕は大勢の女性を楽しませる薔薇だ。故に、特定する事は出来ないなぁ」
友人たちの質問をのらりくらりとかわすギーシュ。
そんな彼のポケットから紫色の液体が入った小瓶が落ちたが、当のギーシュ本人はそのことに気付いているのに、気付いていないフリをした。
さらに、その一部始終を見てしまったシエスタは小瓶を拾ってギーシュに声をかけた。
「あの、落としましたよ」
聞こえないフリをするギーシュだったが、友人たちの言葉であっさり無駄なあがきに終わった。
「その紫色の液体、モンモランシーの特製香水じゃないか」
「本当だ。ということは、ギーシュ、お前モンモランシーと…」
はやし立てる友人たち、あせるギーシュ。
そして一人の少女が近づいてきた。
どこで調達したのか、堅そうな棒切れを手に持っていた。
「やぁ……ケティ…」
ギーシュの呼びかけにも答えず、ケティ・ド・ロッタは棒切れをギーシュ目掛けて振り下ろした。
「さよなら」
ケティがそういって去った頃には、ギーシュは顔面をアザだらけにして倒れていた。
何とか立ち上がった直後、今度はモンモランシーがギーシュに近づいた。
何故か両手にメリケンサックを装着して。
「や、やぁ、麗しのモンモランシー…」
「ギーシュ、今の子はだぁれ?」
そう言い終った直後には、ギーシュの鳩尾に鉄拳を叩き込み始めたモンモランシーであった。
数十発の鉄拳を叩き込まれたギーシュは、再び倒れた。
「この……浮気者ォッ!!」
そう叫んだ直後に、倒れているギーシュの顔面を蹴ったモンモランシーはそのまま食堂を後にした。
数分後、気合で起き上がったギーシュは、自分を心配そうに見るシエスタに食って掛かった。
「き、君は…ゴホッ、自分が何をしたのか分かっているのかい!? 君のせいで二人のレディの名誉が傷ついたじゃないか! ……ゴホゴホッ!」
どう見ても八つ当たりである。
シエスタの方は思わず涙目になっている。
「も、申し訳ありません!」
「謝ったぐらいで……、な!?」
シエスタを庇うように、オーガンは彼女とギーシュの間に割って入った。
「やめたまえ。君のしていることは完全な八つ当たりだ」
「何だと!」
「事実を言ったまでだ。見っとも無い真似をする暇があるなら、さっきの二人に謝るべきだ」
「君は貴族への礼儀がなっていない様だな…」
「礼儀どうこうは関係ないだろう」
「うるさい! 決闘だ! 決闘を申し込む!」
もはや半狂乱状態のギーシュの絶叫にオーガンは即答した。
「いいだろう」
「では場所を変えよう。ついてきたまえ!」
トリステイン魔法学院、学院長、オールド・オスマンはボーっとしていた。
秘書のミス・ロングビルは公用で外出中である。
「暇じゃのう…。あいつらが生きておった頃は毎日が騒がしくてよかったがのう…。オーガンを向こう側に戻してから散り散りになって、一人ずつあの世に逝ってしもうて…。いまや『バンビーナ団』で生きておるのはわし一人。ハァ…」
昔を懐かしむオスマンだったが、急に学院長室のドアが開けられたことで現実に引き戻された。
「失礼します、オールド・オスマン!」
「コルベールか、ノックしてから入らんかい。まったく、人が昔を思い出している時に…」
「昔を懐かしんでいる場合ではありません。これを見てください!」
そういってコルベールが出した、二冊の本に目を通したオスマンは即座にこういった。
「何じゃ、『バンビーナ団戦記』と『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。これがどうかしたのか?」
このページを見てください。
そういってコルベールは二冊の本をめくり、あるページを見せた。
それは、それぞれ「ショコルナの使い魔」と「始祖の使い魔のルーン」のページであった。
「昨日ミス・ヴァリエールが召喚したゴーレムのような生物と、彼のルーンの事が気になったので調べてみたのです。まずはバンビーナ団戦記のこの記述を見てください」
それには、ショコルナの使い魔の特徴が記されていた。
ゴーレムのような外観と体躯、内部に蠢く肉の塊、そして「オーガン」という名前。
「この本の表紙や押絵のそれとはかなり姿が違いましたが、それ以外は殆どこの本の書かれている特徴と一致し、名前まで同じです。この事を踏まえると、ミス・ヴァリエールの使い魔は「デトネイター・オーガン」としか考えられません」
コルベールの説明を聞くうちに、オスマンの表情は見る間に変わっていった。
「それと、始祖ブリミルの使い魔たちのこの記述も見てください」
そういって、コルベールはあるルーンの模様を指さした。
「これは、ガンダールヴのルーンではないか」
「そうです。彼のルーンの模様は、ガンダールヴのそれと見事に一致していました」
「何と…」
そんなやり取りの途中で、激しくドアがノックされた。
「入れ」
「失礼します!」
オスマンがそう言った直後、年配の教師が慌てて入ってきた。
「何じゃ、騒々しい」
「実は…」
年配の教師は、食堂で起きた騒動と、これから起きる決闘のことをオスマンに説明し、「眠りの鐘」の使用許可を求めた。
「バカバカしい、ほっとけ」
その一言で一蹴し、オスマンは鏡に向かって杖をふった。
それと同時に、鏡にヴェストリア広場の様子が映し出された。
「見物といくかの」
秘書のミス・ロングビルは公用で外出中である。
「暇じゃのう…。あいつらが生きておった頃は毎日が騒がしくてよかったがのう…。オーガンを向こう側に戻してから散り散りになって、一人ずつあの世に逝ってしもうて…。いまや『バンビーナ団』で生きておるのはわし一人。ハァ…」
昔を懐かしむオスマンだったが、急に学院長室のドアが開けられたことで現実に引き戻された。
「失礼します、オールド・オスマン!」
「コルベールか、ノックしてから入らんかい。まったく、人が昔を思い出している時に…」
「昔を懐かしんでいる場合ではありません。これを見てください!」
そういってコルベールが出した、二冊の本に目を通したオスマンは即座にこういった。
「何じゃ、『バンビーナ団戦記』と『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。これがどうかしたのか?」
このページを見てください。
そういってコルベールは二冊の本をめくり、あるページを見せた。
それは、それぞれ「ショコルナの使い魔」と「始祖の使い魔のルーン」のページであった。
「昨日ミス・ヴァリエールが召喚したゴーレムのような生物と、彼のルーンの事が気になったので調べてみたのです。まずはバンビーナ団戦記のこの記述を見てください」
それには、ショコルナの使い魔の特徴が記されていた。
ゴーレムのような外観と体躯、内部に蠢く肉の塊、そして「オーガン」という名前。
「この本の表紙や押絵のそれとはかなり姿が違いましたが、それ以外は殆どこの本の書かれている特徴と一致し、名前まで同じです。この事を踏まえると、ミス・ヴァリエールの使い魔は「デトネイター・オーガン」としか考えられません」
コルベールの説明を聞くうちに、オスマンの表情は見る間に変わっていった。
「それと、始祖ブリミルの使い魔たちのこの記述も見てください」
そういって、コルベールはあるルーンの模様を指さした。
「これは、ガンダールヴのルーンではないか」
「そうです。彼のルーンの模様は、ガンダールヴのそれと見事に一致していました」
「何と…」
そんなやり取りの途中で、激しくドアがノックされた。
「入れ」
「失礼します!」
オスマンがそう言った直後、年配の教師が慌てて入ってきた。
「何じゃ、騒々しい」
「実は…」
年配の教師は、食堂で起きた騒動と、これから起きる決闘のことをオスマンに説明し、「眠りの鐘」の使用許可を求めた。
「バカバカしい、ほっとけ」
その一言で一蹴し、オスマンは鏡に向かって杖をふった。
それと同時に、鏡にヴェストリア広場の様子が映し出された。
「見物といくかの」
一方、ヴェストリア広場。
「諸君、決闘だ!」
ギーシュの声に、周囲が歓声を上げる。
当のギーシュの眼前には、他の生徒に両脇をガッチリと固められたオーガンがいた。
そして、両脇を固めた生徒が手を離し、後退すると同時に決闘が始まった。
「僕の二つ名は「青銅」だ。それ故、僕はこれで戦わせてもらう」
そう言いながら、ギーシュは薔薇の花を模した杖から花びらを一枚とって、錬成魔法をかけて青銅のゴーレムに変貌させた。
「行け、ワルキューレ!」
オーガンは、ワルキューレの攻撃をのらりくらりとかわしながらギーシュを直接攻撃するチャンスを窺っていた。
しかし、ギーシュはそれに気付いたようだ。
「隙を見て僕自身を攻撃するつもりか。させるか!」
その言葉と同時に、ギーシュは六枚の花びらをとって、全てワルキューレに変貌させた。
一気に激しくなった攻撃を避けるのが精一杯で、オーガンは攻勢に出れなくなった。
そんな光景を見ていたルイズは思わず怒鳴った。
「何やってんの! 元の姿に戻ればすぐにカタがつくでしょ!!」
その指摘を受けたオーガンは、すぐに元の姿に戻る事にした。
薄い影がオーガンの周りに集まって重なり、消えるのと同時にオーガンは元の―ゴーレムの如き―姿に戻った。
「なっ、何だとおぉぉっ!?」
ギーシュの絶叫に続いて、周囲の生徒たちも叫んだ。
『ゼロのルイズの使い魔だったのぉっ!?』
そんな周囲の状況などどこ吹く風らしく、オーガンは気にせずにオーガンランサーを取り出した。
ワルキューレの内の一体を切り刻むオーガンの姿を見たギーシュは、恐れおののくのと同時にあることを思い出した。
「ゴーレムの如き姿、オーガンという名前、そして…剣のような双頭槍……。まさか、『バンビーナ団』のデトネイター・オーガン!??」
ギーシュの言葉を聞いた周囲は更に騒然となる。
そしてオーガンはギーシュの疑問に答えた。
「君の言うとおり、私はかつて『バンビーナ団』のデトネイター・オーガンだった」
「だった? どういう意味だ?」
「既に私はデトネイター・オーガンにしてデトネイター・オーガンにあらず。君や他の生徒たちが「ゼロのルイズ」と呼ぶ少女の使い魔。故に、わが主に付けられたあだ名への怒りからこう名乗らせてもらう」
オーガンはランサーを前に突き出し、叫んだ。
「私はゼロネイター・・・、ゼロネイター・オーガン!!」
その直後、残りのワルキューレたちも瞬く間に切り刻まれた。
「ひいいぃぃっ!!!」
オーガンのあまりの強さに恐怖したギーシュは、「参った」と言おうとしたが、言う前に杖を取り上げられてしまった。
「負けた…」
あまりの早業ぶりに、ギーシュはそう言うしかなかった。
「当たり前じゃ、おぬし如きがかなう相手ではないワイ」
「オ、オールド・オスマン!」
いつの間にかオスマンがそこにいたので、周りのどよめきが激しくなった。
「ホッホッホ、まさか、また会えるとは思わなかったぞい」
オーガンを見ながら、オスマンは言葉を続けた。
「コルベールの言ったとおりじゃの。ショコルナと死に別れ、おぬしを元いた世界に返してからニ百と数十年。本当にお互い変わり果ててしまったモンじゃ」
目の前にいるオスマンが何者かである事をオーガンはすぐに気付いた。
その声、その眼の色、あの時と変わらない声を聞き、その瞳を見たから。
「オスマン……、フレッシュ・オスマン!!」
「ホッホッホッホ。ブリミルに感謝すべきか」
オスマンはそう言いながら、嬉し泣きしていた。
「諸君、決闘だ!」
ギーシュの声に、周囲が歓声を上げる。
当のギーシュの眼前には、他の生徒に両脇をガッチリと固められたオーガンがいた。
そして、両脇を固めた生徒が手を離し、後退すると同時に決闘が始まった。
「僕の二つ名は「青銅」だ。それ故、僕はこれで戦わせてもらう」
そう言いながら、ギーシュは薔薇の花を模した杖から花びらを一枚とって、錬成魔法をかけて青銅のゴーレムに変貌させた。
「行け、ワルキューレ!」
オーガンは、ワルキューレの攻撃をのらりくらりとかわしながらギーシュを直接攻撃するチャンスを窺っていた。
しかし、ギーシュはそれに気付いたようだ。
「隙を見て僕自身を攻撃するつもりか。させるか!」
その言葉と同時に、ギーシュは六枚の花びらをとって、全てワルキューレに変貌させた。
一気に激しくなった攻撃を避けるのが精一杯で、オーガンは攻勢に出れなくなった。
そんな光景を見ていたルイズは思わず怒鳴った。
「何やってんの! 元の姿に戻ればすぐにカタがつくでしょ!!」
その指摘を受けたオーガンは、すぐに元の姿に戻る事にした。
薄い影がオーガンの周りに集まって重なり、消えるのと同時にオーガンは元の―ゴーレムの如き―姿に戻った。
「なっ、何だとおぉぉっ!?」
ギーシュの絶叫に続いて、周囲の生徒たちも叫んだ。
『ゼロのルイズの使い魔だったのぉっ!?』
そんな周囲の状況などどこ吹く風らしく、オーガンは気にせずにオーガンランサーを取り出した。
ワルキューレの内の一体を切り刻むオーガンの姿を見たギーシュは、恐れおののくのと同時にあることを思い出した。
「ゴーレムの如き姿、オーガンという名前、そして…剣のような双頭槍……。まさか、『バンビーナ団』のデトネイター・オーガン!??」
ギーシュの言葉を聞いた周囲は更に騒然となる。
そしてオーガンはギーシュの疑問に答えた。
「君の言うとおり、私はかつて『バンビーナ団』のデトネイター・オーガンだった」
「だった? どういう意味だ?」
「既に私はデトネイター・オーガンにしてデトネイター・オーガンにあらず。君や他の生徒たちが「ゼロのルイズ」と呼ぶ少女の使い魔。故に、わが主に付けられたあだ名への怒りからこう名乗らせてもらう」
オーガンはランサーを前に突き出し、叫んだ。
「私はゼロネイター・・・、ゼロネイター・オーガン!!」
その直後、残りのワルキューレたちも瞬く間に切り刻まれた。
「ひいいぃぃっ!!!」
オーガンのあまりの強さに恐怖したギーシュは、「参った」と言おうとしたが、言う前に杖を取り上げられてしまった。
「負けた…」
あまりの早業ぶりに、ギーシュはそう言うしかなかった。
「当たり前じゃ、おぬし如きがかなう相手ではないワイ」
「オ、オールド・オスマン!」
いつの間にかオスマンがそこにいたので、周りのどよめきが激しくなった。
「ホッホッホ、まさか、また会えるとは思わなかったぞい」
オーガンを見ながら、オスマンは言葉を続けた。
「コルベールの言ったとおりじゃの。ショコルナと死に別れ、おぬしを元いた世界に返してからニ百と数十年。本当にお互い変わり果ててしまったモンじゃ」
目の前にいるオスマンが何者かである事をオーガンはすぐに気付いた。
その声、その眼の色、あの時と変わらない声を聞き、その瞳を見たから。
「オスマン……、フレッシュ・オスマン!!」
「ホッホッホッホ。ブリミルに感謝すべきか」
オスマンはそう言いながら、嬉し泣きしていた。