あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

豆粒ほどの小さな使い魔-4




……マメイヌ隊は、レスキュー隊なんだと、お父さんにそう聞いたとき、まだ小さくてレスキューの意味も分からなかったけど、私もお父さんみたくなりたいって思った。

私はたまたま走るのが速かったけど、それだけでマメイヌ隊に選ばれるわけじゃない。
求められる役目は重大で、だからこそなりたいって思う人も私の周りにも沢山いた。
何よりも走りながら考えられる人が必要なんだと、ガッコウに来たマメイヌ隊の当時の隊長が教えてくれた。

あれから7年、私の腰には、マメイヌ隊の剣がある。
たった一人のマメイヌ隊。だから、沢山考えないといけない。
草や木に、私の知っているものはなかった。似てるものはあったけど。
ここを知るほどに、少しずつ、矢印の先っぽの国が遠くなっていく。
木の実の殻に注いでもらったワインに舌をつけた。
不思議だけど、ルイズは信じられるような気がする。心細いからだけじゃないと思いたい。だからつい色々話してしまうのだ。
びっくりして目を大きくしてくれるのが嬉しくて。
チーズを齧るルイズを見上げた。桃色の髪の、魔法がうまく使えない魔法使い。

……ルイズは、私のトモダチになってくれる?

* *


一時間くらい、ハヤテとおしゃべりした。
その中で、自分がまともに魔法を使えないことも、不思議と落ち着いて話せた。
ハヤテの、速く走れるだけじゃマメイヌ隊にはなれないんだっていう一言がすごくショックだったから。
何のために、誰のために走るのか。
私は、何のために魔法を使いたかったんだろう。馬鹿にされてるのを見返したい。お母さまから溜め息をつかれるのはもう嫌だから。それも、嘘じゃない。
だけどそれだけじゃいやだ。
「……私、もう一度、一から魔法を勉強してみようと思うの」
チーズを齧る。むきになり過ぎてた。他人の挑発に踊らされて、かなりみっともない姿を晒してた。
私は、失敗ばかりしてる。そこから目を背けたら、速く走れるようにはなれない、でしょ?
ハヤテは、小さくて可愛くて、話すのもたどたどしいから小さな子供に見えてしまうけど、少なくともマメイヌ隊として働いている先輩なんだ。
頭もかなりいいと思う。
そう言えば、
「ハヤテって、年は幾つなの?」
「ジュウナナ、半年前ニまめいぬ隊員ニナッタ」
17才。1年お姉さんなんだ。これが本当のちい姉様だと、変なこと考えちゃった。
お父さんが元マメイヌ隊員で、ずうっと憧れてたって。
「じゃあ、ハヤテは相当強いんでしょ?」
選ばれたんだから。そう聞いたら、今度は困ったみたいに眉を顰めた。
「強イ……難シイ」
言葉に迷いながら、ハヤテは一生懸命話してくれた。お年寄りよりも速く走れるし、剣も使えるけど、自分が世話役たちより強いとは全然思えないって。世話役って、オールド・オスマンみたいな人たちかな。
マメイヌ隊にも、それこそハヤテが三人掛りでも勝てない人もいるけど、その人だって自分が強いなんて一回も言ったことはないって。
「ウウン……何ガ強イカハ、ミンナガ違ウ、カラ……エエト……」
ああ、お姉さんだけど、ハヤテだってまだ見つけてないことがあるんだ。
「強いって、難しいのね」
エアハンマーの強さは比べられる。だけど、強いっていうのは、そういうことじゃないのね。
そう呟いたら、ルイズはすごい、と言われて恥ずかしかった。ハヤテが考えながら話してくれたことを、言い方を変えただけなんだもの。

そろそろ、学園に帰らなきゃ。コルベール先生と話もしないといけないし。
立ち上がって、草を払う。
でも、帰ったら、皆に会ったらまたゼロって言われるし、すぐに平気にはなれない。きっと嫌な気持ちになって、むきになっちゃうだろうな。

「ねえハヤテ、時々こうやって遠乗りに来るのって、どうかしら」
「気持チイイ。ソレニ、落チ着ク。ゴ飯モオイシイ」
コロボックルも、ハイキングとかするのかな。
「じゃあ、次はお弁当作って貰うわ。サンドイッチとか」
馬を進ませる私の肩で、ハヤテがぽんぽんと跳ねる。こういうところは、子供みたい。ハヤテはお姉さんみたいだけど、妹みたいだ。


ハヤテはコルベール先生相手には、あまり自分から話そうとしない。
聞かれたことには何とか答えるんだけど、つっかえたり、言い直したり大変そうだ。
今の質問なんて、さっき身振り手振り入れて沢山話してくれたことのに。
どうして?
今朝までの私なら、自分からそう言ってたと思う。ハヤテがなんで言葉を濁してるのか深く考えもせずに。
先生の質問に答えるのは、私にとって『正しいこと』だったから。
考えないと、いけないんだ。私には話せて、コルベール先生に話せないそのわけを。
使い魔だから。
そんな簡単な話じゃない。第一それだと、私はハヤテが使い魔なだけで自分の恥を曝け出したことになる。
違う。ハヤテだから話したんだ。
「ふぅ……まだここの風習も分かっていないのでは、説明のしようがない、か」
「ゴメン、ナサイ」
「いや、つい好奇心から踏み込みすぎてしまったようだね。すまなかった。ミス・ヴァリエールもご苦労だったね」
「いえ」
踏み込める距離。
頭の、今まで使わなかった部分を働かせてるみたい。面白いかも。
先生は、ハヤテの使い魔のルーンを虫眼鏡で確かめようとしたけど、細かすぎてよく分からなかったらしい。ちょっと見ない複雑な形だとか。
ハヤテと目が合った。ハヤテ本人に頼んで大きく書き写してもらえばいいんだ。
でも先生はハヤテの距離がそこまで近くないから言い出せない。少しもどかしそう。
私も気がつかない振りをした。
「それでは失礼しますミスタ・コルベール」
「ああ、それと明日からちゃんと授業に出るようにね」


ううん、でもやっぱり分からない。
「ねぇハヤテ、コルベール先生が嫌いだから、じゃないのよね」
そんなつまらない理由で距離を置くなんて思えないもの。
「ルル……マダ、ヨク分カラナイケド、アノ人ハ、チョット怖イ人ダト思ッタカラ」
あのいつも授業を脱線させて変な発明ばかりしてる先生が?
「質問ノ、シカタ、無駄ガナサスギタ……副隊長ニチョット似テル」
流石に驚いた。マメイヌ隊って騎士団みたいなものだと聞いてたから。じゃあコルベール先生って、元は軍人だったんだろうか。
「勘違いっていうこともあるのよね」
「ウン、マダチョットシカ会ッテナイ、シ」
「そう、よね、これからも授業とか、よく知っていけばいいんだわ」
これはハヤテにというよりも、自分に言い聞かせてた。私はコルベール先生のこと『先生』としか見てなかった気がする。

夕食までまだ少し時間がある。机に頬杖をついて、先生たちのことを一人ずつ頭に思い浮かべる。
クラスメートたちは……まだ、冷静になれないから保留。
ハヤテは、インク瓶の上に腰をおろして、嬉しそうに足を揺らしてる。あ、そうだった、
「ハヤテのベッド、どうしようか」
正直、私はそんなに寝相がよくない。ハヤテを潰しちゃうとは思わないけど、寝返りの一つも打てば、彼女にとっては地震みたいに感じるだろうから。
服を畳んだ上にハンカチ被せれば即席のベッドになるけど……ううん、それじゃあまりにも、
「ルルル……アノネ、るいず、『れんらくがかり』ハ、オ化粧箱ノ引キ出シトカニ、部屋ヲ作ッテルンダヨッ」
また新しい言葉だ。こういう言い方をするのは、きっと『連絡係』にも面白い、何か特別な意味があるんだろう。私も身を乗り出してハヤテの話を聞いた。
友達の部屋のどこかに、こっそりと秘密の隠れ家を作るんだと言う。
それは……すごく楽しそうだ。
女の人の場合は、さっきも言った化粧箱とか宝石箱に、他にも壊れた箱時計とか、ゆうびんぽすと? よく分からないけど、とにかく箱の内側に仕切りをつけて、ちゃんとした住まいを作るんだとか。
「コロボックルハ、マズ連絡係ノ部屋ニ行ッテ、許可ヲ貰ッテカラジャナイト、ソノにんげんニ会エナイノ。連絡係ハ、スゴク特別ナノ」
マメイヌ隊の話をしてくれたときもそうだったけど、ハヤテが子供みたいに目をきらきらさせてる。
連絡係もマメイヌ隊員と並ぶ子供たちの憧れなんだろう。
「じゃあ、夕食の後で、どこかいい場所を探しましょうか。」
「イイ……ノ?」
「勿論! だって貴女はマメイヌ隊の隊員だけど、私の連絡員みたいなものでしょう?」
危ない人から守ってくれるのは、使い魔の大切な仕事なんだから。
指を立てて言ってあげたら、ハヤテも嬉しそうに笑ってくれた。
「ン、ジャア、私ハるいずノ、仮ノ連絡員ネッ」
仮なんて付けなくてもいいと思ったけど、コロボックルにとっては譲れないことらしい。

本当に、今日だけでどれだけ沢山ハヤテのことを知れたんだろう。
きっと、明日からも。
「ハヤテ、沢山おしゃべりしましょうね」
私には、これが足りなかった。ああ、だからハヤテが来てくれたのかもしれない。そして、もっともっと、私のことをハヤテに分かって欲しい。
立ち上がった私の肩に、何も言わなくてもハヤテが飛び乗って。
私は部屋のドアを開けた。




新着情報

取得中です。