あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

KNIGHT-ZERO ep01


                  ノリックに捧ぐ







地球から遠く離れた世界


トリスティン魔法学院


異世界の大陸ハルケギニアに存在する、ふたつの大国に挟まれた中堅の王国トリスティン
王都の郊外、貴族の子女が集うトリスティン魔法学院では、二年生への進級儀式がおこなわれていた

使い魔を召喚する儀式、サモン・サーヴァント


ルイズは召喚魔法のルーンを詠唱していた

メイジにとって重要な意味を持つ使い魔の召喚

高名な貴族の子女でありながら四系統のどの魔法にも開眼せず、魔法学院の劣等生だったルイズは
数回の失敗を重ねた後、不退転の決意で臨んだこの儀式に自らのメイジとしてのプライドを賭けていた

詠唱が完成する

ルイズは神と始祖ブリミル、五つの力を司るペンタゴンに祈りながら、細身の杖を天高く、遠くへ掲げた


爆発

彼女が魔法を発動した時、望まずとも起きる傍迷惑な爆発、いつもより余分な爆発の煙が晴れた後
魔方陣の中心に現れたのは黒い物だった、魔方陣から大きくはみでた未知の物体、大きくて、低い

それは獣のようで、美術品のようで、それでいてこの世界のいかなる基準からも外れた造形がなされたモノ
あえて形容するならこのトリスティンにも稀に姿を現すゴキブリや南京虫に似ていなくもなかった


召喚に立ち会っていた他の生徒達が騒然となり、続いてどっと笑った、紅い髪の美しい女が進み出る


ルイズの悪友にして仇敵ツェルプストー家の令嬢、炎魔法の使い手であるキュルケがそれを指差した
その生活態度は奔放ながら魔法に関しては優等生である彼女は、先刻サラマンダーを召喚した

「何この『ウマ無し馬車』は?ルイズ、やるわね、でもせめて生き物を召喚して欲しかったわぁ」

その召喚物の四隅、足ともいうべき場所には4つの丸い物体があって、それに拠って地に立っていた

この世界に存在するものの中でそれに似た物を備えていたのは、馬車と労役夫の使う四輪荷車だけだった
少なくともその場に居た学院の生徒達や教師は、それを昆虫を模した奇怪な馬車としか認識できなかった

当時、一部の有閑貴族の間で珍妙な馬車を誂える趣味が流行していて、それは下劣と俗物の象徴だった

その物体の片端に赤く光る物があった、奥まった窓の中で紅い光は左右に動き、ヒュンヒュンと不気味な
音を発していた、それすらも皆の目には何らかの魔法を利用した悪趣味な装飾にしか見えなかった

馬車を使い魔にしたなんて前例は無い、儀式に付添っていた教師のミスタ・コルベールはこの召喚もまた
無効に扱うべきかと思ってルイズの肩に触れるが、意固地の塊となっていたルイズはその手をはねのけた

ルイズは怒りと羞恥に肩を震わせながら、どすどすと上品でない足音をたてて、その黒い召喚物に近づく

とにかくこれは何処からか来た強力な召喚獣だとでも思いこまないことには彼女の神経が保たなかった
それにしてはこの物体はあまりにも異形で、召喚主以外の皆は、言葉も無くルイズの奇行を見守っていた

ルイズは黒い肌をゴンと叩く、それは木でも鉄や青銅でも陶器でも無い、何一つ分からず、ただ手が痛い
続いて周囲を回る、職人が磨き上げた鏡のような艶のある黒い皮膚には幾つかのごく細い継ぎ目があった
物体を構成する色は黒ともうひとつ、半透明な肌、この世界には存在しない黒っぽく着色した曲面ガラス
顔を張り付かせ覗き込んだルイズは、彼女の知る馬車と同じく人の乗る内部を備えている事を確めた
続いてヒュンヒュンとうるさい小窓、杖を突っ込んでみたが魔法らしき反応は無く、ただ赤い光が動く

ルイズは目の前に現れた奇怪なウマ無し馬車の横腹、黒い体の中心にある取っ手らしき継ぎ目に手をかけた
公爵家の令嬢であるルイズは馬車には乗りなれていた、そして異世界のデトロイトで作られたその物体の
側面に設けられた入り口の開閉方法は、その異世界にも存在した馬車のそれとさほど変わらなかった

取っ手が微かに光り、黒い物体の外板が大きく開く、軽い、内部はタン色を基調とした布張りだった
ルイズは勇気を振りしぼってそのウマ無し馬車の内部へと侵入した、仄かな人間の体臭に少し安心する

その漆黒の外見に反して明るいウマ無し馬車の内部、ルイズは目の前に広がる光景にただ唖然としていた
赤、緑、黄色、青、その他様々な色彩の光がルイズの顔を照らし、彼女はその様にしばらく見とれていた

これはただの馬車ではない、しかし生き物にはとても見えない、どこに目鼻や口があるんだろうか
馬車だって前には馬がつながれているが、この物体の外部にも内部にもそれらしき物は無かった


ルイズはウマ無し馬車の内部にあったタン色の座席らしき物を指先でそっと撫で、恐る恐る尻をつけた
様々な光源の向く方向から、目の前にあるこの席は下僕が座り手綱を握る御者席だと推測したが
馬車において主人が座るべきとされる後部の座席、薄っぺらく狭苦しそうな後席を一瞥したルイズは
この綺麗な光に取り囲まれた大きな座席こそが、主人たる自分を受け入れるべき所だと決め付けた
隣には同じ大きさの座席が存在していたが、その席の前にはルイズの心を捉えた不思議な光は無かった

少なくともこれで前後左右はわかった、ルイズはこの何もかも不明な物体の左前の座席に落ち着く

席に座ったまま、天の川のような光の洪水と、右手にある水晶球のような四角い漆黒のガラスを眺めた
隣の席とを隔てる箱にはタイル細工のような色とりどりの四角が並び、その前には黒い棒状の突起がある
ルイズは室内の真ん中から生えた突起の先端に触れ、しっかりと握った、硬い、力を加えたが棒は動かない


ルイズが身を預けたタン色の座席は地球におけるビロードかコノリー・レザーに似た合成の素材で
肌に吸い付くような感触はなぜかルイズに安らぎと、それとは違う奇妙な昂ぶりを感じさせるものだった


それはそうと、ルイズは困惑した、サモン・サーヴァントの儀式にはもうひとつの過程がある
召喚した者と使い魔の契約を交わす儀式、口付けでルーンを刻むコントラクト・サーヴァント


突然、目の前の光の一部が点滅し、ルイズが乗っかっていた座席が不気味な振動とともに動き始めた

ルイズは「ヒっ!」と声を上げて体を震わせるが、座席はそれに構わずジッ、ジーッと動き続ける
座席はルイズを乗せたまま前に、そして上に動き、背もたれが今までの位置より少し立ち気味になる
続いて座席のルイズと肌を接触している部分が膨らみ、萎みながら、その全体の形状を微妙に変更させた

この物体の座席は身長153サントのルイズを最適の姿勢に導くかのように動くと、再び静止した

ルイズは自分の前方、自然に手を伸ばした位置にある操作物らしき物に手を触れ、その端を握りこむ
それは最初は少し太かったが、キュ、キュ、と内部で何かが動く音と共に手にしっくりくる太さになった
足裏が何かに触れる、二枚の板、ジジッという音とともにそれはルイズの足の長さに合わせ調節された

踵のある編上靴を嫌い、薄い革底のバックル付ローファを履いていたルイズの足裏に二つの板が当たる
先の尖った長靴が乗馬に最適であるように、ルイズの平たい靴はその二枚の板の操作に最良の物だった


実家の所有する広大な領地を馬で駆け回り、乗馬の腕には少々の覚えのあるルイズはすぐに気づいた
目の前の握り手はこのウマ無し馬車の手綱で、両足で触れるそれは鐙のようなものだということを

ルイズは不思議な高揚感に駆られ、握り手を左右に動かしたり、二枚の板を交互に踏んだりした



その物体の外、生徒達がある者は唖然と、ある者は嘲笑しながら見守る中、コルベールが咳払いをした
夢中になっていたルイズはコントラクト・サーヴァントを終えなくてはならないという義務を思い出す




ルイズが落ち着きなく見回すウマ無し馬車の内部、彼女の耳はその中で僅かに発せられた音を感じた



       「・・・・・・・・・・・・マ・・・・・・・・・イ・・・・・・ケ・・・・・・・・・ル・・・・・・・・・・」





ルイズは様々な光に溢れる不思議な機械の内部、その中央近くで微かに光った箇所を目ざとく見つけた
今となってはその主であるかの様に座席に身を預けるルイズの前方、嫌でも目に付く喉元あたりの高さ

この機械を作った異世界デトロイトに存在する、さる財団に付属した研究機関が意図した通りに
その物体の基幹を成す装置は人間に意思を語りかけるのに最も自然な位置に取り付けられていた

ルイズには理解できない文字らしき模様を描かれた赤や黄色の光の中心に在る、黒く小さな四角形の平面
ちょうど人間の口ほどの大きさの黒い窓、ルイズがさっき聞いた微かな声は、確かにここから聞こえた

ええい、ままよ!と思い、ルイズは前方に並ぶ各色の光に覆い被さり、その黒い平面に唇を合わせた
作動中の装置特有のかすかな温もりは、ルイズに儀式としての口づけを超えた奇妙な感覚を味あわせた


ルイズが黒い四角に唇を合わせ数拍の時間が流れた後、その黒いウマ無し馬車全体が眩い光に包まれた


ウマ無し馬車は低く平べったい前部を震わせ、後部からこの世界のいかなる獣とも異なる咆哮を発した

この機械が作られた異世界での最新技術、その物体の動力源である水素核融合エンジンに火が入った
その強烈な重低音は、異世界における旧世代の遺物、ポンティアックV8エンジンのそれに酷似していた

召喚物の周囲に集まって見物してた生徒達や、教師のコルベールさえもがその音に恐れを感じ、後ずさった
ただ一人ルイズだけが、その耳を裂かんばかりの強く激しい音に、自分でも理解不能な血の滾りを感じた

ルイズの目の前、たった今彼女が唇を触れた黒い四角形の中で光が発生した、小さな光の集合が現れる


いくつもの薄紅色の光が生き物のように動き、ルイズのキスに合わせて閉じた唇のような形を描くと
それは驚愕する口のように見える形を作り、続いて平静を取り戻そうとするかのように上下動した


声が聞こえた、今度は幽霊のような掠れ声ではなく、不快を感じない音量で室内に響き渡るような声






「私の名はナイト・インダストリー・トゥ・サウザンド・・・・・・『KITT』とお呼びください」




このウマ無し馬車は確かに言葉を発した

聞こえてきたトリスティン公用語には奇妙な抑揚があり、それは高貴ながら都会の瀟洒さを感じさせた
この物体が作られた場所で、その音声を司る装置の製作を含めて全体の設計を指揮したある科学者の口調
それはこの物体の生まれた国で「ボストン訛り」と言われる、旧き良き頑固者の鼻持ちならぬ言葉だった


ルイズは座席の上で、突然喋りだし奇妙な名乗りを上げた馬車に驚愕したが、持ち前の強気さを発揮する

右手にあるガラスの四角形が、その黒い平面に使い魔の契約を交わした象徴であるルーンを表示している


ほら、やっぱりわたしが召喚したコイツは生き物に間違いないわ、言葉も話すし、口はここにある


ルイズは言葉を発する黒い窓に表示されている「口」を指で強く押し、再び開こうとするそれを黙らせる
このウマ無し馬車とされた物体の中で、一人の若いメイジは彼我の存在とその意義を高らかに宣言した


「KITTとかいうの、あんたは今日からこのルイズ・フランソワーズ・ラ・ヴァリエールの使い魔よ!」



その黒い画面に現れた薄紅色の口は、しばらく「ヘの字」を書いたように停止していたが、やがて動いた

「まるで中世を舞台にした御伽噺のようですね、それが私の存続の為の最善であるならばそうしましょう」

黒い機械は一息つく、少なくともルイズにはそうみえた、そして妙な愛嬌を感じさせる声を発した


「よろしくお願いします・・・・・・ルイズ・フランソワーズ、さん」


「こちらこそ、KITT・・・・・・ルイズでいいわ・・・・・・」


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