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男達の使い魔 第十三話

「マチルダ姉さん、ウェールズ兄さん、もう行くの?」

そう問いかけるテファの目は、どこか寂しげだ。
何故か上目遣いで見つめるその様子に、ウェールズの中から何か熱いものがこみ上げてくる。

(ごめんよ、アン。ぼくはもう限界かもしれない。)

何故か大きく頭を振っているウェールズが、そのようなことを考えていたかどうかは定かではない。
その様子を、何故かマチルダは満足気に見ている。
この仕草を教え込んだのはマチルダであるが、それがいかなる意味を持っているかは定かではない。
もしウェールズが地球の文化に詳しかったならばこう叫んでいただろう。

胸革命(萌え)と。


テファは自分の使い魔に感謝していた。
彼が来てからというもの、テファにとっては嬉しいことが続いているのだ。
昔の優しいマチルダ姉さんが帰ってきた。
ウェールズという兄ができた。
どこからか食材を調達してきては、美味しい料理を作ってくれるし、子供達の病気などもすぐ治してくれる。
枚挙に暇がないとはこのことだろう。

テファには分かっていた。今の自分は、昔よりも遥かに贅沢をしているのは。
理性では分かっている。今回のは別に永遠の別れでもなんでもないと。
ただ、本当に少し寂しいのだ。

そんなテファの思いを断ち切るようにマチルダが、座っている竜の騎手、ウェールズに言う。

「ほら、トリステインは遠いんだからとっとと行くよ!」

その言葉に、迷いを打ち切ったウェールズは一声かけると、大きく空に浮かび上がっていった。

テファは、その様子をいつまでも眺めていた。




突然のタバサの話に、場が静まりかえる。
そんな中、王大人が落ち着いて話を聞きだした。

「それで、診て欲しい人とはどこにいる。」

鋭い光を放つ王大人の目にも臆することなくタバサは答える。

「私の故郷。容態は、たぶん実際に診ないとわからない。」

そう言ってタバサはじっと王大人を見つめる。
その目に何を見たのか、王大人が己の目の光を和らげた。

「ふむ。承知した。富樫よ、助手としてついて来い。」

「へ?俺?」

その指名に、富樫が素っ頓狂な声を上げる。桃たちも不思議そうに王大人を見つめていた。
今残っている者達で、最も王大人の助手として役に立ちそうなのは、桃や伊達、飛燕などであるのは間違いない。
それにも関わらず、あえて富樫を指名した王大人をいぶかしんでいるのだ。

「なに、大したことではない。ただの雑用に過ぎん。」

そういう王大人自身、腑に落ちないのだ。それでも己の直感が富樫を連れて行くべきと盛んに主張をしている。
王大人は、自分の直感に従うことにした。

もう話は終わりとばかりに、王大人は踵を返すと、タバサに言った。

「ふむ。差し入れの医薬品も届いたようだな。それでは向かうとするか。案内せい。」

その瞬間バサバサと外に竜が降りる音がする。
王大人が扉を開け放った先では、二人の覆面をした人物が荷を降ろしていた。
一人は妙齢の女、もう一人は青年といってもいい年頃の男である。
その姿に、虎丸は絶句する。
いかに顔に包帯を巻いて変装しようとも、一緒に酒を酌み交わした虎丸をごまかせるはずもない。
嬉しさのあまり叫ぼうとする虎丸だが、覆面の男が口に人差し指をあてているのに気がついた。
黙っていろ、そう言っているのだ。
その時、王大人が声をあげる。

「紹介しよう。世話になっている二人だ。事情があって顔を隠している。」

「そうね。あたしのことは助っ人一号とでも呼んでおくれ。」

「それはいいね。ではぼくは助っ人二号とでも名乗ろうか。」

その名乗りに王大人は一つ頷きを返すと、虎丸に耳打ちした。

「後ほど事情は説明しよう。少し秘密にしておくがいい。」

唖然としながらも、虎丸は首を縦に振った

そんな様子を見つめていた覆面の女は、屋根の上からの視線を感じた。
そこには、伊達が少し優しい表情をして女を見つめていた。
そのことに気づいた女は、そっとウインクを返す。

そんな和やかな様子を打ち切るかのように、王大人が言った。

「それでは向かうとしよう。行き先は?」

「旧オルレアン公爵屋敷。」




「むう!これは!」

針で眠らせたタバサの母親の容態を見ていた王大人は低く呻いた。
その様子をタバサは心配そうに見ている。

「治せそう?」

簡潔ながらも、万感の思いを込めてタバサは尋ねる。
その言葉に、王大人は全身から汗を滴らせながら言葉を発した。

「……中国四千年にかけて不可能とは言わん。しかし、とてつもなく強力な呪いがかかっておる。
 無理矢理祓おうとしたらこの様だ。」

そう言って、王大人は右手の袖をめくり上げる。
そこには、どす黒く、大きなあざができていた。
そんな王大人をタバサは不安そうに見つめる。
王大人は、そこでにやりと笑って言った。

「ここでは風水が悪い。……いや、誰かが意図的に悪くしているようだ。
 安全な場所を提供するゆえ、そこで一月も治療に専念すれば完治できよう。」

その言葉に、タバサの顔が思わず綻ぶ。

「母さま。」

そう言って母をぎゅっと抱きしめたタバサの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
今、タバサと名乗るようになってから初めて、明確に希望が生まれたのだ。
富樫やマチルダ、もとい助っ人一号と二号も、すこし貰い泣きをしていた。

その時、王大人の膝ががくんと落ちた。

「王大人!」

富樫が叫んで王大人に駆け寄ろうとするが、王大人自身がそれを制した。

「心配無用だ。少々気を使い過ぎただけのこと。すぐに治る。
 それより富樫!タバサの母上をこの屋敷より運び出すがよい。」

その言葉に富樫が大きくうなずいた瞬間、後ろから声がした。

「それを許すわけにいかないな。」

静かな声であるが、そこには絶対の自信が含まれていた。
その声に、全員が一斉に扉の方へと振り向くと、そこには一人の男が立っていた。

「わたしは”ネフテス”のビダーシャルだ。出会いに感謝を。」

そう言って優雅に一礼をした男の耳は尖っていた。

「エルフ!」

そう叫ぶと同時に、マチルダが、ウェールズが、タバサが懐から杖を取り出す。
しかし、迂闊には手を出さない。否、出せない。
御伽噺で彼らは、エルフの恐ろしさを骨の髄にいたるまで教え込まれているのだ。
そんな緊張をまったく無視するかのように、ビダーシャルは声を上げる。

「お前達に要求したい。その女性を置いて立ち去って欲しい、ということだ。
 我々エルフは無益な戦いを好まない。我は、お前達の意思に関わらず、その女性を治療はさせない。
 そういう約束をしてしまったからな。」

そう淡々と話すビダーシャルを遮るように、タバサが呪文を唱えだす。
今のタバサの中には激情が渦巻いていた。
呪文を完成させたタバサは、全てを凍りつかせる激情を解き放つことにした。

「ようやくつかんだ希望、邪魔はさせない!アイス・ストーム!」

タバサの周りが瞬時に凍てつくと、猛烈な勢いで小型の竜巻を作り出す。

「この威力、スクウェア級じゃないか!なんて小娘だ!」

マチルダとウェールズがその威力に驚いている中、富樫は冷静であった。
幾度もの死闘を潜り抜けた勘が教えてくれるのだ。これではあいつを倒せないと。

次の瞬間、全員の表情が凍りついた。
ビダーシャルを襲ったアイス・ストームが逆転してタバサを襲いだしたのだ。
全員回避を試みる中、タバサだけが動くことができなかった。

(先住魔法!)

そう思ったが時既に遅し。
足首を固定されて動けないタバサは、ゆっくりと自分に襲い掛かるアイス・ストームを眺めていた。
全身全霊を込めて放ったアイス・ストームは、芸術と言っても良い出来であった。
まともに喰らっては、おそらくは助かるまい

(でも、母さまは助かるなら……)

タバサの脳裏に幼い時の思い出が蘇ってくる。
自分を叱ってくれた両親。優しくしてくれた両親。
家族のように思っていた執事のベルトランや、父のことを慕って今でも多くの手助けをしてくれる騎士団の面子。
そんな顔や思い出が浮かんでは消える。
そうして最後に、学院での思い出やキュルケ達の顔が浮かんだ。

(わたし、生きたい!母さまやキュルケ達と生きたい!)

時間がゆっくりと流れる中、タバサに絶望が襲い掛かってきた。




襲い掛かる瞬間、タバサは思わず目を閉じた。
しかし、いつまでたってもアイス・ストームは襲って来なかった。
むしろ何か暖かいものに包まれている感触を覚えたタバサは、ゆっくりと目を開ける。

「無事か?」

富樫が不敵に微笑んでいた。
魔法防御も何もなしでアイス・ストームからタバサを身一つで庇ったのであろう。
その全身は重度の凍傷に冒されていた。
直撃を受けた背中などは、ズタズタに切り裂かれ、なおかつ凍傷で皮が削げ落ちている。
普通ならば、死んでいてもおかしくはない状態だ。

しかし、富樫は倒れない。今の富樫には支えるものがあるのだ。
富樫は、たった一人の肉親であった兄のことを思い出していた。

富樫の兄は、格好いい男であった。
何かあると、己の全身を注いで物事に取り組んでいたその姿勢は富樫の憧れであった。

いかな理由があったとは言え、その兄が死んだ時、富樫は心の底から悲しんだ。
そして復讐を誓った。様々な出来事があって復讐こそやめたが、その時の悲しみは覚えている。
そんな兄と自分の姿を、タバサとその母に重ねた富樫は迷わず飛び出していたのだ。

富樫はゆっくりとビダーシャルの方を向く。
意識を保っているのが奇跡、動くなどありえない、そんな体を富樫はなおも動かす。
その目には炎が渦巻いていた。

「手前は絶対にゆるさねえ!」

たった一人残った家族を想うタバサの気持ちをねじ伏せようとする男を、富樫源次は許しはしない。


その言葉が開戦の合図になった。
マチルダが瞬時に作り出した石のゴーレムによる一撃を繰り出す。
そちらにビダーシャルの意識がいった瞬間、タバサは足の拘束を振り切ると富樫を抱えてフライをかける。
いかに強靭な精神を持っているとはいえ、今の富樫では限界だ。
そう判断したタバサは、王大人に治療を頼むと、自分も戦場へと駆けていった。
それを悔しげに見送った富樫は、王大人に声をかけた。

「一瞬でかまわねえ。動けるようにしてくれ。」

富樫はじっと戦場を見つめていた。


(なんて反則!)

マチルダは憎憎しげにビダーシャルを見ていた。
その先では自分のゴーレムが大きく右手を振り上げていた。
しかし、ビダーシャルは動かない。
マチルダのゴーレムが拳を振り下ろす!

ドン!

しかし、砕けたのはゴーレムの拳であった。

ウェールズが風の刃を放つ。
ビダーシャルにたどりついた風の刃ではあるが、次の瞬間反転してウェールズを襲った。

「くっ!」

あらかじめ手加減をしていたため、ウェールズは何とかよけることに成功する。
動こうともしないビダーシャルを尻目に、ウェールズとマチルダは合流した。
そこへタバサも加わる。
ビダーシャルはそれすらも見逃して声をだした。

「蛮人の戦士達よ。お前達では決して我に勝てぬ。この城全ての精霊と契約した我にはな。
 大人しくその女性を置いて立ち去るがいい。」

絶対たる優越を顔に浮かべてビダーシャルは言う。

(なめやがって!)

マチルダは激怒するが、打つ手がない。
ただじっとビダーシャルを睨み続けていた。

その様子を眺めていたビダーシャルは、己の両腕を振り上げる。
次の瞬間、城壁がマチルダ達を襲った。


必死に回避するマチルダ達ではあるが、その敗色は濃厚であった。
こちらの攻撃が全く通用しない上に、ビダーシャルは凶暴極まりな攻撃を仕掛けてくる。
この状況ではよく粘った方であろう。
ついにマチルダが一撃を喰らい、崩れ落ちる。

(しまった!)

意識こそ残っているが、体がしびれて動かない。
そのマチルダの方へと歩み寄ったビダーシャルは、無造作にマチルダをつかむとウェールズの方へと投げ捨てた。

「最後の忠告しよう。大人しく立ち去るがいい。」

そう言って見つめるビダーシャルの目は、ひたすらに冷たかった。


「そいつは聞けねえな!」

富樫が立ち上がっていた。その様子に思わずビダーシャルは眉をしかめる。
とても戦いには赴けないと容易に想像がつくほどの重症で、ビダーシャルと戦うというのだ。
思わず富樫の方を見つめるが、富樫の目には絶望は全くなかった。


「富樫。貴方は下がっていて。」

その声に心配の色を貼り付けたタバサが言う。
しかし、首を横に振った富樫は言う。我に秘策ありと。
小さくメンバーに耳打ちをすると、無茶だ、と制止する声を振り切ってビダーシャルに突撃をしていった。

(このまま無視しても構わないが、ここは念を入れるとしよう。)

ビダーシャルはそう判断した。

ビダーシャルの意志に反応して、地面が拳の形を作り上げた。
その拳が富樫に襲い掛かる。
いかな富樫とて、今の状態でこの一撃を喰らえば戦闘不能になることは間違いない。
富樫に命中しようとしたその瞬間!

「はっ!」

裂帛の気合と共に、ウェールズが力を振り絞って風を作り出す。
その風は、「富樫」を直撃し、大きくビダーシャルの方へと吹き飛ばした。

その蛮行に思わず目をむくビダーシャル。
アレでは、いかに直撃を避けたとはいえ、もはや戦闘は不能であろう。

驚くビダーシャルであったが、冷静に吹っ飛んできた富樫に直撃しない間合いを取った。
そうして吹き飛んで倒れた富樫に近寄ったビダーシャルは思わずぎょっとした。
もはや虫の息かと思った富樫が自分の足をつかんでいたのだ。

「ようやく、つかまえたぜ!」

「貴様、正気かね。確かに我の契約した精霊たちは、我がもはや敵と見なさぬもの、我に攻撃を仕掛けぬ者の接触までは妨げぬ。
 しかし、その状態で一体何ができようというのだ?」

その問いに富樫がニヤリと笑ったその瞬間、富樫の下の地面が大きく盛り上がった。
ビダーシャルは落ち着いてその様子を見ていた。
いかに不意をついたとは言え、魔法では自分にダメージを与えることはできない。
さらに、ちらりと富樫を見てビダーシャルは思う。
もしこの男が自分に攻撃を仕掛けてきても、そこに自分に対する敵意がある限り精霊達は自動的に反応する。
心配する必要はない、と。

その油断が勝負を分けた。



マチルダの土の魔法で起き上がった富樫は、力を振り絞ってビダーシャルに寄りかかる。
そう、よりかかるだ。そこには敵意も何も存在しない。また、ビダーシャル自身もさして脅威には思っていなかった。

(せいぜいあと一動作。それで限界が来る。)

そう冷静に判断したビダーシャルは、富樫の行動を見逃してしまった。


「見さらせ!これが富樫源次の喧嘩殺法じゃー!」

そうして富樫は、懐に隠し持った長ドスを最大の殺意と共に「己」に突き刺した。
その長ドスは、富樫自身の胸板を貫き、ついには接触するビダーシャル自身をもえぐっていた。

「ば、馬鹿な!」

血を吐きながらビダーシャルは叫ぶ。ビダーシャルには信じられなかったのだ。
確かにこれはビダーシャルへの攻撃ではない。ビダーシャル自身も瀕死の男を全く脅威とは思っていなかった。

(だからといって!)

こんな方法を取る男がいるとは想像もしていなかったのだ。

(くっ!)

ビダーシャルは最後の力を振り絞って逃走をすることにした。
胸の傷は深かったが、それ以上に衝撃を受けていた。
自分が蛮族と罵った男に、これ程の男がいることに




ビダーシャルが逃亡をしたのを見送った富樫は、ゆっくりと崩れ落ちていった。
最後に、泣きながら駆け寄ってくるタバサの姿印象的だった。

(幸せになれよ!嬢ちゃん。)

それを最後に、富樫の意識は暗転した。


「王大人、どうなの!」

マチルダが声をかける。

「最善を尽くそう。今はそれしか言えぬ。それより、早くテファの所に向かうぞ!
 ここでは風水が悪すぎる。治療には向かぬ。」

手早く止血をした王大人は、タバサの母と富樫を抱えると、外に向かった。

「シルフィードの方が早い。」

タバサが既にシルフィードに載っていた。
その目には焦りがあった。

王大人が乗ったことを確認したタバサは、シルフィードに全力で移動することを命じた。
昼の空を一筋の流星が流れていった。




一方そのころ……

「心頭滅却すれば火もまた涼し!」

男塾塾長江田島平八は、人類初の宇宙服による大気圏突入を敢行していた。
音速を遥かに超える速度で江田島と、江田島の下のスペースシャトルは大気圏へと入っていく。
その時、

「ぬう!」

江田島の目の前に一瞬白い光が走った。

その後には、スペースシャトルだけが残っていた。


「あれは夢だったんだ!人類が宇宙を生身で泳げるわけがない!」

某スペースシャトル船長の談話である。
彼はこの後精神病院で精密検査を受けることになった。

男達の使い魔 第十三話 完







NGシーン

雷電「むう、あれは!」

虎丸「知っているのか雷電!?」

雷電「あれぞまさしく古代中国において伝説といわれた江流風(えるふ)!」

エルフ、ハルケギニアや地球においてメジャーな種族ではあるが、その起源を知るものは少ない。
かつて中国に江流(こうりゅう)という大きな川があったという。そこにいたある種族は数々の不思議な術を使ったという。
一説では、風に乗って空を飛んだとさえ言われた彼らは、住んでいる土地の名前を取って江流の風、略して江流風(こうりゅうふう)
と呼ばれたという。
この民族達が、海のシルクロードをたどってハルケギニアや欧州に移動する際になまって江流風(えるふ)と発音するようになったのは
誠に有名な学説である。
なお、彼らの特徴としては、不思議な術を使う他に耳が長いこともあげられる。
民明書房刊 「欧州とハルケギニアのエルフ」(平賀才人著)



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