あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ20


トリステイン城下町で男は目を冷ました。
男は何故ここで気を失っていたのかを思い出そうとする。
たしか路地裏で衛士どもに追い詰められていたはずだ。
その後、目くらましにするつもりで掴んだ植木鉢から青い光が溢れて……その後はよく覚えていない。
だいたい、ここは路地裏ですらない。地面が剥き出しとなった広場ではないか。
辺りを見回せばこの広場は意図的に作られたものではないことがわかる。
瓦礫の中、この場所だけが不自然に開けているのだ。
城下町にはこんな廃墟のような場所はなかったはず。
男は軽い頭痛に悩まされながらも考え続けるが、路地裏にいた自分が何故こんな所にいるのかどうしても思い出せなかった。
この場所には城下町を破壊する原因となった巨木が生えていたのだが、気を失っていた男はそんなことはもちろん知らない。
「おお、こんな所にいたのか。随分探したぞ」
悩み続ける男を呼ぶ声がした。
聞き覚えのある声の主を見て、男はほっとした。
彼を手引きしたトリステインの魔法衛士隊の人間ではないか。
その衛士は彼らの思想に共感し協力者となっているのだ。
「すまない。どうも記憶がおかしい。頭でも殴られたのかもしれん」
トリステインからの脱出も衛士が手引きをすることになっている。
男はふらつく足で衛士の元まで歩いた。
「そうか。だが、急いで安全な場所まで行かねばならんな。すでにこのあたりにも私以外の衛士が多く来ている。私とてその全てをごまかすことはできん」
衛士は少々あきれた目で男を見ていた。
それも仕方はないだろう。こんなところで考えにふけっていたのだ。逃亡中の間諜のすることではない。
「それで、俺はどこに行けばいいんだ?」
男はようやく元にたどり着いた。その頃になっても、まだ頭痛は取れてはいなかったが足下はしっかりしてきていた。
「なに、すぐに着くさ」
瞬間、男は腹に耐えられない熱さを感じた。
いや熱いのではない。痛みが酷くて熱さと体が勘違いしているのだ。
その証拠に自分の腹には魔法衛士隊の使う鋭い杖が突き刺さっているではないか。
「君の逃げ場所はもう死者の国しかないのだからね」
衛士は呪文を唱えながら、男から引き抜いた杖を振る。
それにより作られた雷撃が降り注ぎ、男を地面に叩きつけた。
なおも雷撃は続く。男は雷撃を受ける度に痙攣し、自らの体を地面にぶつけた。
それが数回。男は地面に倒れ伏したまま、手足を炭化させている。
男が自分の力で動くことは二度と無かった。


形態を通常のデバイスモードに戻したレイジングハートがいくつかの開口部から水蒸気を吹き出す。
それに合わせてルイズも肺の中の空気を全て吐き出した。
ルイズはかなり疲れていた。
いきなり生えてきたジュエルシードの大木に振り回されたというのもあるが、ディバインバスターの負担がかなりこたえていた。
練習の時から負担のかかる魔法だと解っていたが、実際に使うと思ったよりも疲れが出てきた。
前にユーノが言ったとおりもう少しプログラムを変えてみた方がいいかもしれない。
──そろそろ帰ろうか。
そんなことを考えていると
「ねえ、ルイズ。そんなとこで何してるのよ」
後ろから声が聞こえた。
聞き覚えのある声だ。しかも、あまりここで聞きたくない声だ。
顔面を紅潮させたルイズはおそるおそる振り返る。

ばっさばっさ
きゅるきゅる

すぐさま目にも止まらぬ速さで顔を元に戻す。
「ユーノ、私、今幻覚を見たの。とっても疲れているのかも知れないわ」
「あ……それはね」
「なに言ってんのよ。幻覚じゃないわよ。ミス・ヴァリエール」
ルイズは歌劇俳優のように大げさな身振りで手を額に当て、絶望にうちひしがれる貴婦人のように空を仰ぎ見る。
「あぁ、どうしましょう。幻聴まで聞こえてきたわ。私、もうだめかも知れない」
そう、幻聴に違いない。そうに決まっている。
「いいから、こっち見なさいよ。幻聴じゃないわよ」
だが無慈悲にも現実は変わらない。後ろからはっきりと聞こえてくる声は幻聴でも幻覚でも無いような気がしてくる。
ルイズは意を決しておそるおそる振り向いた。

ばっさばっさ
きゅるきゅる

風竜、それに乗った赤い髪の女と青い髪の女。
もはやどうやっても否定できない。
「あ、あははは。あははははははははは」
シルフィード、それに乗ったキュルケとタバサがいた。
キュルケだけでなくタバサも本から目を離してルイズを見ている。
ルイズは焦った。それはもう焦った。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしょう。
「さぁ、ゼロのルイズ。何から何まで全部喋ってもらうわよ」
キュルケは胸を突き出し、シルフィードの背中からルイズを見下ろしていた。


キュルケ達がルイズを見つけたのはシルフィードに乗って壊れていく町から飛び立った後だった。
しばらく町の外縁を周回していたのだが、そのうち遠くに空を飛んでいる白いメイジと茶色いマントのメイジを見つけた。
フライはそんなに長時間使える魔法ではない。使っている間どんどん精神力が消費される。
あんなところで浮かんでいてはそのうち精神力切れで地面まで真っ逆さまだ。
おそらく地上の根から逃げているうちにあんな所に飛び上がってしまったのだろう。
誰かは知らないが手助けくらいはしてやってもいいかもしれない。
しかし近づけば地上から蔓や蔦が伸びてきて捕まってしまう。
どうしようか手を出しあぐねているいるうちに、キュルケは驚くものを見た。
そのメイジは空を飛んだまま魔法を使ったのだ。
系統魔法ではフライを使ったまま他の魔法を使うことはできないのに。
さらにそのメイジの使ったもう一つの魔法もすごいもので、一撃で町中に生えていた巨木を光に変えてしまった。
スクエアのメイジだって、あんな魔法を使う者は少ないだろう。
こうなるとキュルケはその謎のメイジに俄然興味がわいてくる。
タバサに頼んで謎のメイジ近寄ってみるとまた驚いた。
白いメイジはルイズで、茶色いマントのメイジはルイズの男ではないかと疑っている少年だったのだ。
まさに一石二鳥。面白いことになりそうではないか。
そのルイズは今、目の前で酷く慌てている。
ルイズの気持ちもわからないではないのでキュルケは待ってやることにした。
待っている間、キュルケはルイズをじっくり観察する。
まず、あの白いドレス。悪いものではない。それどころかとてもいいものだ。
裕福な貴族の生まれのキュルケの目から見ても感嘆を覚えるような一品だ。色も光沢もすばらしい。生地の質も一級品だ。
あれと同じものを揃えようと思ったらお金だけでは無理だろう。
続いて、杖。
全部金属で作っているようだ。どんな金属かは解らないが、かなりの技術で作られているように見える。
これも同じものを手に入れるとなれば相当腕のいい土系統のメイジを見つけなければならないだろう。
──いいものを揃えたわね
そこで、キュルケは閃いた。
ゼロのルイズがフライを使いながらも魔法を使っている理由、スクエアに匹敵するような魔法を使っているのはドレスと杖が強力なマジックアイテムだからに違いない!
となると疑問はルイズが何故そんなものをルイズが持って使っているかと言うことになる。
──何か面白そうな話が聞けそう
学校の授業や、ボーイフレンド達との逢瀬よりも面白いかも知れない。
キュルケは赤い唇の端を少しだけ上げた。


顔面の全ての汗腺から汗を吹き出しつつ、ルイズは脳をフル回転させていた。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
なんとかごまかさないといけない。
「あ、あの・・・・・・」
「ちょっと今は静かにして」
ユーノが何か言い足そうにしていたが、今は待ってもらう。
今は集中しないといい考えが浮かびそうにない。他のことに気を回している余裕もない。
「うん、わかった」
こうなってはルイズは聞く耳を持たない。アイデアはあったがユーノは黙っておくことにした。
「Knock out by buster.(砲撃で昏倒させましょう)」
レイジングハートの提案は少し心惹かれるものがあったが止めておく。
いくらツェルプストーでも学友相手には過激すぎる。
第一、解決になりそうにない。ここはもっと穏便な別の方法が必要だ。
ルイズはさらに考える。
そうえば、キュルケはさっき自分を「ゼロのルイズ」と呼んでいた。
ルイズはそこに光明を見いだす。
キュルケは自分をゼロのルイズと呼んでいる。
ゼロとは魔法を使おうとすれば全部爆発。成功率ゼロという意味のゼロだ。
だけど、今は違う。
空を飛ぶ魔法は爆発無しで使える。
ジュエルシード封印の魔法だって爆発しない。
ディバイバスターだって爆発……爆発……少し置いておくことにする。うん。
そう、自分は以前とは違う。魔法が使えるゼロではないルイズだと思わせれば、ルイズとは別人と思ってくれるかも知れない。
冷静に考えればかなり無理がある論理展開なのだが、ルイズはとにかくそう考えた。
ルイズはゼロではない二つ名を考える。そして見つけた。
これなら完璧。絶対に大丈夫に違いない。
「わ、私はルイズじゃないわ」
「はぁ?じゃあ、誰だって言うのよ。その髪、その顔、その胸。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール以外の誰だって言うのよ」
──聞いて驚きなさい。
ルイズは自信満々に自分の名前を宣言した。
「私は、ルイズじゃない。私は魔法少女リリカルイズよ!!!!!」

ばっさばっさ
きゅるきゅる

シルフィードの鳴き声と羽音がよく聞こえてきた。
そういえば、いい天気ね。町まで遠乗りしてよかったわ。
小鳥の鳴き声も綺麗ね。だってキュルケとタバサ、それにユーノだって聞き惚れてこんなに静かじゃない。
ルイズの思考は体を離れかけていた。


キュルケは必死に口を引き結んでいた。
少しでも力を弱めれば決壊してしまう。
だが、それも無駄な努力で限界はすぐに来た。
「ぷっ」
唇の間だから空気が漏れる。
後はもう止められない。
「あはははははははははははははは、あはははははははははははははは、あはははははははははははははは」
笑い声で正常な思考を取り戻したルイズは頭を抱えそうになった。
「な、何よそれ、魔法少女って何よ。魔法少女って」
ホントは魔導師と言おうとしたのだ。ユーノはメイジのことを魔導師という。これだけでも印象はかなり変わるはずだ。
それが、どこをどう間違ったのか魔法少女になってしまった。
「そ、それに、リリカルイズ……リリカルイズって……あははははははははははははははは」
リリカルイズじゃないもん。リリカルルイズだもん。
ここでも滑舌が徹底的に悪かった。
あー、もー、どうしよう。というか、どうしようもない。
「ねえねえ、タバサ。聞いた?魔法少女ですって、魔法少女。しかもリリカルイズ……あははははははははあはははは」
タバサは小さく肯いた。そして笑い転げるキュルケに言った。
「彼女は魔法少女リリカルイズ。ルイズじゃない」

ばっさばっさ
きゅるきゅる

ルイズは固まった
キュルケも固まった
ユーノもついでに固まった
三人の魂はどこかに飛んでいった。


最初に魂を取り戻したキュルケはこめかみを押さえながら、ゆっくりとタバサに言い聞かせた。
「ちょっと。タバサ。冗談よね。まあ、あなたにしては面白い冗談だと思うけど。別にあの子につきあってあげなくていいのよ。あの子はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよね?」
タバサは首を横に少し大きく振った。
「彼女は魔法少女リリカルイズ。ルイズじゃない」
キュルケは思いっきりたじろいだ。
その時のタバサの目は真剣だったからだ。
本気だった。本気と書いてマジだった。大マジだった。
その瞬間、ルイズも魂を取り戻した。
「じゃ、じゃあそういうことだから。リリカルイズは次の戦いに旅立つわ」
言うが早いがルイズは未だ茫然自失のユーノの手をひっつかみ、空の彼方にダッシュ。
「待ちなさい!タバサ、ルイズを……」
「ルイズじゃなくてリリカルイズ」
「ああ、もう。なら、そのリリカルイズを追うわよ!!」
「無理」
「なんで?」
「もう、追いつかない」
ルイズの姿はすでに砂粒よりも小さくなっていた。
「……どんな速さしているのよ」
砂粒もすぐに見えなくなる。
そうなってもキュルケはまだ地平線を見つめていた。


城門前に止められたヴァリエール家の紋章の着いた馬車の中では桃色がかったブロンドの夫人が高貴さを漂わせていた。
誰であろう、ラ・ヴァリエール公爵夫人である。
ラ・ヴァリエール公爵はすでに軍務を引退しており、特別なことがない限り城に出る必要はない。
しかし、それでも公爵家ともなれば国政と全く無関係ではいられない。
そこで公爵夫人は内政で多忙な夫に代わり、衛兵に顔を知られる程度の頻度で登城をしていた。
待つこと数分。馬車の外より夫人を呼ぶ声がした。
「奥方様」
「入りなさい」
夫人の呼びかけに応じ、馬車に入ってきた人物もまた桃色がかったブロンドの女性であったが、その雰囲気は夫人とはかなり違う。
髪を後ろでしばり、剣を帯く姿は武人のそのものであり、高貴さよりも勇猛さがにじみでている。
「町の様子はどうでしたか?」
「は。町を占領していた木々は出現と同様に突如消滅。住民の混乱もひとまず収まりつつあります」
「そうですか。原因はやはり?」
「はい。私が見つけた不審者のようです。あの者が何らかのマジックアイテムを使ったと言うことです」
桃色のブロンドの武人は城内で不審者を見つけ、一太刀を与えていた。
「その者は捕縛されたのですか?」
「いえ、グリフォン隊が追い詰めたものの激しく抵抗したためやむなくライトニングクラウドで……」
「そうですか」
夫人はため息をつく。
ライトニングクラウドを使ったということは、持ち物は全て焼き尽くされているはず。
不審者の背後を探ることはもはや不可能であろう。
「奥方様。マンティコア隊隊長がお礼を申し上げたいと来ていますが」
「礼はあなたが受け取っておきなさい。私は何もしていません」
「しかし……」
「すでに言いましたよ」
桃色のブロンドの武人はもう一度外に出る。
つい昔の癖が出てしまった。すでに引退した身なら、もう少し遠慮をした方がよかったかも知れない。
それでも、この事件は気になった。最低限のことでも調べずにはおられなかったのだ。
夫人は柔らかい椅子に深く体を預け、目を閉じた。
やがて、馬車が動き出す。
夫人はトリステインの未来と自分の娘達、そして馬車の外を歩く武人に思いを馳せた。


全力で空を飛ぶこと数十分。ルイズは学院の近くに着地した。
飛んだまま帰ってしまってはみんなにばれてしまうので、直接学院には飛んで戻れない。ここからは歩きだ。
「ふう……今日は疲れたわ。なんでだろ」
とは言ったものの理由はわかっている。
町中に出現したジュエルシードの大木と戦ったからだ。
でも、それよりその後でキュルケと遭遇した事の方で疲れているような気がするのは何でだろう。
続けてユーノが着地する。いつものように姿をフェレットに変えようとしたときだ。
「あっ!」
ユーノが少し大きな声を上げる。
重大なことに気づいたのだ。
「どうしよたのよ、ユーノ。大きな声で一体」
「ごめん。でも、ルイズ大変だよ」
「どうしたの?」
まだこれ以上何かあるのだろうか。ルイズはうんざりした気分になった。
「馬を町に忘れている」
「あっ!!!!」
ルイズが目と口を大きく開ける。
そういえば、あの騒ぎですっかり忘れていた。
「どうしよう……」
「取りに行かないといけないよ。預けっぱなしはいけないんでしょ?」
「うん……」
疲れがさらにどっと出てきた。意味のない往復は疲れるだけだ。
「それでね、ルイズ。一つ聞きたいことがあるんだ」
「なに?」
「どうして、町に行くときに飛んで行かなかったの?馬よりずっと早いのに」
「!!!!」
喉から飛び出しそうになった驚きの声を抑える。
そういう発想はルイズにはなかった。
系統魔法のフライは長距離移動には適さない。少し長く使っただけで精神力がきれてしまう。
そのため、スクエアメイジであっても少し遠いところ、例えば学院から町に行くときには馬を使う。
こういうこともあって、ルイズには町まで魔法で飛んでいくという発想はなかったのだ。
だが、言われてみればその通り。
今ルイズが使う飛行魔法は系統魔法よりずっと疲れずにすむし、遠くまで早く飛べる。馬を使う必要はなかったのだ。
でも「考えてなかったわ」とはユーノに言いたくない。
主人としての沽券に関わるではないか。
だからルイズはこう答えた。
「そ、それはね。ほら、飛んで行ったらそれを人に見られちゃうかも知れないじゃない。だから馬で行ったのよ」
「あ、そうか。そんなこと考えてなかったよ。すごいよルイズ」
──よかった。ごまかせた。
ユーノの感嘆の声を聞きながらルイズは額ににじみ出た汗を袖で拭き取り、もう一度バリアジャケット姿になる。
早く馬を取りに戻らないと帰りには夜になってしまう。ルイズはユーノと空に飛び上がり、町へ向かって速度を上げた。


その頃。
ルイズの馬は「ルイズが忘れて帰ってしまった」と判断したキュルケが乗って帰っていた。


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