あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

S-O2 星の使い魔-12


 裏通りを抜け、ブルドンネ大通りを歩く一行。
 既に太陽は南に昇り、燦々と力強く昼飯時を知らせている。

「ごめんね~、タバサ。もしかして朝食、食べてなかった?」
「……貴方が急かしたから」
 目の前で手を擦り合わせるキュルケに、感情を交えずに答えるタバサ。
 人前で腹の虫の披露させられれば、女性なら誰だって不機嫌にもなるだろう。

「ホントにごめんね~、お詫びに今日は私が奢るから、ね?」
「……」
 タバサの眼鏡が陽光を受けてキュピーン!と言わんばかりに輝いた。

(……早まった、かしら?)
 親友の思わぬ反応に、ちょっぴり嫌な予感を隠せないキュルケであった。





 はてさて、やって来たのは一軒の洒落た喫茶店。
 何でも、タバサのお勧めらしい。

「えっと……ルイズ、あの看板、何て書いてあるの?」
「『やまとや』ですって。変な名前ね、東方由来かしら?」

 首を捻るルイズとクロードを尻目に、タバサとキュルケはずいずいと店に入っていく。
 取り残される前に二人も慌てて追いかける。

「いらっしゃいませ~♪」
 にこやかに応対するウェイトレス。
 掃除の行き届いた清潔な店内。
 とりあえず店単位でのハズレという線では無さそうだ。
 なかなかどうしてこのタバサ、食に関してはなかなかの目を持っているらしい。

 メニューを開けば、ケーキにパイ、クレープ等のお菓子に、各種パスタといった定番メニュー……と呼ぶには怪しいものも幾つか。
 『ファイナルチャーハン』『戦慄のグラタン』『落涙のリゾット』といった、嫌に物々しいもの。
 『渚の贈り物』『忘れられない思い出』など、何がなにやらさっぱり解らない代物まで。
 果ては、何やらちょいと怪しげな銘柄のワイン(時価)まで置いてあるようだ。

「私はクックベリーパイと紅茶!」
「あんたってホントそれしかないわねぇ……じゃ、私はツナサラダで」
「……ハリケーントースト」
「じゃあ、僕はこの胸のときめきってのを一つ」

 四者四様に注文を済ませる。当然、伝えるのはクロードである。
 注文を受けてカウンターに戻る際、ウェイトレスの唇の端に生暖かい笑みが浮かんでいたように見えたのは気のせいだろうか。

「あんた、結構チャレンジャーなのね……」
「う~ん、理解できないものを理解できないまま放っておくのは性に合わないって言うかね。
 昔から知らない場所があったら、飛び込みたくなる性質なんだ」
「……地雷気質」
 容赦の無さ過ぎる氷点下のツッコミ。
 あのルイズさえもが凍り付いて二の句が告げない。『雪風』ここにあり。
 クロード自身も、自分がここに居る原因がそれであったことに思い当たり、言葉も無く苦笑する。

(こりゃ、本格的に機嫌悪いわねえ……お腹のこと以外に何かあったのかしら)
 一方のキュルケは、小さき友人の吐き出す毒の強さに頬を引き攣らせる。
 普段のタバサならば、何の反応も無く黙殺しているところである。
 こんな風にわざわざ他人に突っかかることなんて無い娘なのに。
 これはもしかして、もしかすると。いや、まさかね。

「そう言えばさ、タバサ」
 きっかけを得たのか、クロードが話を振る。
 あら、ダーリンってばこの子にまで? ご主人様がほっぺ膨らしてるわよ。

「シャルロットっていう名前に心当たり、無いかな?」
 タバサの肩がピクリと動く。
 そのことに、タバサ以上にキュルケが驚いた。
 珍しいわね、この子がこんな反応するなんて。


「何故、そんなことを聞くの?」
「これを届けてくれた人がそう名乗ったんだけど、
 その人がなんだか君に似ていて……いや、似てるってのは少し違うかな。
 何ていうか、通じるものがあるような気がしてさ」

 表情を変えぬまま内心で舌打ちをするタバサ。
 抜かった。この男、他人の事には想像以上に勘が鋭い。
 シルフィ、帰ったらお仕置き。

『そんな~、お姉さま非道いのね~。きゅいきゅい』
「……さあ、知らない」
 鼓膜を介せず届く言葉を軽く黙殺しつつ、表情を変えずに切り返す。

「……ああ、そう」
 クロードもそれ以上は追求することなく、納得したように言葉を切る。
 嘘だな。クロードは直感的にそう判断していた。
 彼女のさっきの反応と言葉、普段の彼女とは差異がありすぎる。
 だが、彼女がこう言うのならば真実がどうあれ、納得するしかあるまい。
 親友であるキュルケならばともかく、クロードが立ち入るべき領域ではない。

 果たしてキュルケの方を見れば、片目を瞑って肩を竦めている。
 こちらもまた、深く詮索するつもりも必要性も感じていないようだ。
 むしろ、ならばこその親友ということか。

「ふうん……ねえ、クロード。この子に似てたって言うけど、どんな人だったの?」
 あんたはもう少し言葉の裏を読めるようになった方が良いと思います。
 物凄い勢いでタバサが氷の視線飛ばしてるのが見えてないんですか。
 クロードとキュルケの心がバロームクロースと言わんばかりに一致した。
 今ならばザ・パワー抜きで想定外のシンメトリカルドッキングが可能な気がする。

「お待たせいたしました~♪」

 結論から先に言うと、彼らがこれ以上この話題を続けることは出来なかった。
 理由を簡潔に述べるとするならば、予想を斜め上に突き抜けた展開がやってきてしまったから、といったところか。



「……」
「……」
「……」
 気まずすぎる沈黙が場を支配する。

 やまとや名物『胸のときめき』。
 トロピカルジュースの上にフルーツやシャーベットが山のように盛り付けられ、
 豪奢なまでの装飾を施された贅沢なデザート。
 問題だったのは、そこにストローが『2本』刺さっていたことである。

「……」
「……」
 クロードが助けを求めるようにタバサに視線を向けるが、
 当のタバサは完全無視を決め込んで黙々とトーストとコーンチップスを口へ運ぶばかり。
 もしかしてコレの正体、知ってて止めなかったんですか。
 僕、何か君を怒らせるようなことしたっけ。

 いや、ここは逆にポジティブに考えるんだ。
 野郎と二人っきりで注文してしまったら、くそみそな大惨事だったじゃないか。

 ……現実逃避しても空しくなるだけなので、この辺でやめとこう。

「ええっと……ど、どうしよう、これ」
「どうしよう、ってもねぇ……」
 流石のルイズも頭を抱えている。
 この展開は完全に予想外だったらしい。

「んじゃ、私がダーリンと一緒にいただくってことで♪」
「待ちなさいよキュルケ! これはクロードが注文した品でしょうが!
 か、勘違いするんじゃないわよ! 使い魔のものは主のもの、主のものは主のものよ!
 つまりコレは、私に属するもの、所有物であって、アンタに分ける分なんてこれっぽっちも無いわ!」
 なんですかそのジャイアニズム。

「……なべスパ」

「あら、もしかして妬いてるのかしら、ルイズ?」
「ば、馬鹿言うなっ! 大体何よ、あんただってそんなもん食って、
 二の腕や腰周りにた~っぷり肉が付いて、そのうち男から見向きもされなくなるんだから!」
「んぐっ! ……ふ、ふんっ、胸に栄養が行ってないあんたに言われる筋合いは無いわね!」
 バーニィ、この状況じゃ呼んでも来ないだろうなあ。

「……はしばみ氷」

「だいたいねえ、泥棒猫のツェルプストーは信用ならないのよっ!!」
「ふん、鼠も獲れないヴァリエールの無能猫に言われる筋合いは無いわねっ!!」
 今日はいい天気だなあ、デルフ。
 あ、そう言えばスリープモードにしてたんだっけ。

 前略オフクロ様、僕は今日も元気にインド人のウリアッ上に飛び込んで大ピチンです。
 くれぐれも土星の矢には気をつけてくださいね──────







「……」
「ん、クロード君? 帰ってきていたのか。随分疲れているようだが、どうしたんだい?」
「コルベールさん……女の子って怖いですね……」
「……クロード君。私が言うのも何だが、
 そういった悟りを開くには、君はまだ若すぎると思うのだが」
「悟り、ですか……そうですねえ……
 今の僕ならドラゴンでもはぐれでもドンと来いって感じですよ、HAHAHA……」
「……」


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