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2000の技を持つ使い魔 EPISODE02 疾走

2000の技を持つ使い魔
 EPISODE02 疾走

 膝をつきつつ、自分の左手の甲に刻まれたクウガの印をしげしげと見ていた雄介のそばにコルベールと呼ばれた男が近づくと、雄介と一緒になってしげしげとクウガの印を詳しく見始めた。
「ふむ…… これはルーンなのか? 見たこともない」
 そう呟くと、今度は帳面を取り出してクウガの印を詳細にスケッチし始めるコルベール。
「……とにかくおめでとう、ミス・ヴァリエール。 コントラクト・サーヴァントはきちんとできたね」
 雄介の印をスケッチし終わると、コルベールはルイズに向かってにこやかに言う。
「あ、はい!」
 サモン・サーヴァントは何十回となく失敗したが、コントラクト・サーヴァントはなんと一発で成功した。
これが偶然なのか、それとも必然性があったのかはともかく、今のルイズにはコントラクト・サーヴァントが一発で決まったことに満足感を感じていた。
「でもさー、あれ平民だからできたんじゃねーの?」
「あり得るねー、ルイズなら」
「そいつが高位の幻獣とかなら、契約すらできなかっただろーぜ」
 そんな小さな満足感をぶちこわすように生徒の内の何人かがはやし立てるのを、ルイズは聞き逃さなかった。
「馬鹿にしないで! 私だってたまには上手くいくわよ!」
 ルイズが彼らにかみついたところで、コルベールが待ったを掛けるように割って入ってきた。
「皆そこまで! 兎に角今日はこれにて解散。教室に戻ろう」
 コルベールが手をパンパンと叩きながら、生徒たちを教室へと戻るよう促す。
 さすがに教師に促されては従わざるを得ないのか、生徒達はそれぞれに呪文を詠唱すると、次々と空へ舞い上がっていく。
 中には飛べないルイズに嘲笑と罵声を浴びせる生徒生徒もいたが、ルイズはそれをガン無視。雄介は「人が空を飛ぶ」というあり得ない事を見せつけられて、口をぱくぱくさせながら、あたりをきょろきょろと見渡していた。
 もちろん、雄介の視界の中に、トランポリンもワイヤーもクレーン車もない。
「うっそ…… 飛んでっちゃったよ」
 コルベールをはじめとした生徒達は、空を浮遊しつつ遠くにある城のような石造りの建物へと飛んでいった。
「……行くわよ、付いて来なさい」
 空を飛ぶ生徒たちを見つめ、悔しそうに唇をかみ締めていたルイズが雄介に言うと、一人だけカツカツと道なき草原の中を歩きはじめるの見て、雄介が待ったをかける。
「ちょ、ちょっと、えーと…… ルイズちゃんでいいのかな? 行くってどこに?」
 そんな雄介の言葉に、ルイズは心底がっくり来たのか、ジト目で雄介のことを見ながら肩を落としつつ雄介に向かって大声で怒鳴り始めた。
「ご主人様をちゃん付けするなあああああ!! あーもお、何だってっこんなのがあたしの使い魔になるんだろ.もう気分へにゃへにゃよ!」
 ルイズにしてみれば、ペガサスだのユニコーンだのワイヴァーンのような美しくて強力な使い魔が召喚されることを望んでいたにもかかわらず、呼び出されて出てきたものといえば、どこか呆けたような感じのする若い平民男子と来た日には、夢も希望も無残に打ち砕かれてへこみたくもなるものだ。
 さらに、何でこの目の前の使い魔は、未だにのほほんとご主人様の事を主人とも認識していないのだろうか。
「あー、あのさ。俺、冒険の最中なんだけど…… イヤもうスッゴイ物見せてもらいましたホント。魔法なんてモノがホントにあるなんて知らなかったなもう」
 あまつさえ、「冒険の途中にいいもの見せてもらいました」等と抜かしやがりますかこの平民? と今度は怒りがふつふつとルイズの腹の底から湧き起こる。
 だが、そんなことを思うご主人様をさておき、使い魔となった雄介は未だに無口なルイズを見やり、致命的な一言を言ってしまった。
「……もう行ってもいいかな?」
 ぶちっ、とルイズの頭のどこかで、スイッチがオンになったような、もしくは何かのキレるような音がした。
「だからっ、あんたは、わたしがっ、召喚した使い魔なのっ! あたしの使い魔だから、あたしと一緒に学校に戻るの! 判った!?」
 全身でぜいぜいと息を切らして声を張り上げるルイズの言葉が、雄介の脳内に十分浸透して驚愕の声を上げるまでに、たっぷり2呼吸は必要だった。
「……えええええええええ!?」


 使い魔になったいきさつを知らない雄介に、ルイズがかいつまんで状況を説明してやると、しばらく困った顔をしていた雄介だったが、すぐ吹っ切れたのか「まいっか」の一言で開き直ってしまった。
 その暢気さに呆れたルイズが、踵を返してそのまま徒歩で帰ろうとするのを引き止めたのは雄介だった。
「ちょっとまって。あの城みたいなところに行くって言うなら。歩くよりもこれに乗っていくほうがいい」
「何よ? ホントにそんな物が速いって言うの? その、車輪が二つついた銀色の馬みたいなものが?」
 呼び止められたルイズが胡散臭げに雄介のバイク「ビートチェイサー2000」を見ながら言うのを、雄介は気にも止めずにビートチェイサーのハンドルにあるスターターを押して、その心臓である無公害イオンエンジン「プレスト」を始動させる。
 すると、パルンッ! と軽く甲高い爆発音と共に、プレストに息吹が吹き返る。
「わあっ!? 何? 何なの今の爆発音?」
 雄介にとっては心強く感じるプレストのエンジン音も、バイクを見るのも乗るのもまったく初めてのルイズにとっては、銀色の恐怖の塊でしかない。
 そんなルイズを笑顔で手招きする雄介。右手のアクセルを軽く煽って、エンジンを操っているのは雄介である事を証明しながら、ビートチェイサーにくくりつけていたザックの口をあけて、中からもう一つ小ぶりなハーフヘルメットを取り出してルイズに言う。
「大丈夫。噛み付いたりなんかしないから」
 雄介に大丈夫と言われて半信半疑だったルイズだったが、雄介がアクセルを煽る事でエンジン音が変わることに気がつくと、雄介が操っているんだという事に気がつく。
 バルン、バルルンと雄介がアクセルを吹き鳴らすたびに、初めて聞くエンジンの音と離れていても感じてくる力強さを体で感じ取っていた。
「ホント? これ、何で動いているの? 魔法?」
 わずかながらにルイズの中で好奇心が沸き起こる。どう考えても、魔法で動かしてるとしか思えなかったが。
「魔法じゃないよ。ウーン、なんて説明すればいいのかな」
 しばらく考えていた雄介が、ぽんと手を打って言う。
「まいっか。それもそのうち、おいおいね。これなら獣よりも速く、空を飛ぶくらいに早く何処にでも行けるよ」
 軽く言う雄介の言葉に、ルイズは疑いのまなざしを向けるが、気にせずビートチェイサーに跨った雄介がルイズに言う。
「じゃあ、行こうか。あ、そのヘルメットかぶって、紐は顎の下でしめてね」
 言われたルイズがヘルメットをかぶったはいいが、顎紐をしめる事が判らないルイズがおたおたするのを見て、見かねた雄介がビートチェイサーを降りると、自らの手で、ルイズの顎紐をしめてやる。
「こんなもの、かぶった事なんかないからしょうがないか」
 顎紐を金具に通して、遊びがないようにしっかりとしめる雄介。紐を締めながら遊びがないかを確認し、ルイズも嫌がったり痛がったりしている様子でもないのを認めると、雄介はサムズアップしながら、またビートチェイサー跨りなおす。
「ん、これでいいの?」
 顎紐を締めたルイズが、雄介に訊く。
「うん、それじゃシートの後ろのほうに跨って……… 手をしっかり俺の腰に回して」
 ルイズは雄介の言うがままに、ビートチェイサーのシートに横座りして、前に座る雄介の腰のあたりに両手を回す。
「じゃ、いくよ? 手は離さないでね」
 雄介はルイズが腰に手を回していることを確認すると、ゆっくりとビートチェイサーを走らせ始めた。


 それまで馬しか走った事のない草原を、二つの輪を持った銀色の鉄の馬のような乗り物「ビートチェイサー2000」に跨って、ルイズと雄介は疾走する。
「こ、これ、すごい。馬よりも早い! 何でこんなに速く走れるの!?」
 雄介とは違う形の小さな兜を頭にかぶったルイズが、風切り音に負けないように大声出して雄介に聞く。
「うーん、詳しく説明すると長くなるから。それよりまっすぐで良いんだよね?」
 雄介はあえてルイズの質問には答えず、ビートチェイサーの行き先が間違えていないか聞き返すと、ルイズはこくこくと頷いた。
 雄介にとっては軽く流している程度の速度でも、ルイズにとってはそれまでとはまったく違う視点と感じる風は、驚き以上のものを感じていた。
 こんな異形なものが、獣が大地を疾走するよりも速く、空を飛ぶ鳥のように早くこの大地をも疾走できるという雄介の話も、嘘ではなく本当の事なんだと直感的に理解していた。
「すごぉ~い! すごいすごい! フライの呪文よりも速いっ!!」
 ルイズの視線の先には、先に飛んでいった生徒達の殿を目で見る事が出来たのだから。
「もっと早く進めないの!?」
 ルイズの言葉に、雄介は一瞬躊躇して聞き返す。
「進めるけど、二人乗りじゃそんなに速度は出せないよ!?」
 雄介の大声に負けないくらいの勢いで、ルイズは言ってのけた。
「かまわないからぶっ飛ばして!」
 そして、この使い魔がすごい事をみんなに見せ付けてやるんだ。ルイズはそう思っていた。
「じゃあ、手をしっかり俺の腰に回して。しがみつくように!」
 雄介が叫ぶと、ルイズが雄介の腰に両腕を回してしっかりと掴んだのを確認して、アクセルを吹かしてギアをもう1段上げる。
「うひゃあああああ!??」
 たちまちのうちに、スピードを上げて草原の上を疾駆する弾丸と化すビートチェイサー。
 ルイズは、しっかりと両腕を掴んでいなければ放されてしまいそうなスピードで、まだゆっくりと空を飛んでいく生徒たちを追い越し、学園へと向かうのであった。

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