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とある魔術の使い魔と主-47


 幻想殺し。それは異能の力であれば、三十メートル級の巨大ゴーレムであろうが、風のユビキタスであろうが、それこそ始祖ブリミルでさえも打ち消す事ができる力。
 それには例外がない。そう、たとえ相手が不死身という力を持っていたとしても、『アンドバリ』の指輪が『異能の力』である限り、当麻にはその効果を打ち消す事ができる。
「オ、――――」
 今回はアンリエッタをウェールの手から救う事、つまりは敵を逃がしてはならない。
 幻想殺しの範囲は右手だけである。それ以外は普通の高校生であるし、ケンカだって相手が一人でないと勝てる自信はない。
 しかし、
 それでも当麻は駆ける。
 この戦いに逃げは存在しない。相手の目的は逃亡、こちらが隙を見せればすぐに後ろを振り返り逃げ出すだろう。

 だからそれを防ぐ。

「――――、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
 それに、今回は一人ではない。
 ルイズが、タバサがキュルケが味方となって戦っている。
 これほど頼りになるものはそうそうない。
 こちらにくる魔法を右手で処理できないのは、事情を知っている三人がうまく迎撃をしてくれる。
 ゆえに当麻は安心して突っ込む事が、全速力で走る事ができる。
 敵のメイジとの距離を零にした瞬間、己の拳をさらに強く握り、全力の一撃が放たれる。
 ゴンッ!! という鈍い音が響き、メイジは外部からの運動エネルギーに耐え切れず、吹っ飛ばされた。
 魔法よりも、剣よりも威力の低い拳。しかし、敵は倒れたまま起き上がる様子はない。
 草むらのせいで見えないが、もともとは死体である。おそらく効果が切れて本来のあるべき姿に戻ったのだろう。
 ウェールズを筆頭に、予想外の事態に驚愕の表情を浮かべる。こちらの魔法を何も使わず打ち消して、不死身と言われる自分達が拳一つで倒れるなど不可能だ。
 ならば、と。ウェールズの一言によって全員の魔法の対象が変わる。
 不可解な能力を持っている人間は後回しにして、まずは他の敵だ。
 メイジ達は水、火、雷、風。様々な属性をルイズ達に目がけて放った。こちらの数のほうがまだ多い。向こうの魔法の威力を上げない限り、こちらが打ち勝つだろう。
 しかし、
 それが異能の力である限り、無敵な能力を持つ少年の横を通すわけにはいかない。
 なにがあっても、だ。
「させねえよ!!」

 まるで予測していたかのごとく、当麻は直線運動の魔法の行き先に右手を真横に突き出していた。数々の魔法とルイズ達の間に割って入った少年の拳が、そのほとんどを打ち消す。残った魔法を、何の焦りもなくタバサが迎撃した。
 魔法のクラスをあげると、そのほとんどが単発の強力なタイプになる。つまり、点より面のタイプを得意とする当麻にとって、それは嬉しい誤算であった。
 幻想殺しという存在を知らない彼らにとって、その少年は脅威の一言である。未知なる武器を持った敵と戦うようなものであろう。
 範囲は右手だけとか、それは異能の力しか打ち消せないとか、本人自身は普通の人間であるといった弱点は存在する。しかし、ウェールズ達にそのような考えは浮かばない。
 だが、引くわけにはいかなかった。
 こちらには馬もなにもない。対する相手は全員を運べる竜を一頭所持している。ゆえに、逃げ切る事など不可能であった。
 引く事ができない戦い、相手を倒さなければならない戦い。
 その重圧が判断を鈍くする。
 それが、
 いつだって絶体絶命とも呼べる戦いに身を投じて、生き残る少年との、
いつだって己の右手を信じて、自分よりも圧倒的な強さを誇る敵に勝利してきた少年との、
差であった。

 ドンッ! と再び自由の身となった当麻は駆け出す。
 ウェールズらは一カ所に固まるのはまずいと判断したのか、ルイズ達を囲むように散開した。
 その間にも、当麻は自分からもっとも近いメイジに突っ込んでいく。何人かが迎撃するために魔法を放つが、当麻は右手を突き出しこれに対処する。
 敵のメイジが魔法や剣で倒せないのならば、当麻の右手で全員に触れなければならない。ゆえにスタミナ切れを防ぐため長期戦は避けたかった。
「ォおおああ!!」
 雄叫びをあげながら、当麻は先と同じように拳を振り上げる。
 同時、メイジの前に水でできた盾が出現した。おそらくアンリエッタが放ったものだろう。
 ウェールズ達も、がら空きである当麻の背中をチャンスと見て援護をしたいが、ルイズ達がさせない。
 実をいうと、ウェールズ達は不死ではない。幻想殺しという天敵も存在するが、炎の魔法にも弱いのだ。
 そして、炎を使うメイジもいる。ゆえに、彼女らの存在を無視するわけにはいかないのだ。
 だからそちらへと注意を払わなければならない。
 だから少年はこのフィールドを自由に走り回る事ができる。


 本来ならばかなりの強度を誇るであろう水の盾を一瞬で破壊して、止まる事のない拳はメイジへと突き刺さった。


 一人、また一人と『アンドバリ』の指輪の効力を打ち消されて死体へと変わっていった。
 相性が悪すぎた。魔法しか使えないメイジにとって、初めて対峙する幻想殺しは反則という言葉が似合う。
 しかし、いくらそう嘆いた所で状況が変わるわけではない。当麻は体力の消費を考えずに動き回った結果、残す敵はウェールズのみとなった。
「ウェールズさま……」
 アンリエッタが不安げな表情で覗き込んだのに対して、ウェールズは笑みを浮かべて頭を撫でる。
 まだピンチではないかのように、
 アンリエッタに不安を与えないかのように、それは優しかった。
「大丈夫、きみが守ってくれるのだからぼくは死なないよ」
 はい、と小さくアンリエッタは頷く。
(ちっ……)
 やはりというべきか、たとえそれが偽りの愛だとしても、この光景に手を出すのは若干抵抗がある。
 もしかしたら自分が間違っているのか? という錯覚を覚えるが、頭をブンブン! と振ってどこかへと放り投げる。
 そんな事を考えてはならない。自分の信じる道をただ歩き続けるのみ。
 今までも、そしてこれからも……。
 当麻は歯を食いしばり、覚悟を決める。ギュウッと拳を握り、最後の敵に向かって駆け出した。

 瞬間、アンリエッタが突然ウェールズの前に立ち塞がった。
 全員が驚きの表情へと変える。
「姫さま! もう諦めてください!」
「わたしは諦めない! 絶対にわたしの幻想は破壊させないんだから!」
 彼女の目の前から魔法が放たれる。が、それはさきほどから何回も繰り返す行為であった。
 当麻が右手を突き出し打ち消す。その間にも両者間の距離は縮まっていく。目測でもう十メートルはきっている。後一秒足らずで当麻の射程距離内に入り、全てが終わる。
 はずだった。

「ずいぶん暴れたようだが、なるほど、やはり無理だったか」

 轟ッ! と暴風が真横から当麻に襲いかかった。
「な……ッ!?」
 奇襲がゆえ、当然の如く右手で対処できなかった当麻の体が吹き飛ぶ。
 進行方向を強制的に真横へと変更され、その勢いは木にドゴッ! と強打する事で止まった。
「がっ……は……ッ!」
 肺の中に貯めた酸素が全部吐き出される。背中がびりびりッ、と麻痺したかのように痛みだす。

 しかし、倒れはしない。自分をこんなにした敵を、新たな敵を確認するためである。
見えてくる二つの人影。現れたのは、
「ワルド!?」
「フーケ!?」
 ルイズとキュルケが同時に声を出す。
 その返事として、二人は杖を振るった。当麻には風の槌が、ルイズ達には土でできた矢が襲いかかる。
「くそッ!」
「…………」
 当麻は右手を突き出し、タバサは空気の壁を作り、これを迎撃する。
それは新たな敵の登場であった。
あまり歓迎されない、敵である。


 ワルドは止まらなかった。ルイズ達と分断された当麻との距離を縮めながら、自分の杖に風の刃を纏わせる。
「……ッ!」
 身構えた時には既に目と鼻の先にまで詰まれた。
 ヒュッ、と横一閃。
 当麻の体を二つに別ける事ができる杖が、ワルドによって横に薙ぎ払われる。
(……いけるか!?)
 しかし、当麻は動こうとはしなかった。何かしらのフェイントがあれば別だが、直線的な動きであるならば当麻は反応できる。
 ワルドの杖の動きを予測していた当麻は、迫り来る前に全力で身を屈めた。
 一瞬の出来事であると象徴するかのように、斬られた当麻の髪の毛が宙に舞う。
 生きた心地がしないのか、心臓が止まっているように感じられる。だが、そう感じている時点で自分はまだ動く事ができるのだ。
 ワルドが次の動作に移る前に、当麻は身を低くしたまま拳を握り、前へと踏み込む。
「お、ォォォおおおおおおおお!!」
 叫び、拳を振るう。ワルドはまだこちらの攻撃に対応できる余裕はないはず。
 しかし、

 同時、ワルドが後ろへ逃げる意味をこめて空へと飛んだ。

「なっ……!?」
 当麻の拳は空気を裂くだけだった。肝心のワルドは、余裕の表情を浮かべてふわふわと浮いている。
 『フライ』、それは詠唱者に羽を与えたかのように空を飛び回る事ができる魔法だ。
 もちろん当麻には使える事ができないため、今から攻めに転ずるのは不可能といえるであろう。
「貴様のそれは確かに強い。だが、それゆえ弱点も豊富だ」
 こんな風になと、ある程度距離を置いて地面に降り立ったワルドは再び魔法を放つ。
 しかし、目標は当麻ではない。
 それは、
「ッ!?」
 魔法の軌道をよんだのか、またはワルドの狙いに気付いたのか、当麻は足に全ての力を注ぎ、真横に転がった。

 瞬間、地面に激突した魔法は無数の小石を作りだし、当麻のいた位置にシャワーのように降り注いだ。

 そう、異能の力ならばどんなのでも打ち消す事ができる右手。
 しかし、ただの石となればただの右手とかす。
(あいつ……こっちの能力を完璧に把握してやがる!?)
 一方のワルドは、当麻の行動に満足したのか不敵な笑みを浮かべる。
「そうこなくてはな幻想殺し! 貴様が負ければルイズ達は死ぬだろう! さあ、その幻想を、俺の幻想を殺してみろ!」
 それは挑戦状。
 三回目にして、ワルドはようやく当麻という敵を前にして自信を持てた。幻想殺しという能力を知った今、立場は逆転したのだ。
 当麻はその言葉をとある部分以外聞き流した。逆にいうと、他のを聞き流してしまう程大事な内容であった。
 すなわち、自分が負けたらルイズ達が死ぬことを、だ。

「……、やらせるかよ」

 確かに、自分が負けたらこの戦いは敗北となる。いや、もしかしたら向こうの三人も負けるかもしれない。
 勝利条件は、限りなく難しい。
 自分が負けても、三人が負けても敗北。勝つためにはどちらかが敗北する前に勝利する事である。
 目の前にいる敵がどれだけ強かろうと、当麻は勝たなければならない。それも、確実な勝利を手に入れるためにはできるだけ早く倒さなければならない。
 先程まで攻めていたのに、気付けばもう攻め込められていた。
 それを理解して、当麻は言う。
「俺はウェールズと約束したんだ……アンリエッタを守るって。だからあいつをこのまま不幸な目にあわせてたまるかってんだ」
 ぽつぽつと、雨が降ってきた。それは瞬く間に本降りへと変わる。
 当麻は、ざーざーと降る音をかきけすかのように叫んだ。
 たとえどれだけ不利な状況下でも、決して諦める事のない少年だから叫ぶ。
「ふざけんじゃねえぞ。テメエがなに考えてるかはしらねえが、受けて立ってやろうじゃねえか!!」

「あなたたちは……?」
「心配しなくていいよ。あたしたちはウェールズの味方。つまりはあんたの味方よ」
「あぁ、彼らとは途中で合流する予定だったのさ」
 対するフーケは、アンリエッタとウェールズから離れようとはしなかった。
 第三者の介入に、アンリエッタは不安を覚えたが、ウェールズの言葉もあってか信じる事にしたようだ。
もっとも、援軍など聞かされていないウェールズも本当は驚きたいのだが、そんな事をしている暇はない。
 三人は無言で頷きあい、視線を一点に集中させる。
 その視線の先は……、ルイズ達であった。今から戦うべき相手、今から倒すべき相手を目の前にして、決意をより強固にした。

「まさかフーケとワルドがくるなんて……」
「ダーリンをワルドと戦わせるのは不利だわ。さっさと倒してこっちが援護しないと」
 相手はスクエアクラスのメイジだ。どちらが優位な立場であるかは考えるまでもない。
 ならば、自分達が倒さなければこの戦いにはおそらく勝てないだろう。
 先手必勝と言わんばかしに、キュルケは魔法を放った。
 轟ッ! と炎の球が周囲の空気を歪ませながら三人に迫ってくる。
 だが、アンリエッタの放つ水の盾にそれは阻まれる。水対炎。あっという間に勢いは衰えていき、ジュッという音とともに消え去る。
 直後、

 地面から槍がズドンッ!! と射出されるのと、
 タバサが空気中の水を凝結させて作った凍りの矢を飛ばしたのは、同時であった。

 ガキィン! と二つの魔法はぶつかり合い相殺される。
「へぇ、やっぱりあんたは反応できるんだ……」
 フーケが感心する隣で、ウェールズが風でできた槌を放つ。
 タバサは返事をせず、無言のままだ。
「まぁあんた達とやるのはこれで三度目もなんだし」
慌ててルイズが目の前の空間を爆発させて、それを吹き飛ばす。
「ゴーレムしか操れないと思ったら大間違いよ? あんたたちにはこれ以上負けられないのよ!」
本降りとなる前兆であるかのように、ぽつぽつと雨が降ってきた。




始まった。
全ての決着を着けるために集まった者達の戦いが、今、始まった。


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