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『使い魔くん千年王国』 第十六章 『東方』の博士

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オールド・オスマンは真剣な面持ちで、コルベールにも学院長室から退出させた。
そして松下に『古い友人』について、また『占い杖』の出所について語り始めた…。

「少々長話になる。あれは、もう100年以上も昔の話になるかのう…… 。
 部下たちを率いてある森を調査していたわしは、いつの間にか深い森の奥へと、
 まるで何かに誘われるように迷い込んでいった。そこで『悪魔』と名乗る怪物と遭遇したのじゃ…」


そやつは大柄な人間の体にフクロウの頭と翼を備え、黒い大きな狼に跨っていた。
そして燃え盛る長剣を振り回しながら、狂ったような哄笑を挙げて襲い掛かってきた。
すると奴の笑い声を聞いた部下たちは、いきなり同士討ちを始めよった。たちまち全滅じゃ。
わしも奴の剣技と魔法に圧倒され、命を落とすところじゃった……。

そこを救ってくれたのは件の友人じゃ。
彼はすでに相当年老いておった。じゃが彼が『笛』を吹き出すと『悪魔』は苦しみ始め、
彼の取り出した『真鍮の壷』に吸い込まれてしまった。

「この悪魔は、『不和の侯爵』アンドラス。人々の間に悪意と殺意の種を播き、それを煽り立てて楽しみとする。
 争いや流血沙汰が無上の喜びという困った奴じゃ。
 危ないところでしたな、ご老人」

彼は『ヨハン・ファウスト』と名乗った。わしがメイジだと知ると、
ミスタ・マツシタと同じく『東方』の悪魔使いだと告げた…。


彼…『ヨハン・ファウスト』は、こう語った。
「私は昔、強大な『悪魔』を召喚するのに成功し、その力で栄華を極めました。
 じゃが、最期に悪魔は私の全てを奪い去ったのです。
 私は死人も同然となり、社会から追放され、『悪魔』への復讐の念というよりは『神』への懺悔、
 そして悪魔のせいで腐ってしまった世界の『改革』への執念に凝り固まりました。
 …そして、ある予言を知るに至ったのです」

わしらは友人となり、互いに知識を交換し合った。彼は実に博識じゃった。
「…ああ、人生は儚い。何百年も生きていると足も腰も言うことをきかず、
 全ての喜びから見放されてしまうのです。
 ここまで意志の力で生きてきましたのじゃ。しかしわしはもう疲れ切っている」
「あなたをそうまで生きながらえさせる、気力とはいったいなんです」
「人類のために私の『秘伝』をある人に教えようと待っていたのですよ。
 それはそれは全く長い年月でした」

「『秘伝』とは?」
「わしが前半生を費やした、『悪魔を召喚する術』です。
 これを意のままに操る者は、世界を手に入れたも同然ですが、悪い方、つまり私のように、
 単なる『私利私欲』に使われると世界は破滅です」
「ふうむ」
「いつも馬鹿を見るのは善良な貧乏人です。このままではいつまでも国々は争い、金持ちばかりが幸福に暮らし、
 貧乏人は惨めな一生を送らなければならない」
「………」
「今ここに、頭脳のずば抜けた一人の人が現れて、強大な力で『地上の天国』、
 人類が平等に幸福を味わえる『理想郷』を実現するとすればどうでしょう。
 その人こそ、人類が長年待ちに待った『東方の神童』なのです」

彼は熱に浮かされたような口調で続けた…。
「『現世は夢になり、夢は現世になる』! それを成し遂げるのが『メシア(救世主)』です!
 さまざまな予言にはそう記されています。私は千年かかっても待ち続けますよ」


「あの、さっき『悪魔』を封じた『笛と壷』は何なのでしょう」
「ああ、これは偉大なる『ソロモンの笛』と『ソロモンの壷』です。
 3000年も前に、悪魔どもを使役して栄華を極めた、『東方』のソロモン王の秘宝ですよ。
 この笛の音には悪魔は逆らえず、壷には多くの悪魔を封印できます」
「ソロモン王の秘宝……」
「だが、悪魔の入った壷は危ないし、この『ソロモンの笛』は差し上げられない。
 これは『東方の神童』が持つべきものなのです」

秘宝を欲しがったわけではないが、彼はそういうと背中にさしていた『杖』を一本くれた。
「これは、昔遺跡を調べた時手に入れた『占い杖』という物です。
 たいした物でもないが、もしあなたの近くに『東方の神童』が現れたら渡して下さい。
 彼の『道しるべ』になることでしょう」
「いや、そんな」
「ハハハハ、私が持っていても墓場に持ってゆくようなものですよ。
 おや、話しているうちに森を抜けましたな。名残惜しいがここらで別れるとしましょう。
 ひと雨きそうですなア。では……」


「……以上が、『古い友人』と『占い杖』の話じゃ。
 その後あの森を調べたが、彼と再会することは叶わなんだ。
 よもや本当に『東方の神童』とやらが現れるとは、正直思っておらんかったが…」
オールド・オスマンはコップの水を飲み、松下の反応を見る。
「…その『ヨハン・ファウスト博士』は、ぼくの師匠ともいうべき人物です。
 博士の夢はぼくの夢でもあり、全ての人間の夢でもある」
「ほほう」
「ぼくは彼の死後、この地に召喚された。
 運命がこの『占い杖』と引き合わせてくれたのでしょう…」

オスマンは満足げにうなずくと、松下に告げる。
「もう一つ、きみの『右手』に刻まれたルーンは『ヴィンダールヴ』のルーンという。
 使い魔でも幻獣でも、あらゆる獣を自在に操る力がある。
 なぜそれがきみに刻まれたかについては、こちらで調査中じゃ」
「なるほど。まあ便利な力だから、せいぜい利用させてもらいますよ」

「さあ、話はここまでじゃ。今宵は『フリッグの舞踏会』という晩餐会。
 『東方』出身のきみに爵位は挙げられなかったが、きみも立派なフーケ捕獲の功労者じゃ。
 存分に楽しむがよろしかろう。……それと、『布教活動』は学院内では自重してもらえんかのう。
 王宮や異端審問官に目をつけられては、揉み消せない大事になりかねん」
「わかりました。あなたもセクシャル・ハラスメントを自重して下さい、オールド・オスマン」
オスマンは微苦笑する。後任の有能な美人秘書も探さなくてはなるまい。
もちろんセクハラオッケーの…。


その晩。
『アルヴィーズの食堂』の上の階は、大きなホールになっており、『フリッグの舞踏会』はそこで行われていた。
ここぞとばかり着飾った生徒や教師が、豪華な料理が盛られたテーブルの周りで歓談している。
貴族の晩餐会に相応しい、とても華やかな会場だ。

松下はこの場にそぐうよう多少の『おめかし』をされたが、『占い杖』を抱えて、
テラスで双月を眺めながら物思いに耽っている。
(ファウスト博士も、この異世界『ハルケギニア』を訪れたことがあったのか…
 まるでキリストの先払いをした『洗礼者ヨハネ』、メシアの先払いをする『エリヤ』だな)

「お疲れですか? 『我らのメシア』」
シエスタが声をかけた。だが彼女は歓談し舞踏する『貴族』ではなく、
その舞台と食卓をセットする『平民』、使用人にすぎない。
「今日は厨房の皆も頑張っていますから、ゆっくり楽しんでいって下さいませ」
そう言ってシエスタは微笑み、ワイングラスと小皿を渡してテーブルに戻っていった。

華麗なドレスに身を包んだキュルケが、いつもの如くたくさんの男に囲まれて談笑している。
少々猥談が多いが、青年貴族の宴席はそんなものだ。
タバサは黒いパーティードレスを着ているが、歓談にも参加せず、
一心不乱にテーブルの上の大量の料理と格闘している。

(がーーーっ ガツガツガツガツ むしゃむしゃ もぐもぐ モリモリ グビグビ)
すごい勢いで『水木的擬音』がする。あの体にどれだけでかい胃袋が入っているのか。
スタイルはちっとも変わらないのが不思議だ。


ギーシュはナンパに励んでモンモランシーに足を踏みにじられ、
ケティとかいう1年の娘にビビビビビンとビンタを食らっていた。
各々がパーティを満喫する中、音楽が鳴り響き、ようやく主役の最後の一人が入場する。
「ヴァリエール公爵が息女、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢の、おな~~り~~!」

呼び出しの衛士が到着を告げる。
『馬子にも衣装』というのか、桃色の髪をポニーテールにし、ドレスと宝飾品に身を包んだルイズは、
黙っていればなかなか魅力的だ。
我も我もと貴族たちがダンスの相手を申し込むが、ルイズは真っ直ぐテラスに向かってきた。
「こらマツシタ! ぼさっとしてないで、貴族のみなさんに挨拶でもなさい」
「挨拶など、もう必要なかろう。ぼくが挨拶したら、『信者』以外はみんな逃げて行ったぞ」
「だから、もう少しソフトに人と付き合いなさいよ…ほら、ダンスが始まるわ。
 あんたはタバサとでも踊ってあげたら?」

タバサは、ダンスなど目もくれずに料理を貪り食っている。
「彼女は料理たちと踊っているようだ。ぼくはダンスなど知らない。きみこそ、お相手を見つけたまえ」
「じゃ、じゃあ、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、
 お誘いしてもよろしいかしら? 『ミスタ・マツシタ』」

松下はすごく変な顔をしたが、せっかくのお誘いなので『御主人様』のお相手を務めた。
跳ね回る『占い杖』が途中でダンスに加わったので、会場は一時騒然としたという。

(つづく)

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