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ソーサリー・ゼロ-18

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一〇〇

 君は手にとった長剣をしげしげと眺める。
 いわゆる片手半剣に分類される型の武器であり、柄を含めた全長は五フィート近いが、刀身が細いためか意外なほど軽い。
 いままで使ってきた剣にくらべてやや大きすぎるきらいはあるが、偉大な魔法使いからの贈り物なのだから、ただの武器ではあるまいと考える。
 君は剣を鞘から抜きつつ、これにはなにか魔法の力が込められているのかとオスマンに尋ねるが、謎めいた声に語りかけられて手を止める。
「あったりめえよ! おい、若ぇの。この俺様を、そんじょそこいらのなまくらどもと一緒にしてもらっちゃあ困らぁ!」
 低いが威勢のいい、男の声だ。
 あたりを見回すが、苦笑する老人以外は何者も見えない。
「なにを穴掘り鼠みてぇに、きょろきょろしてやがんでぇ! 俺ぁここだ、ここ!」
 声の振動は、剣を持った君の手元から伝わってくる。
 剣そのものが話しかけているのだ!
「≪インテリジェンスソード≫じゃ。太古のメイジたちが創り出した、自らの意思を持つ魔剣よ」とオスマン言う。
 無機物に意思をもたせ、口を利けるようにする魔法そのものは、≪旧世界≫にも存在する。
 君自身、カレーの北門では門扉そのものから警告を受けたことがあるのだ。
 しかし、武器を喋らせてどのような利点があるのだろうか?
 あらためてオスマンに、喋る以外に特殊な能力はないのかと尋ねるが、
「わからん」と即答されてしまう。

 オスマンによれば、数年前に街の武器屋を冷やかしたときに見つけたものらしい。
 珍しいうえに非常に安かったため購入したのだが、このとおり口が悪く、ほうっておくと始終わめき散らすそうだ。
 記録にも残されていないような古代の出来事を知っているのではと期待し、何度か話につきあってはみたものの、昔のことはなにもかも忘れてしまったと言うばかり。
 ほんの数日でその≪インテリジェンスソード≫に飽きたオスマンは、剣を鞘に収めて黙らせると部屋の片隅に転がし、それきり埃をかぶるにまかせておいたのだという。

「まったく、身勝手なじじいだぜ! おい、若ぇの! この耄碌じじいにゃ、俺の価値なんてわかりゃあしねんだ。宝の持ち腐れ、猫にエキュー金貨って……」と剣がまくしたてるのを途中でさえぎり、
喋る以外になにかできることはないのかと尋ねる。
「あー、その……なにかできたはずなんだが……わりぃ、思い出せねぇんだ」と剣は言う。
 錆の目立つ刀身から響くその声は、いくらか元気を失っているように聞こえる。
「とにかくだな! そう言うおめえこそ、どんだけの腕前が……」
 話をそらそうとした剣が、何かを感じ取ったかのように沈黙する。
「……ふうん。おめえ、相当な修羅場くぐってきてんな? へへっ、驚いたか? 俺くらいの業物になりゃ、柄を握られただけでその人間がどこでどんだけ、
どんなふうに剣を使ってきたかがわかんのさ。気に入ったぞ、若ぇの。俺を使え。損はさせねえ」
 君がカーカバードで刃の下をかいくぐってきたことを見抜くとは、たしかにこの剣には、自身が知りもしない神秘的な力が秘められているのかもしれない。 
 しかし、埃をかぶることにうんざりした剣が、自分を売り込むために適当なことを言っているだけだという可能性もある。
 君はこの剣をオスマンから譲りうけるか(二八六へ)?
 それとも、他の品物を選びなおすか(一九七へ)?



二八六

 君がこの喋る長剣を貰い受けると言うと、オスマンは
「なかなか似合いのふたり……いや、ひとりと一振りか」と笑って目を細める。
「それではデルフリンガー、達者でな」とオスマンに声をかけられた剣――デルフリンガーという銘らしい――は
「あばよ、老いぼれ! ようやっと解放されて、せいせいすらぁ!」と罵声で応える。
 それを聞くと老人はつかつかと歩み寄り、デルフリンガーとその鞘を手にして、君に語りかける。
「あまりにやかましいときは、鞘に収めよ。そうすれば、貝のように静かになりおる。これこのように!」
 オスマンの言葉どおり、鞘に収まったデルフリンガーは普通の剣と同様、なにも言わなくなる。
「それと、君を故郷に帰す方法じゃが、私なり調べてみるつもりじゃ。二つの世界をつなぐ術を知る者がおらぬか、魔法を研究しておる友人たちにも訊いてみるでな」

 君は学院長に礼を述べるとデルフリンガーを片手に退室し、寄宿舎に向かう。一六へ。



一六

 君が寄宿舎の部屋にデルフリンガーを持ち込みルイズに紹介した際、ひと騒動こそあったが(君はデルフリンガーの口の悪さを忘れていた)、その翌日、≪ユルの曜日≫はなんの事件もなく平穏無事に過ぎる。
 技術点、体力点、強運点を最初の値に戻せ。
 しかし、いつ七大蛇が復讐を果たしに来るかもしれぬと警戒する君は、いかなる時も剣と背嚢を手放さず、暇ができれば、国境の物見のごとく空を睨み続ける。
 あの闘いに加わったルイズ、キュルケ、タバサの三人も七大蛇の復讐の標的となっていることだろう。
 彼女たちのことも、心配もしなければならない。
 あいかわらず我儘なルイズ、奔放なキュルケ、寡黙なタバサ、シエスタ、ギーシュ、マルトー、コルベール、オスマン。
 過去の危険だが気ままな一人旅とは違い、ここには守るべき者たち、友人たちが居る。
 気苦労の多い難儀な状況ではあるが、君はそれに対して、喜びを感じているところもあるのだ。
 この世界とそこに住まう人々を、冥府の底からよみがえった大蛇どもが喰い荒らそうとしているのならば、それを阻止しなければならぬという
想いが君のなかで強まる。
 だが、こちらから打って出ようにも怪物たちの居場所は杳として知れず、学院の人々に訊く限り、空飛ぶ大蛇を目撃したという情報もないようだ。
 いまの君にできることは、ルイズの≪使い魔≫として雑用をこなし、魔法の授業を受け、警戒の目を光らせることだけだ。

 夜になり≪フリッグの舞踏会≫が催されても、君は二つの月の光に照らされながら広場から広場へと渡り歩き、空を見張っている。
 君の姿を目にした衛兵が近づき、話しかけてくる。
「まったく、貴族様って連中は毎度毎度、飽きもせずに食事に踊りに談笑だ。なにがそんなに楽しいのやら」と言って笑う。
 君は、貴族には貴族の苦労があるのだろう、と答える。
 流行のドレスを仕立てる代金をどう捻出するか、婦人との話のたねはなにがいいか、といったことに頭を悩ませずにすむ平民のほうがよほど気楽だ、と続けて言うと、
「違いない!平民万歳だ」と相手は笑う。

 しばらく貴族を題材にした冗談を言い合うと衛兵と別れ、君は石造のベンチのひとつに腰掛ける。
 料理の匂いと舞踏の音楽が、君のところまで夜風に乗って流れてくる。
 舞踏会場に居るはずのルイズは、最良の時を過ごしていることだろう。
 今まで≪ゼロのルイズ≫と嘲笑されるばかりだった彼女が、一転して、≪土塊のフーケ≫を捕らえた功績を褒め称えられているのだ。
 しかし、君はその場に同席するつもりはない。
 君は魔法使いではあるが、この世界でももとの世界でも『平民』であることには変わりなく、あのようなきらびやかな場に現れることは許されぬだろうし、 そもそも君自身も、
金ぴかに着飾った連中と肩を並べたくはない。
 毎日の光景として見慣れたつもりでも、この世界の貴族たちの過剰なほどの豪華絢爛ぶりは、やはり腹立たしいものだ。

 そのようなことを考え二つの月を見上げる君だが、そのとき、背後に人の近づく気配を感じ取る。四六〇へ。


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