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『使い魔くん千年王国』 第八章 色男

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アルヴィーズ食堂の厨房にて。料理長のマルトーは、一仕事終えて小休止していた。
そこへメイドが戻ってくる。
「おう、シエスタか。どうやら配膳は済んだかな? いつも悪いな。
って…お前の後ろにいる坊主はどうした? 知り合いか?」
「ええと、そのことでお願いしたいことがありまして…」
シエスタが簡潔に事情を説明してくれる。人脈は便利だ。

「…がはははは、坊主も災難だな! 貴族ってやつはやっぱり性根が腐ってるぜ!
俺がせっかく作ってやっている料理を、いつも『まずい』だの『味付けが下品』だの
『量が多すぎる』だのと抜かしては残しやがって!
しかもたまにその分の材料費を少ねえ給料からさっぴきやがって!
厨房の奴らに伝染病が流行ったときも、治療費補助の申請がちょびっとしか通らねえし!」
かなりストレスが溜まっているようだ。勝手に激昂してきた。

「お互いに劣悪な労働環境ですね。労災認定が出そうなくらい」
「んん? ムツカシイ言葉を知ってんな坊主。なんだローサイってのは?
まあ、今は昼飯時で忙しいし、大したモンは作れねえが我慢してくれ。
すぐできるからちょっと待ってな」
「朝のサンドウィッチは簡単だが美味かった。あなたの腕は相当なものだと思うよ」
「がははっははは、有難いねえお褒めの言葉。客はボンクラ貴族ばかりでも、
 この料理長マルトーは料理の腕は抜かないぜ。それが『平民』の誇りだからな」

『平民の誇り』か。労働者の鑑だ。ぼくが政権をとったあかつきには、是非表彰してあげよう。
その前に選挙対策委員に任命してみようか。王国に政権選挙はないだろうが。



「ほおれ、パンとシチューだ。余ってた食材も入れたからな、具もたっぷりだぞ」
「いただきます」
素朴な賄い飯だが、あの粗末な囚人以下食と比べれば雲泥の差だ。
「ああ、実に美味い」
「ははは、満足してもらえたみたいだな。
 また食いっぱぐれたらここにきな。適当に何か作ってやるからよ!」
「有難う。まあきっと毎日お世話になるよ」
中年親父と8歳児に、奇妙な友情が生まれた。


場面変わって、悪しき労働環境の根本的原因の部屋。
今日もお盛んなトリステイン魔法学院の長、オールド・オスマンであった。
「オールド・オスマン! いい加減にセクハラを止めて下さい。労働管理局に訴えますよ」
「ふぉふぉふぉふぉ、よいではないかミス・ロングビル。
 なんじゃそのナントカ管理局というのは。白い悪魔でもおるんかい」

そこへ冥王様、もといコルベールが息を切らせて飛び込んでくる。
「た、大変ですぞ!オールド・オスマン!」
「おお、ミスタ・コナキジジイ。いいところを邪魔して何用だね」
「私の名前はコルベールです! いかにこんな頭でも……。
 ええい、それよりこれを見てください」
「む?」

「ミス・ヴァリエールの呼び出した使い魔の『右手』にあらわれたルーンの写しです。
 気になっていたので調べてみたのですが…」
持ち出したのは『始祖ブリミルの使い魔たち』という古書。
ちなみに著者は「アリャマタ・ド・コリャマタ」である。
「なるほど…席を外してくれるかな? ミス・ロングビル」
「はい、よろこんで!」



「ふーーーっ…では、詳しく話したまえ。ミスタ・スネコスリ」
「コルベールです! コしかあってません!
 …端的に申し上げますとですね、彼は『ヴィンダールヴ』です」
「…あの伝説の? 何かの間違いではないのかね?」
「私も最初そう思ったのですが、他のどのルーンにも該当しませんでした。ほぼ間違いないと思われます」
「では、それを召喚したミス・ヴァリエールは…『虚無』の担い手だというのかね?」

確かにルイズは、四系統のどの魔法も、簡単なコモンマジックさえもまともに使えない。
『サモン&コントラクト・サーヴァント』が成功したのが、学院七不思議の一つになったぐらいだ。
では、残る系統…『虚無』こそが彼女の系統なのでは?
そして『虚無』魔法の担い手は、始祖ブリミルと同じく四人の『使い手』の一人を得るのだというが…。

「…そこまでは。ですが」
「…今はまあ、保留じゃな。おぬしはこのまま、引き続き調査にあたってくれ。
 当然ながら、このことは一切他言無用じゃ。
 わかったの、ミスタ・テナガアシナガ」
「もうどこもあってねえYO!」
コルベールのつっこみが、悪の元凶を打ち倒した。



松下はマルトーに気に入られ、以後いつでも食事や食材をおごってもらえる事になった。
人脈はとても便利だ。
(腹もくちくなった事だし、図書館でも行ってみるか…)
と、食堂の方から何か言い争う声がする。

「違う、誤解だ、誤解なんだモンモランシぃいいイイイイーーー!!」
(メメタアァ ドグチァッ)
「ごばっ!!」

三行で色男がどてっ腹をぶち抜かれて死んだ。…あ、生きている。
一瞬あのオンモラキとかいう女の拳から、火花が散ったように見えたが…あれも魔法なのか?
女はそのまま「ギーシュの馬鹿! 男なんてーーーーー!!」と叫びながら走り去った。

「ラ…ララララ…」
歌? きでもくるったか?
「く…くそう! そこのメイド! 君が気をきかせて
 香水壜のことをスルーしてくれなかったせいで、
 二人のレディの心が傷ついたんだぞ! どうしてくれるんだ!!」
よくわからないが、ぼくの恩人のシエスタが、あのギーシュとかいう、
馬鹿貴族のボンボンの色男の甲斐性なしの二股膏薬の隠れゲイの八つ当たりで責められているらしい。
これは助けなくてはなるまい。

「おお、なんという悲劇なの」
「ど、どうしてくれるんだ!? どないしてくれるんだ!?」
シエスタはうつむき、ふてくされたように話し始める。

「……あなた方のような、幸運にめぐまれた、
 鼻の下の長いお方には分からないかも知れませんが…
 不幸な人はより不幸になり…貧しい人はより貧しくなる…というのが現実なんです」
「僕はきみの人生観をきこうとしてるんじゃない! 膝をついて謝るんだ!」

そこへ松下が割り込む。
「まあまあ、世の中を理解してないなあ。この貴族はなってない」
「なってないのは君たちの方だ!!! なんだこの子供は!!」
「たかが女の子二人に振られたからって、そんなに金切り声をあげることはないでしょう」
「言うなあこの餓鬼! 振られたとか言うなあああ!!」
ギーシュは、仲裁しようとした松下の頬をつねり上げた。
「あ、いちち…痛ぇ……この野郎!!」

      びりっ

「ぎゃーーーーーーーーーーっっ!!」
松下は、お返しとばかりにギーシュの左側頭部から『何か』をむしり取った。
「お、おい、ギーシュに何をした!? 何だそれは!」
「これだよ!」
ぽい、と投げて寄こされたのは、ギーシュの『左耳』であった。

「ひーーーーーーっ、みみみみみみ」
「ひいひい、痛い痛い」
うずくまり、涙目で耳のあったところを押さえるギーシュ。血が指の間から流れ出る。
水の治癒魔法ですぐ治せばくっつくだろうが、これでは面子は丸潰れのままだ。
もう腐ったトマトを20メイル上空から落としたぐらいに。

「おい、確かこの餓鬼は『ゼロ』のルイズの使い魔だぜ」
「マジか? さすが躾がなってないな、貴族に手を上げるなんてさ」
周りのギャラリーがさらに騒然とする。

ギーシュは脂汗を拭い、耳を押さえて松下に向き直る。顔が真赤だ。
「はあはあはああああああ、けっ、決闘だ! 使い魔君! 今すぐ僕と決闘したまえ!!」
「よかろう。どこでやるのだ?」
「あっさり受けてくれるとは嬉しいね!
 ヴェストリの広場ならちょうどいいだろう。正々堂々このギーシュ・ド・グラモンと戦え!」
「ああ、わかった」
「よーし! ならば僕は先に行って待っている。絶対逃げるなよ!?」
すごい勢いで決闘が決まった。食べ終わったギャラリーがギーシュの後をついて行く。

「ま、待ってください! 貴族と決闘なんて…危険です! やめてください!
 いくらマツシタさんが子供でも、ひょっとしたら、こ・殺されてしまいます!」
正気を取り戻したシエスタが震えだした。そこへルイズも駆けつける。
「あんた! 人の護衛もせずに勝手になにやってんのよ!!」
「きみに昼飯抜きにされたので、厨房でご馳走になってきた」
「ああ、そう… で、あんたが多少強くても、相手はドットだけどメイジよ? 勝算はあるの?」
「何を繰り出してくるかにもよるが、実戦経験はある」

敵戦力の把握は必須だ。同級生のルイズに聞くとしよう。
「あいつは『青銅』のギーシュ。『土』のドットメイジで、等身大の青銅の人形を操って戦うそうよ」
「初戦の相手としてはまずまずだな」
「危なくなったら逃げるのよ? あいつ名うての馬鹿だから」
「まさか。まあ、少しいろいろと準備をしておこうか」

鴨がネギを背負ってやってきたな。さくっと降伏させて下僕にしてやるか。

(つづく)
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