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マジシャン ザ ルイズ 3章 (6)

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マジシャン ザ ルイズ (6)決死の一撃

「貴様!?まさか……シャイターン!?」
口から血の泡を漏らしながら、この世界で最も恐れられる種族の一つ、エルフの男が呟いた。
既に剣士人形ヨルムンガンドはただの残骸と化し、周囲に散乱している。
ワルドの放った手刀に胸から背中にかけてを貫通され、エルフのビダーシャルの生命の灯もまた、尽きようとしていた。

「シャイターン…これが!世界を汚した悪魔か!」
ワルドの口元がつり上がると、狂気を滲ませながら嬉しそうに、その手を捻った。
「エルフのビダーシャル。中々に面白い余興だったが、どうやら貴様でも私には役不足のようだな」
「ほろ、びよ、悪魔っ!、…我が一命をかけて!道連れにしてくれるっ!」
口から一際大きな血塊を吐くと、ビダーシャルはその両手をワルドの背後に回し、力の限り抱きしめた。
これから目前で行われる最高のショーに期待するワルド、力の限りしがみつくビダーシャルには目もくれない。
「滅…せよっ!」


閃光 圧縮 拡散 爆発


現れたのは小さな光球、それが周囲の空気を吸い込みながら一旦小指の先ほども小さくなり、そして突然に膨れ上がった。
ビダーシャルの命をかけた先住の魔法が発動し、オルレアン公屋敷が激しく振動する。
中庭に発生した地上の太陽により、破壊、蹂躙、一切の抵抗を許さない暴虐が生まれようとしていた。
何もかもを焼き尽くす超大な熱量が万物を無に返そうとその牙を剥く。

だが、暴君がオルレアン公爵邸を飲み込もうとしたその瞬間、幾重もの巨大な魔法円が現れ出でて、それを包み込んだ。
白球を包み込む魔法円、それに抵抗するように激しく暴れまわるコロナ。
広がろうとする力と、押さえ込もうとする力、それらが一瞬拮抗し、すぐさまその勝敗が決する。
地上に産声をあげかけた太陽は、時間を巻き戻すように急激に縮小していく。
そしてやがては蝋燭の火ほどにも小さくなり、消滅したのであった。

擂り鉢状になった爆心地、そこで唯一形を留めているものは、何事も無かったかのように佇む男の姿のみ。


ワルドが正面から屋敷に戻ると、そこには腰を抜かした老執事の姿があった。
気にせず客室も戻ろうとして横を抜けようとした時、ふと思いとどまり立ち止まる。
そうして腰を抜かしたまま、硬直している老人に語りかける。
「申し訳ないが紅茶が冷めてしまった。新しく入れ直してもらえないかな?」
一も二も無く頷いたペルスランが、足を縺れさせながら厨房へ走り去ってい姿を見て、ワルドは小さく笑うのだった。














タバサの手の中には一通の書簡が握られている。
ガリア王国、北花壇警護騎士団所属騎士タバサ、それが今の彼女である。
タバサは既に何度も読み返した書簡を広げ、その内容をもう一度確認した。
そこには大仰かつ、事務的な用句と文言で飾られた文章が踊っている。
その末尾には騎士団長のサインがなされ、これが公式な王国からの命令書類であることを示していた。
長々とした文章に対して、その内容は至って単純。
内容を纏めると以下のようなものであった。

「旧オルレアン公爵邸に潜伏している男を暗殺せよ」

内容を確認したタバサの表情がこわばり、歯噛みした音がならされる。
何故よりによって旧オルレアン公爵邸なのか。
旧オルレアン公爵邸、そこはタバサにとって最も重要な、聖地と言っても過言ではない場所である。
屋敷には老執事、数名の召使、そしてタバサの母がいたはずなのである。
突如届けられたこの奇怪な命令書には、オルレアン公爵屋敷の人間がどうなったのかは記されていない。
そこには王家に逆らう男が屋敷を占拠して潜伏しているとしか書されてはいない。
他に情報として示されているのは、既に数名の北花壇騎士が、男の討伐に投入されたらしいということくらいだ。
これは自分以外の北花壇騎士が既に男に葬られているらしいことを示唆している。

北花壇警護騎士団。
ガリア王家の汚れ仕事を一手に引き受けている組織である。
お互いに名前も顔も知らない、名誉とは無縁の闇の騎士達。
しかし、それだけにその実力は他の騎士団の騎士達を凌駕する手練達である。

その北花壇騎士が既に数名、投入されている。
これは明らかに異常な事態である。
トライアングルクラスのメイジであるタバサと同様かそれ以上、その上で勝つために手段を選ばぬ戦いのプロフェッショナル。
それらが赴き、帰ることが出来なかった死地、それがタバサの聖地の今の姿なのである。

書簡を握るタバサの手に汗が滲む。
これまで何度もガリア王家の命令を受け、それを実行してきたタバサである。
しかし、それらが手遊びに感じてしまうほどに、今回の命令は重く圧し掛かっている。

シャルロット・エレーヌ・オルレアン、それがタバサの本当の名前である。
王弟オルレアンの娘、つまりは王族である。
しかし、父は謀殺され、残った母は自分の身代わりに毒を呷って正気を失った。
王族という肩書きは呪いの様に彼女から様々なものを奪った。
彼女に残されたのは屋敷一つに我に返らぬ母のみ。
それらを守る為にタバサは騎士となり、王国に自身の有用性を示してきた。 
たとえ王の気まぐれであろうとも、自身に出来る最善の努力、それが今生きている母と自分に繋がっていると信じている。
だが、書面を見るだけで感じる恐怖、それが一つの矛盾として浮かび上がってくる。
生きる為の努力、その延長上に感じる濃厚な死の気配。
けれど、やらねばならない、何よりも母の為に、タバサはオルレアン公爵屋敷へと戻らなければならない。



「きゅいきゅい!お姉さまどうしたの?顔色が悪いの、お腹でも壊したの?」
「なんでもない」
書簡を燃やし、既に支度を済ませてあった鞄を手に取るタバサ。
「おでかけ?おでかけなーのー?お姉さま!嬉しいな嬉しいな、お姉さまとお出かけ!」
「任務」
「えー、お城いくのお姉さま。お城喋れないから嫌い!きゅいきゅい」
タバサは文句を言っている使い魔シルフィードに構わずに跨った。
「城じゃない、屋敷」
「お屋敷?やった!じゃあ頑張る、きゅいきゅい!」
先ほどまでの黒い霧のような絶望感が、多少なりとも薄れたのを感じるタバサ。
その手をそっとシルフィードの首にやり、優しく撫でる。
「あっ!でもお腹すいたのお姉さま!」
「………」

力強く羽ばたくシルフィード。
進路は一路、暗雲立ち込めるガリアへ。


                   中々面白い趣向だよガリア王、しかし、それもそろそろ飽きた。
                               ―――閃光の影魔道師ワルド


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