あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Bullet Servants-01



――退屈なときは、異なる世界の唄を歌おう。

我々とは森羅万象の法則が似て非なる世界、
近しくも異なるものたちが生きる世界の唄を。



神の左手ガンダールヴ。 勇猛果敢な神の盾。
左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。


神の右手がヴィンダールヴ。 心優しき神の笛。
あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。


神の頭脳はミョズニトニルン。 知恵のかたまり神の本。
あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。



そして最後にもう一人……。 記すことさえはばかれる……。


四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……。





――トリステイン魔法学院。
春の進級行事・使い魔召喚に沸き返るこの地にて、この物語は始まりを迎える。




「おおっ! やっぱ爆発だぜ!」
「これで一体何十回目だっけ?」
「さっすがゼロのルイズよねー!」
「見てみろよ、おい!
 あの煙の中から出てるの、どう見ても人間だよな……!?」
「やだー、かっこわるーい」
「どう見たって人間だよ。
 さすがゼロのルイズだな! よりによって魔法がロクに使えないからって、平民を―――」

そこで、嘲りの波は消失する。

騒ぎの中心の爆発煙が晴れ始め、そこからのぞく、黒のスラックスを穿いた2本の足。
爆発により少々すすけている、黒のスーツ。
眼鏡をかけた端正な顔。

そして――――くすんだ金髪に、“人より長く伸びた耳”。


「エ、エルフだぁああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「あの、ゼロのルイズが……!?」
「よりによって、なんてモノを……!」





――始まりは、とても唐突なものだった。

シド・フォルテンマイヤーとその執事アルフレッドの巻き起こした、オセロットシティでの反乱事件が全て終結したころ。
事後処理もひと段落し、我らも含め皆のスケジュールを必死に調整し、ようやくまとまった仲間達との楽しいピクニック。
ルダに恫喝交じりで促され、私もお嬢様とともに午睡を満喫していた――はずだったのだが。


「う、ん…………むにゃ……お嬢、様……?」
「……ック、リック! のんきに寝てる場合じゃないわよ!? 早く起きなさいってば!」

ホルスターの中に納まっている白銀の魔銃――ルダが、慌てた様子で私を呼ぶ。
普段は沈着冷静なはずの彼女が、ここまで取り乱すとは何かあったのか……?


「……ル、ダ? どうしたんです?
 そういえば、私は――――――――はっ、お嬢様!?」

急激に意識が覚醒する。
ルダの言葉に跳ね起き、辺りを見回すと――世界は一変していた。


まず、景色が違った。
そこは見慣れたトリスアの森ではなく――巨大な石造りの塀に囲まれた、大きな広場のど真ん中。

次に、人々が違った。
そこにいたのは、主の親友の少女とその忠実な女執事でも、私の親友や慣れ親しんだ同僚のメイドでもなく、
まして世話になった年長の戦友たちや、護衛のFBI捜査官でもない。
私たちを遠巻きにして不穏な表情を浮かべている、見知らぬ少年少女たち。まさか幻覚の魔法か?
そして――


煙が晴れていく。
私の隣にいた筈の、大地に横たわる少女の姿が少しずつ露になっていく。

「うう……こほ、けほ…っ」
「お嬢様、しっかりしてください! お怪我はございませんか!?
 聖導評議会の奇襲かもしれません、すぐにアッシュ達を呼んで―――――お、お嬢……さ、ま?」


「ああもう……! 酷い目にあったわ! 今度こそ成功したと思ったのに……!」


――そして何より、隣にいた筈の少女が、決定的に違っていた。


声が違った。
背丈が違った。
髪の色が違った。
胸の大きさが違った。
瞳が違った。
衣服が違った。

気品を感じさせる口調と性別以外、何もかもが、私のお嬢様とは異なっていた。

「ところで、あんた誰…………って、まさか、エルフ!?」


…………………眉間を揉み解す。
落ち着け、執事。
落ち着け、リック・アロースミス。

「……ルダ。
 差し支えなければ今我々の身に何が起こっているか、詳しく説明してもらえると有難いのですが?」
「ごめんなさい、無理」

すげない愛銃の回答に脱力しながら、お嬢様と入れ替わりに現れた、眼前の少女に意識を戻す。


「この私が呼んだ使い魔が、こんな、まさか、エルフだなんて…いや、でも、並の使い魔よりある意味……」



「……何かブツブツ呟き始めたわよ、あの子」
「無理もないと言えば、そうなのかもしれませんが……。
 あの、すみません。ここは一体ど――」

そう、目の前の少女に尋ねようとした瞬間。
何かの一大決心をしたような表情で、両頬を手で押さえられた。

「……か、かか勘違いしないでよね? あんたが、わたしの使い魔になるから、仕方なく、するんだから」
「ま、ま……待って下さい? あの、貴女、いったい何を―――――?」


「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」


魔法の詠唱のような、誓約の言葉。
それを訝る間もなく――――
私の唇に、目の前の少女の唇が触れていた。


「………!?」
「あら、大胆」
……混ぜっ返さないでください、ルダ……!


口づけが終わる。
混乱する私には一瞥もせず、指導者と思しきローブ姿の男性に硬い口調で、少女は話しかける。

「……終わりました。ミスタ・コルベール」
「よく出来ました、ミス・ヴァリエール。
 まさか、使い魔がエルフだというのも、前代未聞ではありますが……
 これで、春の使い魔召喚は無事終了、ということになりますな」

「……?」

話の脈絡が、上手く把握できない。

使い魔。ヴァレリア様の可愛がっているフクロウのウォーレスのように、魔法使いの使役する生物。これは理解できる。
エルフ。私はハーフエルフなのだが、一応私のことだと納得は出来る。
しかし――召喚?
ここだけが、上手く繋がらない。

とにかく今は与えられた情報が少なすぎる。
少しでも今の自分達の状況を把握せねば――――そんな思いに駆られ、周囲の風景を再度見回す。


私とピンクの髪の少女を取り囲むように立っている、周りの少年少女。
黒のマントに白のブラウス、そして黒の――男子はスラックスに、女子はスカートと、一つに統一された装い。

そしてもう一つの共通点――みな一人一人が、それぞれ種々雑多な動物を脇に侍らせている。
先刻の中年のローブの男性の言が正しければ、使い魔なのだろうが――
ならばここにいる私以外の人物は皆、魔法使いと言うことになるのだろうか?

それにしたって、魔法使いは――少なくともアーク・メリアでは徒弟制度で育成されるのが常識だ。
こんなにも大規模な人数の『見習い』を一度に――“それこそ学校のように”育てるなんて、見たことも聞いたこともない。

本当に、一体ここは何処なのか。
そして、彼らは一体何者なのか――そこまで考えたところで、思考が無理矢理中断された。
左手の甲の、焼け付くような痛みによって。


「………!? ぐ、ぁああああ……!」
「――リック!? リック、どうしたの!?」
「手が、左手が……焼けそうに、熱くて……!」


「……心配ないわ。使い魔のルーンが刻まれているだけだから、すぐに収まるわよ」

私の苦鳴とルダの驚きをよそに、
少し緊張した表情を浮かべながら、固い口調で目の前の少女は告げる。


「ルーン? 使い魔の…………私が?」
「彼女の言葉通りですぞ。ルーンが完全に刻まれれば――『コントラクト・サーヴァント』は終了し、その痛みは消えます。
 ……と、これは――」

ローブの中年男性――おそらく教師に相当する魔法使いなのだろう――が、興味深げに私の左手を覗き込む。
あわてて視線をそちらに移し、手袋をとると――そこには、見たこともない魔法文字が火傷の様に刻まれていた。

「……なんとも、珍しいルーンですな……?」
「あの――これは一体、どういう、」
「よくできました、ミス・ヴァリエール。
 さあ、これで春の使い魔召喚は終了です。皆さん、校舎に戻ってください。
 次の授業に遅刻しないように!」
「……すいません、人の話ぐらい聞いてください」

教師役の魔法使いは私の手に刻まれたルーンを見て満足げにうなずくと、
こちらに背を向け、他の大勢の生徒達に撤収を呼びかけた。
その直後、いかにも授業終了後の学生と言った風情で三々五々、生徒達が『校舎』――石造りの建物のほうへ去っていく。
各々の使い魔を抱え、歩かせ、あるいは一緒に並んで――――自分達は空を飛びながら。
どうやら彼らは皆、『飛翔(フライ)』の魔法は習得済みらしい。

「“ゼロのルイズ”! お前は歩いて戻って来いよ!」
「あの子、『フライ』どころか『レビテーション』すらまともに使えないのよ?」
「いやあ、今度ばかりは飛んでくるんじゃないのか? あのエルフにお願いしてさ」
「ありえるー! ぎゃはははははははっ」


「~~~~~~~~~~ッ!」
「…………?」
「……なんなのよ、一体」

苦虫を噛み潰したかのような表情の少女。
訳もわからず、首をかしげる私とルダ。

詳しくはわからないが、我々に対して侮蔑的なニュアンスが含まれた言葉を投げかけ、生徒達が去ってゆく。
広場に残されたのは、私と少女の、二人だけ。

「……エ、エルフ……!」

広大な広場で、見知らぬ男(つまり、私の事だ)と一対一で
向き合うことになり、先ほどよりいっそう表情を強張らせる少女。
色々と整理しなければならないことは山程あるのだが――まずは、そのきっかけを掴まねばならない。


「……あの、申し訳ありません。
 私、アーク・メリア連邦国はフォルテンマイヤー家の執事、リック・アロースミスと申します。
 失礼ですが、ここは何処で、貴女はどなたなのか。
 そして私が今置かれている状況について御説明願えれば、大変助かるのですが」

会話の糸口は、私から切り出すことにした。
アーク・メリアに、こんな学校じみた魔法使いの育成制度はない。とすれば、ここは国外の可能性もある。
そして何よりいま話に持ち出した、私の仕えるフォルテンマイヤー家は、いわずと知れた
ゴルトロックの全世界で信仰される『生きた伝説』――八英雄の末裔、ミスティック・ワンの家系だ。
何より我が主たるセルマお嬢様は、その当代の継承者でもある。
これだけ有名なキーワードを持ち出せば、それなりの答えが戻ってくると思っていたのだが――


「……はぁ?」

帰ってきたのは、少女のじとりとした、胡散臭げな相槌だった。

「アーク・メリア連邦? それに……フォルテンマイヤー家?
 何それ? 一体どこの国の貴族なの?」



………………はい?

あまりといえばあまりにもあまりな返答にずれかかった眼鏡をかけなおし、深呼吸。
……落ち着け、執事。
……落ち着け、リック・アロースミス。

「いや、あの、その…………冗談、ですよね?
 不死の王退治の伝説の、八英雄の一角を成す、あのフォルテンマイヤー家なのですが……」
「不死の王退治? 一体どこのおとぎ話よ、それ。
 第一フォルテンマイヤーなんて貴族、トリステインどころかゲルマニアやガリアでも聞いたことないし。
 何より、エルフなんて危険な存在を執事にするなんて、前代未聞よ」

ゲルマニア、ガリア、トリステイン……いずれも、ゴルトロックの地図にはない地名だ。
ますますもって私の常識と乖離した情報に、混乱は極まる一方だ。

「ま、まあ、あんたたちエルフの住むっていうロバ・アル・カリイエなら、そんなのあるのかもしれないけど。
 ……ともかく人間の常識知らずのあんたに、教えてあげるわ。
 ここはトリステイン王国の、かの高名なトリステイン魔法学院」

……いや、『人間の常識知らず』て。
酷い言われようであったが――――それを遥かに超える酷さの、非常識爆弾発言が。
精一杯の威厳を保とうとして、ささやかな胸を大きく反らせた、目の前の少女から言い放たれた。


「そしてわたしは、二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。
 きょうからあんたのご主人様よ! 覚えておきなさい!」

…………え?



「えええぇぇぇぇええぇえぇぇぇええええええええええっ!!?」


――セルマお嬢様、お許し下さい。
あまりの事態に呆ける脳のどこかで、そんな言葉が出力される。

これが、期せずして私が仕える事となってしまった“もうひとりの主”。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとの、最初の出会いだった。



新着情報

取得中です。