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#navi(ウルトラマンゼロの使い魔)
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ウルトラマンゼロの使い魔
第二十三話「ラグドリアン湖のひみつ(前編)」
水棲怪人テペト星人
カッパ怪獣テペト 登場
トリステインの戦勝のお祝いから、数日後のこと。才人とルイズ、それからギーシュと、
金色の巻き毛の少女の四人は、トリステインとガリアとの国境にあるラグドリアン湖にやってきた。
才人の乗っている馬にはルイズも跨っており、才人の胸元にギュッとしがみついている。
「これが音に聞こえたラグドリアン湖か! いやぁ、なんとも綺麗な湖だな! ここに水の精霊がいるのか!
感激だ! ヤッホー! ホホホホ!」
一人旅行気分のギーシュが馬に拍車をいれ、わめきながら丘を駆け下りた。
馬は水を怖がり、波打ち際で急に止まった。慣性の法則で、ギーシュは馬上から投げ出されて
湖に頭から飛び込んだ。
「背が立たない! 背が! 背ぇええええがぁああああああッ!」
ばしゃばしゃとギーシュは必死の形相で助けを求めている。どうやら泳げないらしい。
「やっぱりつきあいを考えたほうがいいかしら」
金色の巻き毛の少女、魔法学院の生徒の一人、通称『香水』のモンモランシーが呟いた。
「そうしたほうがいいな」
才人が相槌をうった。するとルイズが心配そうな顔で、非常にしおらしい仕草で才人を見上げる。
「モンモランシーがいいの?」
「そ、そういうわけじゃねえよ。待ってろ。すぐに元のお前に戻してやるからな」
冷や汗をかきながら、才人は普段の気の強い彼女とは真逆のルイズに弁明した。
どうして才人たちがラグドリアン湖にいるのか、そして何故ルイズの性格がおかしくなっているのか。
それには長い長い、同時に馬鹿らしい経緯がある。
そもそもの事の発端は、才人が露店で水兵服を購入したことだ。ハルケギニアでは兵士の
制服というだけの服だが、日本人の才人の常識からすると、セーラー服は女子学生の着るものなのだ。
そして同時に、男心をやらしい感じに興奮させるものでもある。それを才人は、シエスタに頼んで
日本のものに近いように仕立て直してもらい、そのまま彼女に着てもらった。シエスタを選んだのは、
日本人顔なので、周囲の人間の中では一番似合うと思ったからだった。
果たして、セーラー服はシエスタにとても似合っていた。着こなした彼女の姿に才人は、
郷愁の念もあり、やばい感じに大興奮した。……と、これで終わっていればマシだったのだが、
この場面をギーシュとマリコルヌの二人に見られたことから話はおかしな方向へ突き進んでいく。
この二人もシエスタのセーラー服姿に目を奪われ、このことをルイズに話すと才人を脅して
予備のセーラー服を譲らせたのだ。そしてギーシュの方は、一度フラれてヨリを戻したいと
思っているモンモランシーにそれを送った。下心が見え見えの贈りものだったが、意外にも
モンモランシーは悪いようには思わず、教室にまで着てきた。それを見たルイズは、すぐに
才人の買ったものだと気づき、どうしてモンモランシーが着ているのか訝しんだ。
これに焦ったのは才人だ。モンモランシーからたどられて、シエスタにセーラー服を着せて
楽しんでいたことが知られれば、彼女のことだ、怒り狂ってまたひどい目に遭わされるに違いない。
才人は証拠抹消のために、その日の内にシエスタからセーラー服を返してもらうことにした。
だがその時には既に遅かった。才人の様子がおかしいことにすぐに気がついたルイズは、
姿をくらました才人を探す内に、マリコルヌが自分でセーラー服を着て、映ったものを
正反対の姿で映すマジックアイテム『嘘つきの鏡』で楽しんでいる現場を押さえた。
そして彼から、真相を聞き出してしまったのだ。
そして才人が一番恐れていた時がやってくる。セーラー服の引き取りに向かった才人の下へ
やってきたのは、彼との逢い引きと勘違いしてセーラー服を着てきてしまったシエスタだった。
そしてその現場には、ルイズが待ち伏せをしていた。完全に才人とシエスタの関係を誤解した彼女は、
殺意すら抱いて必死に逃げる才人を追いかけ始めた。
この後が重要な点である。才人は、連れ込んだギーシュをある罠に掛けようとしている
モンモランシーの部屋に逃げ込んだのだ。すぐに追いついたルイズは、怒りによる喉の渇きを
その場にあったワインで潤してから、いよいよ才人を追い詰めたのだが、その時に異常が発生した。
何と、ルイズの怒りが急激に消え去り、代わりに才人への尽きることのない好意が湧いて、
彼にベッタリになってしまったのだ。
才人は助かったことを喜ぶより、不自然に態度が急変したルイズを怪しんだ。そしてその原因を調べると、
すぐにモンモランシーに行き着いた。何とあの時モンモランシーは、極度の浮気性に手を焼かされる
ギーシュを自分の虜にするために、ワインに違法の強力な惚れ薬を混ぜて飲ませようとしていたのだ。
それをルイズが飲んでしまったという訳だ。
すぐにルイズを元に戻したいと考えた才人は、モンモランシーを半ば脅迫して解除薬を
作らせることにした。だが、ここでまたも問題が一つ発生した。解除薬に必要な材料の一つ、
ラグドリアン湖の水の精霊の涙が売り切れで、再入荷も絶望的な状態らしい。何でも、
精霊との連絡が取れなくなったとか。だが才人は諦めなかった。待っても再入荷されないなら、
こっちからもらいに行けばいい。
こうして、才人とモンモランシー、そしてついてきたギーシュと才人から離れようとしない
ルイズの四人は、はるばるラグドリアン湖へやってきたのだった。
……ちなみにこの一部始終を、ゼロは心底呆れ返りながら傍観していた。
「サイトぉ~」
ルイズは相変わらずの調子で、猫のようにゴロゴロ喉を鳴らして才人に甘えている。
男冥利に尽きる状況だが、才人はげんなりとしている。
「……やっぱり早く元に戻さないとな。こんな調子で四六時中くっつかれてたら、俺の身体が持たねえや」
『そうだな。このまんまじゃ俺も、怪獣退治の任務を果たせないぜ』
才人の独白に相槌を打つゼロ。何せ、ルイズが片時も才人を離そうとしないので、変身して
怪獣との戦いに赴くことが出来ないのだ。現にここに至るまでに一度怪獣が出現したのだが、
その時も聞き分けのなくなったルイズに捕まってしまったので、グレンファイヤー探しで忙しい
ミラーナイトに代わりに出動してもらう羽目になった。ミラーナイトからも現状を呆れられてしまった。
才人とゼロがルイズを元に戻す意志を固めていると、びしょ濡れのギーシュそっちのけで
湖面を見つめていたモンモランシーが、首をひねった。
「ヘンね」
「どうした? どこがヘンなんだ?」
才人が聞き返すと、モンモランシーがラグドリアン湖の異常を説明する。
「水位があがってるわ。昔、ラグドリアン湖の岸辺は、ずっと向こうだったはずよ」
「ほんと?」
「ええ。ほら見て。あそこに屋根が出てる。村が飲まれてしまったみたいね」
モンモランシーが指差した先に、藁葺きの屋根が見えた。才人は、澄んだ水面の下に黒黒と
家が沈んでいることに気づいた。モンモランシーは波打ち際に近づくと、水に指をかざして
目をつむった。
モンモランシーはしばらくしてから立ち上がり、困ったように首をかしげた。
「おかしいわ。水の精霊の気配を感じない」
「そんなのわかるのか?」
「わたしは『水』の使い手。香水のモンモランシーよ。このラグドリアン湖に住む水の精霊と、
トリステイン王家は旧い盟約で結ばれているの。その際の交渉役を、『水』のモンモランシ家は
何代もつとめてきたわ」
「今は?」
「今は、いろいろあって、他の貴族がつとめているわ。ともかく、そういう訳で、わたしは
水の精霊の気配を感じることが出来る。……そのはずなのに、今は何も感じないわ。
どういうことなのかしら……」
モンモランシーが訝しんでいると、木陰に隠れていたらしい老農夫が一人、一行の元へとやってきた。
「もし、旦那さま。貴族の旦那さまがたは、もしや、人さらいの亜人どもを退治しに参られたかたがたで?」
「えッ! それ、何の話? ラグドリアン湖に何が起きてるの?」
いきなり物騒な話をされて驚く一行を代表して、モンモランシーが問い返した。農夫は違うことを
悟ると深く落ち込んだが、それでも事情を教えてくれた。
「まず二年ほど前から、増水が始まったんでさ。ゆっくりと水は増え、今ではわしの屋敷まで沈んじまった。
けど今思えば、それはまだましな方でしたわ。ここ最近は、それに加えて、湖の周辺で見たことのない姿の
亜人が夜中に目撃されるようになったんでさ。それと同時に、村の人間が少しずつ消えてくようになったんですよ。
きっと、その亜人どもの仕業に違いねえ。それなのに、領主さまも女王さまも、今はアルビオンとの戦争に
かかりっきりで、こんな辺境の村など相手にもしてくれませんわい。わしらはいっそのこと、村を捨てるべきかと
本気で考えてる次第です」
よよよ、と老農夫は泣き崩れた。彼の話の深刻さに、才人たちは同情を寄せる。
「その見たことのない亜人とは、どんな姿なのかね?」
ギーシュが尋ねると、農夫が身振り手振りを入れつつ説明する。
「わしが見た訳じゃないんですけど、何でも頭のてっぺんが皿でも乗っけてるように平らで、
口は鳥のくちばしのようにとんがってるそうです。しかも、魚のように水の中で生きてるみてえで。
湖の中から這い出てきたとこを見たという奴が何人もおりますわ。水の精霊は、どうしてそんな連中を
湖に住まわせたのやら……」
農夫の証言を聞いて、才人が呟く。
「丸で河童だな」
「カッパ?」
河童を知るはずがないギーシュらが聞き返すと、才人が説明を挟んだ。
「俺の故郷に伝わる……まあ、亜人みたいなもんさ」
「ふぅん? 案外、それが正体だったりしてね」
「まさか。サイトの故郷ってはるか東のロバ・アル・カリイレなんでしょ? そこの生き物が、
トリステインにいる訳ないわ」
話し合っても、亜人の正体はさっぱり分からなかった。それから、農夫が落胆して去っていったあとで、
モンモランシーが腰にさげた袋からなにかを取り出した。それは一匹のカエルであった。鮮やかな黄色に、
黒い斑点がいくつも散っている。
「カエル!」
カエルが嫌いなルイズが悲鳴をあげて、才人に寄り添う。
「なんだよその毒々しい色のカエルは」
「毒々しいなんていわないで! この子はロビンって言って、わたしの大事な使い魔なんだから!」
モンモランシーはカエルを湖の中に入れ、水の精霊を探しに行かせる。だがしばらくした後に、
モンモランシーの下へ戻ってきた。カエルからの報告に、顔をしかめる。
「やっぱり、湖のどこにもいないみたい。どこかの貴族に連れられて、別の場所に行ってるだけなら
いいんだけど……この異常な状況じゃ、その線は薄いわね。きっと、何か訳があって身を隠してるんだわ……」
「さっきの人が言ってた亜人ってのが関係してそうだな」
推測した才人は、次のことを提案する。
「その亜人って、夜になると現れるんだったな。じゃあ夜を待って、そいつを捕まえようじゃないか。
きっと水の精霊の手掛かりが掴めるはずだ」
「それ、本気で言ってるのかね!? ぼくは手荒なことは、その、あまりしたくないぞ。危険だし……」
怖気づいて尻込みするギーシュだが、モンモランシーは対照的に意気込む。
「わたしはやるわ。元とはいえ、わたしは水の精霊との交渉役のモンモランシ家に連なる身。
水の精霊の異常を見過ごす訳にはいかない」
「うッ、モンモランシーはやるのか。だったら、ぼくがやらない訳にはいかないな。愛しい
モンモランシーを残して学院には帰れないよ……」
まだ怖がっているものの、ギーシュが意見を翻した。
「ギーシュ、わたしのために……」
「当然さ、モンモランシー……」
「はいはい。そういうのは終わってからにしてくれ」
見つめ合って二人の世界に入ろうとするギーシュとモンモランシーを、才人が現実に引き戻した。
そして才人たち一行は、夜になると、湖の岸辺の木陰に隠れ、亜人とかいうものが現れるのを待ち受けた。
「地元の人の話じゃ、この辺りでよく目撃されるみたいだ。どんな顔してるか知らないが、
出てきたらすぐにとっ捕まえてやるぜ」
才人は既にデルフリンガーを抜き、木陰からわずかに顔を覗かせて、岸辺をじっと見張っている。
その背中には、相変わらずルイズがピッタリ張りついていた。
「わたしは戦いなんて出来ないから、捕獲はあなたたちに任せたわよ」
「安心してくれモンモランシー。ぼくの勇敢な戦乙女たちが、亜人なんぞ簡単にひねり上げてくれるさ」
モンモランシー相手に見栄を張っているギーシュだが、恐怖心がなくなった訳ではなく、
脚はガクガク震えていた。それを紛らわすためにワインをあおっていて、顔が赤い。これで本当に
使い物になるのかと、才人は若干不安だった。
そうしていると、デルフリンガーが声を上げた。
「相棒、誰かやってきたぜ」
「亜人か!?」
「ローブをすっぽり被ってるから、そこまでは分かんねえな」
才人が岸辺を確認すると、確かに、デルフリンガーの証言通りの人影が現れていた。人数は二人で、
随分身長に差がある。
亜人でなくとも、既に地元の人間は誰も寄りつかなくなったこの場所にやってくるとは、
ただ者ではないはず。一体誰だ、と思っていると、ゼロが不意に告げた。
『あいつら、キュルケとタバサじゃねぇか』
「え?」
思わず目を見張った才人は、ルイズをどうにかなだめて自分から離し、木陰から出てそっと
人影に近づいていった。そして名前を呼ぶ。
「おい、キュルケ! タバサ!」
「えッ!? その声はダーリン!」
振り返った二人組は、目深に被ったフードを取り払った。その下からは、よく見知った顔が出てくる。
ゼロの言った通り、キュルケとタバサだった。
「お前ら、どうしてこんな場所にいるんだ!」
「そっちこそ、どうしてこんなところにいるのよ? ここ、ガリアの領地よ」
才人とキュルケは互いに同じ質問をした。するとそこに、木陰に待たせていたルイズが
才人へと走り寄ってきて、悲しそうにパーカーの袖を引っ張った。
「キュルケがいいの?」
「だから違うって! ややこしくなるから、お前はちょっと黙っててくれ」
ギーシュとモンモランシーも才人たちの下へやってくる中、キュルケはぽかんと今のルイズを見つめた。
そして才人に聞く。
「いつのまにルイズを手なずけたの?」
「いや、そうじゃねえから」
才人はキュルケたちに、ここまでの経緯を説明した。
「なるほど、モンモランシーのせいでこんなことに……。まったく、自分の魅力に自信のない女って、最低ね」
「うっさいわね! しかたないじゃない! このギーシュったら浮気ばっかりするんだから!
惚れ薬でも飲まなきゃ病気が治らないの!」
「もとを辿れば、ぼくのせいなのか? うーむ」
モンモランシーとギーシュのコントは置いて、今度は才人が質問する番になる。
「それでそっちは、どういう理由でここにいるんだ?」
聞かれて、キュルケは困ってしまった。彼女はタバサの事情を知っているのだが、それは
才人たちに教えるのは憚られる内容なのだ。それで無難な説明をする。
「そ、その、タバサのご実家に頼まれたのよ。この辺に出る亜人が、タバサの実家の領地に
被害を出してるから、退治を頼まれたってわけ」
「お前たちも同じような目的だったのか」
納得した才人は、周辺に目を配る。
「それで、問題の亜人は今どこに……」
と噂したからなのか、周辺の草むらがいきなり、ガサッと音を立てて揺れた。
「きゃあッ!? な、何!? 誰かいるの!?」
モンモランシーが脅えて大声を出したが、草むらからは何も出てこない。だがその代わり、
森の中で黒い影が頻繁に動き回るところが目に入る。
「な、何者だあ!? か、か、隠れてないで出てこい! 卑怯者めぇ!」
半狂乱になってガチガチ歯を鳴らすギーシュが、小刻みに震える手で杖を握り締めて叫んだ。
恐怖に打ち震えるギーシュとモンモランシーを尻目に、タバサが才人とキュルケに囁きかける。
「気をつけて。囲まれてる」
「えッ!?」
「相棒、後ろだ!」
突然デルフリンガーが叫んだ。それと同時に、人間に似た影が湖面から飛び出し、才人たちに
襲い掛かってきた!
「きゃあああッ!」
悲鳴を上げるルイズ。だが素早く反応した才人が振り向き様にデルフリンガーを振るったことで、
影はバッサリ斬られて仰向けに倒れた。
「うわッ!? 河童!」
影の正体を見た才人が叫んだ。口元は鳥のもののようにとがり、四本指の間に水かきを持った容貌は、
河童そのものだったのだ。
しかしそれを、ゼロが否定した。
『こいつは亜人でも、ましてや河童でもねぇ! テペト星人だ!』
「えッ!? テペト星人だって!?」
すぐに才人が通信端末で検索すると、今目の前にいる怪人と全く同じ姿の宇宙人が引っ掛かった。
ラグドリアン湖の亜人の正体は、侵略者テペト星人だったのだ。
「カァ――――――――!」
仲間の一人の後に続くかのように、湖や森の中から、大量のテペト星人が飛び出てきて
才人たちに押し寄せてきた。
「きゃああああ! た、たくさん来たぁ!」
「お、おのれ! モンモランシーには手出しさせないぞ!」
モンモランシーが悲鳴を上げると、ギーシュがなけなしの勇気を奮い立たせた。青銅のワルキューレを
作り出して、テペト星人の軍団を迎撃する。
キュルケとタバサはすぐに攻撃を仕掛けた。火炎球と氷の矢を放ち、迫るテペト星人を片っ端から薙ぎ倒す。
「おらぁッ!」
才人も、今は震えるばかりのルイズをかばい、テペト星人をばっさばっさと斬り伏せる。
突然の襲撃に度肝を抜かれた一行だが、驚いていたのは一瞬だけで、テペト星人を次から次へと
返り討ちにしていった。特にキュルケとタバサのコンビが最も敵を倒した。二人の連携は見事で、
一方が呪文を唱えている間に、もう片方が攻撃魔法を放ち続けることで、全く隙を作らなかった。
「こいつら、アルビオンに出てきた連中より、はるかに弱いわね」
自分たちに手出し出来ないでやられていくテペト星人に対して、キュルケが余裕ぶって評した。
確かに、テペト星人は特筆するような戦闘能力を持たず、巨大化することも出来ない。
かつて地球に侵入した者たちも、ウルトラ警備隊が生身で難なく撃退したほどだ。
だが、敵もわざわざやられるためにやってくるのではない。ブラック星人がスノーゴンを
手元に置いていたように、戦闘力のない侵略者は往々にして、代わりの戦力を所持している
ものであることを才人は知っていた。
「! 見て!」
「な、何あれ!? でっかい卵!?」
果たして、テペト星人との交戦中に、ラグドリアン湖の中央に途轍もなく巨大な卵が浮かび上がってきた。
タバサとキュルケが見ている中で卵はすぐにひび割れ、中から巨大怪獣が現れる。
「キャ――――――――!」
卵の中から出現した、一つ目で頭頂部が皿の形状になっている、これまた河童そっくりな怪獣こそ、
テペト星人の用心棒で、彼らの住む星の名前を与えられた大怪獣、テペトであった。
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#settitle(第二十三話「ラグドリアン湖のひみつ(前編)」)
ウルトラマンゼロの使い魔
第二十三話「ラグドリアン湖のひみつ(前編)」
水棲怪人テペト星人
カッパ怪獣テペト 登場
トリステインの戦勝のお祝いから、数日後のこと。才人とルイズ、それからギーシュと、
金色の巻き毛の少女の四人は、トリステインとガリアとの国境にあるラグドリアン湖にやってきた。
才人の乗っている馬にはルイズも跨っており、才人の胸元にギュッとしがみついている。
「これが音に聞こえたラグドリアン湖か! いやぁ、なんとも綺麗な湖だな! ここに水の精霊がいるのか!
感激だ! ヤッホー! ホホホホ!」
一人旅行気分のギーシュが馬に拍車をいれ、わめきながら丘を駆け下りた。
馬は水を怖がり、波打ち際で急に止まった。慣性の法則で、ギーシュは馬上から投げ出されて
湖に頭から飛び込んだ。
「背が立たない! 背が! 背ぇええええがぁああああああッ!」
ばしゃばしゃとギーシュは必死の形相で助けを求めている。どうやら泳げないらしい。
「やっぱりつきあいを考えたほうがいいかしら」
金色の巻き毛の少女、魔法学院の生徒の一人、通称『香水』のモンモランシーが呟いた。
「そうしたほうがいいな」
才人が相槌をうった。するとルイズが心配そうな顔で、非常にしおらしい仕草で才人を見上げる。
「モンモランシーがいいの?」
「そ、そういうわけじゃねえよ。待ってろ。すぐに元のお前に戻してやるからな」
冷や汗をかきながら、才人は普段の気の強い彼女とは真逆のルイズに弁明した。
どうして才人たちがラグドリアン湖にいるのか、そして何故ルイズの性格がおかしくなっているのか。
それには長い長い、同時に馬鹿らしい経緯がある。
そもそもの事の発端は、才人が露店で水兵服を購入したことだ。ハルケギニアでは兵士の
制服というだけの服だが、日本人の才人の常識からすると、セーラー服は女子学生の着るものなのだ。
そして同時に、男心をやらしい感じに興奮させるものでもある。それを才人は、シエスタに頼んで
日本のものに近いように仕立て直してもらい、そのまま彼女に着てもらった。シエスタを選んだのは、
比較的日本人顔なので、周囲の人間の中では一番似合うと思ったからだった。
果たして、セーラー服はシエスタにとても似合っていた。着こなした彼女の姿に才人は、
郷愁の念もあり、やばい感じに大興奮した。……と、これで終わっていればマシだったのだが、
この場面をギーシュとマリコルヌの二人に見られたことから話はおかしな方向へ突き進んでいく。
この二人もシエスタのセーラー服姿に目を奪われ、このことをルイズに話すと才人を脅して
予備のセーラー服を譲らせたのだ。そしてギーシュの方は、一度フラれてヨリを戻したいと
思っているモンモランシーにそれを送った。下心が見え見えの贈りものだったが、意外にも
モンモランシーは悪いようには思わず、教室にまで着てきた。それを見たルイズは、すぐに
才人の買ったものだと気づき、どうしてモンモランシーが着ているのか訝しんだ。
これに焦ったのは才人だ。モンモランシーからたどられて、シエスタにセーラー服を着せて
楽しんでいたことが知られれば、彼女のことだ、怒り狂ってまたひどい目に遭わされるに違いない。
才人は証拠抹消のために、その日の内にシエスタからセーラー服を返してもらうことにした。
だがその時には既に遅かった。才人の様子がおかしいことにすぐに気がついたルイズは、
姿をくらました才人を探す内に、マリコルヌが自分でセーラー服を着て、映ったものを
正反対の姿で映すマジックアイテム『嘘つきの鏡』で楽しんでいる現場を押さえた。
そして彼から、真相を聞き出してしまったのだ。
そして才人が一番恐れていた時がやってくる。セーラー服の引き取りに向かった才人の下へ
やってきたのは、彼との逢い引きと勘違いしてセーラー服を着てきてしまったシエスタだった。
そしてその現場には、ルイズが待ち伏せをしていた。完全に才人とシエスタの関係を誤解した彼女は、
殺意すら抱いて必死に逃げる才人を追いかけ始めた。
この後が重要な点である。才人は、連れ込んだギーシュをある罠に掛けようとしている
モンモランシーの部屋に逃げ込んだのだ。すぐに追いついたルイズは、怒りによる喉の渇きを
その場にあったワインで潤してから、いよいよ才人を追い詰めたのだが、その時に異常が発生した。
何と、ルイズの怒りが急激に消え去り、代わりに才人への尽きることのない好意が湧いて、
彼にベッタリになってしまったのだ。
才人は助かったことを喜ぶより、不自然に態度が急変したルイズを怪しんだ。そしてその原因を調べると、
すぐにモンモランシーに行き着いた。何とあの時モンモランシーは、極度の浮気性に手を焼かされる
ギーシュを自分の虜にするために、ワインに違法の強力な惚れ薬を混ぜて飲ませようとしていたのだ。
それをルイズが飲んでしまったという訳だ。
すぐにルイズを元に戻したいと考えた才人は、モンモランシーを半ば脅迫して解除薬を
作らせることにした。だが、ここでまたも問題が一つ発生した。解除薬に必要な材料の一つ、
ラグドリアン湖の水の精霊の涙が売り切れで、再入荷も絶望的な状態らしい。何でも、
精霊との連絡が取れなくなったとか。だが才人は諦めなかった。待っても再入荷されないなら、
こっちからもらいに行けばいい。
こうして、才人とモンモランシー、そしてついてきたギーシュと才人から離れようとしない
ルイズの四人は、はるばるラグドリアン湖へやってきたのだった。
……ちなみにこの一部始終を、ゼロは心底呆れ返りながら傍観していた。
「サイトぉ~」
ルイズは相変わらずの調子で、猫のようにゴロゴロ喉を鳴らして才人に甘えている。
男冥利に尽きる状況だが、才人はげんなりとしている。
「……やっぱり早く元に戻さないとな。こんな調子で四六時中くっつかれてたら、俺の身体が持たねえや」
『そうだな。このまんまじゃ俺も、怪獣退治の任務を果たせないぜ』
才人の独白に相槌を打つゼロ。何せ、ルイズが片時も才人を離そうとしないので、変身して
怪獣との戦いに赴くことが出来ないのだ。現にここに至るまでに一度怪獣が出現したのだが、
その時も聞き分けのなくなったルイズに捕まってしまったので、グレンファイヤー探しで忙しい
ミラーナイトに代わりに出動してもらう羽目になった。ミラーナイトからも現状を呆れられてしまった。
才人とゼロがルイズを元に戻す意志を固めていると、びしょ濡れのギーシュそっちのけで
湖面を見つめていたモンモランシーが、首をひねった。
「ヘンね」
「どうした? どこがヘンなんだ?」
才人が聞き返すと、モンモランシーがラグドリアン湖の異常を説明する。
「水位があがってるわ。昔、ラグドリアン湖の岸辺は、ずっと向こうだったはずよ」
「ほんと?」
「ええ。ほら見て。あそこに屋根が出てる。村が飲まれてしまったみたいね」
モンモランシーが指差した先に、藁葺きの屋根が見えた。才人は、澄んだ水面の下に黒黒と
家が沈んでいることに気づいた。モンモランシーは波打ち際に近づくと、水に指をかざして
目をつむった。
モンモランシーはしばらくしてから立ち上がり、困ったように首をかしげた。
「おかしいわ。水の精霊の気配を感じない」
「そんなのわかるのか?」
「わたしは『水』の使い手。香水のモンモランシーよ。このラグドリアン湖に住む水の精霊と、
トリステイン王家は旧い盟約で結ばれているの。その際の交渉役を、『水』のモンモランシ家は
何代もつとめてきたわ」
「今は?」
「今は、いろいろあって、他の貴族がつとめているわ。ともかく、そういう訳で、わたしは
水の精霊の気配を感じることが出来る。……そのはずなのに、今は何も感じないわ。
どういうことなのかしら……」
モンモランシーが訝しんでいると、木陰に隠れていたらしい老農夫が一人、一行の元へとやってきた。
「もし、旦那さま。貴族の旦那さまがたは、もしや、人さらいの亜人どもを退治しに参られたかたがたで?」
「えッ! それ、何の話? ラグドリアン湖に何が起きてるの?」
いきなり物騒な話をされて驚く一行を代表して、モンモランシーが問い返した。農夫は違うことを
悟ると深く落ち込んだが、それでも事情を教えてくれた。
「まず二年ほど前から、増水が始まったんでさ。ゆっくりと水は増え、今ではわしの屋敷まで沈んじまった。
けど今思えば、それはまだましな方でしたわ。ここ最近は、それに加えて、湖の周辺で見たことのない姿の
亜人が夜中に目撃されるようになったんでさ。それと同時に、村の人間が少しずつ消えてくようになったんですよ。
きっと、その亜人どもの仕業に違いねえ。それなのに、領主さまも女王さまも、今はアルビオンとの戦争に
かかりっきりで、こんな辺境の村など相手にもしてくれませんわい。わしらはいっそのこと、村を捨てるべきかと
本気で考えてる次第です」
よよよ、と老農夫は泣き崩れた。彼の話の深刻さに、才人たちは同情を寄せる。
「その見たことのない亜人とは、どんな姿なのかね?」
ギーシュが尋ねると、農夫が身振り手振りを入れつつ説明する。
「わしが見た訳じゃないんですけど、何でも頭のてっぺんが皿でも乗っけてるように平らで、
口は鳥のくちばしのようにとんがってるそうです。しかも、魚のように水の中で生きてるみてえで。
湖の中から這い出てきたとこを見たという奴が何人もおりますわ。水の精霊は、どうしてそんな連中を
湖に住まわせたのやら……」
農夫の証言を聞いて、才人が呟く。
「丸で河童だな」
「カッパ?」
河童を知るはずがないギーシュらが聞き返すと、才人が説明を挟んだ。
「俺の故郷に伝わる……まあ、亜人みたいなもんさ」
「ふぅん? 案外、それが正体だったりしてね」
「まさか。サイトの故郷ってはるか東のロバ・アル・カリイレなんでしょ? そこの生き物が、
トリステインにいる訳ないわ」
話し合っても、亜人の正体はさっぱり分からなかった。それから、農夫が落胆して去っていったあとで、
モンモランシーが腰にさげた袋からなにかを取り出した。それは一匹のカエルであった。鮮やかな黄色に、
黒い斑点がいくつも散っている。
「カエル!」
カエルが嫌いなルイズが悲鳴をあげて、才人に寄り添う。
「なんだよその毒々しい色のカエルは」
「毒々しいなんていわないで! この子はロビンって言って、わたしの大事な使い魔なんだから!」
モンモランシーはカエルを湖の中に入れ、水の精霊を探しに行かせる。だがしばらくした後に、
モンモランシーの下へ戻ってきた。カエルからの報告に、顔をしかめる。
「やっぱり、湖のどこにもいないみたい。どこかの貴族に連れられて、別の場所に行ってるだけなら
いいんだけど……この異常な状況じゃ、その線は薄いわね。きっと、何か訳があって身を隠してるんだわ……」
「さっきの人が言ってた亜人ってのが関係してそうだな」
推測した才人は、次のことを提案する。
「その亜人って、夜になると現れるんだったな。じゃあ夜を待って、そいつを捕まえようじゃないか。
きっと水の精霊の手掛かりが掴めるはずだ」
「それ、本気で言ってるのかね!? ぼくは手荒なことは、その、あまりしたくないぞ。危険だし……」
怖気づいて尻込みするギーシュだが、モンモランシーは対照的に意気込む。
「わたしはやるわ。元とはいえ、わたしは水の精霊との交渉役のモンモランシ家に連なる身。
水の精霊の異常を見過ごす訳にはいかない」
「うッ、モンモランシーはやるのか。だったら、ぼくがやらない訳にはいかないな。愛しい
モンモランシーを残して学院には帰れないよ……」
まだ怖がっているものの、ギーシュが意見を翻した。
「ギーシュ、わたしのために……」
「当然さ、モンモランシー……」
「はいはい。そういうのは終わってからにしてくれ」
見つめ合って二人の世界に入ろうとするギーシュとモンモランシーを、才人が現実に引き戻した。
そして才人たち一行は、夜になると、湖の岸辺の木陰に隠れ、亜人とかいうものが現れるのを待ち受けた。
「地元の人の話じゃ、この辺りでよく目撃されるみたいだ。どんな顔してるか知らないが、
出てきたらすぐにとっ捕まえてやるぜ」
才人は既にデルフリンガーを抜き、木陰からわずかに顔を覗かせて、岸辺をじっと見張っている。
その背中には、相変わらずルイズがピッタリ張りついていた。
「わたしは戦いなんて出来ないから、捕獲はあなたたちに任せたわよ」
「安心してくれモンモランシー。ぼくの勇敢な戦乙女たちが、亜人なんぞ簡単にひねり上げてくれるさ」
モンモランシー相手に見栄を張っているギーシュだが、恐怖心がなくなった訳ではなく、
脚はガクガク震えていた。それを紛らわすためにワインをあおっていて、顔が赤い。これで本当に
使い物になるのかと、才人は若干不安だった。
そうしていると、デルフリンガーが声を上げた。
「相棒、誰かやってきたぜ」
「亜人か!?」
「ローブをすっぽり被ってるから、そこまでは分かんねえな」
才人が岸辺を確認すると、確かに、デルフリンガーの証言通りの人影が現れていた。人数は二人で、
随分身長に差がある。
亜人でなくとも、既に地元の人間は誰も寄りつかなくなったこの場所にやってくるとは、
ただ者ではないはず。一体誰だ、と思っていると、ゼロが不意に告げた。
『あいつら、キュルケとタバサじゃねぇか』
「え?」
思わず目を見張った才人は、ルイズをどうにかなだめて自分から離し、木陰から出てそっと
人影に近づいていった。そして名前を呼ぶ。
「おい、キュルケ! タバサ!」
「えッ!? その声はダーリン!」
振り返った二人組は、目深に被ったフードを取り払った。その下からは、よく見知った顔が出てくる。
ゼロの言った通り、キュルケとタバサだった。
「お前ら、どうしてこんな場所にいるんだ!」
「そっちこそ、どうしてこんなところにいるのよ? ここ、ガリアの領地よ」
才人とキュルケは互いに同じ質問をした。するとそこに、木陰に待たせていたルイズが
才人へと走り寄ってきて、悲しそうにパーカーの袖を引っ張った。
「キュルケがいいの?」
「だから違うって! ややこしくなるから、お前はちょっと黙っててくれ」
ギーシュとモンモランシーも才人たちの下へやってくる中、キュルケはぽかんと今のルイズを見つめた。
そして才人に聞く。
「いつのまにルイズを手なずけたの?」
「いや、そうじゃねえから」
才人はキュルケたちに、ここまでの経緯を説明した。
「なるほど、モンモランシーのせいでこんなことに……。まったく、自分の魅力に自信のない女って、最低ね」
「うっさいわね! しかたないじゃない! このギーシュったら浮気ばっかりするんだから!
惚れ薬でも飲まなきゃ病気が治らないの!」
「もとを辿れば、ぼくのせいなのか? うーむ」
モンモランシーとギーシュのコントは置いて、今度は才人が質問する番になる。
「それでそっちは、どういう理由でここにいるんだ?」
聞かれて、キュルケは困ってしまった。彼女はタバサの事情を知っているのだが、それは
才人たちに教えるのは憚られる内容なのだ。それで無難な説明をする。
「そ、その、タバサのご実家に頼まれたのよ。この辺に出る亜人が、タバサの実家の領地に
被害を出してるから、退治を頼まれたってわけ」
「お前たちも同じような目的だったのか」
納得した才人は、周辺に目を配る。
「それで、問題の亜人は今どこに……」
と噂したからなのか、周辺の草むらがいきなり、ガサッと音を立てて揺れた。
「きゃあッ!? な、何!? 誰かいるの!?」
モンモランシーが脅えて大声を出したが、草むらからは何も出てこない。だがその代わり、
森の中で黒い影が頻繁に動き回るところが目に入る。
「な、何者だあ!? か、か、隠れてないで出てこい! 卑怯者めぇ!」
半狂乱になってガチガチ歯を鳴らすギーシュが、小刻みに震える手で杖を握り締めて叫んだ。
恐怖に打ち震えるギーシュとモンモランシーを尻目に、タバサが才人とキュルケに囁きかける。
「気をつけて。囲まれてる」
「えッ!?」
「相棒、後ろだ!」
突然デルフリンガーが叫んだ。それと同時に、人間に似た影が湖面から飛び出し、才人たちに
襲い掛かってきた!
「きゃあああッ!」
悲鳴を上げるルイズ。だが素早く反応した才人が振り向き様にデルフリンガーを振るったことで、
影はバッサリ斬られて仰向けに倒れた。
「うわッ!? 河童!」
影の正体を見た才人が叫んだ。口元は鳥のもののようにとがり、四本指の間に水かきを持った容貌は、
河童そのものだったのだ。
しかしそれを、ゼロが否定した。
『こいつは亜人でも、ましてや河童でもねぇ! テペト星人だ!』
「えッ!? テペト星人だって!?」
すぐに才人が通信端末で検索すると、今目の前にいる怪人と全く同じ姿の宇宙人が引っ掛かった。
ラグドリアン湖の亜人の正体は、侵略者テペト星人だったのだ。
「カァ――――――――!」
仲間の一人の後に続くかのように、湖や森の中から、大量のテペト星人が飛び出てきて
才人たちに押し寄せてきた。
「きゃああああ! た、たくさん来たぁ!」
「お、おのれ! モンモランシーには手出しさせないぞ!」
モンモランシーが悲鳴を上げると、ギーシュがなけなしの勇気を奮い立たせた。青銅のワルキューレを
作り出して、テペト星人の軍団を迎撃する。
キュルケとタバサはすぐに攻撃を仕掛けた。火炎球と氷の矢を放ち、迫るテペト星人を片っ端から薙ぎ倒す。
「おらぁッ!」
才人も、今は震えるばかりのルイズをかばい、テペト星人をばっさばっさと斬り伏せる。
突然の襲撃に度肝を抜かれた一行だが、驚いていたのは一瞬だけで、テペト星人を次から次へと
返り討ちにしていった。特にキュルケとタバサのコンビが最も敵を倒した。二人の連携は見事で、
一方が呪文を唱えている間に、もう片方が攻撃魔法を放ち続けることで、全く隙を作らなかった。
「こいつら、アルビオンに出てきた連中より、はるかに弱いわね」
自分たちに手出し出来ないでやられていくテペト星人に対して、キュルケが余裕ぶって評した。
確かに、テペト星人は特筆するような戦闘能力を持たず、巨大化することも出来ない。
かつて地球に侵入した者たちも、ウルトラ警備隊が生身で難なく撃退したほどだ。
だが、敵もわざわざやられるためにやってくるのではない。ブラック星人がスノーゴンを
手元に置いていたように、戦闘力のない侵略者は往々にして、代わりの戦力を所持している
ものであることを才人は知っていた。
「! 見て!」
「な、何あれ!? でっかい卵!?」
果たして、テペト星人との交戦中に、ラグドリアン湖の中央に途轍もなく巨大な卵が浮かび上がってきた。
タバサとキュルケが見ている中で卵はすぐにひび割れ、中から巨大怪獣が現れる。
「キャ――――――――!」
卵の中から出現した、一つ目で頭頂部が皿の形状になっている、これまた河童そっくりな怪獣こそ、
テペト星人の用心棒で、彼らの住む星の名前を与えられた大怪獣、テペトであった。
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#navi(ウルトラマンゼロの使い魔)
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