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マジシャン ザ ルイズ (1)堅牢なる監獄チェルノボーグ
チェルノボーグ監獄。
トリステイン城下において、最も厳重な警備と監視が行われている犯罪者の収容施設。
今、土くれのフーケはそこにいた。
「土くれのフーケ!裁判は来週中に行われる予定だ。
お前もチェルノボーグ監獄の噂くらいは知っているだろう。
妙な気など起こさず大人しくしていることだ!」
「……杖が無くちゃ、何も出来ないわよ」
看守に返すフーケの口調も何処か弱々しい。
ベットで横になる、その頭に過ぎるのは先ほど自分が言った言葉だった。
(杖が無くちゃ、魔法は使えないわよ……なのに、なぜあの男は使えたの?)
脳裏に過ぎるのは、この場所に来る直接の原因となった男の姿。
あの時、ウルザは確かに背にした杖を地面に捨てていた。
その上で、徒手のまま呪文を唱え、フーケの手の中にあった『禁断の剣』を破壊したのだ。
(まさか、別の杖を隠し持っていたの?………いいえ、違う、そんな仕草は無かった。では奇術?呪文を唱えるようにして、剣に細工して破壊した?)
これならば有り得そうな話である。
しかし、彼女の直感は、あの時ウルザが魔法を使ったと感じている。
フーケは自らの感じたことを蔑ろにしない。これまで、それに何度も命を助けられ、盗賊となった後も自分を良く助けてくれている。
人間の直感は、時に冷静な思考よりも、的を射た回答を導き出す。
彼女はそれを経験から学んでいた。
「ああ、もう分からないことだらけねっ!
大体何なのよあの爺さん。 メイジの癖に両手に剣を持ってゴーレムと戦ったり、変なもの呼び出したり。
歳とは思えないほどすばしっこかったり、最後は別の世界がどうとか……全然、意味わかんないわ」
「何が、分からないのかな?土くれ」
「っ!!!」
自分の考えに没頭しすぎていたのだろうか、気付いた時には、牢の前には影一つ。
長身をローブで覆っている、手には杖、顔は白い仮面で分からない。
「警備厳重なチェルノボーグ監獄まで来ていただいて残念ですけど、ここには客人をもてなすような気の利いたようなものはございませんの」
「では、そのように不便なところから出たいとは思わんかね?マチルダ・オブ・サウスゴータ」
「!」
再びフーケの絶句。
かつての自分の名前を知る人間が、なぜトリステインに?そして、知っているならなおさら、何の為にこんなところに?
「あんた………何者?」
「我々は国の将来を憂い、国境を越えて繋がった貴族達の連盟」
「まさか…王家に楯突く気?正気じゃないわ」
「………その通り、我々の目的は革命だ。
無能なアルビオン王家は近く倒れる。
そして我々の手でハルケギニアは統一され、エルフどもから始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を回復するのだ」
「………で、ご大層な理想を掲げるお貴族様達が、こそ泥風情に何の用かしら」
「我々は優秀な同士が一人でも多く欲しい、協力してくれないかね?」
「………断ることなんて出来ないんでしょ……わかったわ、協力する」
「さすが土くれ、分かってくれたか」
「それで、あんた達の連盟とやらはなんて言うのかしら?」
「レコン・キスタ」
小船の上、小さなルイズが膝を抱えて丸くなっている。
―――上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……
―――ルイズお嬢様は難儀ねぇ
―――まったくね貴族なのに
―――魔法が使えないなんてね
水に浮かぶ小船、そこはルイズのたった一つの安らげる聖地。
「お父さまは毎日お忙しくしているし…お母様もお話してくださるのは魔法のことだけ…
お姉さま方はお勉強ばかりで、相手にしてくださらない…
私はここで…一人ぼっち…」
―――ルイズ、どうしたんだい?
「え!?」
驚いて顔を上げるルイズ、そこには何処か懐かしい、見覚えのある青年の姿。
「泣いているのかい?」
「―――子爵さまっ!」
慌てて起き上がり、身だしなみを整えるルイズ。
子爵と呼ばれた男は、記憶のまま、柔らかな微笑みで少女を見守っている。
「い、いらしてたの?」
「ああ、君のお父上に呼ばれたのさ。あの話のことでね」
「あの話…って、いやですわ、子爵様ったら」
「ははは、ルイズ、僕の小さなルイズ…君は僕が嫌いなのかい?」
「そ、そんなことはありませんわ…でも、私はまだ小さいし、よく分かりません…」
頬を染めるルイズ、そこへ手を差し伸べる青年。
「行こうかルイズ、晩餐会が始まるよ。きっと皆待っている」
「―――でも」
やさしい目のまま、語りかける子爵。
「また怒られたんだね?
安心して…ぼくから、母上にとりなしてあげるよ。
ほら、掴まって、ミ・レディ」
「はい…!」
突然の風。
子爵の帽子が空を舞う。
髪を押さえて伏せていたルイズが、面を上げるとそこには子爵の姿は無い。
「おいで、私が君を導いてあげよう、ミス・ルイズ」
手を差し伸べている白い髭を生やした色眼鏡の男、ウルザ。
「―――――――っ!!!!」
ばね仕掛けの人形のように、ベットから飛び起きるルイズ。
ここはトリステイン魔法学院、ルイズの自室。
暗い闇夜、煌く星々。窓の外は今が夜であることを示している。
「………夢?」
「今日は随分と早起きではないかね、ミス・ルイズ」
部屋の隅の机、振り返ることもせずにウルザ。
「今しばらくの間、寝ているといい。朝になれば私が起こそう」
「……ミスタ・ウルザ、あなたは寝ないの?」
「………もう暫くしたら、眠ることにするよ」
チェルノボーグ監獄には、脱獄を成功させたものは誰一人として収監されていない
――――チェルノボーグの監視者
#center(){ [[マジシャン ザ ルイズ]] [[進む>マジシャン ザ ルイズ 2章 (2)]]}
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マジシャン ザ ルイズ (1)堅牢なる監獄チェルノボーグ
チェルノボーグ監獄。
トリステイン城下において、最も厳重な警備と監視が行われている犯罪者の収容施設。
今、土くれのフーケはそこにいた。
「土くれのフーケ!裁判は来週中に行われる予定だ。
お前もチェルノボーグ監獄の噂くらいは知っているだろう。
妙な気など起こさず大人しくしていることだ!」
「……杖が無くちゃ、何も出来ないわよ」
看守に返すフーケの口調も何処か弱々しい。
ベットで横になる、その頭に過ぎるのは先ほど自分が言った言葉だった。
(杖が無くちゃ、魔法は使えないわよ……なのに、なぜあの男は使えたの?)
脳裏に過ぎるのは、この場所に来る直接の原因となった男の姿。
あの時、ウルザは確かに背にした杖を地面に捨てていた。
その上で、徒手のまま呪文を唱え、フーケの手の中にあった『禁断の剣』を破壊したのだ。
(まさか、別の杖を隠し持っていたの?………いいえ、違う、そんな仕草は無かった。では奇術?呪文を唱えるようにして、剣に細工して破壊した?)
これならば有り得そうな話である。
しかし、彼女の直感は、あの時ウルザが魔法を使ったと感じている。
フーケは自らの感じたことを蔑ろにしない。これまで、それに何度も命を助けられ、盗賊となった後も自分を良く助けてくれている。
人間の直感は、時に冷静な思考よりも、的を射た回答を導き出す。
彼女はそれを経験から学んでいた。
「ああ、もう分からないことだらけねっ!
大体何なのよあの爺さん。 メイジの癖に両手に剣を持ってゴーレムと戦ったり、変なもの呼び出したり。
歳とは思えないほどすばしっこかったり、最後は別の世界がどうとか……全然、意味わかんないわ」
「何が、分からないのかな?土くれ」
「っ!!!」
自分の考えに没頭しすぎていたのだろうか、気付いた時には、牢の前には影一つ。
長身をローブで覆っている、手には杖、顔は白い仮面で分からない。
「警備厳重なチェルノボーグ監獄まで来ていただいて残念ですけど、ここには客人をもてなすような気の利いたようなものはございませんの」
「では、そのように不便なところから出たいとは思わんかね?マチルダ・オブ・サウスゴータ」
「!」
再びフーケの絶句。
かつての自分の名前を知る人間が、なぜトリステインに?そして、知っているならなおさら、何の為にこんなところに?
「あんた………何者?」
「我々は国の将来を憂い、国境を越えて繋がった貴族達の連盟」
「まさか…王家に楯突く気?正気じゃないわ」
「………その通り、我々の目的は革命だ。
無能なアルビオン王家は近く倒れる。
そして我々の手でハルケギニアは統一され、エルフどもから始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を回復するのだ」
「………で、ご大層な理想を掲げるお貴族様達が、こそ泥風情に何の用かしら」
「我々は優秀な同士が一人でも多く欲しい、協力してくれないかね?」
「………断ることなんて出来ないんでしょ……わかったわ、協力する」
「さすが土くれ、分かってくれたか」
「それで、あんた達の連盟とやらはなんて言うのかしら?」
「レコン・キスタ」
小船の上、小さなルイズが膝を抱えて丸くなっている。
―――上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……
―――ルイズお嬢様は難儀ねぇ
―――まったくね貴族なのに
―――魔法が使えないなんてね
水に浮かぶ小船、そこはルイズのたった一つの安らげる聖地。
「お父さまは毎日お忙しくしているし…お母様もお話してくださるのは魔法のことだけ…
お姉さま方はお勉強ばかりで、相手にしてくださらない…
私はここで…一人ぼっち…」
―――ルイズ、どうしたんだい?
「え!?」
驚いて顔を上げるルイズ、そこには何処か懐かしい、見覚えのある青年の姿。
「泣いているのかい?」
「―――子爵さまっ!」
慌てて起き上がり、身だしなみを整えるルイズ。
子爵と呼ばれた男は、記憶のまま、柔らかな微笑みで少女を見守っている。
「い、いらしてたの?」
「ああ、君のお父上に呼ばれたのさ。あの話のことでね」
「あの話…って、いやですわ、子爵様ったら」
「ははは、ルイズ、僕の小さなルイズ…君は僕が嫌いなのかい?」
「そ、そんなことはありませんわ…でも、私はまだ小さいし、よく分かりません…」
頬を染めるルイズ、そこへ手を差し伸べる青年。
「行こうかルイズ、晩餐会が始まるよ。きっと皆待っている」
「―――でも」
やさしい目のまま、語りかける子爵。
「また怒られたんだね?
安心して…ぼくから、母上にとりなしてあげるよ。
ほら、掴まって、ミ・レディ」
「はい…!」
突然の風。
子爵の帽子が空を舞う。
髪を押さえて伏せていたルイズが、面を上げるとそこには子爵の姿は無い。
「おいで、私が君を導いてあげよう、ミス・ルイズ」
手を差し伸べている白い髭を生やした色眼鏡の男、ウルザ。
「―――――――っ!!!!」
ばね仕掛けの人形のように、ベットから飛び起きるルイズ。
ここはトリステイン魔法学院、ルイズの自室。
暗い闇夜、煌く星々。窓の外は今が夜であることを示している。
「………夢?」
「今日は随分と早起きではないかね、ミス・ルイズ」
部屋の隅の机、振り返ることもせずにウルザ。
「今しばらくの間、寝ているといい。朝になれば私が起こそう」
「……ミスタ・ウルザ、あなたは寝ないの?」
「………もう暫くしたら、眠ることにするよ」
チェルノボーグ監獄には、脱獄を成功させたものは誰一人として収監されていない
――――チェルノボーグの監視者
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