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スクライド・零 17
「おいでなすったな」
ゴーレムを目に入れたカズマが凶悪な笑い顔でアルターを発動させた。
まず最初に仕掛けたのはタバサだ。自らの身長より大きな杖を構えルーンを唱えると
巨大な竜巻が発生しゴーレムにぶち当たる。
続けてキュルケが胸元から杖を引き抜きルーンを唱える。杖から伸びた火焔は
狙い違わずゴーレムを捉えた、が。
「効いてない!?」
「前より頑丈」
「上等ぉ!」
二人を飛び越えシェルブリットの一撃。
さすがにこいつはゴーレムも腕でかばう。しかしまたも崩れるのはその部分だけで
その腕もやはり瞬く間に修復されてしまう。
「相変わらずかよ」
忌々しげにつぶやくカズマ。
「術者を倒さないとどうにもならないわよ~」
魔法の炎を振りまきながらキュルケがのんきに声を上げると、タバサの指笛が響き渡った。
「杖は取り返した。退却」
それに異をとなえる者がいた。
「ダメよ、ミス・ロングビルが無事かもわからないのに」
ルイズである。彼女も魔法を唱えてゴーレムに攻撃している。もちろん不本意ながらの失敗魔法なのだが、
その爆発は修復こそされるモノのキュルケの炎などと違い確実に表面をはじき飛ばしている。
「大丈夫」
タバサが言う。
「もしフーケに捕まっているなら、私たちが抵抗しないように人質として連れてくるはず。
だからきっと大丈夫」
納得していない表情のルイズにカズマが叫ぶ。
「そんなに気になるなら自分で探してこい。こいつはオレがぶちのめす!」
「ダメよ、そんなの。使い魔を見捨てるようなことができるわけないじゃない」
この間にもゴーレムの攻撃は続いている。
全力で破壊してしまってはまたその隙に反対の腕が襲ってくるため、
カズマのシェルブリットは速い回転でゴーレムをいなすようにさばいていたが、
それを真っ正面から受け止めて振り返る。
「そんなん知るか!じゃあテメーはどうしたいんだ」
そうこうしているうちに上空に影がよぎる。タバサの使い魔である風竜のシルフィードが
呼びかけに応じて現れたのだ。そして滑空に遷り超低空でタバサをかっさらうと、
さらに返す刀でキュルケもすくい上げた。
「ちょっとタバサ、あの二人も助けないと」
「無理、ゴーレムに近すぎる」
そんな、とつぶやくとキュルケはシルフィードの背で怒鳴る。
「ルイズ! カズマ! 援護するから離れて」
カズマは相変わらずルイズと向き合っていた。
ゴーレムが強引に腕を引き抜き反対側で殴りかかるのを、見もせず受け止めルイズを見つめ続ける。
「え、どうすんだ、ルイズよぉ」
ゴーレムの腕は縫いつけられたように、つかんだまま握りこんだカズマの拳から離れることができない。
反対側の腕で手首あたりを殴りつけ、自ら破壊して脱出する。
修復するまで使えない腕の代わりにその足をおろす、それもルイズに向かって!
そう、30メイルものサイズの歩幅からするとカズマを踏みつぶすのもルイズを狙うのも
なんら変わらないのだ。しかもカズマだとその足をつぶされる可能性の方が高い。
「なにぃ!」
「ルイズ、手を!」
キュルケの声。
シルフィードが舞い降りること三度目。間一髪ルイズはゴーレムの足の下を逃れ
キュルケの腕に抱きかかえられて空へ。
「余計な色気出してんじゃねぇぞ、コラ」
その踏み込んだ足はカズマの一撃で粉々に砕かれ、結果自分で殴り壊した腕の修復が
完了していなかったゴーレムは、長さの食い違う手をついたせいで転倒する。
「今だわ」
ルイズはキュルケの腕を振り払うと、破壊の杖をひっつかんでシルフィードの背から飛び降りる。
「ちょっとルイズ、何やってるのよ!」
「レビテーション」
タバサの魔法により、からくもルイズと地面の激突は避けられた。
「お前、何しに来た」
「決まってるでしょう。あのゴーレムをやっつけるのよ、この【破壊の杖】で」
決意に満ちたルイズの目。すでに先ほどカズマに『どうしたい?』と問われたことは
頭から消し飛んでいる。
だがそれを聞いて腰が砕けたカズマ。
「ルイズ、それ使い方わかってんのか?」
若干呆れが声に潜んでいる。
「わかんないけど、でも、それでも私は貴族なの。魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ」
カズマはその声を聞いている。
「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」
そう言って【破壊の杖】を振るった。
「なんで、なんでよ?」
どんなに魔法を使う要領で【破壊の杖】を振り回しても何も起きない。
私では使えないのか、やはり自分は『ゼロ』なのか?
そこへカズマが声をかけた。
「ルイズ、お前の『弱い考え』はなんだ」
「なによそれ。そんなことが今なんだって言うのよ」
ゴーレムの手足の修復はもう終わる。
「答えろ!」
「わかんない! そんなの!」
「いいから答えろ!」
ルイズは思う、こんなじれったいことしていられないのに!
だがカズマの目はそらすことを許さない。
「それは、ここで負けてみんなやられちゃうこと」
なんとか言葉をひねり出す。が、
「違う! オメーにはもっと『弱い考え』があんだろうが」
一言の元に否定される。しかし冷静に考えれば惨(むご)いセリフではある。
「違うとは言わせねぇ。テメーにはあるはずだ。お前はもうそれに『反逆』してるはずだ!」
もうゴーレムは起きあがった。だがやはりカズマはルイズから目を離さない。
「認めろ、ルイズ」
「お前は」
「『ゼロ』と呼ばれ続けることに」
「とっくに反逆してる」
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