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「ゼロみたいな虚無みたいな-03」(2011/07/16 (土) 06:57:06) の最新版変更点
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#navi(ゼロみたいな虚無みたいな)
窓を通して木漏れ日が差し込み、小鳥の囀りがかすかに聞こえてくるルイズの自室。
「朝ですよー」
「んー……」
朝を告げる声と頬を何かがつつく感触に、心地よく眠っていたルイズは目を覚ました。
「起きてっ♪」
ベッドに入ってきたあぽろがそう言いつつ後方から抱きついてきた事に気付いて、ルイズは目を見開く。
「なっ、何でベッドに入ってきて起こすのよっ」
「さあっ、今日は海に行くんだから準備準備♪」
赤面したルイズが飛び起きてそう尋ねると、あぽろはウインクしながら彼女を海へと誘った。
「海? いつよ……」
まだ完全に眠気が取れていない気だるげな表情で尋ねたルイズにあぽろは満面の笑みで、
「うん、今日です」
「なっ、何でこんな朝早くに……」
「いっそげ、急げー♪」
魔法学院から程近い森の中、小さな鞄片手に進むあぽろを大荷物を抱えたルイズが息を切らしつつ追っていた。
「そんなに荷物持ってくるからだよー」
「反対に海行くのにアポロの荷物の少なさは怖いわよ」
「あ!」
茂みをかき分けたあぽろの目の前には……、
「着いたあ!」
木々の間から見える限り青い空に青い海という、素晴らしい絶景が広がっていた。
「あら!」
「おはよう」
到着したあぽろ達をスイカを抱えたキュルケ・麦わら帽子姿のロングビルが出迎え、その向こうではタバサ・シルフィードが追いかけっこをしていた。
「えっ、みんなも来てたの? ミス・ロングビルまで……」
「今日は泳げないルイズちゃんをみんなで特訓なんですっ。ちゃんと単位貰えないと、夏休み補習になっちゃう! そしたら遊びに行けなくなっちゃうでしょーっ!」
そう力説するあぽろの脳裏には、ルイズと過ごす夏休みの楽しい日々が次々浮かんでいた。
「確かに泳げないとって思ったけど、何でプールじゃなくて海なのよ?」
「お昼はバーベキューだよ♪」
満面の笑みを浮かべつつ、口からこぼれた唾液を手で拭うあぽろ。
「それが目的ね……」
あぽろに呆れた視線を送りながらも、ルイズは着替えのために先程出てきた森の茂みに戻っていった。
「で、みんな泳げて私だけカナヅチなわけね」
「だよ♪ 今日はみんな先生なのですっ」
茂みから出てきたルイズの水着は、お世辞にもスタイルがいいとは言い難い彼女にしても少々小さめで、上下共に隠すべき部分を隠すので精一杯という印象を受ける物だった。
「ところでルイズちゃん、何かいろいろはみ出そうな水着……」
「ちい姉様が送ってくれたのっ! ほっといてっ!」
そんなルイズの水着の刺激に、あぽろは手で目を覆い隠し(指の間からしっかり見ていたが)シルフィードも赤面していた。
「まったく……(少し痩せよう……)」
腕で胸を隠し前屈みになり、そんな決心をしつつ波打ち際に歩いていくルイズ。
と、そんなルイズにあぽろが声をかける。
「あ、ルイズちゃん、そこじゃないの練習場所」
「え、そう?」
「ここ?」
「うんっ♪」
と言ってあぽろがルイズを案内したのは、高さが20メイルはありそうな断崖絶壁の上だった。
「ルイズちゃん1人だと怖いかなと思って、あぽろがついてきました♪」
「何でいきなりスパルタなのよっ!」
「えー、死ぬか生きるかの練習じゃないと、人間いきなり泳げるようにならないよ」
「あんた意外ときついのね」
そんなやり取りをしている間にも、あぽろはルイズの背中を軽く押した。
「きゃうっ!」
バランスを崩しながらもどうにかこうにか踏みとどまったルイズは、後方に振り返りあぽろの首を締め上げる。
「あっんたはーっ!」
「苦しーよお」
「あうー、酷いよー」
「まだ言うのっ、謝りなさいーっ!」
そんなやり取りをする2人の足元の岩に亀裂が入り……、
──ガラ
上に乗っていた2人諸共海面に向けて落下した。
「嫌ーっ!」
ルイズは恐怖のあまり渾身の力であぽろの体にしがみつく。
「あうっ、ルイズちゃん、そんなにくっついたらっ」
時間は少々遡る。
ルイズ達が先程までいた砂浜ではシルフィードがマシュマロを刺した串片手に、
「お姉様、マシュマロ焼いてもいーい?」
「……いいけど……食べ過ぎたらごはん入らなくなる……」
「へーきなのね♪ んー、いい匂い♪」
タバサからの忠告にも耳を傾けず、シルフィードは串焼き肉を焼いている金網でマシュマロを焼き始める。
(……可愛いな……すぐお腹いっぱいになるくせに……)
「いただきまーす♪」
焼き色が付いて甘い匂いを漂わせるマシュマロを頬張り、シルフィードは満面の笑みを浮かべる。
「んーっ、幸せなのねー♪ 美味しいのねっ」
――ドッボオオンッ!
そのシルフィードから25メイルと離れていない場所で、転落したルイズ・あぽろによって激しい水柱が上がった。
「アっ、アポロ! アポロー、どこ!? 助けて……」
やっとの思いで海面から顔を上げ、あぽろの姿を探すルイズ。
そのあぽろは海面で腹部を打ったのか意識が無く、そのまま海中に沈んでいった。
「この役立たずーっ!」
そして程なくしてルイズも水面下へと沈む。
(どうしようっ、どうしよう……)
あぽろを探す余裕も無く懸命に水面に浮上し、ルイズは海岸にいる一同に助けを求める。
「ぷはっ! みっ、みんなー!」
「およっ?」
砂で人形を作っていたシルフィードがそれに気付いたものの、
「ルイズ、手振ってるのね」
「……ほんとだ……」
楽しそうに手を振り返す一同に、涙を流しつつ怒鳴り返すルイズ。
「みんな肉にあたって苦しみなさいっ!」
ルイズの体は再度海中に沈んだ。
口元を手で抑えるという努力も虚しく、ルイズが吸い込んでいた空気は呼気として放出されていく。
(駄目……、苦しいっ。このまま死んだら、ちい姉様にサイズ嘘吐いたままになっちゃう)
その時、ふとルイズの脳裏にあぽろの横顔が浮かんだ。
(アポロ……。読みかけの本も最後がわからないまま……、ここで死んじゃうの? って、あの馬鹿のせいで今こうなってるんじゃないっ! この馬鹿と一緒に死ぬのは嫌よ!)
どうにかこうにか海底に沈んでいたあぽろを発見、意識の無い彼女を引っ張りながら海岸に到達したルイズ。
「はあっ、はあっ……、げほっ、げほっげほっ……(絶対生きて帰って1発殴ってやるんだからっ!)」
そんなルイズに海岸で待っていたキュルケ達が駆け寄り、言葉をかけてくる。
「おかえりー。お肉焼けてるわよー」
「要らない……」
「これで来週の体育で合格貰えるのねー」
「うん……」
ひと心地ついてから、ルイズは傍らに横たわっているあぽろに視線を向ける。
「(私がしがみついて海に落ちたから、アポロ溺れちゃったんだ……)あぽろ、もう大丈夫よ。起きて……ねえっ」
ルイズはあぽろの頬を数回はたいてみたが、あぽろが意識を取り戻す気配は無い。
「アポロ溺れたの? 起きるの?」
「……うん……大丈夫……でも人工呼吸が必要かも……」
そんなシルフィード・タバサのやり取りに、ルイズはぴくりと反応する。
(アポロ……、朝から私のためにいろいろしてくれたのに……)
『夏休み一緒に過ごそーねっ。ね♪』
満面の笑みで夏休みを楽しみにしていたあぽろの顔が、ルイズの脳裏に浮かんだ。
(馬鹿って思ってごめん……)
「う……」
いつしかルイズの瞳には涙が溜まり始めていた。
「シルフィがマッサージするのねー」
(……シルフィード……)
ルイズの傍に座って手をわきわきさせているシルフィードに、
「待って。私がするわ」
シルフィードに代わってあぽろの両足の間に座り込んだルイズ。そんな彼女を、
「愛なのね。シルフィ感激なのね」
「……うん……」
「愛って凄いのね」
「……うん……」
(ギャラリーうるさいわね)
2人を見ながらそんな事を言う他の面子に少々うんざりしつつも、ルイズはあぽろに人工呼吸すべく顔を接近させる。
「アポロ……(やっ、やだ、何緊張してるのよっ。おっ、女同士なのに……)」
顔を赤らめ目を閉じてそっと顔を近付けていく。
あと少しで唇と唇が触れるという時、意識が無いはずのあぽろがにたりと笑みを浮かべた。
「ひゃー」
――ポコッ
慌てと怒りの入り混じったルイズの一撃は、あぽろの頭部に見事なこぶを作った。
「おっ、起きてたならちゃんと言いなさいっ! みんな心配してたのにっ!」
「ちぇー、残念ー」
「何がよっ!」
「あーっ!」
夕刻、帰り支度を始めようとしたあぽろが大声を上げた。
「何よっ」
「パパパ、パンツ忘れてきちゃった……」
「ええっ!?」
驚愕の声を上げたルイズに、あぽろは涙を浮かべつつ見つめて懇願する。
「ルイズちゃんなら貸してくれるよね……? 貸してー、パンツー」
断りきれずに貸したルイズの下着を穿いて、あぽろは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「わーい、ルイズちゃんのパンツ~♪ 見て見て、紐ー紐ー」
とその時、あぽろが穿いていたルイズの下着がするりと落下してしまった。
「ありゃっ」
「よーし、ルイズちゃんみたいにお尻おっきくならないとねっ」
「脱いで帰りなさいっ!」
ガッツポーズでやる気を見せたあぽろに、ルイズは声を荒げたのだった。
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