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&setpagename(ゼロの女帝 第二十七話)
キィン!ガキィン!
刃と刃が打ち鳴らされる。
「はぁっ!」
黒髪の少年が小柄な体に合わぬ大きな剣を一閃させると、また一人ガリア正規兵の鎧を纏った男が倒れ付す。
「悪ィな」
少年はそう一言声をかけると、もう後ろも見ずに次の相手へと挑みかかる。
「とゆーか」
金髪のキザっちぃ少年がゴーレムを兵に挑ませながら少年に語りかける。
「メイジが殆どいないんで助かってるといえば助かってるんだが、この兵の数は一体何なんだ」
「しかたないでしょ」
赤髪の扇情的な雰囲気の少女が炎を放ちつつそれに答える。
「王の勅命で処罰されようってんだから警備も相応でしょ。
ましてかのオルレアン公の娘さんよ?
話漏れたら反逆罪覚悟で救い出そうとする貴族がいくら出てくることや らっと」
「そ、それにしてもルイズ!セトに一緒に来てもらえばよかったんじゃないの?」
ギーシュに庇われながらのモンモランシーの言葉にかぶりをふるルイズ。
「その意見は魅力的だけどね。
いつまでも全てセトにおんぶにだっこ、ってワケにはいかないのよ。ヴァリエール家の娘としては。
できればあたしとサイトだけでなんとかしたかったんだけどね、って食らりゃ!」
彼女の爆裂魔法で、その部屋にいた最後の兵士が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「よし、次いくぞ」
真っ先に駆け込んだサイトの後を追ったルイズは、彼の背中に顔をぶつける。
「ちょっと、立ち止まら・・・な・・・・・・」
ルイズは見た。
続いてやってきたキュルケ、ギーシュ、モンモランシーにッシルフィ(人型)も見た。
階段に腰掛け、本を読む一人の美青年を。
「来たか、蛮人よ」
「エ・・・・・・エルフ・・・・・・」
それは誰の声だったろうか
自分の声なのか ルイズはそんな風に考える
誰かがゴクリを喉を鳴らした音すら聞こえる静寂の中、場の雰囲気を読もうとしない馬鹿が剣を突きつけ声を上げる。
「なんだよおっさん」
「お・・・おっさん・・・このわたしを・・・・これだから蛮人は」ちとダメージうけたみたいだ
「自己紹介もされてないし名前知らないんだからそう呼ぶしかないだろ」
「・・・・・・・ふむ、道理だ。わが名はビダーシャル。ネフテスの一員だ」
「そっか、わりぃんだけど先急ぐんでな、また後で」
「先を急いでるのなら仕方あるまい、とでもいうと思ったか?」
ぱたり、と本を閉じ、立ち上がるビダーシャル。
「気は進まぬがジョゼフとの契約でな。行かせる訳にはいかん」
「ぐ・・・ぐうううう」
床にへたり込むギーシュ。
作り出したワルキューレは軒並み解除されてしまい、もう殆ど精神力は残っていない。
キュルケも同じ状態で、戦闘力の無いモンモランシーに支えられてかろうじて立っているのがやっとだ。
シルフィード(人型)が生み出す風の刃もはじき返され、彼女自身を傷付けていた。
しかし、それでもサイトは全力を振り絞ってエルフに、いやその前に張られた障壁に切りかかる。
「もうやめるがよい蛮族の少年よ。お前たちの力ではこの壁は決して破れぬ」
「悔しいがその通りだぜ相棒。こいつぁ『反射』っつーえげつない魔法だ」
「へっ 『蛮族』かよ!するってぇっとアンタらエルフってなぁずいぶん高貴なお方らしいな」
「当然だ。お前たちと違って精霊の声を聞き世界の理を知っている」
「たいしたモンだ!必死で母親を守り続けた女の子の心を消し去るのに手ェ貸すくらい高貴なんだな
エルフって輩は!」
「私が望んで手を貸しているとでも思っているのか」
「どんな言い訳したところで手ェ貸してるのは事実だよ!精霊だか聖地だか知ったこっちゃねーが
俺の中ではエルフってなぁ好もうが好むまいがンな非道に手を染めるくそったれって決まったよ!」
「でもサイト、アンタがどんなに強くてもエルフよ!一流のメイジが何人集まっても勝てない相手よ!」
「エルフだろーがメイジだか関係ねぇ!いまあいつの後ろでタバサが助けを求めてるんだ!
なら俺が引いていい理由は無いね!」
「その通りよ」
キュルケが彼女に生み出せる最大の火球を掲げた掌の上に浮かばせていた。
「やめておくがよい、蛮族の娘よ。その炎はお前自身を焼く事となろう」
「アンタはタバサの、あたしの友達の敵。それで十分よ」
「まて嬢ちゃん!おい相棒、おめぇのご主人様の・・・・・」
デルフリンガーの言葉を待たず放たれた巨大な炎は、鏡に跳ね返されるように正確にキュルケにむかって突き進む。
疲労からサイトも彼女をカバー出来ない。恐怖に立ち尽くすキュルケ。
「「キュルケ!」」
サイトの、そしてルイズの絶叫が響く中、その炎はキュルケを包み込む
事は無かった。
「だめよ、もう少し状況を把握して攻撃しなきゃ」
「セ・・・・・セトぉ」
ぺたりと床に座り込むルイズ。
火球をその扇で受け止めていたのは、神木・瀬戸・樹雷その人だった
「ふむ」
周囲を見回すと、すたすたと歩きとある一点で立ち止まる。
懐から出したのは・・・・
「カッターナイフだ」
「カッターナイフ?」
「わかり易く言うと耐久度と製作コストを下げた使い捨てナイフだよ。俺の世界じゃ文房具だ」
カッターナイフの刃を床の一点に当てると、そのまままっすぐ上に引いていく。
ある程度の高さまで言ったところでくるりと曲げると、再び床にまで線を伸ばす。
「何やってんの?」
「俺にわかるわけ無いだろ。ただ、おそらくあのくそったれエルフの術を破ってるんだろうな」
やがて刃が床にまで届くと、空中を「押す」そぶりをする瀬戸。
「もういいわよ」
「「「「「「ほへ?」」」」」」
ビダーシャルも含めた皆がボケた声を出す中、サイトが彼女が「線」を引いたところに歩いていく。
「ホントだ。ホントにここだけ通路みたいに穴あいてるぞ」
「ウソ・・・・」
「ど、どうやったのね?」
「ンなことどうでもいいよ。はやくタバサ助けに行くぞ」
「待て!行かす訳にはいか ぐわしっ!
奥に向かおうとするサイトたちを止めようとしたビダーシャルは、背後から伸びた腕によって頭部を鷲掴みにされる。
「・・・・・・・・?・・・・・・・」
恐る恐る振り向いてみると、そこには先ほど自分の『反射』を破った蛮族の女がにっこりと笑っていた。
「ビダーシャルちゃん、っていったわね」
「貴様ごときに、数百の齢を重ねた私がそのような呼び方をされるいわれは無い」
「ふーん、数百歳・・・・・たったその程度? いけないわね・・・・・・・・・
ちょっと・・・・・・・・・・・お話しましょうか」
タバサは、いやシャルロットは双月を見つめていた。
娘である自分におびえ、恐れ疲れて人形を抱きしめて寝入ってしまった母の頭を撫でながら。
自分もこんな風に心を壊されてしまうのか。
自分を友達と呼んでくれたキュルケや見返りを望む事無く慕ってくれたシルフィードを見て恐れ怯えてしまうのか。
そして・・・・・・・・・・ともに幾多の死線を超え、自分に笑いかけてくれた黒髪の少年を見ても罵ってしまうのか。
せめて、せめてもう一度彼の笑顔が見たい。
そう思っていたら、階下で騒ぎが起きる。
風メイジとして鍛えた耳が、剣戟の響きを捉える。
野盗? 正規兵が守るこの城を襲うとは思えない。
亡き父の味方が自分の窮状を知って助けに来てくれた? それにしては情報も行動も早すぎる。
正解であろう答えは既に見出しているが、その回答を否定する。
この城にはエルフが居る。
叔父に協力するエルフが待ち構えている。
いかに彼でも、先住魔法の使い手に勝てるとは思えない。
だから来ないで欲しい、お願いだから。
ぎゅっと、「イーヴァルディの勇者」の絵本を抱きしめる。
もし来たら もし「彼」が自分を助けてしまったら もし自分が「彼」に助けられてしまったら
足音が近づいてくる。
木靴が・・・・・・ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ
裸足が・・・・・・ひとつ
そして奇妙な、ハルケギニアではありえない妙に柔らかい足音がひとつ
聞きなれた音だ。
ああ、「彼」が来てしまった。
もし「彼」に助けられてしまったら もう彼から離れる事が出来なくなってしまうではないか
ドカン!
部屋の扉が大きく揺れる。
おい、ほんとにここかよ まちがいないのね、ここからおねえさまのにおいがするのね
ああ、あのこが彼を連れてきてくれたのか
学園に戻ったらお肉をたくさんあげるとしよう
キュルケとあと三人にも礼を言わなければいけない
そして・・・・・・そして
バタン!「大丈夫かタバサ!」
打ち破られた扉から飛び込んできた黒髪が、もう涙で見えない・・・・・・
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