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「疾走する魔術師のパラベラム-08」(2010/06/12 (土) 22:13:35) の最新版変更点
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#navi(疾走する魔術師のパラベラム)
幕間 ――ある少女の渇望
驚いた。
少女はただ、親友である少女に付き合ってここに来ただけだ。決闘にも騒動にも大した興味も無かった。
だが。
「紹介するわ、これが私の『使い魔』よ」
『ゼロ』と呼ばれた少女の『使い魔』。
『彼女』はあっという間にゴーレムとの距離を詰め、破壊した。
目で追うのがやっとの凄まじいスピード。青銅のゴーレムを容易く砕いたパワー。
彼女はその力を振るって、次々とゴーレムを破壊していく。
――あんな『力』が欲しい。
少女は優れたメイジだ。風と水のトライアングルクラスで、実戦経験も豊富。
それでも足りない。
力が足りない。だから憧れる。種類を問わず、善悪も問わず、強大な力を。
それがあれば、守れた人がいた。それさえあれば、守れた大切な人がいた。
これ以上、大切な人が傷つかない為に力が必要だ。
そして復讐を遂げる為に。少女の大切な人を傷つけた報いを受けさせる為に。
力が必要だ。強大な力が必要だ。
彼女が何かを『錬金』で作り出し、『使い魔』に取り付ける。
次の瞬間、彼女の『使い魔』が青い火を噴出し、何かを打ち出す。
ジャベリン。打ち出されたそれは、あっという間にゴーレムの形を変える。
空気が震えるほどの轟音の中に立つ彼女は紛れも無い『強者』だ。
もしも、もしも少女にもあれほどの力があれば、大切な人を守れただろうか。
決闘は終わりだ。どう足掻いても結末は変わらないだろう。
彼女は勝ち、彼は負けた。それだけだ。
そのはずなのに、結末は少女が想像していたものと少し違ったものになった。
「『力』は・・・・・・貴族の誇りである杖は、守る為にある。傷つける為では無いわ。私の目指す『貴族』はそんなものでは、決して無い! だから大切な人が傷つこうというのならば、私は守る為に戦うわ! それが『力』を持つ者の義務であり、責任よ。・・・・・・貴方はどう思う? 『貴族』を、『力』を、『誇り』を、貴方はどう思う? 『青銅』のギーシュ、ギーシュ・ド・グラモン。考えるのは貴方で、答えを出すのも貴方よ」
驚いた。彼女は今まで『ゼロ』と呼ばれ蔑まれていた。そして今は力を手に入れたのに、彼女はそれに溺れることなく、誇り高かった。
「僕は・・・・・・僕は誰かを守れる貴族になりたい。手に届く範囲なんてことは言わない。大切な全てを守る、そんな貴族を僕は目指そう」
彼女の問いかけに、決闘の相手である彼はそう答えた。まるで誓いを立てる騎士のような姿だ。
――彼女たちはどうしてあそこまで誇り高く在れるのだろう。
少女にはわからなかった。少女はただ、今まで生きる為に幾度の戦いを生き抜いてきた。
不意を打ち、騙して生きてきた。そうするしか、なかった。
ふと、見下ろした本は赤い色に染まって見えた。
もちろん、錯覚だ。本は汚れてなどいない。
でも、あの赤は、血の色だ。何度も見たその色は間違えようがない。
少女の杖は傷つけるためにあった。そこにあるのは、憎しみと虚しさだ。それでも、少女は杖を振るのを止めるわけにはいかない。
傷つけるために、傷つかぬために。少女は杖を振り続ける。
――ああ、力が欲しい。
#navi(疾走する魔術師のパラベラム)
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幕間 ――ある少女の渇望
驚いた。
少女はただ、親友である少女に付き合ってここに来ただけだ。決闘にも騒動にも大した興味も無かった。
だが。
「紹介するわ、これが私の『使い魔』よ」
『ゼロ』と呼ばれた少女の『使い魔』。
『彼女』はあっという間にゴーレムとの距離を詰め、破壊した。
目で追うのがやっとの凄まじいスピード。青銅のゴーレムを容易く砕いたパワー。
彼女はその力を振るって、次々とゴーレムを破壊していく。
――あんな『力』が欲しい。
少女は優れたメイジだ。風と水のトライアングルクラスで、実戦経験も豊富。
それでも足りない。
力が足りない。だから憧れる。種類を問わず、善悪も問わず、強大な力を。
それがあれば、守れた人がいた。それさえあれば、守れた大切な人がいた。
これ以上、大切な人が傷つかない為に力が必要だ。
そして復讐を遂げる為に。少女の大切な人を傷つけた報いを受けさせる為に。
力が必要だ。強大な力が必要だ。
彼女が何かを『錬金』で作り出し、『使い魔』に取り付ける。
次の瞬間、彼女の『使い魔』が青い火を噴出し、何かを打ち出す。
ジャベリン。打ち出されたそれは、あっという間にゴーレムの形を変える。
空気が震えるほどの轟音の中に立つ彼女は紛れも無い『強者』だ。
もしも、もしも少女にもあれほどの力があれば、大切な人を守れただろうか。
決闘は終わりだ。どう足掻いても結末は変わらないだろう。
彼女は勝ち、彼は負けた。それだけだ。
そのはずなのに、結末は少女が想像していたものと少し違ったものになった。
「『力』は・・・・・・貴族の誇りである杖は、守る為にある。傷つける為では無いわ。私の目指す『貴族』はそんなものでは、決して無い! だから大切な人が傷つこうというのならば、私は守る為に戦うわ! それが『力』を持つ者の義務であり、責任よ。・・・・・・貴方はどう思う? 『貴族』を、『力』を、『誇り』を、貴方はどう思う? 『青銅』のギーシュ、ギーシュ・ド・グラモン。考えるのは貴方で、答えを出すのも貴方よ」
驚いた。彼女は今まで『ゼロ』と呼ばれ蔑まれていた。そして今は力を手に入れたのに、彼女はそれに溺れることなく、誇り高かった。
「僕は・・・・・・僕は誰かを守れる貴族になりたい。手に届く範囲なんてことは言わない。大切な全てを守る、そんな貴族を僕は目指そう」
彼女の問いかけに、決闘の相手である彼はそう答えた。まるで誓いを立てる騎士のような姿だ。
――彼女たちはどうしてあそこまで誇り高く在れるのだろう。
少女にはわからなかった。少女はただ、今まで生きる為に幾度の戦いを生き抜いてきた。
不意を打ち、騙して生きてきた。そうするしか、なかった。
ふと、見下ろした本は赤い色に染まっている。
もちろん、錯覚だ。本は汚れてなどいない。
でも、あの赤は、血の色だ。何度も見たその色は間違えようがない。
少女の杖は傷つけるためにあった。そこにあるのは、憎しみと虚しさだ。それでも、少女は杖を振るのを止めるわけにはいかない。
傷つけるために、傷つかぬために。少女は杖を振り続ける。
――ああ、力が欲しい。
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