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マジシャン ザ ルイズ (5)灰毛の誓い
「決闘だっ!!」
食堂にギーシュの絶叫がこだまする。
「いいかっ!貴様!貴族に逆らったことを後悔させてやる!」
ギーシュがシエスタの横の平民を指差して叫んでいる。
シエスタも、平民の男も、すっかり顔を青くしてガタガタと震えている。
ハルケギニアでは貴族は絶対、平民がそれに逆らうなど許されないのだ。
「待ちたまえ」
ギーシュがギ、ギ、ギと首を背後へと向ける。
そこにいたのは杖を持ち、色眼鏡をつけた髭のメイジ。
ゼロのルイズの使い魔、得体の知れないメイジ、ウルザの姿であった。
「その決闘、私が代わりに引き受けよう。」
哀れギーシュ、彼は今ヴェストリの広場でトライアングルメイジと目される男の前に立たされている。
周囲からは野次馬が集まり、遠巻きに眺めている。
当のギーシュはなぜこのようなことになったか分からないという風体である。
自分はシエスタのしたことの八つ当たりを平民にしようとしただけなのに……なぜこんなアブなそうな男の前に立たされているのだろう。
呆然としているのはギーシュだけではない、もう片方の決闘の当事者の保護者(?)であるルイズもであった。
「な、な、な、なんでこんなことになっているのよ!?」
「ふむ…話せば長いのだがね、少々迷惑をかけた者―――彼女だ、そのお詫びに彼女が被る筈だった泥を私が被ったということになる」
「まあいいわまあいいわまあいいわ!でも貴族同士の決闘は禁止されているのよ!」
「そうなのかね?私も記憶が曖昧なものでね、そういったことは分からなかったのだ。
それに、その法は私のように本当に貴族であるか分からない者にまで適用されるのかな?」
「そ、それはそうだけど………でもきっと、オールド・オスマンがお止めになるわ!」
「では、オスマン氏が止めるならば、決闘は取りやめよう」
その頃、院長室ではオスマンとロングビルが広場での騒ぎを眺めていた。
「オールド・オスマン、あのような決闘、お止めにならないのですか?」
「貴族同士の決闘なら兎も角、彼はメイジではあるがはっきりとした素性は分からない。そのような者との決闘は禁じられておらんからなぁ。」
「学院長がそう仰るのでしたら………」
ロングビルがオスマンの姿を確認する、そこにいるのはいつものオスマンに見える。
しかし、その瞳が何かに駆り立てられたように使い魔のメイジを見ていることに、疑念の感じずにはいられなかった。
「ちょっとぉ!オールド・オスマンは何をしてるのよ!何で止めに来ないのよっ!!」
オールド・オスマンの静止が無いまま、ギーシュが指定していた時間が直ぐそばまで迫っていた。
ギーシュの顔色は青を通り越して土気色である。
彼としても、こんな決闘はオスマンが認めないと思っていたのだ。
「さて、時間だ」
「ま!待ちなさい!」
長身のウルザの前に小柄なルイズが手を広げて立ちふさがる。
「一つだけ、一つだけ約束して頂戴っ!」
「おおっ!ルイズっ!君は分かってくれるんだね!今まで君の愛に気付かなくて御免よハニーっ!愛してるっ!」
ルイズが助けてくれると思ったギーシュは感動と彼女の愛の強さに痙攣してしまうのだった。
「ギーシュの命だけは助けてあげて頂戴!あとスプラッタみたいのも禁止!」
「へっ?」
「手加減か………得意ではないが、主人の命令だ、心得た。」
そうして決闘は始まってしまったのだった。
杖を下げ、構えを取らない使い魔メイジ、ウルザ。
一方、緊張の為に汗だくになりながら、ウルザの周りをじりじりを移動するギーシュ。
最初はドットである自分に、トライアングルであるメイジが本気を出すなんて無いと思っていた。
しかし、この男を正面から目にするとその甘い考えに疑問を覚えた。
この男は何処かおかしい、知っている他のメイジや、父親であるグラモン元帥、そして、この学校の教師達とも違う。
何かこう、違和感を感じるのだ。
―――掛け違えたボタンをそのままにして歩いている人を見たときのような。
「いつでも来たまえ、まずは君が先行だ。」
「く、そっ!こうなったら………やってやるっ!」
ギーシュが懐からバラを取り出した。
「青銅のギーシュの力っ!思い知れっ!!」
ウルザの指がピクリと動いた。
「出でよっ!!ワルキューレッ!!」
「対抗呪文/Counterspell!」
ウルザが神速で杖を振り上げ何事かを唱えた。
生徒達に分かったのはそれだけだった。
そう、それしか起こらなかった。
ギーシュお得意のワルキューレの出現も、ウルザの魔法による攻撃も、何も。
「え!?え!?そんな馬鹿な、僕はちゃんと魔法を使ったぞ!」
正面の男は何も応えない。
「く、くそっ!怪しい術を使うなんてっ!こうなったら…もう一度だ!出でよ!ワルキューレ!」
「禁止!/Forbid!」
再び沈黙。
何も起こらない。
ギーシュも周りの生徒達も何が起こっているのか分からなかった。
「出でよ!」
「Force of Will!」
「このっ!」
「巻き直し!/Rewind!」
「えいっ!」
「マナ漏出!/Mana Leak!」
「とおっ!」
「放逐!/Dismiss!」
…
……
………
暫くの間、この意味不明なやり取りが続いた。
流石にこの頃になると、生徒達も何かがおかしいと気付き始めたようである。
ギーシュは魔法を使っている、しかし、あのメイジが何かをしている為、何も起こっていないのだ。
既に発動した魔法を相殺するなら良くあることだ、しかし、発動すらしないとはどういうことだろうか。
ミシッ
この時、ウルザが初めて、自分から一歩を踏み出した。
「では、そろそろ、良いかね?」
「ひっ、く、来るなぁっ!!」
半狂乱になりながらギーシュが放った薔薇。
これが決闘が始まって以来、初めて、ワルキューレへと変化を遂げた。
しかし、そのワルキューレはギーシュが本来生み出すそれより小さく、頼りなかった。
必殺の筈のそれは、ウルザに浅い傷を負わせることしか出来ない。
そうしているうちに、ウルザの呪文詠唱が終わった。
「灰色熊の召喚!/Summon Grizzly Bears!」
∩___∩
|;;ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
/;;;;;;;●;;;;;;;;;●;;| クマ──!!
|;;;;;;;;;;;;;;( _●_);;;;;ミ
彡、;;;;;;;;;;;|∪|;;;;;、;;;\
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽノ;;;;/´>;;; )
(___);;;;;;;;;;;/ (_/
|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
|;;;;;;;/\;;;;\
|;;;;/ );;;;;)
∪ (;;;;;\
\;;;;;;) ※イメージ画像です
「………く、熊だああああああああああああああああああああっ!!!!」
「いやぁ!熊よっ!熊だわっ!」
「ちょっとっ!どいてよ!熊よっ!熊なんだから!」
「嫌だぁ!食われたくないぃ!」
「おがああああああああじゃああああああああん!!!!!!!!」
「きゃあああああああああああああああああっ!」
突然現れた熊を見た周囲の生徒達は蜘蛛の子を散らすように散り散りに逃げていく。
今、ヴェストリの広場はパニックのるつぼと化したのだった。
涎を垂らす熊の前には、哀れな犠牲者が一人………
「そ、そんなっ!嘘だよねっ!食べたりしないよね!」
「クマー (※鳴き声のイメージです)」
灰色熊バゴスッ!
ドミナリアの灰色熊から走って逃げてもむだだ。
追いつかれ、たたきのめされたあげくの果てに食われちまうのがオチだ。
もちろん、木に登るのは手だろうさ。
そうすれば、灰色熊が木を倒して君を食っちまう前に、ちょっとした風景を楽しめるからね。
―――ギーシュ回顧録第三篇
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マジシャン ザ ルイズ (5)灰毛の誓い
「決闘だっ!!」
食堂にギーシュの絶叫がこだまする。
「いいかっ!貴様!貴族に逆らったことを後悔させてやる!」
ギーシュがシエスタの横の平民を指差して叫んでいる。
シエスタも、平民の男も、すっかり顔を青くしてガタガタと震えている。
ハルケギニアでは貴族は絶対、平民がそれに逆らうなど許されないのだ。
「待ちたまえ」
ギーシュがギ、ギ、ギと首を背後へと向ける。
そこにいたのは杖を持ち、色眼鏡をつけた髭のメイジ。
ゼロのルイズの使い魔、得体の知れないメイジ、ウルザの姿であった。
「その決闘、私が代わりに引き受けよう。」
哀れギーシュ、彼は今ヴェストリの広場でトライアングルメイジと目される男の前に立たされている。
周囲からは野次馬が集まり、遠巻きに眺めている。
当のギーシュはなぜこのようなことになったか分からないという風体である。
自分はシエスタのしたことの八つ当たりを平民にしようとしただけなのに……なぜこんなアブなそうな男の前に立たされているのだろう。
呆然としているのはギーシュだけではない、もう片方の決闘の当事者の保護者(?)であるルイズもであった。
「な、な、な、なんでこんなことになっているのよ!?」
「ふむ…話せば長いのだがね、少々迷惑をかけた者―――彼女だ、そのお詫びに彼女が被る筈だった泥を私が被ったということになる」
「まあいいわまあいいわまあいいわ!でも貴族同士の決闘は禁止されているのよ!」
「そうなのかね?私も記憶が曖昧なものでね、そういったことは分からなかったのだ。
それに、その法は私のように本当に貴族であるか分からない者にまで適用されるのかな?」
「そ、それはそうだけど………でもきっと、オールド・オスマンがお止めになるわ!」
「では、オスマン氏が止めるならば、決闘は取りやめよう」
その頃、院長室ではオスマンとロングビルが広場での騒ぎを眺めていた。
「オールド・オスマン、あのような決闘、お止めにならないのですか?」
「貴族同士の決闘なら兎も角、彼はメイジではあるがはっきりとした素性は分からない。そのような者との決闘は禁じられておらんからなぁ。」
「学院長がそう仰るのでしたら………」
ロングビルがオスマンの姿を確認する、そこにいるのはいつものオスマンに見える。
しかし、その瞳が何かに駆り立てられたように使い魔のメイジを見ていることに、疑念の感じずにはいられなかった。
「ちょっとぉ!オールド・オスマンは何をしてるのよ!何で止めに来ないのよっ!!」
オールド・オスマンの制止が無いまま、ギーシュが指定していた時間が直ぐそばまで迫っていた。
ギーシュの顔色は青を通り越して土気色である。
彼としても、こんな決闘はオスマンが認めないと思っていたのだ。
「さて、時間だ」
「ま!待ちなさい!」
長身のウルザの前に小柄なルイズが手を広げて立ちふさがる。
「一つだけ、一つだけ約束して頂戴っ!」
「おおっ!ルイズっ!君は分かってくれるんだね!今まで君の愛に気付かなくて御免よハニーっ!愛してるっ!」
ルイズが助けてくれると思ったギーシュは感動と彼女の愛の強さに痙攣してしまうのだった。
「ギーシュの命だけは助けてあげて頂戴!あとスプラッタみたいのも禁止!」
「へっ?」
「手加減か………得意ではないが、主人の命令だ、心得た。」
そうして決闘は始まってしまったのだった。
杖を下げ、構えを取らない使い魔メイジ、ウルザ。
一方、緊張の為に汗だくになりながら、ウルザの周りをじりじりを移動するギーシュ。
最初はドットである自分に、トライアングルであるメイジが本気を出すなんて無いと思っていた。
しかし、この男を正面から目にするとその甘い考えに疑問を覚えた。
この男は何処かおかしい、知っている他のメイジや、父親であるグラモン元帥、そして、この学校の教師達とも違う。
何かこう、違和感を感じるのだ。
―――掛け違えたボタンをそのままにして歩いている人を見たときのような。
「いつでも来たまえ、まずは君が先行だ。」
「く、そっ!こうなったら………やってやるっ!」
ギーシュが懐からバラを取り出した。
「青銅のギーシュの力っ!思い知れっ!!」
ウルザの指がピクリと動いた。
「出でよっ!!ワルキューレッ!!」
「対抗呪文/Counterspell!」
ウルザが神速で杖を振り上げ何事かを唱えた。
生徒達に分かったのはそれだけだった。
そう、それしか起こらなかった。
ギーシュお得意のワルキューレの出現も、ウルザの魔法による攻撃も、何も。
「え!?え!?そんな馬鹿な、僕はちゃんと魔法を使ったぞ!」
正面の男は何も応えない。
「く、くそっ!怪しい術を使うなんてっ!こうなったら…もう一度だ!出でよ!ワルキューレ!」
「禁止!/Forbid!」
再び沈黙。
何も起こらない。
ギーシュも周りの生徒達も何が起こっているのか分からなかった。
「出でよ!」
「Force of Will!」
「このっ!」
「巻き直し!/Rewind!」
「えいっ!」
「マナ漏出!/Mana Leak!」
「とおっ!」
「放逐!/Dismiss!」
…
……
………
暫くの間、この意味不明なやり取りが続いた。
流石にこの頃になると、生徒達も何かがおかしいと気付き始めたようである。
ギーシュは魔法を使っている、しかし、あのメイジが何かをしている為、何も起こっていないのだ。
既に発動した魔法を相殺するなら良くあることだ、しかし、発動すらしないとはどういうことだろうか。
ミシッ
この時、ウルザが初めて、自分から一歩を踏み出した。
「では、そろそろ、良いかね?」
「ひっ、く、来るなぁっ!!」
半狂乱になりながらギーシュが放った薔薇。
これが決闘が始まって以来、初めて、ワルキューレへと変化を遂げた。
しかし、そのワルキューレはギーシュが本来生み出すそれより小さく、頼りなかった。
必殺の筈のそれは、ウルザに浅い傷を負わせることしか出来ない。
そうしているうちに、ウルザの呪文詠唱が終わった。
「灰色熊の召喚!/Summon Grizzly Bears!」
∩___∩
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「………く、熊だああああああああああああああああああああっ!!!!」
「いやぁ!熊よっ!熊だわっ!」
「ちょっとっ!どいてよ!熊よっ!熊なんだから!」
「嫌だぁ!食われたくないぃ!」
「おがああああああああじゃああああああああん!!!!!!!!」
「きゃあああああああああああああああああっ!」
突然現れた熊を見た周囲の生徒達は蜘蛛の子を散らすように散り散りに逃げていく。
今、ヴェストリの広場はパニックのるつぼと化したのだった。
涎を垂らす熊の前には、哀れな犠牲者が一人………
「そ、そんなっ!嘘だよねっ!食べたりしないよね!」
「クマー (※鳴き声のイメージです)」
灰色熊バゴスッ!
ドミナリアの灰色熊から走って逃げてもむだだ。
追いつかれ、たたきのめされたあげくの果てに食われちまうのがオチだ。
もちろん、木に登るのは手だろうさ。
そうすれば、灰色熊が木を倒して君を食っちまう前に、ちょっとした風景を楽しめるからね。
―――ギーシュ回顧録第三篇
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