「ゼロの騎士団-13a」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ゼロの騎士団-13a」(2009/03/06 (金) 20:53:43) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
#navi(ゼロの騎士団)
ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 3 「三人と吸血鬼退治」前編
使い魔品評会の夜 タバサの部屋
タバサが手紙を受け取り、それを読んだ時から、ゼータは主の異変を感じ取っていた。
「これから用がある」
部屋にいたタバサが、突然本を閉じた。そして、彼女は杖を取り、使い古されたローブを取り出す。
そのローブはゼータから見ても使いなれている物であり、貴族の娘であるタバサからは考えられない代物であった。
「それは、受け取った手紙が関係しているのか?」
ゼータはそれを見て、主の様子が変わったのが関係しているのかと感じた。
彼女はただコクリと首を縦に振り、ゼータを見つめる。
「あなたにも、来てほしい」
珍しくタバサがゼータに頼みごとをする。その顔には緊張した様子が見て取れる。
付き合ってから、一か月近くになるが彼女がこの様な表情をするのはモット邸以来の事であった。
(何かあるな……)
ゼータはその顔を見ながらただ事では無いと感じた。危険な事かも知れない。
しかし、ゼータはタバサを守る気でいるので、それを断る気など毛頭も無かった。
タバサにしても、ゼータを今回の任務に連れていくのは最初から頭の内に有った。
「わかった、デルフ行くぞ!」
「おう、相棒!気合入っているな」
ゼータに持たれてデルフも気合の入った返事を返す。実践はこの間のレース以来であるが、
日ごろの訓練と、デルフの手入れはいつも欠かさず行っていた。
その様子をうかがい、タバサが自室の窓を開ける。
「ここから出る。誰にも気づかれたくない」
明かりを消して、窓から周囲を確認した後に小声で呟きながら窓から外に降りた。
(こんな行動を取るとは、ますますただ事ではないな)
それを見ながら、ゼータは事態がただ事では無いと感じた。
二人は地面に降りながら、学院を後にした。
学院を抜け出た二人は、近くの森に来ていた。
「どうして森なのだ?馬を借りるんじゃないのか?」
夜と言う事もあり、厩舎があいているかは解らない。
しかし、町に行くのならやはり馬が必要だろうとゼータは感じた。
「彼女を呼ぶ……」
タバサが、それだけ言いながら口笛を吹く。数十秒後途端に森がざわめきだした。
何かと思いゼータが上を見上げると、上空から彼女の友人である。風竜のシルフィードが降下してきた。
シルフィードは降りて来るなり、嬉しそうにタバサにすり寄る。
「きゅい、お姉さま任務なのね、シルフィードはこの時を待ってたのね、
お姉さまったら最近はあの青トンガリと一緒だったからシルフィード嬉しいの……」
そこまで言いかけて、その青トンガリがシルフィードの視界に入った。
「お姉さま、何なのね、何であの青トンガリがここにいるのね!」
シルフィードが鳴きながら、タバサに抗議する。
シルフィードにとって任務とは過酷だがタバサと一緒にいる時間だけであり、
目の前の青トンガリが居る事は論外であった。
「今回の任務に連れていく。」
そう言って、タバサはシルフィードに飛び乗る。
「いやなのね、そんな青トンガリ乗せたらシルフィードの体鉄臭くなっちゃうのね、
キレイな体じゃいられないのね、汚されちゃうのね」
本人を前にして、暴言を通り越した言葉を浴びせかけながら、ゼータを翼で拒絶の意思を表す。
シルフィードとしては唯でさえ、ゼータと居るのが嫌なのに、
更に自分達の任務に連れていくと言う事が信じられなかった。
「シルフィード、君はどうして、私の事が嫌いなのだ?」
気付いていないが、ゼータのタバサの騎士と言う態度が気にいらないのであるが、
ゼータは自分が騎士なので当然と考えており、ゼータにはシルフィードに嫌われる理由が見当つかなかった
「うるさいのね、だいたい、その青トンガリは剣が少し使えるだけなのね、私の3分の1も使えないのね」
「……うるさい」
シルフィードが羽をはばたかせて、胸を張る。しかし、タバサが持っている杖で頭をはたく。
「きゅい、痛いのね……わかりました。仕方なく乗せてやるのね、仕方なく」
嫌なことを強調して、どうにかシルフィードの同意を得る。
(困ったな、もう少し好意的になってほしいものだ……)
自身の心の中で、呟きながらゼータは、シルフィードの背中に乗る。
「プチ・トロアへ………」
タバサはそれだけ言い、シルフィードは了解して大空に舞う。
二人は夜空にまぎれて、目的地に飛んだ。
二人を乗せたまま、十数時間後、日も明ける頃にタバサの目的地である。ヴェルサルテイル宮殿の上空にたどり着いた。
「あなた達は、ここで待っていて」
中庭に降り立った後、二人に待機を命じタバサは、プチ・トロアへと入っていく。
(すごいものだな、これでも離宮と言うわけか……)
タバサの向う建物よりも、さらに大きな建物を見つけ、そこが離宮である事と気づく。
ゼータはトリステインの王都に勝るとも劣らない宮殿を見ながら、タバサの後ろ姿を見送った。
「イザベラ様、シャルロット様が参られました。」
イザベラの一番近くにいる家臣がタバサの到着を告げる。
一番上の席にはイザベラが座り、メイドや家臣等がその脇に連なる。
しかし、その様子は暖かさとは程遠く、生贄を見送る村人の様な空気であった。
「あんなのはガーゴイルでいいんだよ!……よく来たね、ガーゴイル」
タバサの顔を見るなり、イザベラが歪んだ笑みで迎える。
自身が下す任務の内容を知っているだけに、早く彼女のおびえる顔が見たかった。
しかし、彼女の顔はあだ名のガーゴイルの様にいつもの無表情であった。
イザベラにはそれが気に食わなかったが、どうせ、強がりだろうと感じ、不満そうな表情をまた笑顔に戻す。
「人形七号、お前を信頼して今回は重大な任務を与えてあげるわ!なんと、吸血鬼退治よ!」
手に持った、扇でタバサを指しながらイザベラが嬉しそうに告げる。
その様子を見ながら、家臣達が暗い顔を更に暗くする。
しかし、タバサの表情はそれでも変わる事は無かった。
それは、イザベラにとっては不愉快の一言で有り、更に威嚇しようとする。
「お前、解っているの?吸血鬼よ!既に三人もの騎士がやられているのよ!」
近寄り、首筋に扇を当てて、首を切るサインを示すが、それでもタバサは表情を崩さなかった。
タバサの反応が変わらないのが悔しいのか、イザベラは舌打ちする。
「ちっ!任務から逃げる事は出来ないよ」
任務を遂行する重要性を繰り返し、イザベラは首で行けと指示を出す。
頷き、タバサが出ていく。その様子を、不満そうなイザベラと、暗い顔の家臣達が見送っていた。
タバサが二人の所に戻ってきた後、直に、大空に戻っていた。
「今回の任務は吸血鬼退治、付近に着いたら説明する」
場所を指示した後、それだけを言いながら、タバサは読書を再開する。
それを聞いて、三人がそれぞれ違う反応を示す。
「吸血鬼……何だ、それは?」
ゼータは言葉の意味が理解できなかった。
「きゅい、吸血鬼!大変なのね!お姉さま、なんでそんなに冷静なのね」
シルフィードは事の重要性を理解しているらしく。冷静なタバサに驚きの声をかける。
「吸血鬼か、おもしれぇ!相棒、いっちょ派手に行こうぜ」
それとは反対に、鞘を鳴らしながらデルフが好戦的な反応を示す。
(吸血鬼とは何なのだ?)
「デルフ、吸血鬼とは何なのだ?教えてくれ」
「何にも知らない奴なのね、吸血鬼は最悪な奴なのね、狡賢くて、先住魔法を使うのね血を吸った相手をグールにして操った入りするのね」
ゼータの無知を罵倒しながら、シルフィードが自身の知識で応える。
「なるほど、確かに厄介な相手だな、デルフ、気を引き締めていくぞ」
「問題ねぇよ、俺と相棒なら一捻りさ」
シルフィードの説明を聞いたゼータが警戒を強めるが、
自身の相棒に自信があるのかデルフは強気な態度を崩さない。その様子を見ながら、シルフィードは呆れる。
「きゅい、馬鹿なのね、こいつら真性の馬鹿なのね」
本来、最悪の相手であるはずの吸血鬼を聞いても二人の反応は非常識と言える物であり、シルフィードはこいつ等を連れて来た事に後悔していた。
「うるせぇ、トカゲ野郎!いい加減にしないと刺身にするぞ」
「うるさいのね、ナマクラの癖に韻竜のシルフィードに喧嘩売るとはいい度胸なのね」
「韻竜だか、天龍だか知らねえぇが、こっちは使い手探して6000年近く生きているんだぞ」
剣と竜がお互いを罵り合い、空の上が騒がしくなる。
(そうだ、使い手とは何なのだろう……)
ふと気付き、ゼータが尋ねる。
「デルフ、使い手とはなんなんだ?」
「使い手とは、「使い手」なんだがよ、使い魔には契約するとルーンが刻まれる相棒の手にもあるだろう?」
そう言われて、ゼータは右手を見る。その手には読めないが烈空と言う文字が刻まれている。
「ルーンは何かしらの効果を与える。
そして、使い手のルーンを持つ物が持てば俺はそれを分かる事が出来る。ちなみに、相棒は使い手じゃねぇ」
デルフが、ゼータを使い手では無い事を断言する。
「じゃあこのルーンは何の効果か分かるか?」
「それが、さっぱりわからねぇ、俺も初めて見るルーンだし、何よりそれは意図的に封印されている気がするぜ!」
「封印?」
「本来、ルーンは力を与えるけれど、そいつは何かを隠しているみたいだぜ、相棒は俺を握っている時に何か感じた事はないのか?」
「いや、特にないぞ」
ゼータは既に何度もデルフを握っているが、特に変わった事はない。
「それじゃあ、いざって時が来れば、凄い力を出すかも知れねぇな、もっとも相棒は剣の腕は既に凄いけどな」
「きゅい、お前みたいな、ナマクラが言っても全然説得力がないのね」
「んだと、コラッ!」
シルフィードが噛みつき、デルフがそれに応じる。
結局村に着くまでに、8ラウンド二人の口喧嘩は展開された。
数時間後、日が完全に開けた頃、タバサ達は目的の村付近に到着した。
「お姉さま、これからどうするのね?」
「今回は慎重に行く、だから、化けて」
タバサのその一言でシルフィードの体は硬くなる。
「い……や……なの」「化けて」
身をかがめながら、タバサを威嚇する。
「嫌なの」「嫌じゃない」
しかし、タバサは動じない。
「お肉あげる……」
シルフィードにとって、魅力的な条件をタバサが上げる。それを聞いて、シルフィードが口ごもる。
(お姉さまから、お肉をくれるなんて珍しいのね、変わるのは嫌なのね)
感情の板挟みとなり数秒の間難しい顔をしたが、自身にとっての妥協点を見つける。
「お肉たくさん欲しいのね……」
その条件を聞いて、タバサが無言で首を振る。
「それじゃあ……我をまといし風よ、我が姿を変えよ」
その言葉と共に、シルフィードを風が包みこみゼータ達の視界を覆う。
そして、視界が開けた後、そこには成人の女性が立っていた。
「なんだ、なんだ、変身したのか!?」
「韻竜って奴は姿を変えられるからな、しかし、あの馬鹿竜がやると驚きだぜ」
驚くゼータと、驚いたと言いながらも、どこか思い出すような口調のデルフリンガーが反応を示す。
しかし、その様子を気にせずシルフィードは不満を顔中に表していた。
「きゅい、やっぱこの体は動きにくいのね」
手足をばたつかせながら、シルフィードが不満の声を上げる。
その様子を気にせず、タバサが婦人用の上品な服を差し出すが、それを見て喜ぶどころか益々嫌な反応を示す。
「いやなのね、服は嫌なのね」
「なら、肉は無しで」
タバサが目をそらしながら、シルフィードの妥協案を取り消そううとする。
(お姉さまなら、本当にやりかねないのね)
シルフィードがタバサの反応から、本気で実施しかねないのを見て考え込む。
「……わかったのね、そのかわりお肉3倍なのね」
渋々、タバサから服を受け取り着替え出す。数分後には着替えたシルフィードがそこにいた。
「はぁ、けどこんな恰好して何をし出すのね」
自身は出番まで待機だと思っていたので、タバサの考えが理解できなかった。
タバサはシルフィードに近づき、自身の杖とマントを着せる。
その様子をゼータとデルフが訳も分からず見守る。そして、それが終わった後、全員に作戦を伝える。
「吸血鬼は弱い人間を狙う、だから、私が囮になる。
シルフィードは騎士の役、ゼータはガーゴイルの役。私がおびき寄せて三人で叩く。」
タバサが二人を指差し、それぞれの役割を伝えるがゼータが慌てて抗議する。
「タバサそれは危険ではないか!?」
「たしかに危険、けど、私がおとりになれば、村人には手を出さない。」
タバサが囮になる事で、村人の危険は減る。それはゼータにも理解できる。
「それもそうだが!?」
それでは、当然タバサの危険が増す事になり、ゼータにとっては看過出来る事では無い。
「私も騎士、この程度の危険は慣れている。それとあなたにも冷静でいてほしい」
しかし、タバサは首を振り、ゼータの抗議を退ける。そして、そのまま村に歩き出す。
「タバサ!なぜ私にだけ言うのだ!」
歩き出したタバサを、抗議しながらゼータとシルフィードが追う。
少し遠目に見える村を目指して、三人は歩き出した。
三人が目指したサビエラ村は春から夏に移り変わる風景としてはあまりにも殺風景であった。
村の中にある木はほとんど枯れており、本来花が咲いているはずの花壇は手入れがされているが、茶色い土の色しか見えない。
「いかにもな感じだな、活気がなさすぎる」
「いいねぇ、いかにもな感じじゃなぇか」
ムンゾ帝国に支配されていたころの街を思い出し、ゼータが感想を述べる。それに反するように、嬉しそうにデルフが感想を述べる。
村の中央にまで来ると、一人の老人がこちらを見つけ歩いてくる。
「よくぞいらして下さいました。私はこの村の村長のアイザックと申します」
シルフィードの姿を見つけ、真っ先にその老人が挨拶をする。
それを見ながらタバサが、シルフィードとゼータに目線を配る。
「私はガリア花壇騎士のシルフィードなの、よろしくね」
シルフィードが名乗るが村長はそれに応対しつつ、その横にいるゼータに目が行く。
「よろしくお願いします。そちらの方は?」
村長が珍しそうにゼータを見ながら、シルフィードに尋ねる。
「私は騎士シルフィードのガーゴイルのゼータと申します」
「従者のタバサです」
ゼータが礼をし、タバサが同じく礼をする。しかし、村長にはその様子はやはり珍しく見えた。
「こいつはガーゴイルだから気を使わなくていいのね、荷物持ちでも薪割りでもさせるといいのね」
シルフィードが雑な扱いで、ゼータを指差す。
「そうですか、いやはやガーゴイルと言う物は初めて見ましたので、ここでは何ですし我が家にお越し下さい」
一人で納得して、村長が先導する。三人はそれについていくが、村には人がおらずシルフィードが辺りを見回す。
「どうしたのかしら、もう太陽は昇っているのに……」
幾ら、小さな村でも人が居ない事にシルフィードも不安を覚える。
「タバサ」「……私達を見ている」
ゼータの呼びかけにタバサが答える。
シルフィードは気付かなかったが家の窓の辺りには人の気配があり、その視線は全てこちらの方を窺っている事に二人は気付いた。
(なんだ、あの連中は、子供と変なゴーレムを連れてやがるぜ)
(こないだの騎士様の方がずっと強そうだよ……)
(何日持つかねぇ、あの様子じゃ今度も短そうだね)
三人を見る様子はとても好意的とは言えなかった。それを肌で感じ取りながら、ゼータは窓を見るがそれに気づいたように気配は遠のいた。
(我々は歓迎されていない訳か、確かに見た目がこれでは)
屈強な騎士には程遠いシルフィードと子供の様に見えるタバサ、そして、自身を見て驚いているであろうゼータを見て期待するのは難しい事であった。
ゼータが辺りを見まわし終えた時、前方を行く村長の足が止まる気配がする。
何かと思いその先を見据えると、村の中でも大きな家の前に数人の若い男達が居た。
(歓迎会を開くと言う雰囲気ではないな)
殺気立った若者たちを見ながら、胸中で呟く。
先頭の精悍な顔つきの男が代表として一歩前に出る。
「村長、また騎士を読んだのか、犯人はアレキサンドルの所に決まっている。早く殺せばいいんだ!どうせそこの騎士様も数日と持たないだろうよ!」
薪割り用の斧を持ちながら、目の前の男がゼータ達を睨みつける。
「お前達、そんな事を言うんじゃない、騎士様に失礼ではないか。
それに、あの二人が犯人だと言う証拠はない、勝手な事を言ってみんなを混乱させるんじゃない」
「勝手なもんか、みんな内心ではそう思っているよ、それにアレキサンドルには吸血の跡があるんだ、あいつ等に違いない!」
男の後に続くように、各々が勝手な事を言いはじめ場を騒がせる。
それを見て、シルフィードも杖を構えながら前に出る。
「喧嘩はやめなさいなの、それを解決するために私達がやって来たんだから、
みんなの不安を煽るような真似は駄目なの吸血鬼はそれに乗じるのが常套手段なんだから」
自身の知っている知識を披露しながら、胸を張り場の収拾を図るがそれは失敗に終わった。
「ふざけるな!アンタみたいなのが本当に騎士なのか?噂を聞きつけて、礼金を奪いに来た詐欺師なんじゃないのか」
周りの男がシルフィードに野次を飛ばす。
女、それもいかにも頭の悪そうな話し方をするシルフィードを見て彼らの中には騎士だと思う物は皆無であった。
「もう何なの、シルフィード頭に「私の主を侮辱しないでいただこう」きゅい!」
シルフィードを手でどけながら、ゼータが前に躍り出る。
「我々はこれでもガリア王国より命を受けて来た物だ、それを侮辱すると言う事はガリア王国を侮辱する事」
ゼータが王国の名前を出した事に、男達は静かになる。
頭に血が上ったからといって、王国の騎士を本当に侮辱する事がどんなに重罪であるかわからなくもない。
「それに……」
そう言いかけて、ゼータが左手のデルフに手をかける。
それは、余りの早業であった。
その場でゼータの軌跡が見えていたのはタバサだけであった。
鞘から抜き出し、もう一度鞘に戻した音が鳴った時、目の前の男達の獲物は柄の部分から、先を地面に落ちていた。
「これを見てもう一度同じことが言えるのなら、今度は私が相手になろう」
それだけを言い、ゼータがシルフィードの後ろに下がる。
(すっすごいのね、さすがに剣が使えるだけはあるのね)
自身もゼータの剣が見えなかっただけに、シルフィードも内心でたじろく。
「コイツを従えている私なのね、それでも信用ならないの」
そう言うシルフィードの態度に、男達も沈黙する。
それを察して、村長が割って入る。
「申し訳ございません騎士様。あなた様の実力は存分にわかりました。お前たち解ったであろう、さぁ道をあけろ」
男達を掻き分けながら、村長が自身の家の扉を開けて三人を招き入れる。
満足した面持ちのシルフィード、憮然とした態度のゼータ、そして……
「何とかの威を借る」
それだけ言いながら、いつも通りの無表情で家には居るタバサ。
家の窓からのぞく住民たちと、未だに声が出せない男達。
こうして、三人の吸血鬼退治はスタートした。
窓から、彼らを除く気配に気づかずに……
仲は客人を止める余裕があるくらいは広く、想像していた以上には大きい部屋に案内された。
三人は机をまたぎ、村長と対面して座る。
「すみません村の物が無礼を働いて、みんな気が立っているのです。」
「分かっているのね、誰がグールか分からないからみんな気が立っているのね」
それも吸血鬼の戦略の一種である事を知っているため、シルフィードが慰めるように言う。
(それで、男達の殺気立っている訳か……)
ゼータも理由が分かり納得する。
「おじいちゃん……」
その時、扉が開く音がして、金髪の少女が扉を開け申し訳なさそうに入ってくる…
そして、短い歩幅でゼータ達に構わず、真っ先に村長の元にやってくる。
「おお、エルザこの方たちが騎士様だよ、さぁ挨拶しなさい」
「こんにちは……エルザです……」
村長に促され、ぎこちない様子であいさつする。恐怖が混じった眼でシルフィードを見ている、
(かっ可愛いのね!お人形さんみたいなのね)
ほほを緩めて、シルフィードがエルザに目をくぎ付ける。
「はじめまして、私はシルフィード、こっちは従者のタバサでこれは青トンガリなのね」
「私だけ、紹介が雑な気軽のだが……」
呻くゼータを無視して、シルフィードがエルザに近寄るがとっさに村長の後ろに隠れる。
「すみません、エルザは私が森で見つけて来たのです。なんでも盗賊に両親が襲われてそれ以来、
メイジが嫌いになってしまったのです……とりあえず話の前に、
荷物を置く部屋に案内させて頂きます。こちらにどうぞ」
話を変えて期間中三人の宿泊する部屋に、村長が案内する。
三人がそれに続くが……
「ん?」
ゼータが視線に気づき、そちらに目を向けるとエルザがこちらを見ている。
「どうしたんだい?」
彼女の不思議そうな視線に気づき、ゼータが微笑みかける。
「あなたって、なんなの?」
「私はシルフィードのガーゴイルのゼータと言うんだよ。よろしく、エルザ」
警戒させないように、ゼータが慎重に応対する。
「うん、よろしくねゼータお兄ちゃん」
警戒を解いたのか、エルザが返す。
「コラ、何やっているの青トンガリ、早く来なさい」
後ろからシルフィードが呼びかける。
「分かった、今すぐ行く」
そう言いながら、エルザに背を向けるが……
(ん?今笑わなかったか?)
一瞬だけ、エルザが笑った様な気がしたが、ゼータはさほど気にせず二人の後を追った。
「ふむ、やってきたようですね」
少し離れた森から、その様子を見つめる物が居た。
「剣の腕は衰えていないようですね、そうでなくては面白くない……」
おそらく、それを見ればだれもが異形と言う眼で先程の出来事を見つめる。
「まぁ、しっかり役割をはたして下さいよ」
それは三人が家の中に入った後、森の奥に姿を消した。
「25 ふん、ビビって逃げたらどうなるか分かっているだろうね?」
ガリアの王女 イザベラ
タバサに嫉妬している。
MP 180
「26 花壇騎士のシルフィードなのね、よろしく」
花壇騎士? シルフィード
口調が誰かに似ている。
HP 400
#navi(ゼロの騎士団)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: