「いらない王女」(2009/02/03 (火) 22:39:34) の最新版変更点
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こんにちは。
今日、お話するお話は「いらない王女」というお話です。
昔、昔、ハルケギニアという魔法の世界にガリアという国がありました。
そのガリアにはいっつも、怒ってばかりの王女様がいました。
王女様の名前はイザベラ。魔法が苦手なのでみんなからバカにされていました。
しかも、従姉妹のシャルロットが魔法が得意だったこともあり、イザベラはますます怒りぽっくなっていったのでした。
そんなある日、暇だったのでイザベラは使い魔を召還することにしました。
使い魔を召還することを「コンラクト・サーヴァント」と言い、それはとても神聖な儀式で一度、コントラクト・サーヴァントを交わしたメイジと使い魔は、死によってしか離れられぬ、と言われている程なのです。
しかし、イザベラが召還したのはなんと仮面を被った道化師だったのです。
これに怒ったイザベラは召還した道化師に散々、怒鳴り散らすと、コンラクト・サーヴァントもせずに部屋に戻って不貞寝してしまいました。
イザベラはふっと、聞こえる優しい歌に目を覚ましました。
かなり眠っていたのかもう真夜中で一体、誰が歌っているのだろうと部屋を見回してみると、なんと今日、召還した道化師が歌っていたのでした。
イザベラは驚きながら聞きました。
「…なにしてるんだい?」
すると道化師は、
「イザベラ様がぐっすり眠れるように歌っておりました」
と言いました。
イザベラはお前のせいで起きてしまったじゃないかと怒って道化師を部屋から追い出しました。
でも、道化師が歌っていた優しい歌を思い出すと、なぜか胸が暖かくなるのでした。
それからというもの道化師はイザベラの傍で優しい歌と踊りを毎日、披露するのでした。
最初の頃は道化師に怒鳴り散らしてばかりだったイザベラも徐々に道化師の歌と踊りを楽しむ様になっていたのでした。
そのためかイザベラは段々と丸くなっていたのです。
いっつも、怒鳴り散らされていた侍従たちもイザベラが丸くなってくれて喜びました。
ところが……、
イザベラの父であるジョセフが暴走し、ガリアは戦火に晒さてしまったのです。
これ幸いにと、日頃からクーデターを考えていたオルレアン派が蜂起し、激しい時代のうねりとともにジョセフは討ち取られ、シャルロットが新しいガリアの女王となったのです。
そして、イザベラは「イザベラなんていらないやー」と国民達に言われ、追放されてしまったのでした。
国を追われることになったイザベラはまた怒りぽっくなってしまいました。
そんな彼女についてきたのは、あの道化師一人だけでした。
道化師はどこまでもどこまでもイザベラについていきました。
そんな、道化師にイザベラはこう言いました。
「ガリアに戻りな」
でも、道化師は、
「いいえ。イザベラ様。私の仕事はイザベラ様を笑わすことです。だから、イザベラ様、笑ってください」
と言って、イザベラのためだけに歌い続けたのです。
でも、意固地になっているイザベラはなんとか道化師を追い払おうといじわるすることにしました。
「いいかい。私はこれからこの森に潜んでいる盗賊共を退治してくるから、お前は私が戻ってくるまで踊ってるんだよ」
「はい。イザベラ様」
道化師が踊りを始めたのを見て、イザベラは、ほくそ笑みながら森に入っていきました。
元より盗賊退治なんてする気がなかったイザベラはこのまま、森を抜けようとしました。
でも、それでは自分はあの道化師に嘘をついたことになってしまう。
イザベラはなぜかそれが、ひどく嫌でした。
そして、イザベラは決心して、森の盗賊を退治することにしました。
でも、魔法が苦手な自分が盗賊退治なんてできるのだろうか、と悩みました。
そして、三日三晩、考えに考え、遂に盗賊を退治する方法を思いついたのです。
その夜、盗賊たちがアジトに戻ってきたのを確認して、アジトに火を放ったのです。
散り散りに逃げていく盗賊たちの中から頭を見つけ、イザベラは魔法でその頭を倒し、しかも、盗賊達全員を自分の手下にしてしまったのでした。
イザベラは意気揚々と手下になった盗賊達を引き連れ、道化師と約束した場所に戻りました。
イザベラは道化師はもういないだろう、と思いました。でも、そう思うと、なぜかイザベラは寂しくなるのでした。
でも、驚いたことに道化師はいたのです。
ふらふらになりながら、ちゃんと踊っていたのです。
道化師はイザベラを見つけると、
「お帰りなさい」
と微笑んだのでした。イザベラはとても嬉しくなりました。でも、素直になれずに、つい、こんなことを言ってしまったのでした。
「どうしたら、お前は私の元から去ってくれるんだい?」
道化師は少し悲しそうにこう言いました。
「私の仕事はイザベラ様を喜ばせる事。
もしも、新しい国を作って、また王女様にいえ、女王様になればイザベラ様はお幸せでしょうから私は要らないですね。
ですから、その時、私は貴方の元から去りましょう」
そう、イザベラと約束したのでした。
そして、イザベラは盗賊達を使って、新しい町を作りました。
商売をして、家を建てました。するとどんどん町に人が集まり、町もどんどん大きくなりまし
た。
イザベラが仕事を一つ成功するたびに道化師は新しい歌をつくり、イザベラのために歌い踊る
のでした。イザベラは道化師の歌を聞くたびに、踊りを見るたびに嬉しくなり、優しくなってい
きました。
そんなある日、元家臣達がイザベラに謝りにきました。
なんでもシャルロットが他国の使い魔に現を抜かし国を蔑ろにしたため、国が乱れたというの
でした。
「そのため、国民達は、ぜんぜん働きません。
パン屋はパンを焼かないし、牛飼いはミルクを絞りません。
私達は、もう一切れのパンも、一滴のミルクも飲めないのです。
だからイザベラ様、帰ってきてください」
新しい国でイザベラが成功したことを知った元家臣達は怒鳴られる覚悟で、謝りにきたのでし
た。でも、イザベラは怒鳴らずに優しく、こう尋ねました。
「お前達の王は本当に私でいいのかい?」
と。
そして、イザベラはシャルロットから王位を取り戻し、ガリアの王女に戻って、いや、ガリアの女王になったのです。
イザベラはシャルロットを処刑しようとせず、自分が作った新しい町を治めるように言いました。国民達は驚きました。てっきり、イザベラはシャルロットを処刑すると思っていたからです。でもなにより、国民達が驚いたのはイザベラが優しくなっていたことでした。
そして、イザベラが女王になってから、ガリアは元通りになりました。
国民達は、ちゃんと働くようになり、
パン屋はパンを焼き、牛飼いはミルクを絞りました。
国民達は、一切れのパンどころか口いっぱいのパンを、一滴どころかコップ一杯のミルクを飲
めるようになったのです。
国民達は大喜びしました。
そして、イザベラもそんな国民達を見て幸せな気持ちになったのでした。
でも、それは、道化師との別れを意味していたのです。
道化師は幸せなイザベラを見て、約束どおりイザベラの元から去ろうとしました。
するとイザベラは道化師の手を握りながら、
「行かないでおくれ。私の傍に…その……ずっと、ずっといて欲しい!」
と言いました。
道化師は困りました。それでは、イザベラとの約束が果たせないからです。
そう、イザベラに言うと、イザベラは優しく微笑みながら道化師の仮面をすっと外しました。仮面の下から出てきたのは、青い目をした可愛らしい女の子でした。
「我が名は、イザベラ・ド・ガリア。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
そう呪文を唱えるとイザベラは道化師の女の子の頬に手を当て、口付けしました。すると女の子の手に使い魔のルーンが刻まれたのです。
そう、イザベラは道化師の女の子にコンラクト・サーヴァントをしたのです。
使い魔のルーンを見て、イザベラは優しく、こう言いました。
「これで、道化師は消えて使い魔であるお前が残る」
その後、イザベラ女王様と使い魔の女の子がどうなったか…。
あっ、ところでシャルロットが治めるようになった新しい町ですけど、なんでもおいしいものがたくさん食べられる食い倒れの町と呼ばれるようになったそうです。
えっ、それより二人のその後は?
あぁ、実は私も知らないんですよ。でも、きっとイザベラの傍には、いつまでもいつまでも優しい歌と踊りをしてくれる一人の使い魔がいたことでしょう。
おはなしのくに「いらない王様」より道化師を召喚。
こんにちは。
今日、お話するお話は「いらない王女」というお話です。
昔、昔、ハルケギニアという魔法の世界にガリアという国がありました。
そのガリアにはいっつも、怒ってばかりの王女様がいました。
王女様の名前はイザベラ。魔法が苦手なのでみんなからバカにされていました。
しかも、従姉妹のシャルロットが魔法が得意だったこともあり、イザベラはますます怒りぽっくなっていったのでした。
そんなある日、暇だったのでイザベラは使い魔を召還することにしました。
使い魔を召還することを「コンラクト・サーヴァント」と言い、それはとても神聖な儀式で一度、コントラクト・サーヴァントを交わしたメイジと使い魔は、死によってしか離れられぬ、と言われている程なのです。
しかし、イザベラが召還したのはなんと仮面を被った道化師だったのです。
これに怒ったイザベラは召還した道化師に散々、怒鳴り散らすと、コンラクト・サーヴァントもせずに部屋に戻って不貞寝してしまいました。
イザベラはふっと、聞こえる優しい歌に目を覚ましました。
かなり眠っていたのかもう真夜中で一体、誰が歌っているのだろうと部屋を見回してみると、なんと今日、召還した道化師が歌っていたのでした。
イザベラは驚きながら聞きました。
「…なにしてるんだい?」
すると道化師は、
「イザベラ様がぐっすり眠れるように歌っておりました」
と言いました。
イザベラはお前のせいで起きてしまったじゃないかと怒って道化師を部屋から追い出しました。
でも、道化師が歌っていた優しい歌を思い出すと、なぜか胸が暖かくなるのでした。
それからというもの道化師はイザベラの傍で優しい歌と踊りを毎日、披露するのでした。
最初の頃は道化師に怒鳴り散らしてばかりだったイザベラも徐々に道化師の歌と踊りを楽しむ様になっていたのでした。
そのためかイザベラは段々と丸くなっていたのです。
いっつも、怒鳴り散らされていた侍従たちもイザベラが丸くなってくれて喜びました。
ところが……、
イザベラの父であるジョセフが暴走し、ガリアは戦火に晒さてしまったのです。
これ幸いにと、日頃からクーデターを考えていたオルレアン派が蜂起し、激しい時代のうねりとともにジョセフは討ち取られ、シャルロットが新しいガリアの女王となったのです。
そして、イザベラは「イザベラなんていらないやー」と国民達に言われ、追放されてしまったのでした。
国を追われることになったイザベラはまた怒りぽっくなってしまいました。
そんな彼女についてきたのは、あの道化師一人だけでした。
道化師はどこまでもどこまでもイザベラについていきました。
そんな、道化師にイザベラはこう言いました。
「ガリアに戻りな」
でも、道化師は、
「いいえ。イザベラ様。私の仕事はイザベラ様を笑わすことです。だから、イザベラ様、笑ってください」
と言って、イザベラのためだけに歌い続けたのです。
でも、意固地になっているイザベラはなんとか道化師を追い払おうといじわるすることにしました。
「いいかい。私はこれからこの森に潜んでいる盗賊共を退治してくるから、お前は私が戻ってくるまで踊ってるんだよ」
「はい。イザベラ様」
道化師が踊りを始めたのを見て、イザベラは、ほくそ笑みながら森に入っていきました。
元より盗賊退治なんてする気がなかったイザベラはこのまま、森を抜けようとしました。
でも、それでは自分はあの道化師に嘘をついたことになってしまう。
イザベラはなぜかそれが、ひどく嫌でした。
そして、イザベラは決心して、森の盗賊を退治することにしました。
でも、魔法が苦手な自分が盗賊退治なんてできるのだろうか、と悩みました。
そして、三日三晩、考えに考え、遂に盗賊を退治する方法を思いついたのです。
その夜、盗賊たちがアジトに戻ってきたのを確認して、アジトに火を放ったのです。
散り散りに逃げていく盗賊たちの中から頭を見つけ、イザベラは魔法でその頭を倒し、しかも、盗賊達全員を自分の手下にしてしまったのでした。
イザベラは意気揚々と手下になった盗賊達を引き連れ、道化師と約束した場所に戻りました。
イザベラは道化師はもういないだろう、と思いました。でも、そう思うと、なぜかイザベラは寂しくなるのでした。
でも、驚いたことに道化師はいたのです。
ふらふらになりながら、ちゃんと踊っていたのです。
道化師はイザベラを見つけると、
「お帰りなさい」
と微笑んだのでした。イザベラはとても嬉しくなりました。でも、素直になれずに、つい、こんなことを言ってしまったのでした。
「どうしたら、お前は私の元から去ってくれるんだい?」
道化師は少し悲しそうにこう言いました。
「私の仕事はイザベラ様を喜ばせる事。
もしも、新しい国を作って、また王女様にいえ、女王様になればイザベラ様はお幸せでしょうから私は要らないですね。
ですから、その時、私は貴方の元から去りましょう」
そう、イザベラと約束したのでした。
そして、イザベラは盗賊達を使って、新しい町を作りました。
商売をして、家を建てました。するとどんどん町に人が集まり、町もどんどん大きくなりまし
た。
イザベラが仕事を一つ成功するたびに道化師は新しい歌をつくり、イザベラのために歌い踊る
のでした。イザベラは道化師の歌を聞くたびに、踊りを見るたびに嬉しくなり、優しくなってい
きました。
そんなある日、元家臣達がイザベラに謝りにきました。
なんでもシャルロットが他国の使い魔に現を抜かし国を蔑ろにしたため、国が乱れたというの
でした。
「そのため、国民達は、ぜんぜん働きません。
パン屋はパンを焼かないし、牛飼いはミルクを絞りません。
私達は、もう一切れのパンも、一滴のミルクも飲めないのです。
だからイザベラ様、帰ってきてください」
新しい国でイザベラが成功したことを知った元家臣達は怒鳴られる覚悟で、謝りにきたのでし
た。でも、イザベラは怒鳴らずに優しく、こう尋ねました。
「お前達の王は本当に私でいいのかい?」
と。
そして、イザベラはシャルロットから王位を取り戻し、ガリアの王女に戻って、いや、ガリアの女王になったのです。
イザベラはシャルロットを処刑しようとせず、自分が作った新しい町を治めるように言いました。国民達は驚きました。てっきり、イザベラはシャルロットを処刑すると思っていたからです。でもなにより、国民達が驚いたのはイザベラが優しくなっていたことでした。
そして、イザベラが女王になってから、ガリアは元通りになりました。
国民達は、ちゃんと働くようになり、
パン屋はパンを焼き、牛飼いはミルクを絞りました。
国民達は、一切れのパンどころか口いっぱいのパンを、一滴どころかコップ一杯のミルクを飲
めるようになったのです。
国民達は大喜びしました。
そして、イザベラもそんな国民達を見て幸せな気持ちになったのでした。
でも、それは、道化師との別れを意味していたのです。
道化師は幸せなイザベラを見て、約束どおりイザベラの元から去ろうとしました。
するとイザベラは道化師の手を握りながら、
「行かないでおくれ。私の傍に…その……ずっと、ずっといて欲しい!」
と言いました。
道化師は困りました。それでは、イザベラとの約束が果たせないからです。
そう、イザベラに言うと、イザベラは優しく微笑みながら道化師の仮面をすっと外しました。仮面の下から出てきたのは、青い目をした可愛らしい女の子でした。
「我が名は、イザベラ・ド・ガリア。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
そう呪文を唱えるとイザベラは道化師の女の子の頬に手を当て、口付けしました。すると女の子の手に使い魔のルーンが刻まれたのです。
そう、イザベラは道化師の女の子にコンラクト・サーヴァントをしたのです。
使い魔のルーンを見て、イザベラは優しく、こう言いました。
「これで、道化師は消えて使い魔であるお前が残る」
その後、イザベラ女王様と使い魔の女の子がどうなったか…。
あっ、ところでシャルロットが治めるようになった新しい町ですけど、なんでもおいしいものがたくさん食べられる食い倒れの町と呼ばれるようになったそうです。
えっ、それより二人のその後は?
あぁ、実は私も知らないんですよ。でも、きっとイザベラの傍には、いつまでもいつまでも優しい歌と踊りをしてくれる一人の使い魔がいたことでしょう。
おはなしのくに「いらない王様」より道化師を召喚。
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