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#navi(ゼロの騎士団)
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン-3
トリステイン魔法学院 夜
太陽も完全に落ちて、三人は明日、この学園の責任者でもあるオールド・オスマンと会談する事になった。
コルベールはゼータとダブルゼータのルーンのメモを取り、自室へと戻ってしまった。
一応、三人はそれぞれ召喚された三人の部屋に泊まることになった。
ルイズと話す必要性のあるニューと取り敢えず疲れたので休みたいというダブルゼータはそれで異論はなかった。
だが、一人がその流れに難色を示した。ゼータである。
アルガスの騎士としてゼータは女性、しかも、嫁入り前の少女と一緒に泊まるのは問題があると抗議したのであった。
「何を恥ずかしがっているのよ?アンタはゴーレムでしょ?それに使い魔が主人と一緒の部屋で寝るのは、なにもおかしな事じゃないわよ。」
当然のことながら、ルイズはゼータを異性として全く認識していなかった。
「私はゴーレムではない、立派なモビルスーツ族だ!とにかく、騎士としてそんな嫁入り前の女性と同じ部屋で寝るという事は許されないと言っているのだ。
私は野宿させてもらう、タバサ殿、話は明日聞きますので失礼します。」
ゼータがその場から立ち去ろうとすると
「だめ・・」小声だが力強い否定で、タバサがゼータのマントをつかむ。
「タバサ殿!!」自分の提案を拒否され少し驚くゼータ。
「あなたは私の使い魔」
「ですから――」
「騎士は主を守る者」タバサがつぶやく
「うっ!」ゼータにとっての正論が彼を射抜く
「騎士は女性を守る者」更にタバサが逃げ道を塞ぐ。
「・・・」ゼータは言葉を探す。
「ゼータ、タバサ殿の言う通りだ」
兄弟子は助け船ではなく追い打ちをかける。
「我々はこの世界の事をよく知らない、ならば彼女達のルールに従うのが筋だろう、それに我々には情報が必要だろう。」
ゼータはタバサの目を見る。自分が一緒の部屋に行く事に対しての拒絶はないようだ。
(仕方ないか・・・)
「――わかった。」
ゼータはこの場で望まれる回答をする。
「じゃ、部屋に行きましょうか。」
キュルケが全員を促し、それに続き惰性で歩き出す。三人は部屋が近い事もありそれぞれほぼ同時に部屋に入って行った。
ルイズの部屋は学校の寮とは思えないほどで、高価な調度品が置かれていた。
ニューは部屋のあたりを見回し、ルイズと同じ年の頃、自分が従者だった時の部屋と比べていた。
(すごいなぁ、貴族の学校というのはこのようなものなのか・・)
実家ならともかく、数年しかいない部屋でこの様なら彼女の実家はどの様なものなのだろう?そんな事を考えていた。
部屋を物珍しそうに見渡すニューの事は気にせず、ルイズは部屋に入った時ある事を実行しようと考えていた。
それは使い魔の契約であった。
ルイズはニューの魔法を見た時から、この事だけを考えていた。
最初は変なゴーレムを召喚したと思ったが、ニューの見せた見たことのない魔法がルイズに使い魔の契約を踏み切らせた。
(確かに変なゴーレムだけど、これは多分当たりよ、だってあんな魔法見たことないもの。
それに、見たところそれほど凶暴そうじゃなさそうだし・・)
「メイジの実力を知りたければ使い魔を見よ」という格言がるように、メイジにとって使い魔は重要なものである。
(ただ契約の事をどうやって切りだそうかしら、さすがに契約は一生で、しかもその方法がキスだと言ったら、
このゴーレムもどう出てくるかわからないし、そもそも、まだ契約してないから迂闊に動くわけにもいかないわ・・)
強引にでも契約したいが、相手の能力を考えるにそれは自身にも危険かもしれない、ルイズがそう思い、何かいい案はないかと思案を巡らせていると・・
「ルイズ殿」
部屋を見回し終えたニューがルイズに声をかける。
「どうしたの、ニュー」ルイズは初めて使い魔の名前を呼んだ。
「君とは使い魔の契約を結んだ訳だが使い魔とは何をすればいいのだ?」
ニューは自分のすべきことが何なのかを理解しておらず、ルイズに聞いてきた。
(もしかして、もう契約したと思い込んでいるの?)
ニューの言葉から内心で拳を上げる。
「えっとね、ニュー・・」
ルイズは少ししおらしく上目遣いでニューを見る。
ルイズは策を弄する事にした。
「契約なんだけど・・あなたはまだ仮契約の状態なの・・」
「え?どういう事だい?」ニューが続きを求める。
「確かに召喚されたらすぐ契約するものなの、けど私、あなたが何者かわからなくて・・」
俯き徐々に声のトーンを下げながら、ルイズは顔を曇らせる。
「そうか、私はこの世界では珍しいようだからね、君がためらうのも無理はない」
「いいのよ、けど、あなたにも意思があるのならあなたの了承を得たいの・・
私はあなたと契約したいの・・いろいろあるけど、その・・召喚した使い魔と契約しないと私・・留年しちゃうの!」
「ルイズ殿・・」
少し湿らせた声にニューは明らかに動揺している。
(ルイズ、殿方を落とすには時には女の弱みを見せることも重要なのよ)
友人であるアンリエッタの言葉が脳裏をかすめる。
「ルイズでいいわよ、ニュー、私と契約してくれる?」
少し目を潤ませ、もう一度俯いた顔を上げる。アンリエッタとの研究と特訓で編み出した技の一つだった。
ニューは少し考えた後、ルイズの望む答えを与えた。
(契約といっても、それほどの物ではあるまい)
どうせ自分は故郷に帰るのだから。
その考えを数分後に死ぬほど公開するのだが、今のニューは当然知らない。
「――わかった、アルガス騎士団法術隊隊長 ニュー、君と契約しよう。」
(うおぉぉぉぉっしゃっああああぁぁっっ!!!)
今までの人生の中で最大音量の咆哮がルイズの心の中に響いた。
この時、使い魔の契約は一生という事を伏せていなかったら、さすがにニューも契約しなかっただろう。しかし、ルイズは当然それが爆弾であることに気づいていた。
「では私は何をすればいいんだい?」
ニューは契約の方法を聞いてくるという事は、了承したと考えてもよかった。
(だめよ、ルイズ!まだ開演中よ!ここからが正念場よ!)
脳内のアンリエッタが喝を入れる。その喝でルイズは現実に戻る。
「契約の方法なんだけど・・その・・キスなの・・」
「キッ、キスゥー!!」
赤らめて、少し恥ずかしそうに顔を下に向ける。
衝撃ともいえる方法とルイズの仕草がニューの思考に止めを刺した。
「わぁっわかりました!ルッ ルイズ!で、では目を閉じていますね。」
思わず敬語になり、潰すように強くニューが目を閉じる。
ルイズは流れが順調に行っていることに、ほくそ笑む
「うん・・ありがとう、ニュー・・」
ルイズは手を緩めない。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え我が使い魔となせ」
ルイズの唇がニューの口に触れる。
それは一瞬でありルイズの顔の気配が離れるとニューは目を開けた。
「ルイズこれで契約はかうぉ!!つうぅぅぅ!」
ニューは右手を抑える。光となってルーンの刻印が刻まれる。
「契約のルーンが刻まれているの、すぐ終わるから」
しばらくすると、光が収まりニューの感じた痛みが徐々に薄れていく。
「はぁ、はぁ、・・ルイズこれでいいのかい?」
「えぇ、これで契約は終わりよ、今からアンタは私の使い魔よ」
舞台は幕を閉じた。
「え、ルイズ?」
「ニュー、私の事はご主人様って呼んで?」
ルイズは満面の笑みで告げる。しかし、その笑顔は何故か恐ろしかった。
「どうしたのだい、ルイズいきなり・・」
「ルイズじゃないわ、ご主人様よ馬鹿ゴーレム!!今日から一生アンタは、私の使い魔よ!」
ルイズが嬉々としてニューに宣言する。
「なっ、なんだって!もしかして騙したのか!?」
「騙してないわよ、アンタと契約しなきゃ本当に留年させられるもの。」
「そうではない!契約する為にあんな嘘の態度をとったのか?」
「あれは本当よ、だって契約方法は恥ずかしいし、留年は泣くほど嫌だし・・
とにかく今日からあなたは私の使い魔よ!というわけでアンタは、これから一生、私の為に掃除、洗濯などの雑用をやってもらうわよ!」
「ふざけるなー!!」
最大限の音量と共に、ニューは自分の迂闊さを呪いトリスティンの1日は終了した。
キュルケの部屋では、ベッドに座ったキュルケに対面する形でダブルゼータが床で胡坐をかいていた。
「使い魔ってのは、何をやるんだ?」
ダブルゼータは、契約の実感がない様子でキュルケに尋ねた。
「使い魔には三つの役割があって、一つが視覚の共有なんだけど、さっき試したけど駄目だったの」
(ルイズなら笑い話ですむんだけどね)
キュルケは内心でそう思った。
「まぁ、いいじゃないか二つ目は?」
全然気にも留めずダブルゼータの態度に、溜息を少し漏らす。キュルケは怒りよりも、
ダブルゼータが、物事にあまりこだわらない事に気付き始めていた。
「二つ目は秘薬の材料なんかを見つけてくるのだけど・・あなたじゃ期待できなさそうね」
二つ目も、たぶん無理だろう。ダブルゼータにはそのような事が出来るようには、とてもではないが思えなかった。
おそらくキノコの調達を頼んだら、キノコの代わりに毒キノコを持ってきそうだ。
「失礼だな、俺はこれでも山には長く住んでいたから、キノコや薬草なんかには結構詳しい方だぞ」
ダブルゼータは山で修行中にアレックスに引き抜かれた経緯があるだけに、ある程度、そういった知識は持っている。
「旅の途中、野宿した時に、俺が見つけたキノコで飢えをしのいだこともある程だ。」
「後で実はワライダケでしたってことはないでしょうね?」
キュルケは話の顛末を予想する。
「そんなミスはしない、現に俺は次の日は普通だったぞ、ただ、多少の慣れが必要でな、ゼータやニューは慣れないから少し体調を崩したけどな」
ダブルゼータは胸を張って答える。
(あなたは慣れているのね・・お腹が)
毒物を少量接種して耐性をつけるのと同じだろうもっとも、ダブルゼータは少量ではないから耐性は尋常ではない。
二人に同情しつつ、キュルケは最も聞きたい事を聞く。
「最後に三つ目が主の身を守る事だけど・・・あなたはメイジじゃないのよね?」
魔法で木を倒したニューの姿を思い浮かべ、残念そうに聞く。
(――ルイズは自慢するでしょうね)
その時に浮かべるであろう、ルイズの勝ち誇った顔がかなり癪に障る。
「まかせておけよ、キュルケ、俺は魔法が使えないが、アルガス王国一の怪力なんだぜ!」
自信を持って、親指を立てた拳を突き出す。
「ふーん、どのくらい力持ちなのアルガス一の怪力さん?」
挑発するようにキュルケが視線を向ける。
「見せたいのだがなー、この部屋には重いものが無い、だから俺の力は明日見せよう」
そう言ってあたりを見回す。
「何言ってるのよ、このベットなんか重いじゃない」
彼女が自分のいるベッドを叩く。彼女のベッドは特別製で男三人で運んだ代物である。
「それじゃ軽すぎる、俺の力を見せるにはもっとでかい物がいい」
当たり前のように言うダブルゼータ。
「そう、じゃ明日見せてね、アルガス王国一の怪力のダブルゼータさん」
到底信じているとは思えない口調で、キュルケは寝る準備をする。
「あぁ!信じてないな、俺はこれでもこんな大きい岩を持ち上げた「おやすみ」」
多少、脚色を交えながらも、身振り手振りのダブルゼータを一瞥することなくキュルケは眠りに就いた。
「・・・本当なのに」
信じてもらえず、少し寂しそうなダブルゼータであった。
「タバサ殿」
ゼータはタバサの部屋にいた。
(この娘は何を考えているのだ・・)
あまり女性が周りにいない環境で育ち、自分の周りにいるようなタイプでは無いので、どう接していいかわからなかった。
「・・タバサでいい」
「ではタバサ、私は何をすればいいのだ、使い魔とはいったい何をすればいいんだ?」
「あなたは魔法は使えるの?」
彼女の興味はニューの使った魔法にあるらしい。
(――ニューの魔法がそんなに珍しいのか?)
ニューに劣るところはないと思っている。だから、それはゼータにとっては不満であった。
「私は騎馬隊だ、魔法や力がなくても技がある。私はアルガスでは団長に次ぐ剣技を持っていた。」
二人が魔法や力を持っているようにゼータも磨きぬいた技が有る。そして、それはゼータの誇りでもあった。
「そう・・とりあえず、私の周りにいてくれればいい。」
ゼータの能力に対して不満もなければ喜んでいるといった風でもない様子でゼータを見る。
ゼータもまた、主の言葉を待つようにタバサを見る。
「・・・寝る」
短い沈黙の後、その短い言葉でタバサは今日の行動を終える準備をする。
「タバサ!」
「おやすみ」
ゼータに毛布を一枚渡し、ゼータの抗議を黙らせる。
「・・・・・・」
ゼータは渡された毛布をじっと見つめる。
(・・今日はもう寝るか)
彼女とのコミュニケーションの難解さを感じつつ、ゼータは毛布をかぶった。
3人のトリスティンでの1日目が終わった。
「5タバサは黙々とハシバミ草を食べている・・」
雪風のタバサ
ゼータと契約した少女
MP 530
「6例え仮初の主でもタバサは必ず守る 」
剣士ゼータ
人を守るのに世界は関係ない
HP1100
#navi(ゼロの騎士団)
#navi(ゼロの騎士団)
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリスティン-3
トリステイン魔法学院 夜
太陽も完全に落ちて、三人は明日、この学園の責任者でもあるオールド・オスマンと会談する事になった。
コルベールはゼータとダブルゼータのルーンのメモを取り、自室へと戻ってしまった。
一応、三人はそれぞれ召喚された三人の部屋に泊まることになった。ルイズと話す必要性のあるニューと取り敢えず疲れたので休みたいというダブルゼータはそれで異論はなかった。
だが、一人がその流れに難色を示した。ゼータである。
アルガスの騎士としてゼータは女性、しかも嫁入り前の少女と一緒に泊まるのは問題があると抗議したのであった。
「何を恥ずかしがっているのよ?アンタはゴーレムでしょ?それに使い魔が主人と一緒の部屋で寝るのは、なにもおかしな事じゃないわよ」
当然のことながら、ルイズはゼータを異性として全く認識していなかった。
「私はゴーレムではない、立派なモビルスーツ族だ!とにかく、騎士としてそんな嫁入り前の女性と同じ部屋で寝るという事は許されないと言っているのだ。私は野宿させてもらう、タバサ殿、話は明日聞きますので失礼します」
ゼータがその場から立ち去ろうとすると
「だめ……」小声だが力強い否定でタバサがゼータのマントをつかむ。
「タバサ殿!!」自分の提案を拒否され少し驚くゼータ。
「あなたは私の使い魔」
「ですから――」
「騎士は主を守る者」タバサがつぶやく
「うっ!」ゼータにとっての正論が彼を射抜く
「騎士は女性を守る者」更にタバサが逃げ道を塞ぐ。
「……」ゼータは言葉を探す。
「ゼータ、タバサ殿の言う通りだ」
兄弟子は助け船ではなく追い打ちをかける。
「我々はこの世界の事をよく知らない、ならば彼女達のルールに従うのが筋だろう、それに我々には情報が必要だろう。」
ゼータはタバサの目を見る。自分が一緒の部屋に行く事に対しての拒絶はないようだ。
(仕方ないか……)
「――わかった」
ゼータはこの場で望まれる回答をする。
「じゃ、部屋に行きましょうか」
キュルケが全員を促し、それに続き惰性で歩き出す。三人は部屋が近い事もありそれぞれほぼ同時に部屋に入って行った。
ルイズの部屋は学校の寮とは思えないほど広く、高価な調度品が置かれていた。
ニューは部屋のあたりを見回し、同じ年の頃、自分が従者だった時の部屋と比べていた。
(すごいなぁ、貴族の学校というのはこのようなものなのか……)
実家ならともかく、数年しかいない部屋でこの様なら彼女の実家はどの様なものなのだろう?そんな事を考えていた。
部屋を物珍しそうに見渡すニューの事は気にせず、ルイズは部屋に入った時ある事を実行しようと考えていた。
それは使い魔の契約であった。
ルイズはニューの魔法を見た時から、この事だけを考えていた。
最初は変なゴーレムを召喚したと思ったが、ニューの見せた見たことのない魔法がルイズに使い魔の契約を踏み切らせた。
(確かに変なゴーレムだけど、これは多分当たりよ、だってあんな魔法見たことないもの。
それに、見たところそれほど凶暴そうじゃなさそうだし……)
「メイジの実力を知りたければ使い魔を見よ」という格言がるように、メイジにとって使い魔は重要なものである。
(ただ契約の事をどうやって切りだそうかしら、さすがに契約は一生で、しかもその方法がキスだと言ったら、このゴーレムもどう出てくるかわからないし、そもそも、まだ契約してないから迂闊に動くわけにもいかないわ……)
強引にでも契約したいが、相手の能力を考えるにそれは自身にも危険かもしれない、ルイズがそう思い、何かいい案はないかと思案を巡らせていると……
「ルイズ殿」
部屋を見回し終えたニューがルイズに声をかける。
「どうしたの、ニュー」ルイズは初めて使い魔の名前を呼んだ。
「君とは使い魔の契約を結んだ訳だが使い魔とは何をすればいいのだ?」
ニューは自分のすべきことが何なのかを理解しておらず、ルイズに聞いてきた。
(もしかして、もう契約したと思い込んでいるの?)
ニューの言葉から内心で拳を上げる。
「えっとね、ニュー……」
ルイズは少ししおらしく上目遣いでニューを見る。
ルイズは策を弄する事にした。
「契約なんだけど……あなたはまだ仮契約の状態なの……」
「え?どういう事だい?」ニューが続きを求める。
「確かに召喚されたらすぐ契約するものなの、けど私、あなたが何者かわからなくて……」
俯き徐々に声のトーンを下げながら、ルイズは顔を曇らせる。
「そうか、私はこの世界では珍しいようだからね、君がためらうのも無理はない」
「いいのよ、けど、あなたにも意思があるのならあなたの了承を得たいの……私はあなたと契約したいの……いろいろあるけど、その……召喚した使い魔と契約しないと私……留年しちゃうの!」
「ルイズ殿……」
少し湿らせた声にニューは明らかに動揺している。
(ルイズ、殿方を落とすには時には女の弱みを見せることも重要なのよ)
友人であるアンリエッタの言葉が脳裏をかすめる。
「ルイズでいいわよ、ニュー、私と契約してくれる?」
少し目を潤ませ、もう一度俯いた顔を上げる。アンリエッタとの研究と特訓で編み出した技の一つだった。
ニューは少し考えた後、ルイズの望む答えを与えた。
(契約といっても、それほどの物ではあるまい)
どうせ自分は故郷に帰るのだから。
その考えを数分後に死ぬほど公開するのだが、今のニューは当然知らない。
「――わかった、アルガス騎士団法術隊隊長 ニュー、君と契約しよう」
(うおぉぉぉぉっしゃっああああぁぁっっ!!!)
今までの人生の中で最大音量の咆哮がルイズの心の中に響いた。
この時、使い魔の契約は一生という事を伏せていなかったら、さすがにニューも契約しなかっただろう。しかし、ルイズは当然それが爆弾であることに気づいていた。
「では私は何をすればいいんだい?」
ニューは契約の方法を聞いてくるという事は、了承したと考えてもよかった。
(だめよ、ルイズ!まだ開演中よ!ここからが正念場よ!)
脳内のアンリエッタが喝を入れる。その喝でルイズは現実に戻る。
「契約の方法なんだけど……その……キスなの……」「キッ、キスゥー!!」
赤らめて、少し恥ずかしそうに顔を下に向ける。
衝撃ともいえる方法とルイズの仕草がニューに止めを刺した。
「わぁっわかりました!ルッ ルイズ!で、では目を閉じていますね。」
思わず敬語になり、潰すように強くニューが目を閉じる。
ルイズは流れが順調に行っていることに、ほくそ笑む
「うん……ありがとう、ニュー……」
ルイズは手を緩めない。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え我が使い魔となせ」
ルイズの唇がニューの赤い口に触れる。
それは一瞬でありルイズの顔の気配が離れるとニューは目を開けた。
「ルイズこれで契約はかうぉ!!つうぅぅぅ!」
ニューは右手を抑える。光となってルーンの刻印が刻まれる。
「契約のルーンが刻まれているの、すぐ終わるから」
しばらくすると、光が収まりニューの感じた痛みが徐々に薄れていく。
「はぁ、はぁ、……ルイズこれでいいのかい?」
「えぇ、これで契約は終わりよ、今からアンタは私の使い魔よ」
舞台は幕を閉じた。
「え、ルイズ?」
「ニュー、私の事はご主人様って呼んで?」
ルイズは満面の笑みで告げる。しかし、その笑顔は何故か恐ろしかった。
「どうしたのだい、ルイズいきなり……」
「ルイズじゃないわ、ご主人様よ馬鹿ゴーレム!!今日から一生アンタは、私の使い魔よ!」
ルイズが嬉々としてニューに宣言する。
「なっ、なんだって!もしかして騙したのか!?」
「騙してないわよ、アンタと契約しなきゃ本当に留年させられるもの」
「そうではない!契約する為にあんな嘘の態度をとったのか?」
「あれは本当よ、だって契約方法は恥ずかしいし、留年は泣くほど嫌だし……とにかく今日からあなたは私の使い魔よ!というわけでアンタは、これから一生、私の為に掃除、洗濯などの雑用をやってもらうわよ!」
「ふざけるなー!!」
最大限の音量と共に、ニューは自分の迂闊さを呪いトリスティンの1日は終了した。
キュルケの部屋ではベッドに座った、キュルケに対面する形でダブルゼータが床で胡坐をかいていた。
「使い魔ってのは、何をやるんだ?」
ダブルゼータは、契約の実感がない様子でキュルケに尋ねた。
「使い魔には三つの役割があって、一つが視覚の共有なんだけど、さっき試したけど駄目だったの」
(ルイズなら笑い話ですむんだけどね)キュルケは内心でそう思った。
「まぁ、いいじゃないか二つ目は?」
全然気にも留めずダブルゼータの態度に、溜息を少し漏らす。キュルケは怒りよりも、
ダブルゼータが、物事にあまりこだわらないのだろうと把握した。
「二つ目は秘薬の材料なんかを見つけてくるのだけど……あなたじゃ期待できなさそうね」
二つ目も、たぶん無理だろう。ダブルゼータにはそのような事が出来るようには、とてもではないが思えなかった。おそらくキノコの調達を頼んだら、キノコの代わりに毒キノコを持ってきそうだ。
「失礼だな、俺はこれでも山には長く住んでいたから、キノコや薬草なんかには結構詳しい方だぞ」
ダブルゼータは山で修行中にアレックスに引き抜かれた経緯があるだけに、ある程度、そういった知識は持っている。
「旅の途中、野宿した時に、俺が見つけたキノコで飢えをしのいだこともある程だ」
「後で実はワライダケでしたってことはないでしょうね?」
キュルケは話の顛末を予想する。
「そんなミスはしない、現に俺は次の日は普通だったぞ、ただ、多少の慣れが必要でな、ゼータやニューは慣れないから少し体調を崩したけどな」
ダブルゼータは胸を張って答える。
(慣れているのね……お腹が)
毒物を少量接種して耐性をつけるのと同じだろうもっとも、ダブルゼータは少量ではないから耐性は尋常ではない。
二人に同情しつつ、キュルケは最も聞きたい事を聞く。
「最後に三つ目が主の身を守る事だけど……あなたはメイジじゃないのよね?」
魔法で木を倒したニューの姿を思い浮かべ、残念そうに聞く。
(――ルイズは自慢するでしょうね)
その時に浮かべるであろう、ルイズの勝ち誇った顔がかなり癪に障る。
「まかせておけよ、キュルケ、俺は魔法が使えないが、アルガス王国一の怪力なんだぜ!」
自信を持って、親指を立てた拳を突き出す。
「ふーん、どのくらい力持ちなのアルガス一の怪力さん?」
挑発するようにキュルケが視線を向ける。
「見せたいのだがなー、この部屋には重いものが無い、だから俺の力は明日見せよう」
そう言ってあたりを見回す。
「何言ってるのよ、このベットなんか重いじゃない」
彼女が自分のいるベッドを叩く。彼女のベッドは特別製で男三人で運んだ代物である。
「それじゃ軽すぎる、俺の力を見せるにはもっとでかい物がいい」
当たり前のように言うダブルゼータ。
「そう、じゃ明日見せてね、アルガス王国一の怪力のダブルゼータさん」
到底信じているとは思えない口調で、キュルケは寝る準備をする。
「あぁ!信じてないな、俺はこれでもこんな大きい岩を持ち上げた「おやすみ」」
多少、脚色を交えながらも、身振り手振りのダブルゼータを一瞥することなくキュルケは眠りに就いた。
「……本当なのに」
信じてもらえず、少し寂しそうなダブルゼータであった。
「タバサ殿」
ゼータはタバサの部屋にいた。
(この娘は何を考えているのだ……)
あまり女性が周りにいない環境で育ち、自分の周りにいるようなタイプでは無いので、どう接していいかわからなかった。
「……タバサでいい」
「ではタバサ、私は何をすればいいのだ、使い魔とはいったい何をすればいいんだ?」
「あなたは魔法は使えるの?」
彼女の興味はニューの使った魔法にあるらしい。
(――ニューの魔法がそんなに珍しいのか?)
ニューに劣るところはないと思っている。だから、それはゼータにとっては不満であった。
「私は騎馬隊だ、魔法や力がなくても技がある。私はアルガスでは団長に次ぐ剣技を持っていた。」
二人が魔法や力を持っているようにゼータも磨きぬいた技が有る。そして、それはゼータの誇りでもあった。
「そう……とりあえず、私の周りにいてくれればいい」
ゼータの能力に対して不満もなければ喜んでいるといった風でもない様子でゼータを見る。
ゼータもまた、主の言葉を待つようにタバサを見る。
「……寝る」
短い沈黙の後、その短い言葉でタバサは今日の行動を終える準備をする。
「タバサ!」
「おやすみ」
ゼータに毛布を一枚渡し、ゼータの抗議を黙らせる。
「……」
ゼータは渡された毛布をじっと見つめる。
(……今日はもう寝るか)
彼女とのコミュニケーションの難解さを感じつつ、ゼータは毛布をかぶった。
3人のトリスティンでの1日目が終わった。
「5タバサは黙々とハシバミ草を食べている……]
雪風のタバサ
ゼータと契約した少女
MP 530
「6例え仮初の主でもタバサは必ず守る 」
剣士ゼータ
人を守るのに世界は関係ない
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