「ゼロと損種実験体-05」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ゼロと損種実験体-05」(2009/01/09 (金) 20:17:37) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
#navi(ゼロと損種実験体)
土くれのフーケと呼ばれる盗賊がいる。錬金の魔法で、狙った獲物のある屋敷の壁を土くれに変え標的を盗み出すことを得意とするトライアングルクラスのメイジである。
と言っても、それしか能がないというわけではない。時には、30メイルもの巨大な土ゴーレムを使い貴族の屋敷を破壊することもある。
そして、今回フーケはトリステイン魔法学院の宝物庫にあるという『破壊の杖』を狙っていた。
だが……。
「さすがは魔法学院本塔の壁ね……。スクウェアクラスの固定化の呪文がかかってて私の錬金じゃ歯が立たない。物理的な衝撃には意味がないと聞いたけど、この壁の厚さじゃ私のゴーレムでも厳しいね」
呟き、腹立ち紛れに本塔の壁を蹴る。
或いは、巨大ゴーレムの拳を鋼鉄にでも変えて、時間をかけて何度も殴りつければ破壊できるかもしれないが、それでは壁を破壊する前に人が集まってきてアウトだ。
いっそ巨大ゴーレムに頼らなくても、本塔の外壁を壊せるくらいの物理的衝撃ってないもんかねえ。と頭を掻き毟り、一つ心当たりがあることに気がついた。
それは、彼女の稼ぎで孤児たちと共に暮らしている妹分の少女が、一年ほど前にサモン・サーヴァントで召喚した少年。
最初、ハルケギニアでは珍しい黒髪、黒目のその少年を、召喚者である妹の言う事をなんでも素直に聞く大人しい人畜無害の平民だとフーケは思っていた。
それが間違いだと知ったのは、水汲みに言って帰ってきた少年の後を追い、食い詰めた傭兵たちが少女の住む村にやってきた時。
村を発見した彼らは、女子供ばかりの村を発見したことに喜び、最初に村で唯一の男手である少年を後ろから刺し殺した。そのつもりだった。
突然起こった凶行に、少女は刺された少年を救おうと駆け寄ろうとして、殴られ意識を刈り取られた。
この時点で、フーケは彼らを生かして帰さない事を自身の心に誓った。さして親しくない少年が殺されたことなど、どうでもいい。だが、妹に手を出したことは許せない。この村にメイジがいた事に気づかなかった己の迂闊さを呪うがいい。そう思った。
だが、彼女が杖を振るう前に少女を殴った傭兵が吹き飛んでいた。
吹き飛ばしたのは、二メイルを超える体躯を持つ怪物。それが、少年の変じたものだと気づく余裕があったのかどうか、傭兵たちは剣を振るい槍を突き、怪物に挑み、そして敗れた。
怪物は強かった。強すぎた。その拳は大した力を入れたわけでもないのに容易く岩を砕き、その身は剣や槍では傷一つ負わぬ頑健さで、そして勝ち目がないと逃げだした者に容易に追いつく脚力を持っていた。
全ての傭兵を打ち倒した怪物が振り返ったとき、フーケは死を意識した。正直、自分の操る巨大ゴーレムでも、この怪物を倒せる気がしなかった。
怪物が、こちらに近づいてきたと知ったときフーケは呪文を唱えようとして、妹の声を聞いた。
目を覚ましたのかと目を向けたが、それは寝言のようなものだったらしく、少女の眼は閉ざされたままだった。
そうして、フーケがもう一度怪物に視線を戻したとき、そこには変化が訪れていた。少女が口にしたのは彼女が召喚した少年の名だった。その名を聞いたとき、怪物の胸にルーンの輝きが生じ、怪物は元の少年の姿に戻っていた。傭兵たちに刺される前の傷一つない姿でだ。
正直なところ、その時フーケは少年を始末すべきだと考えたし、今でもその判断が間違っていたとは思っていない。
だけど、できなかった。戦って勝てる自信がなかったというのもあるが、その時、少年の足元には気を失った妹が倒れていたからだ。
その後、自室のベッドで目を覚ました妹に、フーケは怪物の話をしなかった。妹は怪物のことを知っているのかもしれないし、知らないかもしれない。だが、どちらにしても、そのことは話すべきではないと感じた。いや、もしかしたら話したくないと思ったのかもしれない。
あの怪物の力なら、この壁も破壊できるかもしれないと考え、そんな自分の思考に苦笑する。
あの怪物は、外に出すのは危険すぎる存在であるし、そもそも遠く離れた地にいる。そんなものに頼ろうなどというのは、ただの現実逃避でしかない。
どうしたものかと、意識を外に向けたとき、彼女の眼は中庭を女子寮に向かって歩く一人の男の姿を捉えた。
それは、彼女の妹が召喚したのと同じく、人間に平民に見える。しかし人間ではないであろう使い魔であった。
突然だが、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはとても爆発しやすい少女である。
魔法もそうだが、感情を爆発させることが異常なまでに多い。そんな彼女が自分が召喚したものだとは言え、貴族を歯牙にもかけない横柄な態度の使い魔に一度しか感情を爆発させていないと聞けば、学院の生徒なら誰でも耳を疑うだろう。だが、そこには現在の彼女の性格を形成するに至った過程が大きく影響している。
さて、これまた学院の生徒が聞けば耳を疑うことだろうが、彼女は元々は内に籠もるタイプの人間で嫌な事があると一人になれる場所を捜して泣いているような少女であった。そんなルイズが現在の性格になったのは、学院に通うことによって彼女を取り巻く周囲の環境が変わったからである。
彼女は、魔法を成功させたことがなかった。努力が足りなかったわけではない。もし努力というものが必ず結果に結びつくものであったなら、ルイズは今の年齢で、すでにトライアングルクラスのメイジにもなれていただろう。
努力が中々実を結ばないということは苦しいものだ。だが、まったく報われないというのはいかなる苦痛だろうか。底の抜けたひしゃくで水を汲もうとするような徒労感に苛まれ続け、それでも止めることが許されない。そして、家族は叱りつけ彼女に言うのだ。何故そんな事も出来ないのかと。貴族なのに魔法が使えなくてどうするのかと。
家族の言葉が、彼女を思いやってのものであることを理解できてなけなければ、まだ救われたかもしれない。家族の言葉に怒り、家族を憎み全てを投げ出せれば彼女の心は、ここまで追い詰められなかった。
だけど、彼女には分かっていた。家族の叱責は、彼女を心配してのもの。
魔法が使えない貴族などいない。これは、ここハルケギニアでは常識以前の理。そんな世界で、魔法の使えない貴族として生きなければいけない彼女の未来が明るいものであるはずがない。彼女の魔法を成功させるために必要な道具でもあれば、彼らはそれがいかなる高額な物であったとしても手に入れただろう。だが、そんな都合のいい物は存在しない。メイジの誰もが学び苦労して努力の末に魔法の力を獲得するのだ。
だから、彼らは努力が足りないとルイズを叱りつけ、その想いが理解できるから、彼女は自身の不甲斐なさを責めることしかできず一人涙し、その心の奥底に暗い憤りを沈殿させる。
そうして、努力の甲斐なく魔法が使えないまま学院に通うことになったルイズは、周囲の自分を見る目に些細な、しかし決して見逃せない違いがあることに気づいた。
かつての彼女は、魔法が使えないルイズであった。両親も姉達も優秀なのに一人だけ魔法が使えない出来損ない。それが彼女の評価。
だが、学院に通うようになってからの彼女は、魔法が使えないヴァリエールと見なされるようになった。
それが当然であるのだと言うように容易く魔法を使って見せる学院の生徒たちはルイズを蔑み、そして彼女の家族をも貶める。
ゼロのルイズと血が繋がった家族が、優秀なメイジだなんてありえない。公爵家の権力で捻じ曲げた風聞を広めているに違いない。
面白おかしく語られるそれらを、ルイズは看過できない。自分が悪く言われるのは仕方がない。だけど、家族を悪く言うのは許せない。そんな想いが彼女の心の奥に沈められた激しい怒りを汲み上げる。
そして彼女は憤りを外に出すことを学習する。自分に魔法が使えないことを馬鹿にする者に、憎しみにも似た怒りをぶつけるようになる。
だけど、ルイズを馬鹿にする者は絶えず、彼女の内に感情を爆発させやすい性格が形成されていった。
そんな彼女が己の使い魔に一度しか感情を爆発させたことがないのは、彼が一度もルイズの魔法を馬鹿にしなかったから。
だけど、爆発しやすく形成された性格は、彼の態度の一つ一つにルイズ本人すら気づかぬ苛立ちを溜め込み、爆発のきっかけを待っていた。
休日を利用して街に出かけた理由はアプトムの着替えを買うことだったが、ルイズ本人にもよく理解できない何かモヤモヤとした感情をどうにかするための気晴らしの意味もあった。
だけど、モヤモヤは消えなかった。
アプトムはいつも通りだった。偉そうな物言いで、そのくせ彼女のいう事に特に逆らいもしない。
生活に必要な物だけを要求し、それ以外には興味も持たない。武器屋に興味を示したようなので、何か買ってあげようと思ったが結局ただで貰うことになり、しかも結局それほどの興味はなかったようで、貰ったのは錆びだらけのボロ剣一本である。
アプトムは、悪くない。自分が勝手に彼に距離を感じているだけである。それが分かっていても、その心の奥の燻りは消えない。ルイズの心はアプトムに怒りの感情をぶつける事を求めており、その自覚のない彼女にそれを止める術はない。
そして彼女は、それを目撃する。
街から帰ってきた後、確認したいことがあると言って、武器屋で手に入れた剣だけを持って部屋を出て行った使い魔が、ある女性と並び話しながら歩いている姿を。
土くれのフーケは、仕事の前に綿密な調査を欠かさない盗賊である。綿密な調査と臨機応変な行動。それが、彼女を神出鬼没の大怪盗たらしめていた。
ただ、臨機応変な行動には後先の考えの足らなさもあった。
今回は、調査のためにロングビルという偽名を使い学院に潜入していた。ちなみにフーケというのも本名ではない。本名を使って犯罪行為を行うほど愚かではない。
事前の調査で、学院の宝物庫を襲うには自分の力だけでは無理だと知った。彼女に足りない力を補えるであろう男に声をかけたのは臨機応変な行動力ゆえ。
問題は、そこからだ。声をかけたのはいいが、何をどう話せばこの男を利用できるのかという考えが足りなかった。彼女が持つ男の情報は、おそらくは人間ではないであろうという推測と、ガンダールヴとかいう伝説の使い魔と同じルーンを持っているらしいというあやふやなものしかないのだから。
考えなしに動くもんじゃないねえ。などと内心呟きながら共通の話題、つまりルイズの事を適当に話しながら歩く。
会話の内容は当たり障りのないものだった。そもそも彼女にとって、ルイズという少女は貴族なのに魔法が使えないらしいという噂を知っているだけの相手に過ぎない。そんな相手の話をしようというのが間違いなのだ。どうせなら学院に召喚されてからの苦労話でも聞いたほうが良かったと考えたのも後の祭りであった。
だが、それが結果的に彼女を助けることになる。
ルイズは怒っていた。その原因は彼女の使い魔。
中々帰ってこないアプトムのことが気になって捜しに向かった中庭で、常に自分との間に距離を取っている使い魔が他の女性と楽しそうに話をしているのを見てしまったから。そして、その相手は学院長秘書のミス・ロングビルで話題は自分の事。
実際には、アプトムがロングビルとの会話を楽しんでいたという事実はない。彼は、いつも通りの愛想のない顔で話していた。
しかし、ついに爆発したルイズには分からない。二人の会話に自分の名前が出てきた瞬間、彼女の脳はそれを実家のメイドがよくやっていた陰口だと思い込み、やはりあの使い魔も自分を影でゼロのルイズだと嘲っていたのだと判断した。
学院長の秘書を名乗る女に話しかけられた時にアプトムが思ったのは、この学院には暇な人間が多いのだろうか? であった。
コルベールが召喚のときの事を話さない限り、彼の立場はゼロのルイズが呼び出した平民の使い魔である。珍しくはあるだろうが、それだけの存在である。
いやまあ、メイジである学院の生徒たちに何度も決闘を申し込まれ、その全てに勝利しているという事実もあるが、どれも負けた生徒たちが未熟な者たちだっただけという結論が同じ生徒たちの通説になっている。貴族に勝る平民などいない。いてはいけないのだ。でなくては、
六千年続いた貴族の支配体制が揺らいでしまうではないか。
そんなわけで、アプトムはどこぞの『我らの剣』のように学院で働くコックやメイドに、もてはやされることもなく、学院の多くの使い魔がそうであるように、周囲に埋没してモブか背景のように日々を過ごしていた。
そんな彼に、特に用事もなく話しかけてくる女が暇人でないなどとは彼でなくても思わないだろう。コルベール辺りなら、自分に気があるものだと勘違いするかもしれないが。
そんなわけで、ルイズについての誰でも知っているようなどうでもいい話をしてきたときも。ああ、やっぱりな。と思っただけであった。
どうでもいい話に、適当に相槌を打つだけの意味の無い時間。それを破ったのは誰あろう、彼の主たる少女であった。
「……やっぱりね。そんなことじゃないかと思ってたのよ」
何がやっぱりなのか彼には分からなかった。分かるのは少女が怒りに我を忘れているであろう事実だけ。
その両の瞳はギラギラと憎悪に輝き、口元はようやく怒りを吐き出せる喜びに歪に歪み、なんというか、ようやく出会えた倒すべき宿敵にでも向ければ絵になるだろう形相。
殺意すら見え隠れする、子供が見たら、泣き出しそうな視線で睨まれたのはアプトムだが、その隣にいたロングビルも当然それを見るわけで、「ひっ」と小さく悲鳴を上げてアプトムの腕に抱きついてしまったのも他意があったわけではない。
それが、ルイズの怒りの炎に油を撒く行為であることなど知らないし。知っていたとしても、この状況ではしかたあるまい。
猛るルイズは、杖を振りルーンを唱える。アプトムには分からないが、それは火球を作り打ち出す『ファイヤーボール』の呪文。魔法は使えないが、座学において優秀な成績を修めるルイズは全ての呪文をそらんじる。
もちろん、その魔法が成功することはなく、アプトムの立っていた場所の少し横の空間で爆発が起こる。
だが、その時にはもう元の位置にアプトムはいない。ジャリっという土を踏む音が聞こえ、顔を向けたルイズはロングビルを横抱きに抱えた使い魔を見てしまう。
「――――っ!」
それは、怒声だったのか悲鳴だったのか。
矢継ぎ早にルーンを唱えるルイズから、いったん距離を取ったアプトムはロングビルを降ろして、そこから離れる。
他のものが見えなくなっているのだろう。使い魔に向かって杖を振り辺りを爆発させ続けるルイズに、アプトムはどうしたものかと考える。
時に、見当違いな所を、時に顔の近くで爆発するルイズの魔法に曝されながら、しかしアプトムに危機感というものはなかった。それは、使い魔として過ごした一週間ほどの間に知ったルイズの魔法の特性ゆえ。
ルイズの魔法は必ず爆発する。爆発する位置を選べるのならまだ使いようもあるが、それもできない。といっても、どこが爆発するのかまったく分からないというものでもない。ルイズの魔法で爆発するのは彼女の視界内のどこか。ようするに、そこから回避してしまえば爆発を避けることは可能だ。そして、アプトムにはそれができる身体能力がある。
と言っても、それがルイズの魔法に危機を感じない理由ではない。アプトムが知るルイズの魔法の特性とは、馬鹿馬鹿しいほどの殺傷力のなさ。
今ルイズが唱え爆発させた魔法は、岩を破壊し地面に大穴を開け本塔の壁にヒビを入れている。それだけの威力を持ちながら、この魔法が人を傷つけることはない。
例えば、錬金の授業の時、この魔法で吹き飛ばされたミセス・シュヴルーズは気絶したが、それは黒板に叩きつけられたからで、爆発そのものでは傷一つ負っていない。
理由は分からない。だが、理由がわからなくともその事実は動かず、その事実とよく分からない理由で怒るルイズにどう対応すればいいのか分からない故に、アプトムとしては半ば投げやりにどうしたものかと考える。
だが、答えは出なかった。いや、出す必要がなくなったというべきか。
それまで無心に魔法を回避し続けていたように見えたアプトムが、急に自分に向かってきて彼女を抱きかかえたとき、ルイズは悲鳴を上げていた。
それは使い魔が自分に危害を加えるはずがないという信頼か、或いは甘えが裏切られた瞬間のようにルイズは感じた。
それが勘違いと気づいたのは、ルイズを抱えてその場から離れたアプトムの目線を追った結果目にしたものが原因。
そこには巨大なゴーレムがいて、それが先ほどまでルイズが大暴れしていた所に向かい歩いていた。
巨大ゴーレムの肩の上に立ち、それをコントロールしているフーケは、笑いが止まらない気分だった。
自分の力だけでは破壊することのかなわない宝物庫の壁に、一度はあきらめかけた。ところが、苦し紛れに近くにいた平民の使い魔にちょっと話しかけてみたところ、それが原因で使い魔と主の間で諍いが起こり、その余波で固定化の魔法で保護されているはずの壁が破損したのだ。何故そんな事態が起こったのかは分からない。
だが、この幸運を逃すわけにはいかない。その使い魔に話しかけるときに隠した黒いローブを取り出しフードを被り、ゴーレムを生み出すと即座に宝物庫に向かわせた。
宝物庫の前に立ったゴーレムがヒビの入った壁に拳をぶつけると、もはや固定化の効果も消えているのか、容易く穴が開く。
「まったく使い魔さまさまだね」
笑いと共に次げた言葉を聞いたのは、宝物庫の壁だけだった。
#navi(ゼロと損種実験体)
#navi(ゼロと損種実験体)
日も沈みかけた黄昏の時刻。その剣の柄に、彼は右手を伸ばす。その剣は魔剣、意思を持ち言葉を解する長剣。
剣を鞘から抜くと同時に、彼の左手に刻まれたルーンは輝き彼の肉体に干渉を始める。
「なるほどな」
呟き。彼は、剣を鞘に収める。
「なにが、なるほどなんでい?」
剣が聞いてくるが、彼は答えない。この剣は自分の秘密を話すに値する相手なのか判断がつかないから。
彼は、調整を受けることにより、自身の意志の命ずるままに獣化する能力を得たゾアノイドである。
その肉体が、このデルフリンガーという剣を初めて手にした時、使い魔の契約と共に左手に刻まれたルーンが反応し、勝手に獣化を始めよ
うとした。
この時、彼が考えたのは、このルーンと剣は、二つ揃うことで、ゾアノイドの上位調整体である獣神将のような、ゾアノイドを精神支配す
ることができる能力を持っているのではないかということである。
その考えが正しければ、これはゾアノイドにとって危険な代物である。左手に刻まれてしまったルーンはともかく、剣の方は早く処分して
しまうべきだろう。彼が普通のゾアノイドであったなら。
だが、アプトムはゾアノイドという枠をはみ出し、獣神将の精神支配から完全に解き放たれた存在である。たとえルーンに精神支配の能力
があったとしても抗うことは可能なはずだと考え、それは正しかった。
剣を抜きルーンを発動させた彼は、自身の獣化を押さえ、そしてその肉体への干渉を分析し、その解を得た。
結論から言うと、このルーンの彼の肉体への干渉は獣化を目的としたものではない。このルーンの能力は、刻んだ肉体の戦闘への最適化。
彼が獣化しかけたのは、ゾアノイドにとって戦闘に最適なのが獣化した状態だったからにすぎない。もし、彼が未調整の人間だったなら、
身体能力の向上という形でルーンの能力は発現しただろう。
「くだらん能力だ。こんなものが地球に帰る手がかりになると思ったとはな」
自分で考えていたよりも、焦っていたのかもしれないな。と苦笑し、彼は主の待つ女子寮に向かった。
土くれのフーケと呼ばれる盗賊がいる。錬金の魔法で、狙った獲物のある屋敷の壁を土くれに変え標的を盗み出すことを得意とするトライアングルクラスのメイジである。
と言っても、それしか能がないというわけではない。時には、30メイルもの巨大な土ゴーレムを使い貴族の屋敷を破壊することもある。
そして、今回フーケはトリステイン魔法学院の宝物庫にあるという『破壊の杖』を狙っていた。
だが……。
「さすがは魔法学院本塔の壁ね……。スクウェアクラスの固定化の呪文がかかってて私の錬金じゃ歯が立たない。物理的な衝撃には意味がないと聞いたけど、この壁の厚さじゃ私のゴーレムでも厳しいね」
呟き、腹立ち紛れに本塔の壁を蹴る。
或いは、巨大ゴーレムの拳を鋼鉄にでも変えて、時間をかけて何度も殴りつければ破壊できるかもしれないが、それでは壁を破壊する前に人が集まってきてアウトだ。
いっそ巨大ゴーレムに頼らなくても、本塔の外壁を壊せるくらいの物理的衝撃ってないもんかねえ。と頭を掻き毟り、一つ心当たりがあることに気がついた。
それは、彼女の稼ぎで孤児たちと共に暮らしている妹分の少女が、一年ほど前にサモン・サーヴァントで召喚した少年。
最初、ハルケギニアでは珍しい黒髪、黒目のその少年を、召喚者である妹の言う事をなんでも素直に聞く大人しい人畜無害の平民だとフーケは思っていた。
それが間違いだと知ったのは、水汲みに言って帰ってきた少年の後を追い、食い詰めた傭兵たちが少女の住む村にやってきた時。
村を発見した彼らは、女子供ばかりの村を発見したことに喜び、最初に村で唯一の男手である少年を後ろから刺し殺した。そのつもりだった。
突然起こった凶行に、少女は刺された少年を救おうと駆け寄ろうとして、殴られ意識を刈り取られた。
この時点で、フーケは彼らを生かして帰さない事を自身の心に誓った。さして親しくない少年が殺されたことなど、どうでもいい。だが、妹に手を出したことは許せない。この村にメイジがいた事に気づかなかった己の迂闊さを呪うがいい。そう思った。
だが、彼女が杖を振るう前に少女を殴った傭兵が吹き飛んでいた。
吹き飛ばしたのは、二メイルを超える体躯を持つ怪物。それが、少年の変じたものだと気づく余裕があったのかどうか、傭兵たちは剣を振るい槍を突き、怪物に挑み、そして敗れた。
怪物は強かった。強すぎた。その拳は大した力を入れたわけでもないのに容易く岩を砕き、その身は剣や槍では傷一つ負わぬ頑健さで、そして勝ち目がないと逃げだした者に容易に追いつく脚力を持っていた。
全ての傭兵を打ち倒した怪物が振り返ったとき、フーケは死を意識した。正直、自分の操る巨大ゴーレムでも、この怪物を倒せる気がしなかった。
怪物が、こちらに近づいてきたと知ったときフーケは呪文を唱えようとして、妹の声を聞いた。
目を覚ましたのかと目を向けたが、それは寝言のようなものだったらしく、少女の眼は閉ざされたままだった。
そうして、フーケがもう一度怪物に視線を戻したとき、そこには変化が訪れていた。少女が口にしたのは彼女が召喚した少年の名だった。その名を聞いたとき、怪物の胸にルーンの輝きが生じ、怪物は元の少年の姿に戻っていた。傭兵たちに刺される前の傷一つない姿でだ。
正直なところ、その時フーケは少年を始末すべきだと考えたし、今でもその判断が間違っていたとは思っていない。
だけど、できなかった。戦って勝てる自信がなかったというのもあるが、その時、少年の足元には気を失った妹が倒れていたからだ。
その後、自室のベッドで目を覚ました妹に、フーケは怪物の話をしなかった。妹は怪物のことを知っているのかもしれないし、知らないかもしれない。だが、どちらにしても、そのことは話すべきではないと感じた。いや、もしかしたら話したくないと思ったのかもしれない。
あの怪物の力なら、この壁も破壊できるかもしれないと考え、そんな自分の思考に苦笑する。
あの怪物は、外に出すのは危険すぎる存在であるし、そもそも遠く離れた地にいる。そんなものに頼ろうなどというのは、ただの現実逃避でしかない。
どうしたものかと、意識を外に向けたとき、彼女の眼は中庭を女子寮に向かって歩く一人の男の姿を捉えた。
それは、彼女の妹が召喚したのと同じく、人間に平民に見える。しかし人間ではないであろう使い魔であった。
突然だが、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはとても爆発しやすい少女である。
魔法もそうだが、感情を爆発させることが異常なまでに多い。そんな彼女が自分が召喚したものだとは言え、貴族を歯牙にもかけない横柄な態度の使い魔に一度しか感情を爆発させていないと聞けば、学院の生徒なら誰でも耳を疑うだろう。だが、そこには現在の彼女の性格を形成するに至った過程が大きく影響している。
さて、これまた学院の生徒が聞けば耳を疑うことだろうが、彼女は元々は内に籠もるタイプの人間で嫌な事があると一人になれる場所を捜して泣いているような少女であった。そんなルイズが現在の性格になったのは、学院に通うことによって彼女を取り巻く周囲の環境が変わったからである。
彼女は、魔法を成功させたことがなかった。努力が足りなかったわけではない。もし努力というものが必ず結果に結びつくものであったなら、ルイズは今の年齢で、すでにトライアングルクラスのメイジにもなれていただろう。
努力が中々実を結ばないということは苦しいものだ。だが、まったく報われないというのはいかなる苦痛だろうか。底の抜けたひしゃくで水を汲もうとするような徒労感に苛まれ続け、それでも止めることが許されない。そして、家族は叱りつけ彼女に言うのだ。何故そんな事も出来ないのかと。貴族なのに魔法が使えなくてどうするのかと。
家族の言葉が、彼女を思いやってのものであることを理解できてなけなければ、まだ救われたかもしれない。家族の言葉に怒り、家族を憎み全てを投げ出せれば彼女の心は、ここまで追い詰められなかった。
だけど、彼女には分かっていた。家族の叱責は、彼女を心配してのもの。
魔法が使えない貴族などいない。これは、ここハルケギニアでは常識以前の理。そんな世界で、魔法の使えない貴族として生きなければいけない彼女の未来が明るいものであるはずがない。彼女の魔法を成功させるために必要な道具でもあれば、彼らはそれがいかなる高額な物であったとしても手に入れただろう。だが、そんな都合のいい物は存在しない。メイジの誰もが学び苦労して努力の末に魔法の力を獲得するのだ。
だから、彼らは努力が足りないとルイズを叱りつけ、その想いが理解できるから、彼女は自身の不甲斐なさを責めることしかできず一人涙し、その心の奥底に暗い憤りを沈殿させる。
そうして、努力の甲斐なく魔法が使えないまま学院に通うことになったルイズは、周囲の自分を見る目に些細な、しかし決して見逃せない違いがあることに気づいた。
かつての彼女は、魔法が使えないルイズであった。両親も姉達も優秀なのに一人だけ魔法が使えない出来損ない。それが彼女の評価。
だが、学院に通うようになってからの彼女は、魔法が使えないヴァリエールと見なされるようになった。
それが当然であるのだと言うように容易く魔法を使って見せる学院の生徒たちはルイズを蔑み、そして彼女の家族をも貶める。
ゼロのルイズと血が繋がった家族が、優秀なメイジだなんてありえない。公爵家の権力で捻じ曲げた風聞を広めているに違いない。
面白おかしく語られるそれらを、ルイズは看過できない。自分が悪く言われるのは仕方がない。だけど、家族を悪く言うのは許せない。そんな想いが彼女の心の奥に沈められた激しい怒りを汲み上げる。
そして彼女は憤りを外に出すことを学習する。自分に魔法が使えないことを馬鹿にする者に、憎しみにも似た怒りをぶつけるようになる。
だけど、ルイズを馬鹿にする者は絶えず、彼女の内に感情を爆発させやすい性格が形成されていった。
そんな彼女が己の使い魔に一度しか感情を爆発させたことがないのは、彼が一度もルイズの魔法を馬鹿にしなかったから。
だけど、爆発しやすく形成された性格は、彼の態度の一つ一つにルイズ本人すら気づかぬ苛立ちを溜め込み、爆発のきっかけを待っていた。
休日を利用して街に出かけた理由はアプトムの着替えを買うことだったが、ルイズ本人にもよく理解できない何かモヤモヤとした感情をどうにかするための気晴らしの意味もあった。
だけど、モヤモヤは消えなかった。
アプトムはいつも通りだった。偉そうな物言いで、そのくせ彼女のいう事に特に逆らいもしない。
生活に必要な物だけを要求し、それ以外には興味も持たない。武器屋に興味を示したようなので、何か買ってあげようと思ったが結局ただで貰うことになり、しかも結局それほどの興味はなかったようで、貰ったのは錆びだらけのボロ剣一本である。
アプトムは、悪くない。自分が勝手に彼に距離を感じているだけである。それが分かっていても、その心の奥の燻りは消えない。ルイズの心はアプトムに怒りの感情をぶつける事を求めており、その自覚のない彼女にそれを止める術はない。
そして彼女は、それを目撃する。
街から帰ってきた後、確認したいことがあると言って、武器屋で手に入れた剣だけを持って部屋を出て行った使い魔が、ある女性と並び話しながら歩いている姿を。
土くれのフーケは、仕事の前に綿密な調査を欠かさない盗賊である。綿密な調査と臨機応変な行動。それが、彼女を神出鬼没の大怪盗たらしめていた。
ただ、臨機応変な行動には後先の考えの足らなさもあった。
今回は、調査のためにロングビルという偽名を使い学院に潜入していた。ちなみにフーケというのも本名ではない。本名を使って犯罪行為を行うほど愚かではない。
事前の調査で、学院の宝物庫を襲うには自分の力だけでは無理だと知った。彼女に足りない力を補えるであろう男に声をかけたのは臨機応変な行動力ゆえ。
問題は、そこからだ。声をかけたのはいいが、何をどう話せばこの男を利用できるのかという考えが足りなかった。彼女が持つ男の情報は、おそらくは人間ではないであろうという推測と、ガンダールヴとかいう伝説の使い魔と同じルーンを持っているらしいというあやふやなものしかないのだから。
考えなしに動くもんじゃないねえ。などと内心呟きながら共通の話題、つまりルイズの事を適当に話しながら歩く。
会話の内容は当たり障りのないものだった。そもそも彼女にとって、ルイズという少女は貴族なのに魔法が使えないらしいという噂を知っているだけの相手に過ぎない。そんな相手の話をしようというのが間違いなのだ。どうせなら学院に召喚されてからの苦労話でも聞いたほうが良かったと考えたのも後の祭りであった。
だが、それが結果的に彼女を助けることになる。
ルイズは怒っていた。その原因は彼女の使い魔。
中々帰ってこないアプトムのことが気になって捜しに向かった中庭で、常に自分との間に距離を取っている使い魔が他の女性と楽しそうに話をしているのを見てしまったから。そして、その相手は学院長秘書のミス・ロングビルで話題は自分の事。
実際には、アプトムがロングビルとの会話を楽しんでいたという事実はない。彼は、いつも通りの愛想のない顔で話していた。
しかし、ついに爆発したルイズには分からない。二人の会話に自分の名前が出てきた瞬間、彼女の脳はそれを実家のメイドがよくやっていた陰口だと思い込み、やはりあの使い魔も自分を影でゼロのルイズだと嘲っていたのだと判断した。
学院長の秘書を名乗る女に話しかけられた時にアプトムが思ったのは、この学院には暇な人間が多いのだろうか? であった。
コルベールが召喚のときの事を話さない限り、彼の立場はゼロのルイズが呼び出した平民の使い魔である。珍しくはあるだろうが、それだけの存在である。
いやまあ、メイジである学院の生徒たちに何度も決闘を申し込まれ、その全てに勝利しているという事実もあるが、どれも負けた生徒たちが未熟な者たちだっただけという結論が同じ生徒たちの通説になっている。貴族に勝る平民などいない。いてはいけないのだ。でなくては、
六千年続いた貴族の支配体制が揺らいでしまうではないか。
そんなわけで、アプトムはどこぞの『我らの剣』のように学院で働くコックやメイドに、もてはやされることもなく、学院の多くの使い魔がそうであるように、周囲に埋没してモブか背景のように日々を過ごしていた。
そんな彼に、特に用事もなく話しかけてくる女が暇人でないなどとは彼でなくても思わないだろう。コルベール辺りなら、自分に気があるものだと勘違いするかもしれないが。
そんなわけで、ルイズについての誰でも知っているようなどうでもいい話をしてきたときも。ああ、やっぱりな。と思っただけであった。
どうでもいい話に、適当に相槌を打つだけの意味の無い時間。それを破ったのは誰あろう、彼の主たる少女であった。
「……やっぱりね。そんなことじゃないかと思ってたのよ」
何がやっぱりなのか彼には分からなかった。分かるのは少女が怒りに我を忘れているであろう事実だけ。
その両の瞳はギラギラと憎悪に輝き、口元はようやく怒りを吐き出せる喜びに歪に歪み、なんというか、ようやく出会えた倒すべき宿敵にでも向ければ絵になるだろう形相。
殺意すら見え隠れする、子供が見たら、泣き出しそうな視線で睨まれたのはアプトムだが、その隣にいたロングビルも当然それを見るわけで、「ひっ」と小さく悲鳴を上げてアプトムの腕に抱きついてしまったのも他意があったわけではない。
それが、ルイズの怒りの炎に油を撒く行為であることなど知らないし。知っていたとしても、この状況ではしかたあるまい。
猛るルイズは、杖を振りルーンを唱える。アプトムには分からないが、それは火球を作り打ち出す『ファイヤーボール』の呪文。魔法は使えないが、座学において優秀な成績を修めるルイズは全ての呪文をそらんじる。
もちろん、その魔法が成功することはなく、アプトムの立っていた場所の少し横の空間で爆発が起こる。
だが、その時にはもう元の位置にアプトムはいない。ジャリっという土を踏む音が聞こえ、顔を向けたルイズはロングビルを横抱きに抱えた使い魔を見てしまう。
「――――っ!」
それは、怒声だったのか悲鳴だったのか。
矢継ぎ早にルーンを唱えるルイズから、いったん距離を取ったアプトムはロングビルを降ろして、そこから離れる。
他のものが見えなくなっているのだろう。使い魔に向かって杖を振り辺りを爆発させ続けるルイズに、アプトムはどうしたものかと考える。
時に、見当違いな所を、時に顔の近くで爆発するルイズの魔法に曝されながら、しかしアプトムに危機感というものはなかった。それは、使い魔として過ごした一週間ほどの間に知ったルイズの魔法の特性ゆえ。
ルイズの魔法は必ず爆発する。爆発する位置を選べるのならまだ使いようもあるが、それもできない。といっても、どこが爆発するのかまったく分からないというものでもない。ルイズの魔法で爆発するのは彼女の視界内のどこか。ようするに、そこから回避してしまえば爆発を避けることは可能だ。そして、アプトムにはそれができる身体能力がある。
と言っても、それがルイズの魔法に危機を感じない理由ではない。アプトムが知るルイズの魔法の特性とは、馬鹿馬鹿しいほどの殺傷力のなさ。
今ルイズが唱え爆発させた魔法は、岩を破壊し地面に大穴を開け本塔の壁にヒビを入れている。それだけの威力を持ちながら、この魔法が人を傷つけることはない。
例えば、錬金の授業の時、この魔法で吹き飛ばされたミセス・シュヴルーズは気絶したが、それは黒板に叩きつけられたからで、爆発そのものでは傷一つ負っていない。
理由は分からない。だが、理由がわからなくともその事実は動かず、その事実とよく分からない理由で怒るルイズにどう対応すればいいのか分からない故に、アプトムとしては半ば投げやりにどうしたものかと考える。
だが、答えは出なかった。いや、出す必要がなくなったというべきか。
それまで無心に魔法を回避し続けていたように見えたアプトムが、急に自分に向かってきて彼女を抱きかかえたとき、ルイズは悲鳴を上げていた。
それは使い魔が自分に危害を加えるはずがないという信頼か、或いは甘えが裏切られた瞬間のようにルイズは感じた。
それが勘違いと気づいたのは、ルイズを抱えてその場から離れたアプトムの目線を追った結果目にしたものが原因。
そこには巨大なゴーレムがいて、それが先ほどまでルイズが大暴れしていた所に向かい歩いていた。
巨大ゴーレムの肩の上に立ち、それをコントロールしているフーケは、笑いが止まらない気分だった。
自分の力だけでは破壊することのかなわない宝物庫の壁に、一度はあきらめかけた。ところが、苦し紛れに近くにいた平民の使い魔にちょっと話しかけてみたところ、それが原因で使い魔と主の間で諍いが起こり、その余波で固定化の魔法で保護されているはずの壁が破損したのだ。何故そんな事態が起こったのかは分からない。
だが、この幸運を逃すわけにはいかない。その使い魔に話しかけるときに隠した黒いローブを取り出しフードを被り、ゴーレムを生み出すと即座に宝物庫に向かわせた。
宝物庫の前に立ったゴーレムがヒビの入った壁に拳をぶつけると、もはや固定化の効果も消えているのか、容易く穴が開く。
「まったく使い魔さまさまだね」
笑いと共に次げた言葉を聞いたのは、宝物庫の壁だけだった。
#navi(ゼロと損種実験体)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: