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ルイズが外出許可を取って学院を出た。
その報告を受けたオールド・オスマンはすぐにルイズの使い魔のいる医務室に向かった。
医務室にいた水系統のメイジに席をはずしてもらい一人だけで残る。
ベッドには巨大な亜人の姿がある。杖を取り出しながらゆっくりと顔に近づいた。
顔に手を近づけるとたちまち亜人が黒い靄に覆われる。直接手で触れるのは危ないかも知れない。
そこで使い魔の目蓋を杖で軽く押し上げ瞳孔の様子を観察する。
どうやらしっかりと眠っているようだ。杖を離し、使い魔の上に小さな火の玉を作り出す。
その火をゆっくりと黒い靄に包まれた亜人に降ろした。
黒い靄に当たった瞬間火の玉は掻き消えてしまう。風が吹いているわけでもなく、
水が掛けられているわけでもないし、もちろん土による窒息消化を行っているようにも見えない。
さらに大きく作った火の玉を同じように亜人に下げていく。
前回の小さいときと同様触れた瞬間にすべてが掻き消えた。
精神力を多く使った火の玉でも消え方は同じであったことから込められた精神力を
吸い取っているわけではなさそうだ。
こちらの魔法の術式に無理やり割り込んでくればこのような現象が起こるかもしれない。
魔法を無効化する。エルフの魔法にも似たようなものがあったことを思い出す。
しかしあれはこちらが使役している精霊に干渉しているのだ。だから土地の精霊と契約を結ぶ必要がある。
オスマンはこの黒い靄は人の使う魔法の術式を壊してくる全く未知の先住魔法であると結論付けた。
術式破壊、これはとんでもなく恐ろしい。なにしろ魔法が効く効かない以前に全く届かないということだ。
しかしそれとともに対策もすでにオスマンの中に出来ていた。
術式が破壊されるなら破壊されないように作ればよい。
つまりは魔法陣など実際に地面に術式を描くことで干渉できないようにすればよいのだ。
ただ、間違いなく一撃で葬り去るためにも大規模な魔法陣を使った魔法を行使しなければならない。
その準備のためにも、やはりルイズには国外に出てもらう必要があるだろう。
使い魔に視線を向けながらこれからやらなくてはならない事を思い浮かべるとため息が出てくる。
オスマンは医務室を出た後、その足で大規模破壊の魔法を探すために図書館のほうに向かって行った。
______________________
ルイズは恐ろしい壁にぶつかっていた。
使い魔を召喚して以来の最大のピンチにルイズは意気消沈し、ベッドの上で無気力に横たわっている。
前回の誘拐未遂からすでに1週間が経過している。
オークと別れてから現在地がわからず迷子になるかと思われたが自分が空を飛べることを思い出し、
すぐに上空から村を発見。そこで道を聞きなんとか夕暮れには学院に戻れたのであった。
虚無の曜日には頼んでいた制服を取りに行った。そのついでに諜報組織へ新生しようとしている旧血管針団の様子を報告してもらい、さらに例の巨大なオークから魔道書を貸してもらうことも出来た。
組織は意外と順調に人が集まっているようですでにアルビオンに何人か向かっていると返事が来る。
むしろヴァリエール家が後ろに付くならばと抜けていた者たちまで帰ってくるということまで起こっているようだ。一応人員はしっかり選別して無駄を無くすようにと厳命しておいた。
魔道書の方には挿絵としてたくさんの魔法陣が載っており、それの中にはルイズが調べようと紙に描いておいたものと同じものもあり、間違いなくこれからのルイズの展望を明るくするものであった。
しかしどんなことにも落とし穴というものは存在する。
ルイズはベッドに転がりながら魔道書のページを穴が空くほど睨みながら叫んだ。
「なんで読めないのよ!!!ふざけるんじゃない!!どこの文字よこれ!!」
そうルイズには魔道書の文字が読めなかったのだ。
もちろんルイズもその言語を調べるために学院の図書館に缶詰になり、文字について調べまわった。
ちょうど図書館にいたタバサまで巻き込みこの3日間ほどがんばったのだ。
しかし全く未知の文字であるらしくどうしようもないという結論に達してしまう。
そもそも始祖ブリミルが降臨して以来、大きく文字が変わることはなかったのだ。
もちろん少しずつ変化はしていったが別の文字を使うのはほぼないと言える。
知性のある亜人などが使う文字もあるにはあるがそのいずれにも該当しなかった。
もしこの魔道書を読みたいのなら一から翻訳していかなければならず、そのような技術はルイズにはない。
早く翻訳したいならアカデミーにでも持って行くべきだろうが、
それでも完成がいつになるのか検討もつけられない上に、
他の者にこれを訳してもらうことはこの先住魔法についての情報が漏れるという問題が発生する。
杖を使わない魔法についての情報は一番取り扱いに注意しなければならない。
よってルイズは不貞腐れていた。
手に入った魔法の詳細が書かれてあるだろうと思われる本が読めず何の役にも立たないのだ。
期待が大きかった分その失望は計り知れない。
その様子を見ていられなかったのかデルフリンガーが声をかける。
「娘っこよぉ。そう悲観するこたぁねぇよ。魔法なんざ二の次でいいじゃねぇか。
それより俺を振って剣技を磨こうぜ。
あのオークに付き合ってもらえば絶対に強くなれるぜ。
あいつの獲物は槍だが剣もそれなりに使えると思うしよ」
・・・強くなる・・・
その言葉にルイズは反応するがやはり鈍い。ベッドから降りるとデルフリンガーを担ぎ上げぶつぶつと言葉をこぼし始める。
「魔法が二の次ですって?あんたふざけてんの?私は十七年間我慢してやっと魔法を手に入れたのよ。
それをさらに向上させることができるならなんだってやるわ。
私がこんな絶望を抱くはめになるなんて・・・これは使い魔の栄養になったかしら?
でも不快な気分になったのはあのオークが悪いのよね。
こんな読めないものを持ってきてぬか喜びさせるとは万死に価するわ。
私刑よ。今から殺しに行きましょう。うん、そうしましょう。きっと楽しいわ」
途中までデルフに対して言っていたが、途中からニヤニヤ笑いだし、自分の世界に入ってしまう。
そんなルイズにデルフもあまり喋りかけたくはなかったが、
ここは冷静な判断のできる自分がしっかりせねばなるまい。
「落ち着けって。あのオークは強いぞ。それこそ嬢ちゃんでも勝てるかどうかわかんねぇ。
あとよその本はオークが持ってきたんだろ?じゃあオークは読めるんじゃないのか?
直接きけばいいじゃねぇか。話せなくとも身振りとかで判断できることもあるだろ」
ルイズは目を丸くさせてデルフリンガーを見る。
デルフリンガーを床に置いてから一度目をつぶり顔を天井に向け、思案するかのように腕組みをする。
そのまま首を捻ったりしながら10分ほど同じ姿勢で固まっていたが唐突にデルフリンガーを蹴り始めた。
「そう!いう!こ!と!は!早く言いなさい!無駄な時間使っちゃったじゃないの!!」
「ちょ、これは理不尽だろ!あっー!・・・やめて!・・・だめぇ!折れちゃうううう」
そのことに思い至らなかった恥ずかしさも手伝い、
闇の衣を全開にしたルイズは力の限りデルフリンガーに暴行を加えている間、
頭の片隅で魔法のついでに剣の修練もできるかもしれないと考えていた。
折られそうなくらい力を入れられたデルフはもう下手なことを言わないことを心に誓ったとかなんとか。
その日からルイズは授業をさぼり学院からよく外に出るようになった。
まじめな生徒だったルイズの素行の悪化を嘆く教師もいたが、筆記は問題なく成績がいいことと、
魔法が使えない上にせっかく引き当てた強力な使い魔もいまだ眠ったままという境遇のルイズには
同情が集まったことで大きな問題にはならなかった。
#navi(絶望の使い魔)
ルイズが外出許可を取って学院を出た。
その報告を受けたオールド・オスマンはすぐにルイズの使い魔のいる医務室に向かった。
医務室にいた水系統のメイジに席をはずしてもらい一人だけで残る。
ベッドには巨大な亜人の姿がある。杖を取り出しながらゆっくりと顔に近づいた。
顔に手を近づけるとたちまち亜人が黒い靄に覆われる。直接手で触れるのは危ないかも知れない。
そこで使い魔の目蓋を杖で軽く押し上げ瞳孔の様子を観察する。
どうやらしっかりと眠っているようだ。杖を離し、使い魔の上に小さな火の玉を作り出す。
その火をゆっくりと黒い靄に包まれた亜人に降ろした。
黒い靄に当たった瞬間火の玉は掻き消えてしまう。風が吹いているわけでもなく、
水が掛けられているわけでもないし、もちろん土による窒息消化を行っているようにも見えない。
さらに大きく作った火の玉を同じように亜人に下げていく。
前回の小さいときと同様触れた瞬間にすべてが掻き消えた。
精神力を多く使った火の玉でも消え方は同じであったことから込められた精神力を
吸い取っているわけではなさそうだ。
こちらの魔法の術式に無理やり割り込んでくればこのような現象が起こるかもしれない。
魔法を無効化する。エルフの魔法にも似たようなものがあったことを思い出す。
しかしあれはこちらが使役している精霊に干渉しているのだ。だから土地の精霊と契約を結ぶ必要がある。
オスマンはこの黒い靄は人の使う魔法の術式を壊してくる全く未知の先住魔法であると結論付けた。
術式破壊、これはとんでもなく恐ろしい。なにしろ魔法が効く効かない以前に全く届かないということだ。
しかしそれとともに対策もすでにオスマンの中に出来ていた。
術式が破壊されるなら破壊されないように作ればよい。
つまりは魔法陣など実際に地面に術式を描くことで干渉できないようにすればよいのだ。
ただ、間違いなく一撃で葬り去るためにも大規模な魔法陣を使った魔法を行使しなければならない。
その準備のためにも、やはりルイズには国外に出てもらう必要があるだろう。
使い魔に視線を向けながらこれからやらなくてはならない事を思い浮かべるとため息が出てくる。
オスマンは医務室を出た後、その足で大規模破壊の魔法を探すために図書館のほうに向かって行った。
______________________
ルイズは恐ろしい壁にぶつかっていた。
使い魔を召喚して以来の最大のピンチにルイズは意気消沈し、ベッドの上で無気力に横たわっている。
前回の誘拐未遂からすでに1週間が経過している。
オークと別れてから現在地がわからず迷子になるかと思われたが自分が空を飛べることを思い出し、
すぐに上空から村を発見。そこで道を聞きなんとか夕暮れには学院に戻れたのであった。
虚無の曜日には頼んでいた制服を取りに行った。そのついでに諜報組織へ新生しようとしている旧血管針団の様子を報告してもらい、さらに例の巨大なオークから魔道書を貸してもらうことも出来た。
組織は意外と順調に人が集まっているようですでにアルビオンに何人か向かっていると返事が来る。
むしろヴァリエール家が後ろに付くならばと抜けていた者たちまで帰ってくるということまで起こっているようだ。一応人員はしっかり選別して無駄を無くすようにと厳命しておいた。
魔道書の方には挿絵としてたくさんの魔法陣が載っており、それの中にはルイズが調べようと紙に描いておいたものと同じものもあり、間違いなくこれからのルイズの展望を明るくするものであった。
しかしどんなことにも落とし穴というものは存在する。
ルイズはベッドに転がりながら魔道書のページを穴が空くほど睨みながら叫んだ。
「なんで読めないのよ!!!ふざけるんじゃない!!どこの文字よこれ!!」
そうルイズには魔道書の文字が読めなかったのだ。
もちろんルイズもその言語を調べるために学院の図書館に缶詰になり、文字について調べまわった。
ちょうど図書館にいたタバサまで巻き込みこの3日間ほどがんばったのだ。
しかし全く未知の文字であるらしくどうしようもないという結論に達してしまう。
そもそも始祖ブリミルが降臨して以来、大きく文字が変わることはなかったのだ。
もちろん少しずつ変化はしていったが別の文字を使うのはほぼないと言える。
知性のある亜人などが使う文字もあるにはあるがそのいずれにも該当しなかった。
もしこの魔道書を読みたいのなら一から翻訳していかなければならず、そのような技術はルイズにはない。
早く翻訳したいならアカデミーにでも持って行くべきだろうが、
それでも完成がいつになるのか検討もつけられない上に、
他の者にこれを訳してもらうことはこの先住魔法についての情報が漏れるという問題が発生する。
杖を使わない魔法についての情報は一番取り扱いに注意しなければならない。
よってルイズは不貞腐れていた。
手に入った魔法の詳細が書かれてあるだろうと思われる本が読めず何の役にも立たないのだ。
期待が大きかった分その失望は計り知れない。
その様子を見ていられなかったのかデルフリンガーが声をかける。
「娘っこよぉ。そう悲観するこたぁねぇよ。魔法なんざ二の次でいいじゃねぇか。
それより俺を振って剣技を磨こうぜ。
あのオークに付き合ってもらえば絶対に強くなれるぜ。
あいつの獲物は槍だが剣もそれなりに使えると思うしよ」
・・・強くなる・・・
その言葉にルイズは反応するがやはり鈍い。ベッドから降りるとデルフリンガーを担ぎ上げぶつぶつと言葉をこぼし始める。
「魔法が二の次ですって?あんたふざけてんの?私は十七年間我慢してやっと魔法を手に入れたのよ。
それをさらに向上させることができるならなんだってやるわ。
私がこんな絶望を抱くはめになるなんて・・・これは使い魔の栄養になったかしら?
でも不快な気分になったのはあのオークが悪いのよね。
こんな読めないものを持ってきてぬか喜びさせるとは万死に価するわ。
私刑よ。今から殺しに行きましょう。うん、そうしましょう。きっと楽しいわ」
途中までデルフに対して言っていたが、途中からニヤニヤ笑いだし、自分の世界に入ってしまう。
そんなルイズにデルフもあまり喋りかけたくはなかったが、
ここは冷静な判断のできる自分がしっかりせねばなるまい。
「落ち着けって。あのオークは強いぞ。それこそ嬢ちゃんでも勝てるかどうかわかんねぇ。
あとよその本はオークが持ってきたんだろ?じゃあオークは読めるんじゃないのか?
直接きけばいいじゃねぇか。話せなくとも身振りとかで判断できることもあるだろ」
ルイズは目を丸くさせてデルフリンガーを見る。
デルフリンガーを床に置いてから一度目をつぶり顔を天井に向け、思案するかのように腕組みをする。
そのまま首を捻ったりしながら10分ほど同じ姿勢で固まっていたが唐突にデルフリンガーを蹴り始めた。
「そう!いう!こ!と!は!早く言いなさい!無駄な時間使っちゃったじゃないの!!」
「ちょ、これは理不尽だろ!あっー!・・・やめて!・・・だめぇ!折れちゃうううう」
そのことに思い至らなかった恥ずかしさも手伝い、
闇の衣を全開にしたルイズは力の限りデルフリンガーに暴行を加えている間、
頭の片隅で魔法のついでに剣の修練もできるかもしれないと考えていた。
折られそうなくらい力を入れられたデルフはもう下手なことを言わないことを心に誓ったとかなんとか。
その日からルイズは授業をさぼり学院からよく外に出るようになった。
まじめな生徒だったルイズの素行の悪化を嘆く教師もいたが、筆記は問題なく成績がいいことと、
魔法が使えない上にせっかく引き当てた強力な使い魔もいまだ眠ったままという境遇のルイズには
同情が集まったことで大きな問題にはならなかった。
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