「無能の恐怖症」(2008/11/17 (月) 23:14:54) の最新版変更点
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「ここがトリステイン魔法学院女子寮か」
男は小高い丘の上から女子寮を眺めていた。
「人間、やはり我らが警護した方が……」
「かまわぬ、私1人で行く」
警護と思しきエルフの言葉を遮り、男は女子寮に向かって歩いていく。
エルフは手にしたカードを通じて校舎の屋根に配置された部下に連絡する。
「国王が1人で建物に入る」
『了解、周辺は包囲した。侵入者があれば攻撃する』
「ようこそウエルカムじゃ!」
「あらあら、あんたの顔は見た事あるわよ。ガリア王国のジョゼフ1世国王じゃないの」
男……ジョゼフ1世を出迎えたのは、たてがみのようにつながった髪と顎ひげを持ち顔面に大きな傷跡の残る老人と、彼を召喚し助手となったルイズだった。
「トリステインに来訪していたとは聞いとらんが、お忍びかね?」
「すまんが時間が無い。私の願いを聞いてくれ」
「もちろん! さァ話したまえ!!」
「私は今決断を迫られている。我がガリア王国は開戦の準備が整っている。私の命令1つで全軍が戦闘に入るのだ。私も人の子だ、戦争は怖い。何万人もの人が死ぬ命令を出すのは怖い。しかしやらねばならぬ。ガリア王国国王は腰抜けではいかんのだ。頼む、私から戦争の恐怖を取り去ってくれ!」
ルイズはジョゼフに呆れた視線を向け、
「えーと……、あなた本当は自分が臆病者だと思われるのが怖いんじゃないの? そっちの恐怖を取り除いてあげましょうか? 自分の男らしさを証明するために戦争始めるつもりじゃないでしょうね」
「そ、そんな事は無い! とにかく! 私の望みを叶えてくれたまえ!」
「もちろん! 患者の要望が全てに優先する! さァ治療に取りかかりますぞォッ!!」
校舎の屋根に配置されたエルフが、女子寮から出てきたジョゼフと思しき人影を発見した。
『国王が建物から出てきた。確認しろ』
「了解。国王を確認した。……な、何か様子が変だ。凄い力が入っている」
肩をいからせ大またでのしのし歩くジョゼフの姿に、エルフは違和感を覚えた。
「よっしゃあっ!! いっちょやったるでえッ!!」
横1列に並んだ細く長大な砲から凄まじい発砲炎が噴き出し、遥か前方で大爆発が連続して起こる。
巨大な亜人が行く手を塞ぐ全てを押し潰し立ちはだかる壁を突き破り、至近距離の敵を粉砕する。
海上には巨大戦艦が艦隊を形成、轟音と共に無数の砲弾が天へと昇っていく。
一際巨大な空船からは竜騎兵達が空へと舞い上がり、さらに甲板の端にはなおも多数のワイヴァーンがその翼を休めている。
ガリアから、そして各国から巨大な何かが放たれ、雲を抜け空を突き破り分解したそれの先端部が業火を纏い落下、都市上空にて閃光を放ち……ハルケギニアに終焉が現出した。
「死の恐怖……死を自覚しそれを恐怖するのは人間だけじゃ。他の動物は死を理解しそれを恐れる事を知らん。死を回避しようとする努力が人間を繁栄に導いたのじゃがのォ」
「それってつまり、臆病者ほど長生きするって事? よく言うわよ」
空中島・アルビオン王国落下によって生まれた島の海岸、寝そべった老人がルイズと会話していた。
「今度はちょっとやり過ぎよ!! 人類が全て滅んじゃったら、いったい誰がうちのお客に来るっていうのよ!?」
「心配するな。ほれ、遠来の客が来たぞ」
老人が指差した先で銀色のゲートが開き、ルイズと同年代の1人の少年がゲートをくぐって出現した。
「ようこそウェルカム!!」
「いらっしゃいませえ! 異界のお客様!」
「!」
荒廃した大地と突然の声に困惑の表情を浮かべて振り返る少年。
「何か怖いモノがあるかね!?」
「恐怖症でお悩みじゃないかしらァ!?」
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