「魔法陣ゼロ-05」(2008/11/03 (月) 22:05:39) の最新版変更点
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#navi(魔法陣ゼロ)
5 教室
教卓の破片が飛び散り、ススで汚れた教室の中。
罰として魔法抜きでの片付けを命じられたルイズは、ニケ達に片付けを命じていた。
「お前が失敗して爆発させたんだろ? だったら、自分でやれよ!
破片が飛んできたせいで、頭が痛いんだ」
「主人と使い魔は一心同体。わたしに与えられた罰は、あんたへの罰でもあるのよ」
「そんな横暴な!」
二人は言い争うばかりで、一向に片付けが進まない。
床を掃いていたククリが、横から口を挟んだ。
「ねえ、あたしの魔法で片付けてみようか? この教室全部をきれいにするのは、大変そうだから」
教室は、机の破片が散乱した上に、ススで汚れている。
新しいガラスや机を持ってくる手間も考えると、昼休みまでに終わるかどうか怪しい。
「だめよ、魔法での修理は禁止って――あれ?
禁止されてるのは、わたしの魔法よね?
じゃあ、ククリは魔法を使っても、いい!」
「なんだか、さっきの発言と矛盾してるような……。
でも、楽ならいいや。ククリ、できそうか?」
「うん、やってみる。
部屋を片付けるんだから……そうだ!」
ククリが既に掃除を終えていた部分に、魔法陣を描く。
光の中から現れたのは――
「メイド……よね?」
「シエスタ……なのか?」
召喚されたのは、シエスタだった。特に顔は、間違い無くシエスタだった。
だが、色々とおかしい。
メイド服は、筋肉でパンパンに膨れあがっている。
肌は赤黒く、ツヤツヤしている。
背中には、恐ろしい量の掃除用具を背負っている。
そして何より問題なのは、身長が本物の1.5倍ほどあることだ。
シエスタ(?)は、ゲラゲラと笑いながらひび割れた窓に突撃し、教室から消えた。
「ククリ、何でこんなことに……」
「メイドさんだったら、片付けとか得意そうだな、って思って。
それで、片付けが早く終わるように、力持ちなイメージで作ったんだけど……
ちょっと失敗しちゃった」
ククリの話の途中で、シエスタ(?)がバケツに水を持って戻ってきた。
ここが何階かとか、水場までの距離とか、そういった条件を明らかに無視した速さだった。
その後。
箒を両手に持ったシエスタ(?)が教室を走り回ると、一瞬で破片が一箇所に集まった。
楽々と天井まで手を伸ばし、雑巾がけをした。
教卓を右手に、ガラスを左手に、まとめて一回で持ってきた。
長い歴史を持ち、数々の著名なメイジを生み出してきた教室は、ものの数分で建設当時の輝きを取り戻した。
~~~
「あんたの魔法って、本当にヘンね……」
「グルグルは、ハートのドキドキを力にする魔法なの。
あたしが好きな物なら、なんでも魔法にできるのよ」
掃除が終わると、メイドのような何かは消滅した。
今から授業に合流するのも面倒なので、二人は教室でダラダラとしている。
ニケは学院内の探索に行って、まだ帰ってきていない。
「異世界から来たってのも、嘘じゃなさそうね。こんな魔法ありえないわ。
どうやって魔法を覚えたの? グルグルを使えるのがあんただけってことは、魔法を習う先生もいないんでしょ?」
「初めのうちは、魔法オババとグルグルの経典を読んで練習してたの。
でも、経典には2つしか魔法が書いてなくって。
修行ハウスでの修行もあったけど、旅をしながら魔法を探したり、自分で作ったりしてたよ」
「大変だったのね」
「最初は失敗ばっかりだったけど、だんだん自然にグルグルを描けるようになったわ。
今でもときどき失敗しちゃうけどね」
失敗。
それは、幾度と無くルイズが繰り返してきたもの。
そして、ククリも繰り返してきたもの。
「失敗、かあ……。
失敗って、嫌よね」
「うん。なかなかグルグルがうまく使えなくて、ちょっと落ち込むこともあったけど、でも――」
「でも?」
「ニケくんが、いつもいてくれたから……。
あたしが魔法を失敗しても、それを責めたりせず、笑って励ましてくれて。
成功したときは、すっごく喜んでほめてくれる。
だから、いつも安心して失敗できたの」
「安心して、失敗できる……?」
「失敗を怖がらなくていいの。
だから、緊張せずリラックスして魔法陣を描ける。
それに、失敗しても、結局はそれで良かったこともあるのよ」
ルイズは、ククリが羨ましかった。
失敗を責めるばかりの親や教師たちと比べると、雲泥の差だ。
下の姉が、唯一の例外だった。
遠い昔の婚約者も優しい言葉をかけてくれたが、今はもう自分のことなど忘れているだろう。
「いいカップルね」
「えへへ……」
二人の話は続く。
「ずっと、ニケと二人で旅してたのよね?」
「だいたいは、ね。
時々、ジュジュちゃんやトマくんや、あとオヤジさんもいたこともあったけれど。
……あ、そうだ。ギップルちゃんは、よく一緒にいたよ」
「へえ。どんな人?」
「人じゃないよ。ギップルちゃんは、風の精霊なの」
「か、風の精霊ですって!?」
ルイズは、話に聞いたことがある水の精霊のようなものを想像した。
強力な風の先住魔法を使いこなす、高貴な存在を。
「道案内をしてくれたり、いろんなことを教えてくれるのよ」
「人間と共に旅をして、知識を分け与える風の精霊! 一体どんな姿をしてるの? どんな魔法を!?」
「小さくて、マントを着てるの。魔法は…人の心を読んだりしてたかな?」
「心を読む!?」
「あと、空中で消えたり、一瞬で遠くまで移動したり」
「すごい……」
「そして、ふんどしだ」
ちょうど戻ってきたニケが口を挟んだ。
「ふんどしって何かわからないけど、気になる!」
「いや、そんな面白いもんじゃないぜ?」
「あたしも気になるわ」
ニケの後ろから、キュルケが教室に入ってきた。
「ちょ、ちょっと、キュルケ! なんでわたしの使い魔と一緒にいるのよ!」
「他人の使い魔に手を出したのは、そっちでしょ? お返しに、あたしの部屋まで案内してあげようと思ってね」
「な、ななな……!」
「冗談よ。授業がつまんなかったからサボってたら、すぐそこで会ったのよ」
「そ、そう。一瞬びっくりしたじゃないの!」
「そうだぞ。一瞬期待したじゃないか!」
「ふーん、何を期待したのかしら」
ククリがニケに冷たい視線を送る。
そんなククリに、キュルケが近づいた。
「そんなことより、ふんどしよ。
ふんどしって、何なのよ?」
「なんていうか……細長い布?」
「それを、どうやって使うわけ?」
「体に巻くの」
「それで?」
「え?」
「巻いて、どうするのよ?」
「どうするって……それだけよ。
すごく大事にしてたよ」
「……」
キュルケは困った顔をしたが、突然何かをひらめいた。
「そうだ! 昨日は一緒にいたのかしら?」
「うん」
「じゃあ、これが役に立つかもしれないわね」
キュルケがポケットから、虫眼鏡のようなものを取り出した。
それを見たルイズは驚く。
「そ、それって、『夕べの水晶』じゃない! どこでそんなもの手に入れたのよ?
そう簡単に手に入る代物じゃないわよね」
「いいえ、違うわ。これは『昨日の水晶』。
見た目はほとんど同じだけど、根元のデザインが違うでしょ?
彼が『僕には君しかいないんだ!』とか言いながら、これをあたしにくれたのよ。
どっちにしても、あたしには必要のない物なんだけど」
「なあ、何なんだそれ?」
ニケの質問に、キュルケが答える。
「『夕べの水晶』で誰かを覗くと、その人の夕べの様子が映るのよ。浮気してないか調べるのに使えるから、巷で大人気。
でも、これは安物の『昨日の水晶』。昨日の様子が映るんだけど、どの時間が映るか分からないから使いにくくて、あんまり人気がないのよ。
あいつ、違いが分かってないのね。それとも、わざとなのかしら?」
「じゃあ、これをオレかククリに使うと――?」
「うまくいけば風の精霊を見れるのね!」
「そうゆうこと。じゃあ、さっそく使うから、ニケはじっとしててね」
キュルケが昨日の水晶をニケに向ける。
水晶は光を発し、ニケの額を照らした。
「さあ、風の精霊さん、出てきてちょうだい……」
そして、そこに出てきたのは――
#aa(){
∧
┌、 | || /|ヽ
ト、\ | | | ,r───-、 | | //ト、
\\ヽ!| | / \ | / / //
\__Lレ' ∨// /
i~~~@~~~~「 ̄ ̄
|/⌒ヽ、, 、、_/⌒! ├、
∧─┰ ─┰ /ヽi
Y r‐、_r─-、 レ'
| i(lllllllllllllllllllト、 ノ
\ ,イ´
┌──-、 `ー‐ァ‐─-' `十──---、
`ニニ_ \ /\ ノ | \
`T ヽ/\ ヽ/ ├──‐‐ヘ \
ヽ ヽ/ | \ \
\_____,/ | し、_ノ
r─‐┤ ト、
/// `⌒⌒⌒⌒⌒ ヽ
////川i ii iミヽ
/ヾレ巛巛川川川川川川リリリ!
| 、/`ゞW人八从川川リリ
|、、ヽ | | |
小ヽ、 | \ ヽ
ト、′〈 ヾ、ヽ `ー、
| ) \ ノ
| / _| /
⊂,__」 (__ノ
}
上半身裸で、束ねた植物だけを腰に巻いた、高速でダンスする変態だった。
周囲に風が吹き荒れている。
「ククリ、これが風の精霊……?」
「違う、これはキタキタオヤジさん。
ギップルちゃんはこっち」
ククリは、恐怖する自分達の横に浮かぶギップルを指差した。
「これ……」
「じゃあ、ふんどしは?」
「この黒いの」
キュルケとルイズが、脱力した。
「だから言っただろ? 面白いもんじゃないって」
「そうね……
あ、あんたたちがゲートに入ったわね」
一旦画面が暗くなったあと、儀式の様子が映った。
「あれ? ニケくん、先に目が覚めてたんだ」
「そうよ、この後、わたしが契約を――」
ここで、ルイズは気付いた。この二人が恋人同士だということは、この後の契約は、ククリにとって――
「え、契約って……」
ちゅっ
「そんな……ひどい……」
ククリの顔が、青ざめる。
「あ、ククリ、もしかして見ちゃった?」
「ククリ、これは契約の儀式で――」
空気が、震える。
「ひどいよ!」
要塞のような学院が、衝撃に揺れた。
轟音と揺れが収まった後、教室に残ったのは……
呆然とするキュルケ。
涙を流すククリ。
割れたガラス。
吹っ飛んだ机と椅子。
そして、
二枚の、帯状の布のような物体。
床に張り付く、巨大な×印だった。
~~~
少し時間が戻って、闇魔法結社。
「クッサアアァ!」
「ギップルよ、勇者達が見つかったか!?」
「今度はククリさんです! 探知機で増幅されたせいで、かなりハッキリとクサいです!」
「そうか、ではプードル3号の照準を合わせるのじゃ!」
「いえ、それは無理です! まだクサさが足りません」
「なんじゃと!?」
「行き先は異世界なんですよ? 正確に照準を合わせないと、時空の狭間に転送されてしまい、送ったアイテムは実質的に消滅してしまいます。
もっと強烈なクサさがあれば、照準をあわせられるのですが」
「そうか……ならば、待つしかあるまい。
彼らのクサさはこんなものではないと、信じようではないか……」
#navi(魔法陣ゼロ)
#navi(魔法陣ゼロ)
5 教室
教卓の破片が飛び散り、ススで汚れた教室の中。
罰として魔法抜きでの片付けを命じられたルイズは、ニケ達に片付けを命じていた。
「お前が失敗して爆発させたんだろ? だったら、自分でやれよ!
破片が飛んできたせいで、頭が痛いんだ」
「主人と使い魔は一心同体。わたしに与えられた罰は、あんたへの罰でもあるのよ」
「そんな横暴な!」
二人は言い争うばかりで、一向に片付けが進まない。
床を掃いていたククリが、横から口を挟んだ。
「ねえ、あたしの魔法で片付けてみようか? この教室全部をきれいにするのは、大変そうだから」
教室は、机の破片が散乱した上に、ススで汚れている。
新しいガラスや机を持ってくる手間も考えると、昼休みまでに終わるかどうか怪しい。
「だめよ、魔法での修理は禁止って――あれ?
禁止されてるのは、わたしの魔法よね?
じゃあ、ククリは魔法を使っても、いい!」
「なんだか、さっきの発言と矛盾してるような……。
でも、楽ならいいや。ククリ、できそうか?」
「うん、やってみる。
部屋を片付けるんだから……そうだ!」
ククリが既に掃除を終えていた部分に、魔法陣を描く。
光の中から現れたのは――
「メイド……よね?」
「シエスタ……なのか?」
召喚されたのは、シエスタだった。特に顔は、間違い無くシエスタだった。
だが、色々とおかしい。
メイド服は、筋肉でパンパンに膨れあがっている。
肌は赤黒く、ツヤツヤしている。
背中には、恐ろしい量の掃除用具を背負っている。
そして何より問題なのは、身長が本物の1.5倍ほどあることだ。
シエスタ(?)は、ゲラゲラと笑いながらひび割れた窓に突撃し、教室から消えた。
「ククリ、何でこんなことに……」
「メイドさんだったら、片付けとか得意そうだな、って思って。
それで、片付けが早く終わるように、力持ちなイメージで作ったんだけど……
ちょっと失敗しちゃった」
ククリの話の途中で、シエスタ(?)がバケツに水を持って戻ってきた。
ここが何階かとか、水場までの距離とか、そういった条件を明らかに無視した速さだった。
その後。
箒を両手に持ったシエスタ(?)が教室を走り回ると、一瞬で破片が一箇所に集まった。
楽々と天井まで手を伸ばし、雑巾がけをした。
教卓を右手に、ガラスを左手に、まとめて一回で持ってきた。
長い歴史を持ち、数々の著名なメイジを生み出してきた教室は、ものの数分で建設当時の輝きを取り戻した。
~~~
「あんたの魔法って、本当にヘンね……」
「グルグルは、ハートのドキドキを力にする魔法なの。
あたしが好きな物なら、なんでも魔法にできるのよ」
掃除が終わると、メイドのような何かは消滅した。
今から授業に合流するのも面倒なので、二人は教室でダラダラとしている。
ニケは学院内の探索に行って、まだ帰ってきていない。
「異世界から来たってのも、嘘じゃなさそうね。こんな魔法ありえないわ。
どうやって魔法を覚えたの? グルグルを使えるのがあんただけってことは、魔法を習う先生もいないんでしょ?」
「初めのうちは、魔法オババとグルグルの経典を読んで練習してたの。
でも、経典には2つしか魔法が書いてなくって。
修行ハウスでの修行もあったけど、旅をしながら魔法を探したり、自分で作ったりしてたよ」
「大変だったのね」
「最初は失敗ばっかりだったけど、だんだん自然にグルグルを描けるようになったわ。
今でもときどき失敗しちゃうけどね」
失敗。
それは、幾度と無くルイズが繰り返してきたもの。
そして、ククリも繰り返してきたもの。
「失敗、かあ……。
失敗って、嫌よね」
「うん。なかなかグルグルがうまく使えなくて、ちょっと落ち込むこともあったけど、でも――」
「でも?」
「ニケくんが、いつもいてくれたから……。
あたしが魔法を失敗しても、それを責めたりせず、笑って励ましてくれて。
成功したときは、すっごく喜んでほめてくれる。
だから、いつも安心して失敗できたの」
「安心して、失敗できる……?」
「失敗を怖がらなくていいの。
だから、緊張せずリラックスして魔法陣を描ける。
それに、失敗しても、結局はそれで良かったこともあるのよ」
ルイズは、ククリが羨ましかった。
失敗を責めるばかりの親や教師たちと比べると、雲泥の差だ。
下の姉が、唯一の例外だった。
遠い昔の婚約者も優しい言葉をかけてくれたが、今はもう自分のことなど忘れているだろう。
「いいカップルね」
「えへへ……」
二人の話は続く。
「ずっと、ニケと二人で旅してたのよね?」
「だいたいは、ね。
時々、ジュジュちゃんやトマくんや、あとオヤジさんもいたこともあったけれど。
……あ、そうだ。ギップルちゃんは、よく一緒にいたよ」
「へえ。どんな人?」
「人じゃないよ。ギップルちゃんは、風の精霊なの」
「か、風の精霊ですって!?」
ルイズは、話に聞いたことがある水の精霊のようなものを想像した。
強力な風の先住魔法を使いこなす、高貴な存在を。
「道案内をしてくれたり、いろんなことを教えてくれるのよ」
「人間と共に旅をして、知識を分け与える風の精霊! 一体どんな姿をしてるの? どんな魔法を!?」
「小さくて、マントを着てるの。魔法は…人の心を読んだりしてたかな?」
「心を読む!?」
「あと、空中で消えたり、一瞬で遠くまで移動したり」
「すごい……」
「そして、ふんどしだ」
ちょうど戻ってきたニケが口を挟んだ。
「ふんどしって何かわからないけど、気になる!」
「いや、そんな面白いもんじゃないぜ?」
「あたしも気になるわ」
ニケの後ろから、キュルケが教室に入ってきた。
「ちょ、ちょっと、キュルケ! なんでわたしの使い魔と一緒にいるのよ!」
「他人の使い魔に手を出したのは、そっちでしょ? お返しに、あたしの部屋まで案内してあげようと思ってね」
「な、ななな……!」
「冗談よ。授業がつまんなかったからサボってたら、すぐそこで会ったのよ」
「そ、そう。一瞬びっくりしたじゃないの!」
「そうだぞ。一瞬期待したじゃないか!」
「ふーん、何を期待したのかしら」
ククリがニケに冷たい視線を送る。
そんなククリに、キュルケが近づいた。
「そんなことより、ふんどしよ。
ふんどしって、何なのよ?」
「なんていうか……細長い布?」
「それを、どうやって使うわけ?」
「体に巻くの」
「それで?」
「え?」
「巻いて、どうするのよ?」
「どうするって……それだけよ。
すごく大事にしてたよ」
「……」
キュルケは困った顔をしたが、突然何かをひらめいた。
「そうだ! 昨日は一緒にいたのかしら?」
「うん」
「じゃあ、これが役に立つかもしれないわね」
キュルケがポケットから、虫眼鏡のようなものを取り出した。
それを見たルイズは驚く。
「そ、それって、『夕べの水晶』じゃない! どこでそんなもの手に入れたのよ?
そう簡単に手に入る代物じゃないわよね」
「いいえ、違うわ。これは『昨日の水晶』。
見た目はほとんど同じだけど、根元のデザインが違うでしょ?
彼が『僕には君しかいないんだ!』とか言いながら、これをあたしにくれたのよ。
どっちにしても、あたしには必要のない物なんだけど」
「なあ、何なんだそれ?」
ニケの質問に、キュルケが答える。
「『夕べの水晶』で誰かを覗くと、その人の夕べの様子が映るのよ。浮気してないか調べるのに使えるから、巷で大人気。
でも、これは安物の『昨日の水晶』。昨日の様子が映るんだけど、どの時間が映るか分からないから使いにくくて、あんまり人気がないのよ。
あいつ、違いが分かってないのね。それとも、わざとなのかしら?」
「じゃあ、これをオレかククリに使うと――?」
「うまくいけば風の精霊を見れるのね!」
「そうゆうこと。じゃあ、さっそく使うから、ニケはじっとしててね」
キュルケが昨日の水晶をニケに向ける。
水晶は光を発し、ニケの額を照らした。
「さあ、風の精霊さん、出てきてちょうだい……」
そして、そこに出てきたのは――
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上半身裸で、束ねた植物だけを腰に巻いた、高速でダンスする変態だった。
周囲に風が吹き荒れている。
「ククリ、これが風の精霊……?」
「違う、これはキタキタオヤジさん。
ギップルちゃんはこっち」
ククリは、恐怖する自分達の横に浮かぶギップルを指差した。
「これ……」
「じゃあ、ふんどしは?」
「この黒いの」
キュルケとルイズが、脱力した。
「だから言っただろ? 面白いもんじゃないって」
「そうね……
あ、あんたたちがゲートに入ったわね」
一旦画面が暗くなったあと、儀式の様子が映った。
「あれ? ニケくん、先に目が覚めてたんだ」
「そうよ、この後、わたしが契約を――」
ここで、ルイズは気付いた。この二人が恋人同士だということは、この後の契約は、ククリにとって――
「え、契約って……」
ちゅっ
「そんな……ひどい……」
ククリの顔が、青ざめる。
「あ、ククリ、もしかして見ちゃった?」
「ククリ、これは契約の儀式で――」
空気が、震える。
「ひどいよ!」
要塞のような学院が、衝撃に揺れた。
轟音と揺れが収まった後、教室に残ったのは……
呆然とするキュルケ。
涙を流すククリ。
割れたガラス。
吹っ飛んだ机と椅子。
そして、
二枚の、帯状の布のような物体。
床に張り付く、巨大な×印だった。
~~~
少し時間が戻って、闇魔法結社。
「クッサアアァ!」
「ギップルよ、勇者達が見つかったか!?」
「今度はククリさんです! 探知機で増幅されたせいで、かなりハッキリとクサいです!」
「そうか、ではプードル3号の照準を合わせるのじゃ!」
「いえ、それは無理です! まだクサさが足りません」
「なんじゃと!?」
「行き先は異世界なんですよ? 正確に照準を合わせないと、時空の狭間に転送されてしまい、送ったアイテムは実質的に消滅してしまいます。
もっと強烈なクサさがあれば、照準をあわせられるのですが」
「そうか……ならば、待つしかあるまい。
彼らのクサさはこんなものではないと、信じようではないか……」
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