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#navi(ゼロの工作員)
「・・・であるからして、風があらゆる系統魔法の中で最も優れている」
年若い学院講師、<疾風>ギトーの授業が続く。
タバサのハルケギニアに対する講座も終わりに近づき、
締めくくりとしてメイジ達の授業が理解できるか確認のため、フリーダは出席している。
講座内容はギトーの<<風属性>>自慢である。
ハルケギニアの魔法には火、水、土、風の四属性と先住魔法があって、
彼らメイジは最も一般的である四系統のどれかに系統に特化している。
講師のギトーは二つ名通りの風。
前に同じような属性自慢をシェヴルーズがしていたのを考えると
属性派閥ごとに確執でもあるのかと思えてくる。
<風属性>は対象を飛行させることで<土属性>より速く移動でき、
かまいたちや衝撃波を使えるため<火属性>より応用と攻撃力に勝る、
中途半端な<水属性>は比べるまでもない。
全ては応用である。
たったこれだけを言いたいがために授業の時間いっぱいを使って説明している。
魔法は日常生活に関わりが深い。彼女の知っているだけでも、
<土属性>は固定化、建設、土壌改良、金属加工、<水属性>は治療、<風属性>は輸送、
<火属性>は金属加工に熱が必要な部分を土に取られているため肩身が狭い。
<火属性>のコルベールやキュルケが技術者や平民を進んで取り立てるのも
属性故の使いにくさが関係しているのかもしれない。
<火属性>の応用は他の属性より日常生活から遠い、火魔法は戦争に主として使われる。
わざわざ氷の塊を製作しぶつける水や、空気の圧力でしか傷つけられない風、
力を媒介と物必要で射程に難がある土、に比べると他属性より攻撃効率に勝る、
つまり破壊に向くとされている。対人戦を考慮すると、最強なのは火である。
ギトーの「風が最強」にキュルケが反論する。
「ミスタ・ギトー、破壊なら火が最強ですわ」
「よかろう。ためしてみたまえ」
ギトーが杖を抜いた。
「ファイヤ・ボール」
キュルケの杖から人の頭ほどもある火の球が吐き出される。
火は透明な障壁に弾き飛ばされキュルケの足元に着弾し、彼女を壁まで吹き飛ばした。
ざわめく教室。
「まだ、やるかね?」
キュルケは後頭部をぶつけて気絶していた。
「他に確かめたい生徒はいるかな?」
ギトーの姿が三人に増える。
教室は静かになった。
「ギトーはどれぐらい強いメイジなの?」
一緒に座っているルイズに聞いた
「そんなことも知らないの?風のスクウエアスペル、<偏在>よ。
魔法で自身のコピーを造るの。コピーはどれも本人と同じ思考を保っているわ」
「無敵ね」
「でも、どれか一つ傷を負えば他の分身も同じ傷を負うし、
精神力の消費が激しいからめったに使えないのよ」
メイジにはランクがある。ドット、ライン、トライアングル、スクウェア。
同時に使える魔法の数が1つ2つと増えるごとに階級が上がる。
世間一般的な基準ではドットが最低ランク、ラインは少し優秀なメイジ、
トライアングルがエリート。スクウェアほどの最高クラスになると殆どいない。
ギトーは非常に優秀なメイジである。
優秀だからこそ、魔法の力を彼は見せ付けたいのだ。
その日の夜、フリーダは
ギトーの見事な魔法に感化されたルイズの魔法練習につき合わされていた。
「ライト!ロック!アンロック!」
立て続けに小さな爆発が三つ巻き起こる。
折角人気のない宝物庫の裏を選んだのに、
こう爆音を起てていては確実に周囲に気付かれている。
それでも止めに来る者や、苦情を言いに来る生徒達がいないのは、彼らなりの気遣いだろうか。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは<ゼロ>のルイズである。
彼女はメイジの名門、ヴァリエール家の三女で魔術特性は<何も向いてない>。
メイジは四属性のどれかしらに向いているのだが、彼女は例外であった。
つまり、メイジ最下級のドット以下の見習い。
簡単なコモン・マジックですら失敗し、爆発する要素が皆無な、
明かりを灯す「ライト」や鍵を閉める「ロック」でも<<爆発>>する。
通常、魔術を失敗すると何も起こらず消えるのだが、彼女の魔法は爆発する。
付いたあだ名が<ゼロ>のルイズ。
役立たずのルイズ。
「どう?判った?」
ルイズはフリーダが前にいった「爆発魔法の使い道」に興味があった。
「詠唱が長いほど爆発力が増すのと、他の系統とは違って、
唱えてもそれほど疲れない点が違うわね」
「それはよく知ってるのよ。問題はどうやって使うかよ」
フリーダは頭を捻る。
彼女は他の魔法世界住人ではないし、詳細な検査道具を持ってきているわけでもない。
ましてや魔法の専門家でもなかった。
「爆発物と爆破箇所の指定は出来る?」
「物の指定は手が届く範囲まで。
しないでやった場合、視界に入る範囲のどこかが吹き飛ぶわ」
「危険極まりないわね」
よくも今まで無事だったものだ。
「だから極力、普段から使わないのよ」
「………困ったわね」
敵味方を巻き込んで自爆するのなら、
適当な狂信者に爆弾持たせて突っ込ませたほうが速い。
「爆破時間の設定は?威力の設定は?破壊力を上げる魔術の触媒は?
シェヴルーズのときどうして無事だったの?」
「…アンタ、私を爆破師と勘違いしてない」
「マリコルヌ達に悔しがらせたいんでしょ。怒る力があったら建設的に考えなさい」
「……………わかった」
下僕相手なら怒鳴りつけていたところだが、彼女はパートナーでルームメイトだ。
そして年長者、落ち着いた雰囲気のフリーダは姉みたいで強く当たれなかった。
年長者を敬う家の教育もあった。
なにより親身になって考えてくれている相手に怒れなかった。
「時間は…できないわ。威力は精神を集中すればどうにかなるかも。
触媒は考えたこともなかったわ。シェヴルーズは…わからないわ」
爆破には重要な点がある。被害をいかに広げないようにするのかが大切だ。
自身や周囲を巻き込んで無事なのは映画の中だけだ。
どんなに爆発力が高い爆弾があったとしても、安全に爆発させるのが前提だ。
ミサイルにグレネード、地雷、手榴弾、どれも基本的には使用者を巻き込まない。
唯一例外がある。<対象を無差別に巻き込む>場合だ。
「…暗殺向きね。あなたの魔法」
ルイズは<ゼロ>と呼ばれてきた。彼女の魔力を誰も証明できないからである。
魔力を証明できないからには、爆発前後に魔力を検知できない。武器も特定されない。
氷の矢が現場に残ったり、かまいたちの傷跡が現場に残らない。
杖以外いらないから他の暗殺方法に用意に偽装できる。
フリーダの<<偽人格>>の一人は楽器ケースに暗殺用の爆弾を入れていた。
爆破テロの先駆者となるかもしれない彼女に、フリーダはとりつくろった笑いを浮かべる。
嫌ね。もう殺す必要、ないのに。
頭で忘れても体に技術は染み付いている。
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