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#navi(ゼロ・HiME)
&setpagename(ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第十九話(前編))
翌朝、戦を目前に慌しくなる城内を他所に、ルイズとワルドは始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、皇太子の礼装に身を包んだウェールズを立会人に結婚式を挙げようとしていた。
出席者は静留一人で、周りに他の人間は居ない。皆、戦争の準備で忙しいのだ。皇太子も式を終わらせ次第、戦の準備に戻ることになっていた。
始祖の像の前で共に並ぶ心底嬉しそうな表情のワルドとは対照的に、ルイズの表情は曇っていた。
昨夜テラスから部屋に戻って冷静なった後で静留に酷いことを言ってしまったと反省したルイズは、朝になったら謝ろうと思っていた。だが、持ち前の意地っ張りな性格が災いし、謝ることが出来ないまま式の時間になってしまったのだった。
(本当は式の前に謝って、結婚についても相談したかったのに……)
「それでは式を始める」
式の開始を告げるウェールズの宣言に我に返ったルイズは、ワルドと共にウェールズの前へと進み出た。ワルドは魔法衛士隊の制服姿、ルイズはアルビオン王家から借り受けた新婦の冠と白いローブを纏った姿で互いに向かい合う。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」
「誓います」
杖を握った左手を胸に宣誓するワルドに向かって、ウェールズはにこりと笑って頷き、今度はルイズに視線を写した。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
礼拝堂に朗々と誓いの誓約の詔を読み上げるウェールズの声が響き、式が進行していくのをルイズはどこか他人事のように感じていた。
相手は憧れていた優しくて頼もしいワルドだ。幼い頃から描いていた彼と結婚する漠然とした未来図が今現実になろうとしている。
彼のことは嫌いじゃない。むしろ好いてもいるだろう。
それなのに、どうして高揚感や満足感といった喜びの感情が湧いてこないのだろう。
どうして、こんなに胸が苦しい気持ちになるんだろう。
滅びゆく王国の姿を見たから?
それとも愛する者よりも、王族としての死を選ぶウェールズを目の当たりにしたショックからか?
確かにそれもあるかも知れない。だが、この気持ちはそれとは違う、もっと別のことが原因だ。
不意にルイズは昨夜の別れ際の静留とのやり取りを思い出した。感情的になっていたとはいえ、どうして自分は「理解できない」なんて言ってしまったのか。
以前、静留の死に様を夢で見て、悪いのは理不尽な運命を課した者達であって、静留じゃないと理解していたはず。なのにあんな事を言うなんて本当にどうかしている。
どうかしてるといえば、この結婚についてもそうだ。自分が決断すればいいのに、何で静留と相談しようと思っていたのだろう?
それは多分、静留にこの結婚を止めて欲しかったからだ。
何故だろうと考え、その理由に気がついたルイズは動揺する。
(……ちょ、ちょっと待ってよ。確かに静留は強くて綺麗で優しくて、男装すればそこらの男より格好いいし、それにハグとか色々されるとドキドキするけど……でも、公爵家の娘ともあろう私が使い魔、しかも同性を好きなるなんて――)
ルイズは自分の導き出した答えを否定しようとして出来なかった。それが自分の言動を説明するのにもっとも腑に落ちる答えだったからだ。
考えれば至極当然な話で、好きだから自分に同意してくれないと腹も立つし、結婚を前にして不安で胸が苦しくなる。そして、好きになるのに理屈なんかいらない。
「新婦?」
ウェールズの問いかけに、考え込んでいたルイズは慌てて顔を上げる。
「緊張しているのかい? まあ、仕方ない。儀礼とはいえ、これは一生決める神聖なものだからね」
ウェールズはそう言ってと式を続ける。
「では繰り返そう。汝らは始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……」
――これ以上、自分の気持ちに嘘はつけない。
そう決意したルイズは、ウェールズの言葉を遮るように首を振ると、隣に立つワルドに向かって口を開いた。
「……ごめんなさい、ワルド。私、貴方とは結婚できない」
いきなりのルイズの言葉に、ウェールズは首をかしげてワルドを見た。ルイズの言葉が信じられないのか、ワルドは驚いた表情のまま固まっている。
「子爵、誠にお気の毒だが、新婦の望まぬ式を続けるわけにはいかぬ。そもそも、合意の上ではなかったのかね?」
「……緊張しているんだ。そうだろう、ルイズ? 君が僕との結婚を拒むわけがない」
「ごめんなさい、ワルド。多分、私は貴方に憧れてもいたし、恋もしていたと思う。でも、今は違う……それが分かったの、だから結婚できない」
ワルドの問いにルイズは悲しげな表情で答える。ワルドなら自分の正直な気持ち伝えれば理解してくれだろうとルイズはそう思っていた。
だが、ワルドは羞恥に顔を赤くしてルイズの肩を両手で掴むと、怒りと悲しみがない交ぜになった表情で声を震わせて叫んだ。
「世界だよ、ルイズ! 僕は世界を手にいれる! その為に君が必要なんだ!」
「そんなこと……私、世界なんて要らないもの」
「ルイズ、分かってくれ! 僕にはきみが必要なんだ! 君には世界を手に入れるに相応しい能力が眠っているんだ! そして、僕だけが君の能力を目覚めへと導ける!!」
豹変したワルドのルイズに対する剣幕を見かねたウェールズが、間に入ってとりなおそうとした。
「子爵、君はフラれたのだ。辛いだろうが、ここは潔く……」
「貴様は黙っていろ!」
ワルドのルイズの肩を掴む手に力が篭る。ルイズは苦痛に顔を歪めながらも言った。
「そんな結婚、死んでもいやよ! 貴方、私をちっとも愛していないじゃない。貴方が愛しているのは私じゃなくて、貴方が私に眠っていると主張する能力だけよ! 悪いけどそんな理由で結婚なんて出来ないわ! 私は貴方の野望の道具じゃない!」
ルイズはそう言ってワルドを振り払うと、祭壇から少し離れた場所で事の成り行きを見守っていた静留へと駆け寄った。
それでも尚ルイズに追いすがろうとするワルドをウェールズが肩を掴んで止めようとするが、逆にワルドに突き飛ばされて転倒する。
ウェールズは怒りの表情で立ち上がると、杖を抜いた。
「なんたる無礼! なんたる侮辱! 子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢に近づくのをやめたまえ! さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!」
ワルドはそこでやっと歩みを止めた。同時にルイズを後ろにかばうようにして、デルフを構えた静留がワルドの前方に立ちふさがる。
「色恋沙汰の分別はきちんとつけられるお人かと思うとったんやけど、とんだ見込み違いだったみたいやね」
「残念ながら、こう見えて意外に僕は諦めの悪い性分でね。まあ、それは兎も角……ルイズ、どうしても僕とは結婚できないのかい?」
ワルドは張りついたような優しい笑顔と蕩ける様な声音でルイズに尋ねる。
「嫌よ、誰があなたと結婚なんかするものですか」
怒りで震えながらもルイズが拒絶の言葉を告げると、ワルドは両手を広げ、やや芝居がかった調子で天を仰いで首を振った。
「やれやれ、この旅で君の気持ちを掴むために随分努力したつもりなんだが――こうなっては仕方が無い。目的の一つは諦めるとしよう」
「目的?」
「そうだ。この旅における僕の目的は三つあった。一つ目の君を手に入れるということは叶いそうもないが……後の二つが達成できるだけでも、よしとしなければ」
「三つのうち二つ? 達成? どういうこと?」
ルイズが嫌な予感を抱いて尋ねると、ワルドはニヤリと笑いを浮かべて答える。
「ふむ、このまま何も知らぬままというのも可哀想だ。特別に僕の残る二つの目的を答えてあげよう……まずはルイズ、君が持っているアンリエッタの手紙だ」
「ワルド、あなた……」
ルイズははっとした表情でワルドを見つめる。
「そして、最後の一つは――貴様の命だ!」
そう叫ぶやいなや、ワルドは閃光の様に杖を抜くと、ウェールズの胸を刺し貫いた。
すかさず静留がワルドに向かってデルフを振り下ろすが、ワルドは突き刺した杖を引き抜きながら空中に飛び上がってかわす。
「き、貴様……『レキン・コスタ』……」
ウェールズは口からどっと鮮血を溢れさせ、大きな音を立てて崩れ落ちた。
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&setpagename(ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第十九話(前編))
翌朝、戦を目前に慌しくなる城内を他所に、ルイズとワルドは始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、皇太子の礼装に身を包んだウェールズを立会人に結婚式を挙げようとしていた。
出席者は静留一人で、周りに他の人間は居ない。皆、戦争の準備で忙しいのだ。皇太子も式を終わらせ次第、戦の準備に戻ることになっていた。
始祖の像の前で共に並ぶ心底嬉しそうな表情のワルドとは対照的に、ルイズの表情は曇っていた。
昨夜テラスから部屋に戻って冷静なった後で静留に酷いことを言ってしまったと反省したルイズは、朝になったら謝ろうと思っていた。だが、持ち前の意地っ張りな性格が災いし、謝ることが出来ないまま式の時間になってしまったのだった。
(本当は式の前に謝って、結婚についても相談したかったのに……)
「それでは式を始める」
式の開始を告げるウェールズの宣言に我に返ったルイズは、ワルドと共にウェールズの前へと進み出た。ワルドは魔法衛士隊の制服姿、ルイズはアルビオン王家から借り受けた新婦の冠と白いローブを纏った姿で互いに向かい合う。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」
「誓います」
杖を握った左手を胸に宣誓するワルドに向かって、ウェールズはにこりと笑って頷き、今度はルイズに視線を写した。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
礼拝堂に朗々と誓いの誓約の詔を読み上げるウェールズの声が響き、式が進行していくのをルイズはどこか他人事のように感じていた。
相手は憧れていた優しくて頼もしいワルドだ。幼い頃から描いていた彼と結婚する漠然とした未来図が今現実になろうとしている。
彼のことは嫌いじゃない。むしろ好いてもいるだろう。
それなのに、どうして高揚感や満足感といった喜びの感情が湧いてこないのだろう。
どうして、こんなに胸が苦しい気持ちになるんだろう。
滅びゆく王国の姿を見たから?
それとも愛する者よりも、王族としての死を選ぶウェールズを目の当たりにしたショックからか?
確かにそれもあるかも知れない。だが、この気持ちはそれとは違う、もっと別のことが原因だ。
不意にルイズは昨夜の別れ際の静留とのやり取りを思い出した。感情的になっていたとはいえ、どうして自分は「理解できない」なんて言ってしまったのか。
以前、静留の死に様を夢で見て、悪いのは理不尽な運命を課した者達であって、静留じゃないと理解していたはず。なのにあんな事を言うなんて本当にどうかしている。
どうかしてるといえば、この結婚についてもそうだ。自分が決断すればいいのに、何で静留と相談しようと思っていたのだろう?
それは多分、静留にこの結婚を止めて欲しかったからだ。
何故だろうと考え、その理由に気がついたルイズは動揺する。
(……ちょ、ちょっと待ってよ。確かに静留は強くて綺麗で優しくて、男装すればそこらの男より格好いいし、それにハグとか色々されるとドキドキするけど……でも、公爵家の娘ともあろう私が使い魔、しかも同性を好きなるなんて――)
ルイズは自分の導き出した答えを否定しようとして出来なかった。それが自分の言動を説明するのにもっとも腑に落ちる答えだったからだ。
考えれば至極当然な話で、好きだから自分に同意してくれないと腹も立つし、結婚を前にして不安で胸が苦しくなる。そして、好きになるのに理屈なんかいらない。
「新婦?」
ウェールズの問いかけに、考え込んでいたルイズは慌てて顔を上げる。
「緊張しているのかい? まあ、仕方ない。儀礼とはいえ、これは一生決める神聖なものだからね」
ウェールズはそう言ってと式を続ける。
「では繰り返そう。汝らは始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……」
――これ以上、自分の気持ちに嘘はつけない。
そう決意したルイズは、ウェールズの言葉を遮るように首を振ると、隣に立つワルドに向かって口を開いた。
「……ごめんなさい、ワルド。私、貴方とは結婚できない」
いきなりのルイズの言葉に、ウェールズは首をかしげてワルドを見た。ルイズの言葉が信じられないのか、ワルドは驚いた表情のまま固まっている。
「子爵、誠にお気の毒だが、新婦の望まぬ式を続けるわけにはいかぬ。そもそも、合意の上ではなかったのかね?」
「……緊張しているんだ。そうだろう、ルイズ? 君が僕との結婚を拒むわけがない」
「ごめんなさい、ワルド。多分、私は貴方に憧れてもいたし、恋もしていたと思う。でも、今は違う……それが分かったの、だから結婚できない」
ワルドの問いにルイズは悲しげな表情で答える。ワルドなら自分の正直な気持ち伝えれば理解してくれだろうとルイズはそう思っていた。
だが、ワルドは羞恥に顔を赤くしてルイズの肩を両手で掴むと、怒りと悲しみがない交ぜになった表情で声を震わせて叫んだ。
「世界だよ、ルイズ! 僕は世界を手にいれる! その為に君が必要なんだ!」
「そんなこと……私、世界なんて要らないもの」
「ルイズ、分かってくれ! 僕にはきみが必要なんだ! 君には世界を手に入れるに相応しい能力が眠っているんだ! そして、僕だけが君の能力を目覚めへと導ける!!」
豹変したワルドのルイズに対する剣幕を見かねたウェールズが、間に入ってとりなおそうとした。
「子爵、君はフラれたのだ。辛いだろうが、ここは潔く……」
「貴様は黙っていろ!」
ワルドのルイズの肩を掴む手に力が篭る。ルイズは苦痛に顔を歪めながらも言った。
「そんな結婚、死んでもいやよ! 貴方、私をちっとも愛していないじゃない。貴方が愛しているのは私じゃなくて、貴方が私に眠っていると主張する能力だけよ! 悪いけどそんな理由で結婚なんて出来ないわ! 私は貴方の野望の道具じゃない!」
ルイズはそう言ってワルドを振り払うと、祭壇から少し離れた場所で事の成り行きを見守っていた静留へと駆け寄った。
それでも尚ルイズに追いすがろうとするワルドをウェールズが肩を掴んで止めようとするが、逆にワルドに突き飛ばされて転倒する。
ウェールズは怒りの表情で立ち上がると、杖を抜いた。
「なんたる無礼! なんたる侮辱! 子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢に近づくのをやめたまえ! さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!」
ワルドはそこでやっと歩みを止めた。同時にルイズを後ろにかばうようにして、デルフを構えた静留がワルドの前方に立ちふさがる。
「色恋沙汰の分別はきちんとつけられるお人かと思うとったんやけど、とんだ見込み違いだったみたいやね」
「残念ながら、こう見えて意外に僕は諦めの悪い性分でね。まあ、それは兎も角……ルイズ、どうしても僕とは結婚できないのかい?」
ワルドは張りついたような優しい笑顔と蕩ける様な声音でルイズに尋ねる。
「嫌よ、誰があなたと結婚なんかするものですか」
怒りで震えながらもルイズが拒絶の言葉を告げると、ワルドは両手を広げ、やや芝居がかった調子で天を仰いで首を振った。
「やれやれ、この旅で君の気持ちを掴むために随分努力したつもりなんだが――こうなっては仕方が無い。目的の一つは諦めるとしよう」
「目的?」
「そうだ。この旅における僕の目的は三つあった。一つ目の君を手に入れるということは叶いそうもないが……後の二つが達成できるだけでも、よしとしなければ」
「三つのうち二つ? 達成? どういうこと?」
ルイズが嫌な予感を抱いて尋ねると、ワルドはニヤリと笑いを浮かべて答える。
「ふむ、このまま何も知らぬままというのも可哀想だ。特別に僕の残る二つの目的を答えてあげよう……まずはルイズ、君が持っているアンリエッタの手紙だ」
「ワルド、あなた……」
ルイズははっとした表情でワルドを見つめる。
「そして、最後の一つは――貴様の命だ!」
そう叫ぶやいなや、ワルドは閃光の様に杖を抜くと、ウェールズの胸を刺し貫いた。
すかさず静留がワルドに向かってデルフを振り下ろすが、ワルドは突き刺した杖を引き抜きながら空中に飛び上がってかわす。
「き、貴様……『レキン・コスタ』……」
ウェールズは口からどっと鮮血を溢れさせ、大きな音を立てて崩れ落ちた。
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