「ゼロの皇帝2」(2007/08/06 (月) 21:29:57) の最新版変更点
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ルイズがコルベールに促され、その召喚したてホヤホヤの人間を見るとソイツはこちらを見て一度苦笑した後立ち上がり
埃を払うとこちらに微笑みかけてきた。年の頃は二十台半ばといったぐらいか。体格は騎士にしては多少細身であり、
メイジにしては筋肉がつきすぎ、つまり判断しづらいということである。
しかしさらに判断しづらいのはその身分だ。来ている服はごく一般的な平民のものとそう代わりが無いのだが、当の本人を見ると
平民とは言い切れない。髪は少し巻き毛の銀髪、顔立ちはかなり整っているほうであり、何よりにじみ出る気品や風格は
名門貴族に勝るとも劣らないものである。周りのギャラリーも貴族の一員である以上、その男の不思議さに興味が移るのは
至極まっとうなことであり、ルイズに対する野次も収まっていた。
(とりあえず名前を聞いてみましょう。もしかしたらどこかの名門貴族で、政治的事情で使い魔にするのはまずいからとか
なんとかで、特例としてもう一度チャンスがもらえるかもしれないわ!)
などと淡い期待を抱きつつ、彼女は彼に聞いてみた。
「アンタ誰?」
そう尋ねると彼は先ほどよりも幾分苦めに笑い、逆にこちらに尋ねてきた。
「申し訳ない、お嬢さん。質問を質問で返すようで悪いのだが、先にそちらの名前をお聞かせ願えないだろうか?それと
ここがどこであるか、なぜ私がここにいるのか、この二点も答えてもらえるとありがたいのだが」
「たしかにそうね。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。ルイズでいいわ。
そしてここはトリスティン魔法学院。あなたは(不本意ながら)私が召喚した使い魔よ。これで十分?で、あなたの名前は?」
そうルイズが答えると、彼の表情は一変した。先ほどまでの余裕はどこへやら、目は大きく見開いた後せわしなく泳ぎ
顔色は先ほどより三割増し程度青くなり、脂汗も滲んできたようだ。
「………す、すまない。もういちどきかせてもらえないか」
「はぁ?だからわたしの名前は」
「いや、そこではなく」
「ああ、あなた他国の人なのね。トリスティン魔法学院は、トリステイン王国の王都トリスタニアからは馬で…」
「・・・・・・」
「…という所よ。ってあなた、ちゃんと聞いてる!?」
「は、は、は・・・」
男は、ただ笑っていた。なぜなら、自らに起こったことを理解してしまったから。とてもとても残念ながら。
トリステイン王国。彼はそのような国を聞いたことが無い。何より彼が知らない国など存在するわけが無いのだから。
文字通り世界中を駆け巡り、それこそ世界を救った彼が、それでも聞いたことが無い国。
(そんな国があるのならそれはまさか別の…。…ピコーン!!!!!!)
確かに、彼の発想は普通なら空想の類だろう。だが、彼には絵空事ではないと言い切れる絶対的な根拠があった。
それは彼の宿敵。文字通り何百年、何千年と戦い続けてきた相手。以前は救国の英雄であったが
その力が元で追放されてしまった悲しき男たち。
今まで散々味わってきた彼らの異形の力が彼らの戦う理由を証明していた。そして皮肉にもわが身に起こった
ことに対する答えにも。
(なるほど、信じていた仲間にいきなり異世界に送られたらああもなるわけだ…今はよく分かる…)
そう、彼は正解を出していた。ここが彼のいた世界ではなくまったく別の世界であることを。そしておそらく、
自分が帰ることができないであろう事も。
(これほど絶望的になる閃きはレオン様の時代から数えたとしても覚えが無いぞ…いっそ閃かないでいてほしかっ)
「ってあなた、ちゃんと聞いてる!?」
その彼女(確かルイズと言っていた)の体格に似合わない大声に現実に引き戻され、目線を合わせる。
「人の話を何だと思っているワケ!アンタがもう一度って言うからわざわざ説明してるんでしょ、コッチは!」
「……ちょっと気が動転してしむぁってね、申し訳なかかたた。もう大丈夫だにぎょ」
「…本当に?まあいいわ。で、あ、な、た、のお名前は?」
そこで彼は一息つく。おそらく、いや確実にここにいるもの一人たりとも彼の名前を聞いても何の反応も示さないだろう。
もしそうであったら、それが何よりの答え。彼の知る世界ならありえ無いこと。
「‥ラール」
「は?」
「ジェラール。それが私の名前だよ、お嬢さん」
ルイズがコルベールに促され、その召喚したてホヤホヤの人間を見るとソイツはこちらを見て一度苦笑した後立ち上がり
埃を払うとこちらに微笑みかけてきた。年の頃は二十台半ばといったぐらいか。体格は騎士にしては多少細身であり、
メイジにしては筋肉がつきすぎ、つまり判断しづらいということである。
しかしさらに判断しづらいのはその身分だ。来ている服はごく一般的な平民のものとそう代わりが無いのだが、当の本人を見ると
平民とは言い切れない。髪は少し巻き毛の銀髪、顔立ちはかなり整っているほうであり、何よりにじみ出る気品や風格は
名門貴族に勝るとも劣らないものである。周りのギャラリーも貴族の一員である以上、その男の不思議さに興味が移るのは
至極まっとうなことであり、ルイズに対する野次も収まっていた。
(とりあえず名前を聞いてみましょう。もしかしたらどこかの名門貴族で、政治的事情で使い魔にするのはまずいからとか
なんとかで、特例としてもう一度チャンスがもらえるかもしれないわ!)
などと淡い期待を抱きつつ、彼女は彼に聞いてみた。
「アンタ誰?」
そう尋ねると彼は先ほどよりも幾分苦めに笑い、逆にこちらに尋ねてきた。
「申し訳ない、お嬢さん。質問を質問で返すようで悪いのだが、先にそちらの名前をお聞かせ願えないだろうか?それと
ここがどこであるか、なぜ私がここにいるのか、この二点も答えてもらえるとありがたいのだが」
「たしかにそうね。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。ルイズでいいわ。
そしてここはトリステイン魔法学院。あなたは(不本意ながら)私が召喚した使い魔よ。これで十分?で、あなたの名前は?」
そうルイズが答えると、彼の表情は一変した。先ほどまでの余裕はどこへやら、目は大きく見開いた後せわしなく泳ぎ
顔色は先ほどより三割増し程度青くなり、脂汗も滲んできたようだ。
「………す、すまない。もういちどきかせてもらえないか」
「はぁ?だからわたしの名前は」
「いや、そこではなく」
「ああ、あなた他国の人なのね。トリステイン魔法学院は、トリステイン王国の王都トリスタニアからは馬で…」
「・・・・・・」
「…という所よ。ってあなた、ちゃんと聞いてる!?」
「は、は、は・・・」
男は、ただ笑っていた。なぜなら、自らに起こったことを理解してしまったから。とてもとても残念ながら。
トリステイン王国。彼はそのような国を聞いたことが無い。何より彼が知らない国など存在するわけが無いのだから。
文字通り世界中を駆け巡り、それこそ世界を救った彼が、それでも聞いたことが無い国。
(そんな国があるのならそれはまさか別の…。…ピコーン!!!!!!)
確かに、彼の発想は普通なら空想の類だろう。だが、彼には絵空事ではないと言い切れる絶対的な根拠があった。
それは彼の宿敵。文字通り何百年、何千年と戦い続けてきた相手。以前は救国の英雄であったが
その力が元で追放されてしまった悲しき男たち。
今まで散々味わってきた彼らの異形の力が彼らの戦う理由を証明していた。そして皮肉にもわが身に起こった
ことに対する答えにも。
(なるほど、信じていた仲間にいきなり異世界に送られたらああもなるわけだ…今はよく分かる…)
そう、彼は正解を出していた。ここが彼のいた世界ではなくまったく別の世界であることを。そしておそらく、
自分が帰ることができないであろう事も。
(これほど絶望的になる閃きはレオン様の時代から数えたとしても覚えが無いぞ…いっそ閃かないでいてほしかっ)
「ってあなた、ちゃんと聞いてる!?」
その彼女(確かルイズと言っていた)の体格に似合わない大声に現実に引き戻され、目線を合わせる。
「人の話を何だと思っているワケ!アンタがもう一度って言うからわざわざ説明してるんでしょ、コッチは!」
「……ちょっと気が動転してしむぁってね、申し訳なかかたた。もう大丈夫だにぎょ」
「…本当に?まあいいわ。で、あ、な、た、のお名前は?」
そこで彼は一息つく。おそらく、いや確実にここにいるもの一人たりとも彼の名前を聞いても何の反応も示さないだろう。
もしそうであったら、それが何よりの答え。彼の知る世界ならありえ無いこと。
「‥ラール」
「は?」
「ジェラール。それが私の名前だよ、お嬢さん」
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