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#navi(プレデター・ハルケギニア)
激しい雨が船体を叩いていた。
先程から立ち込めていた暗雲は遂に雨雲へと姿を変えたのだ。
甲板の上を四人の隊員たちが歩く。
それぞれ違う方向を注意深く見回しながら。
他の隊員たちも同様の人数で編成され船内や貨物室を見回っている。
「いつでも動けるように準備をしておきなさい」
「はい……」
エレオノールが厳しい表情でテファに言い放つ。
彼女と村の子供たち、そしてルイズとエレオノールは亜人の武器が置いてある部屋で待機していた。
周りには彼女らの他に数人の隊員の姿が見える。
テファニアのすぐ隣に立つルイズは彼女の足が小さく震えていることに気づいていた。
彼女は血の滲むような訓練を受けた魔法衛士ではないのだ。不思議な力が使えるということ意外は
10代後半の少女に過ぎない。
「テファニア、ごめんなさい本当に。私のせいで……」
ルイズが申し訳なさそうに呟く。
「違うわ、ルイズ。あなたのせいじゃない。気にしないで」
そう言って彼女はルイズに微笑む。しかしその笑顔はどうしても不安と恐怖を隠せずにいた。
「いやあ、見事に降り出しちまったの」
オスマンが窓の外を見ながら呟く。外はルイズたちのいる上空と同じく滝のような豪雨が降り注いでいる。
オスマン、コルベール、そしてキュルケ等は食堂にて簡単な食事をとっていた。
「学院長」
彼の正面に座るコルベールがオスマンを怪訝そうな視線で見据えながら呼びかける。
「何かなミスタ?」
「いい加減お教え願いませんか?一体何の目的でやってきたのですか?私にも大事な授業があったというのに」
オスマンは長い髭を撫でると突如、コルベールの方を鋭い眼差しで見つめた。
「ミスタ・コルベール!」
「は、はい!」
突然のオスマンの豹変にコルベールが思わず身を縮こませる。
「君もいい年なんじゃから、研究だ授業だとばかり言っとらんで身を固めなさい」
そう言うとオスマンは再び表情を崩し皿の上の料理を食べ始めた。
「まだまだ若いと思っとっても、すぐにワシみたいなジジイになっちまうもんじゃぞ」
「は、はあ……って学院長!誤魔化さないでください!」
二人のやりとりに傍らのキュルケ等はヤレヤレとばかりに肩をすくめた。
「でも本当に驚いたな。突然現れたもんだから……」
ギーシュがオスマンとコルベールを見ながら言う。
「まあ、その内な。その内」
料理を口に運びつつオスマンが言う。
「全くこの人は……」
そう言うとコルベールは下を向き大きなため息を漏らした。
隊員たちが船内を探索し始めて30分も立っただろうか。
一向に亜人の見つかる気配は無い。
「クソッ、どんどん強くなってきやがる」
隊員の一人が空を見上げながら言う。
雨も風も先程よりいっそう強くなってきている。
「甲板の上にはいないんじゃないか?これだけ探しても何にもみつからねえ」
隊員たちが顔を合わせて思案する。
その時、不意に音がした。
彼等のすぐそば、いや陣形の中央からだ。カチッというどこかこ気味いい音だ。
思わず全員が陣形の中央を見た。それはなんとも奇妙な物だった。
四方向に短い突起が突き出た平べったい、何かヒトデを思わせるような鋼色の物体が甲板へと張り付くように落ちていた。
「何だこりゃあ?」
隊員の一人がそう呟いた次の瞬間だった。彼等の陣形の中央、その物体に向かって一筋の細い光線のような物が飛来した。
光線が当たった瞬間にその物体は重い爆発音とともに砕け散った。
その瞬間何が起こったか?
謎の物体は青白い光を放ち爆発、そしてその威力は驚くべき物だった。
何とそれは隊員たちの着ている服も、鍛えこまれえた屈強な筋肉も、そして内臓さえも
消滅させ白骨と化したのだ。
一瞬で白骨標本と化した隊員たちがカランと乾いた音を立てて崩れ落ちた。
同時に甲板に重い着地音と獣が喉を鳴らすような音が響いた。
貨物室――
貨物ごと買い取った船だけありそこにはありとあらゆる貨物で埋め尽くされている。
その隙間を縫うように隊員たちは探索を行っていた。
一人の隊員が貨物の陰を覗く。しかしそこには何の姿も無い。
隊員が小さく息を吐き踵を返した瞬間、彼の体は突然2メイル程の高さまで浮かび上がった。
フライやレビテーションでは無い。明らかに彼の意と反した現象だ。
「ウッ!?」
彼が小さく驚きの声を上げるのと同時に彼の首は強力な力で左回りに捻られた。
骨の砕ける鈍い音とともに、絶命した隊員は力なく空中にダランと釣り下がった。
一瞬で隊員を縊り殺した何者かは投げ捨てるように彼の体を床へと放った。
突如鳴り響いた落下音に他の隊員が同時に振り向く。
比較的近くにいた者が音がした方へと慎重に歩いて行く。
手に握られた杖にも自然と力がこもる。
その時、彼の真後ろで僅かに床が軋む音がし、彼は瞬速の速さで後ろを振り向いた。
しかし次の瞬間、彼の首は見えない刃に切断され床に落ちていた。
恐らく自分が殺されたことも分からずに絶命しただろう。それ程の早業だった。
首の落ちる音と血潮の吹き出す音に他の隊員たちがフライの魔法で浮かび上がった。
彼らは見た。血潮に塗れ透明な姿をあらわとした自分たちが探索していた者、あの亜人の姿を。
「いたぞ!見つけたァ!!」
一人が大声で叫んだ。
「あの娘を呼んで来い!」
二人の隊員の内の一人がテファニアたちの待機する部屋へと飛翔する。
亜人はその姿を喉を鳴らしながら眼で追ったが、
「来い!俺が相手だ!」
天井の梁に着地した隊員が叫んだ。
亜人が声の主の方を向き、膝を大きく曲げる。
そして人外の跳躍力で一気に隊員の立つ梁へと飛び上がる。
それと同時に隊員はフライで空中へと浮かび上がった。
亜人の巨体が梁へと着地した瞬間、空中の隊員はうっすらと笑みを浮かべた。
梁の強度は亜人の巨体にも十分耐えうるはずであった。しかし亜人が着地した瞬間に
梁は腐木の如く真っ二つに折れたのだ。
亜人が真下の貨物へと落下し派手な落下音とともに貨物が崩れ埃が舞い上がる。
「かかったな馬鹿め!」
宙に浮かびながら彼は勝ち誇った笑みを浮かべた。
土の使い手である彼は亜人が飛び乗る事前に『錬金』にて梁を脆くしていたのだ。
その時、彼の胸部に赤い点が浮かび上がった。小さなピラミッド型の三つの点が揺らめいている。
彼がその点に手をかざすと今度はかざした手に光点が揺らめいた。
その時だった。その光点をめがけて青白い光弾が猛スピードで着弾し彼の上半身を粉々に打ち砕いた。
光弾はそれだけでは止まらず彼の背後の船壁をも貫き船体に大穴を開けた。
下半身だけとなった隊員の体はすぐに床へと叩き落ちた。
それと同時に崩れた貨物を踏みしめ血まみれの巨体が立ち上がる。
その左肩に装着された筒状の武器からは硝煙が立ち昇っている。
その巨体のどこに隠していたか。
かつてあのフーケから奪いし得物、謎のマジックアイテム『破壊の銃』。
彼は床に落ちた隊員の下半身を一瞥するともう一人が飛び去った先へと眼をやる。
助走をつけ跳躍し一気にその通路の入り口へと降り立った。
血塗れの体を少し前傾させながらゆっくりと彼は薄暗い通路へと足を踏み入れた。
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