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#navi(スナイピング ゼロ)
セラス・ヴィクトリアとリップバーン・ウィンクルが使い魔としてルイズに召喚されてから、一週間が過ぎた。
二人の使い魔としての一日を紹介すると、こんな感じだ。
朝、セラスはルイズを起こすため棺桶から出る。ルイズが目を覚ますと、制服に着替える。その間にセラスはバケツを持って
水場に向かう、ルイズが洗顔と歯磨きに使うからだ。その間にリップが起きる、目元が赤いのは夜泣きが原因だろうか?
因みに二人分の棺桶が用意できたのは、召喚から三日後。生徒や教師などに見られず部屋に入れるのは、かなり苦労した。
教室へ向かう準備が整うと、ルイズは食堂へ向かう。
その間にセラスは再び水場に向かい、洗濯板を使って洗濯物を丁寧に洗う。初めての頃はレースやフリルの付いた下着に苦労したが、
シエスタの教育によって破ったりする事は無くなった。
その頃リップは部屋の掃除を行う。最初こそ雑用を嫌がっていたが、ルイズの乗馬用の鞭とセラスの無言の脅迫によって実施させた。
にしては、箒で床を掃いたり雑巾で窓を拭く姿は様になっていた。『良いお嫁さんになれますよ♪』とは、シエスタの言葉である。
言われた本人は、顔を赤くして必死に否定していたが・・・。
それらの雑用が終わると、二人は教室に行く。最初の頃はルイズの後ろで授業の成り行きを見ていたが、覚えても魔法が
使えないので、そのうち居眠りするようになった。そもそも吸血鬼は朝に寝る生き物であるため、ルイズは注意しない。
それに他の使い魔達の中にも、夜行性の幻獣やフクロウは眠っているのだ。そのため、教師も注意はしなかった。
壁に背を預けて座ったまま肩を寄せ合って眠る二人を、一部の生徒は微笑ましい眼で見つめていた。
『・・・姉妹みたい』とは、タバサの感想である。
昼になると、ルイズたち生徒は食堂に移動する。二人も移動するが、向かうは食堂の外の広場。二人は吸血鬼で食事を必要としない
ため、昼と夕はメイドの餌撒きを手伝っているのだ。
因みに以前メイドから『なぜ食事をとらないのですか?』と聞かれ時に、セラスは『私とリップさんは、とあるメイジに
「お腹が減らない魔法」をかけられてますから!』と言って誤魔化した。メイドはそれで納得し、リップはアホ毛を揺らした。
夕食を終えるとルイズは浴場に向かい、二人は部屋に戻って眠る準備をする。因みに棺桶はベットと窓の間に置いてある、部外者が
入って来た時に見られないためと、ルイズがベットから落ちた時にクッションにするためだ。
そのため以前キュルケがフレイムを連れて部屋に入ろうとした時は、三人で力を合わせて侵入を阻止した。使い魔と話がしたい
との事だったので、キュルケの部屋に移って雑談をした。最初はギーシュとの決闘に関してだったが、しだいにセラスの胸に関する
議題となったためルイズが怒り狂った。二人でルイズを引っ張って部屋に戻る様を、キュルケは腹を抑えて大笑いしていた。
ルイズが部屋に戻ってネグリジェに着替えると、そのまま就寝となる。今日も長い一日だったと思いながら、三人は眠りにつくのだ。
「絶望したわ!」
そんな虚無の曜日を明日に控えた夜のこと、ルイズはベットの上で絶叫した。
棺桶に入ろうとしていたセラスはルイズに眼を向ける、リップは眼を向けずマスケット銃を点検していた。
「どうしたんですかマスター、絶望とゼロ魔のクロスSSなら『糸色望の使い魔』で検索すればHITしますよ」
「いや、そう言う意味じゃなくて・・・リップ、首吊りのロープは用意しなくて良いから」
「・・・・・・」
黙ってロープを懐に仕舞い、リップは点検を再開する。それを横目に、ルイズは説明を始めた。
「貴女達は吸血鬼だけど、皆には内緒にしてるでしょ。それにセラスはリップと違って、武器などは持っていない。
だから周りから見ると、私は二人の平民を従えてるようにしか見えない。だから絶望したって事なの、分かる?」
「・・・えっと、つまりマスターは『せめて貴女も武器の一つぐらい持ちなさい』と言いたいんですか?」
「GOOD GOOOD VEEERRYY GOOOOD、その通りよセラス♪」
パンパンと手を叩くと、ポケットから出したトランプを弄び始める。セラスは腕を組んで考えた。
自身の武器と言えばハルコンネンだが、両方ともヘルシング本部に置いてきてしまっている。つまり、代わりの物を購入する
必要がある。でも付近の街など知らないし、お金は持ってない。その事に関して尋ねようとルイズを見ると、何時の間にかシルクの
帽子を被ってタバコを咥えている。ニヤニヤと笑いながら、両手を広げた。
「安心しなさい、明日は休日だから町で買ってあげるわ。せいぜい楽しみにしている事ねセラス、スリもヒッタクリも居る町に
行きたいのなら♪」
楽しげに話すルイズを、セラスは驚きの眼で見ていた。何故だか分からないが、南米のホテルで戦った伊達男を思い出したのだ。
隣を見ると、リップが棺桶に座って貧乏揺すりしている。何か有ったんだろうか?
「さ、そうと決まれば寝ましょう。街までの距離は遠いから、朝早くに学園を出発することになるわ」
そう言うと、ルイズはさっさとベットに潜り込んだ。そして3秒後に寝息、ノビ太もビックリな早寝だ。
「リップさんはどうします、一緒に行きますか?」
「私も一緒に行きます、欲しい物が有りますから」
同伴で行く事を確認すると、主人に習って眠る事にする。棺桶の蓋を閉め、明日への期待を胸に膨らませた。
その後リップの棺桶から「待ち遠しいですわ、待ち遠しいですわ」と言う声が、延々と漏れ続けた。
その頃ミス・ロングルビルは、学園長室で一日の仕事を終えた所だった。すでにオスマンは自室に戻っているため、
部屋にはロングビルしかいない。筆記具を机の引き出しに片付けると、ランプの火を消して部屋を出た。階段を下りて、
巨大な鉄の扉の前に立つ。巨大な鍵によって閉ざされ、異様な雰囲気を漂わせている。
そこは魔法学園が成立して以来の秘宝が収められた部屋、宝物庫だった。
周りに人の気配が無い事を確認すると、懐から杖を取り出す。手首を振って腕ほどの長さにすると、呪文を唱えて鍵に向けて
振り下ろした。だが、鍵には何の変化も無い。ハアッと溜息を吐くと、壁に背を預けた。
「まぁ、スクウェアクラスのメイジが数人がかりで固定化の呪文をかけてんだ。メイジ一人の『アン・ロック』で開けられるなんて、
ハナから思っちゃいないさ」
面白そうに笑うと、今度は得意の『錬金』で挑戦してみた。呪文を唱えて扉に向けて杖を振るう・・・が、やはり変化は起こらない。
鍵や扉は、ウンともスンとも言わない。その時、奥から階段を上がってくる足音が響いてきた。
「やば、人が来たか」
サイレントで足音を消すと、ロングビルは急いでその場を後にした。
移動した先は、宝物庫の外壁を外から見られる中庭だった。
地面を蹴って、壁を垂直に登り始める。宝物庫の辺りに来ると、何度か足踏みして壁の厚みを測る。
もし薄ければ足音が反響するのだが、よほど厚みがあるのか音は全く反響しない。
「外壁も負けず劣らず頑丈だね、これじゃゴーレムで穴を開けるのも難しいか・・・折角ここまで来たのに」
夜風に揺らぐ髪を掻き分けながら、軽く舌打ちする。腕組みをすると、どうすれば良いか考えた。
「かと言って、『破壊の杖』を諦めたくは無いのよねぇ・・・」
そのまま、ロングビルは打開策を考え続けたのだった。
太陽が地平線から顔を出した頃、キュルケは目を覚ました。ベットから降りると、窓とドアを開けて風を通す。髪を揺らしながら、
大きく伸びをした。首を左右に振ってコキコキと骨を鳴らし、窓辺に立って外を眺めた。雲一つ無い青空が広がっている。
「今日も良い天気になりそうね。こんな気持ち良い日は、ルイズをからかって更に気持ち良くなるに限るわ♪」
本人に聞かれたら激怒しそうな事を言いながら、椅子にすわって化粧をする。そして制服に着替えると、廊下に出てルイズの部屋
の前に立った。ノックをしてみたが、反応は無い。ドアに耳を当ててみるが、物音は聞こえない。少し悩んだ後にキュルケは
「とりやぁあ~!!」
右足の強烈なヤクザキックで、強引にドアを蹴り開けた。因みに今のキュルケは、エンジンを温めた小型ジェット機の譲渡書
などは持っていない。部屋を見回しながら窓を開けると、門の前にルイズが見えた。使い魔の二人も一緒で、馬に乗っている。
「出かけるみたいね・・・こうしちゃいられないわ!」
部屋を飛び出すと、100メイルを12秒のスピードで廊下を突っ走った。向かうは友人のタバサの部屋、すぐに到着する。
「タ~バサー、私よー友人のキュルケよー。ちょっと用があるの、開けてくれな~い?」
ドンドンとドアを叩くと、中で物音が響く。しばらく待つと、ゆっくりとドアが開いた。タバサは何故か一つ目が描かれた
帽子を被り、顔を右半分だけ覗かせている。
「本当? 本当に友人のキュルケ? 本当のキュルケならアレが出来るハズ・・・」
「アレって?」
「マリー・アントワネットのモノマネ・・・」
ボソボソと小さな声で、タバサはモノマネをするよう迫る。いきなりの事に焦りながらも、ゴホンと咳をして襟元を調えた。
「・・・パンが無いのなら、焼け死んでしまえば良いじゃない」
「超ゴーマン・・・やっぱり、キュルケ」
「その通り、貴女のキュルケよ! あっはっはっは!」 タバサを抱き締めて回転しながら、キュルケは大笑いした。
その後、ルイズが使い魔を連れて街に行ったためウィンドドラゴンで追いかけてほしい旨を伝えた。認識したタバサは口笛を吹くと、
窓から飛び降りた。シルフィードが二人を背中で受け止めると、気流に乗って一気に上昇する。
「方角は?」
「恐らく向かったのはブルドンネ街だから、街の方へ」
「馬三頭、見つけ出して」
キュイキュイと鳴いて了承の意思を示すと、青い鱗を輝かせて力強く羽ばたき、飛行を開始したのだった。
トリステインの城下町を、ルイズは歩いていた。後ろには右手側にセラス、左手側にリップが着いて来ている。二人とも揃って、
片手を腰に当てている。魔法学園から街までの三時間を、馬で移動したからだ。
「マスター、腰が痛いんで薬とか買ってくれませんかぁ・・・」
フードの下で腰を擦りながら、セラスは愚痴った。リップも右手で傘と銃の肩当を持ち、左手で腰を抑えている。
二人とも馬には慣れていないため、揃って腰を痛めてしまった。吸血鬼でも、痛みは耐え難いのだ。
「情けないわね、それでも吸k・・・っと」
慌てて口を塞ぎ、辺りを見回す。ルイズに視線を向ける人はいない、どうやら聞かれてはいなかったようだ。
(危なかったわ。ただでさえ変な格好した使い魔を二人も連れてるのに、吸血鬼だってバレたら注目されるから注意しないと)
振り向いて、セラスとリップを見る。二人とも、明らかに周囲の視線を集めてしまっていた。セラスは巨乳でフードを被り、
リップは黒髪で黄色い傘を差している。そのため通りすがる人や道端で店を開いている者などが、不審者を見る眼で二人を見ている。
さっさと買い物を済ませようと、ルイズは狭い路地裏へ足を踏み入れた。ゴミや汚物にセラスは鼻を抑え、リップは傘を閉じる。
「ずいぶん汚れてますね、貧民街みたいな所ですか?」
「平民の中でも、特に貧しい人達が住んでいるようですからね」
セラスの疑問に、リップが簡潔に答える。そんな二人を尻目に、ルイズは奥の方へと踏み込んで行く。
「ピエモンの秘薬屋の近くだから、この辺のはず・・・あ、あったあった」
一軒の店が、剣の形をした看板を掲げている。どうやら、店に到着したらしい。三人は階段を上がって扉を開けると、店の中に
入って行った。
その後姿を、赤髪と青髪の少女が覗き見ている。なんなくルイズ達を見つけた二人はウィンドドラゴンを空中に待機させ、
ずっとストーキングして来たのだ。
「なによルイズったら、剣なんか買う気? 黒髪の子は銃を持ってるから、巨乳の子にでも買ってあげる気かしら?」
店の扉を見つめながら、キュルケは予想する。タバサは我関せずと言った感じで本を読んでいる、もう自分の仕事は終わりだと
言わんばかりだ。ルイズ達が店から出て来るのを待ち伏せする事に決めると、キュルケはタバサの隣に座り込んだ。
昼だと言うのに店の中は薄暗く、ランプの灯りがともっている。壁や棚には所狭しと剣や槍が並べられ、隅には立派な甲冑が
鎮座していた。
店の奥でパイプを銜えていた親父が、入って来たルイズに目を向ける。背中のマントと五芒星のバッチに気付くと、パイプを置いて
声をかけた。
「貴族様、うちはまっとうな商売をしております。目をつけられるような事なんか、これっぽっちだってしちゃいませんよ」
「私は監査官なんかじゃないわ、客よ」
「貴族の方が剣をですか、こりゃ驚かされましたね」
「貴族の人が剣を買うのって、そんなに珍しいんですか?」
フードを脱いたセラスが、疑問を口にした。胸部をガン見した親父はルイズに睨まれながらも、身振り手振りで説明する。
「そりゃ、とても珍しいですよ。坊主は聖具を振るう、兵隊は剣を振る、貴族は杖を振る、そして女王陛下はバルコニーから
お手をお振りになる、と相場は決まってますからね」
「使うのは私じゃないわ、使い魔よ」
「そうでしたか、最近は貴族の方も剣を振るうのかと思ったもので」
主人は愛想笑いを振り撒きながら、セラスをじろじろと眺めた。因みにリップは後ろの方で、剣や槍などを手に取ってバトン
みたいにクルクル回している。
「剣を使うのは、そちらの金髪の方で?」
「そうよ、私は剣なんて分からないから適当に選んであげて」
適当にルイズが言うと、主人は店の奥に入っていった。客に聞こえない声で、小さく呟く。
「こりゃ鴨がネギ振り回してやってきたな、せいぜい高く売り付けてミックミクにしてやるとしよう♪」
彼は1メイルほどの、細身の剣を持ち出してきた。随分と華奢な形をしており、片手で扱うため柄にハンドガードが付けられている。
セラスが手に取って眺めていると、主人が思い出したかのように言った。
「近頃は宮廷の貴族様の中にも、下僕に剣を持たせるのが流行っておりましてね。その際に買い求めるのが、このレンピアです」
なるほど、とルイズは納得する。きらびやかな模様が描かれており、如何にも貴族が好みそうな剣だからだ。
「貴族の間で、下僕に剣を持たせるのが流行ってるの?」
何時の間にかルイズの隣に移動していたリップが尋ねると、主人はもっともらしく頷いた。
「そうです。なんでも最近、このトリステイン城下町を盗賊が荒らしておりましてね・・・」
「盗賊? 今この街を?」
「はい。なんでも『土くれのフーケ』とか言うメイジの盗賊が、貴族が持つ宝を盗みまくってるそうで。それで貴族の方々がビビって
しまって、下僕にも剣を持たせる始末で。まぁウチとしては売り上げがUPしてるんで、ありがたい事ですがね」
目の前に貴族がいるのも係わらず、親父は嬉しそうに話し続けた。だがルイズは盗賊に興味は無いらしく、華麗にスルーした。
「もっと大きくて太いのないですかね? これじゃ細すぎて、すぐに折れちゃいそうで」
剣を何度か振りながら、セラスは尋ねた。主人はセラスを上から下へ流し見ると、腕を組んで悩みだした。
「お言葉ですが、剣と人には相性って物がございます。見た所、いま持っている剣が無難だと思いますが」
「大きくて太いのが良いと言ってるの、見せてみなさい」
ルイズが会話に割り込むと、主人は頭を下げて奥に消えた。その際に小さく『やれやれだぜ・・・』と弱音を吐いた。
そして今度は立派な大剣を抱えて、主人が説明を始めた。
「こちらが、店一番の業物です。貴族のお供に使うなら、是非とも腰に下げていただきたいものです。と言っても、そちらの金髪の方
なら背中に背負わないといけませんがね」
三人とも近寄って、その剣を見下ろす。あちこちに宝石が埋め込まれ、両刃は鏡のように光り輝いている。見るからに切れ味の良さ
そうな、頑丈そうな剣である。
「何せ作りあげたのは、かの高名なゲルマニアの錬金術師シュペー卿です。決して、お安くはありませんよ」
「おいくら?」
「エキュー金貨なら二千、新金貨なら三千となっております」
「立派な家と森付きの庭が、セットでお買い得じゃないの!」
ルイズの呆れた声を、二人は頭を傾げた。相場と貨幣価値が分からないので、どれほど高いか分からないのだ。
仮に同等の家と庭を英国で購入すると、約50万ポンドほどだろうか?
「名剣は城に匹敵します、屋敷で済めば安い方です。どんなに安くとも、まともな剣なら二百はしますから」
「新金貨で百しか持ってないわ、これで買える剣は無いの?」
ルイズは財布を取り出すと、中身をカウンターの上にばら撒く。枚数を確認すると、主人は壁際に置かれている剣の束を指差した。
「この額だと、そちらの剣から選んでいただく事になりまs「おう姉ちゃん、剣が欲しいなら俺にしろ!」
いきなり剣の束から声がしたため、ルイズとセラスは思わず後ろに下がった。リップはマスケット銃を、声のした方に向ける。
セラスが近付くと、一本の剣がカタカタと揺れているのが見えた。
「おいデル公、商売の邪魔するんじゃない! あんまり騒がしくしたら、T-800型みたいに鎖に付けて溶鉱炉に沈めちまうぞ!」
「おもしれ、やってみろ! この世に未練なんか無いんだ、溶かしてくれるんなら本望だ!」
「それって、インテリジェンスソード?」
ルイズが当惑した声を上げ、リップがマスケット銃を下ろした。主人は溜息をつくと、頭を掻く。
ルイズが当惑した声を上げ、リップがマスケット銃を下ろした。主人は溜息をつくと、頭を掻く。
「その通りですよ貴族様。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードです。どこの魔術師が考え出したんでしょうね、剣に言葉を
授けるだなんて。兎に角こいつは喋らせると口は悪いわ客に喧嘩を売るわで、閉口しておりましてね・・・」
主人の説明を聞きながら、セラスは剣を取った。見たところ刀身が狭く、細身で薄身だ。表面には錆が浮いており、お世辞にも
見栄えが良いとは言えない。
「え~と、デル公さん?」
「違うわい、デルフリンガー様だ」
「私、セラス・ヴィクトリアって言います。こんにちわ」
ペコリと御辞儀をするが、剣は黙ったままだ。それから数秒ほどして、小さな声で喋り始める。
「こいつは驚いた、お前『使い手』だな」
「え?『使い手』って?」
「なんだ、自分の実力も知らないのか。まあ良いや、俺を買え」
「え・・・まぁ、別に良いですけど」
商談が成立すると、またも剣は黙った。カウンターに剣を置くと、ルイズが嫌そうな顔をしてセラスを見上げる。
「それで良いの? もっと小奇麗な剣とかにしない?」
「大丈夫ですよ、剣を使う事なんて無さそうですし。それに私には、コレがあるんで」
そう言って、黒く染まった左腕をヒラヒラと振って見せる。前に授業で壊した机や椅子を握り潰した事を思い出し、ルイズは
ポンと手を叩いた。
「確かに、貴女なら大丈夫ね。この剣、おいくら?」
「タダで結構ですよ、こっちにしてみりゃ厄介払いみたいなもんですから。五月蝿いと思ったら、鞘に入れれば静かになりますんで」
後ろの棚から鞘を取り出すと、セラスに手渡す。そして、隣に立つ黒髪の女性に顔を向けた。
「で、そちらの方は何をお求めで?」
「この銃に使える弾丸と紙薬莢を、両方50ずつお願いするわ」
マスケット銃を見せると、主人は頭を下げた。棚の引き出しを開け、弾と薬莢をカウンターの上に並べる。
「合わせて新金貨二十五となります、毎度ありがとうございます」
「これで買い物は終わりね、二人とも帰りま・・・ってセラス、貴女どこ見てるの?」
リップが商品を懐に入れ、ルイズが残った金貨を財布に戻した時、セラスが店の奥を見ている事に気付いた。剣を背負ったまま、
ボ~っと突っ立っている。リップが目を向けると、そこには長い棒のような物が置かれているのが見えた。
「主人、あれは何?」
「あれはですね、ウチに商品を納品してるローエン商業組合の奴が持って来た物なんですよ。確かロマンスだとか、ロレンスだとか
言ってたかな? それで『俺の連れが珍しい物を見つけたんで、コッチで査定してくれないか』って言われて。その連れってのが
狼の耳と尻尾をもった亜人でね、リンゴを食べながら『主様の持つ貨幣とは替えられやせん、ここは食べ物と交換でどうじゃ』って
取引を持ちかけられたんです。それで持ってたリンゴと香辛料で交換したんですが、どうにも使い道が無いもんでね。こうやって、
置きっぱなしになってるって訳です」
面倒臭そうに主人が説明しながらも、セラスは目を逸らさず動かない。それに、両手がブルブルと震えている。カウンターに
両手を叩きつけると、大声で叫んだ。
「店員さん、アレっていくらですか? 私に売ってくれませんか!」
「あれをですか? まぁ、別に良いですけど。値段は、先ほど余った新金貨で十分です」
「マスター財布、財布出してください! 私あれ欲しいです、買ってください!!」
「ちょっと落ち着きなさいよセラス、買ってあげるから揺するの止めて!」
両肩を掴まれて激しく揺すられながら、ルイズは財布を取り出す。それを奪い取ると、セラスは中身をカウンターにぶちまけた。
そしてカウンターを飛び越えると、長く重い商品を持ち上げる。そのまま横に置いてある箱も掴み取ると、もう一度飛び越えて
ルイズの元に戻った。その素早い動きに、主人は呆気に取られた顔で突っ立ったままだ。
「まさか異世界で手にするだなんて、思ってもいませんでしたよ。久しぶり、ハルコンネン!」
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