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ルイズは夢を見ていた。
故郷、ラ・ヴァリエールにある屋敷……母親に叱られた幼いルイズは、泣きながら自分の『秘密の場所』中庭の池に向かう。
小船の中に忍び込み、毛布にくるまる。できのよい姉たちと比べられ、よく泣いていた幼い頃のルイズは、そのたびにこの場所にいくのだった。
(わたし……夢を見ているのだわ)
夢の中でぼんやりとルイズは思う。それでも、なんだか幼い頃の秘密の隠れ家は懐かしかった。
ふと、誰かの声が聞こえた気がして、幼いルイズ顔を上げる。
「泣いているのか……?」
中庭の島にかかった霧の中から、ゆらり、とマントをはおった男が現れた。
褐色の肌。頭に巻いた白い布。筋骨逞しい肉体。そして――底なく深い悲しみに満ちた眼差し。
(わたしは――この男の人を知っている……誰――誰なの?)
そっと差し出される男の手。ルイズはびくんと震えた。大きく力強い、武器を握る手であった。ルイズは恐怖を感じる。
男は、それに気づいたのか、ゆっくりと手をおろす。
「すまない……私は――」
男が何かを言いかけた時、一陣の風が吹いた。
ごぉおおおおぉおおお……
風が、男のマントを翻らせ、男の右肩があらわになる。
「――――っ……!」
そこにあったもの……いや、「なかったもの」を見て、ルイズは声にならない悲鳴を上げる。
男の右肩は、そこだけぽっかりと何もなかった。まるで何かおぞましいものが出て行ったように。何か邪悪なものが、そこから生まれでたように。
男が背を向けて歩き出す。
「ま、待って! お願い、待ってよ!!」
ルイズは男を追って駆け出す。次の瞬間――
「――――! こ、ここはどこ?」
唐突に、ルイズは炎の荒れ狂う町の中に立っていた。建物を焼き尽くす劫火と、おびただしい人々の死体――。
(戦争……?)
混乱するルイズの耳に、さっきの右肩のない男の叫び声が聞こえてくる。
「ラーマァ! ラーマァア!! アアアアアアアアッ!!!」
背中に何本も矢を突き立てられた男は、少年の亡骸を手に、血の涙を流しながら狂ったように叫び声をあげていた。
燃える町にルイズは立ち尽くす。
おびただしい死体の地獄、そのさなかで、少年を抱いて叫び声をあげる、右肩のない男。
そして、空を飛んでいく、圧倒的なまでに巨大で邪悪な白い幻獣――
(あれは、誰だったのかしら……)
ベッドでルイズが目を覚ましたとき、涙が頬を伝っていた。
しばらくぼんやりと天井を見つめていたが、ルイズはなぜかこみ上げてくる嗚咽を抑え切れなくなり、布団に顔を埋め、泣いた。
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