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「伝説を呼ぶ使い魔-07b」(2009/04/05 (日) 07:20:36) の最新版変更点
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#navi(伝説を呼ぶ使い魔)
夜、シエスタたちのいる台所にてしんのすけ皿洗い中。
「皿洗いいっちょあがりー!!」
「お、ごくろーさん。じゃあそっちに運んどいてくれ…。」
ガッシャーーーン!!!
「・・・・・・。」
「・・・・・・あー。ま、こういう日もあるさ!ドン小西!だゾ。」
ゴン!!
「それを言うなら…ドンマイだぜ…。坊主。」
マルトーのおやっさんの愛の拳もまた痛かった。
「ああ!大丈夫ですかシンちゃん!!」
シエスタがかけよる。見たら、人差し指を少し切っている。
「あ、やっちったゾ。」
「もう…。危ないですよ…。」
その次の瞬間だ。シエスタが傷ついた指を咥えた。
「おお!?あ…そんな…!」
シエスタ自身は特に変な意識はなかっただろうがしんのすけは年頃の少年なのだ。
医療行為とはいえ、過敏に反応してしまう。すでにしんのすけは万年思春期なのだ。
「お…あ…あっあぁ~~んシエちゃんったら、もう。ダメ、ああ、ダッメェ~~ン!!」
しんのすけがクネクネしながらシエスタに指を咥えられたままもだえる。
彼はとても純情な少年なのだ。おまけに敏感だ。
「おお…シエちゃんテクニシャン…。もうオラおよめいけない…。シエちゃん、責任とってもらってくれない?」
「えーっと…私女の子だからおよめさんはいらないです…。」
とまあ、そんな事件も乗り越えて就寝時間。
「じゃ、オラルイズちゃんに心配かけてるかもしれないから。じゃ、そういうことで~。」
「おやすみなさい。シンちゃん。」
シエスタと別れ、ルイズとシロの待つ部屋に戻るしんのすけ。
空にはすでに二つの月が昇っている。今日は晴れていてまたたくような星が見下ろしている。
「やっぱり月が二つなんて落ち着かないゾ全然…。」
「あら?ここにいたのね?使い魔さん。」
ふと、疲れたように呟いたしんのすけに向けて、どこか妖艶さを纏う声が話しかけてきた。
その時、しんのすけの耳に何かが聞こえてくる…。
どこかの学校のグラウンドで野球の音が聞こえる。
「さあ、試合はいよいよ最終回、後攻、バスターズの攻撃。
実況は私、平賀才人、解説は浪人生 四郎、スーザン小雪でお送りいたします。」
「あの~。ボクグラビア買った帰りに散歩してただけなんだけど…。なんで草野球の解説を…。」
「そーよー。なんでよりによって私たち~?今後確実に出番ないからって~。店番任せっぱなしだからそろそろ返してくれない?」
「黙って!後でバイト料払いますから!さて得点は現在4-5。ツーアウト、ランナー満塁。
この打席でおそらく勝敗は決まるでしょう。バッターは7番、セカンド駒田。
この打席で勝敗は決まると思いますがどうでしょう?」
「いや…。正直僕らはどうでもいいよ…。」
「ていうか、あの子なんか言ってるわよ?なんか『私駒田じゃない』ってこっちに向かって叫んでるみたいだけど…。」
「さあ、ピッチャーが今モーションに入った!」
「「無視かよ。」」
部屋でルイズが胸騒ぎを覚える。
「おかしいわね…。シンノスケやけに帰りが遅いじゃない…。」
ルイズは椅子の上でしばらくうずうずしていたが、やがて我慢の限界が来たようだ。
「シロ、ちょっと部屋の番頼んだわよ。アンタの飼い主探してくるから。」
「アン!アン!」
夜空に輝く2つの月が二人を照らす。
しんのすけは自分の心臓が早鐘を打っているのに気が付いていた。
「お、おお…。」
「ようやく二人っきりになれたわね。少々お時間頂けませんこと?くりくり頭のすてきなムッシュー?」
目の前に現れたのは間違いなくしんのすけの好みに入る大人な美人だった。
「さあ、ピッチャー第一球!投げました!!」
スパァアン!ど真ん中見送り!ストライク!!
「うっわ~速ッ!」
「あんなの打てるとは思えないわよ~?」
「ふ、二人っきり?二人っきりってオラに言ってるの?」
「そうよ。あなたに言ってるの。あ・な・た。」
燃えるような赤髪に褐色の肌の女性。しんのすけの心を鷲掴みにする美貌。
女性にしては背は高いほうだろうか。スカートからスラリと伸びた足が見える。
ウエストもくびれていてモデルのような体型だ。
そして…。しんのすけの大好きな…大好きな巨乳!!
「続いてピッチャー第二球!投げたッ!!」
スパァアンッ!!空振り!ストライクツー!!」
「いくらなんでも…。」
「荷が重過ぎるわよね…。」
「こ、こ、この使い魔のオラに何の御用でしょうか!?」
「用?ウフフ。ちょっとだけ付き合ってくれるだけでいいのよ。ちょっと貴方に興味がわいたから。
私は強い人と、可愛い子がとっても大好きだから。だから、」
しんのすけの胸板をつつく。
「おお…。」
「わ・た・し・と・あ・そ・び・ま・しょ?」
そしてなめらかに人差し指で撫で回す。そして、
「・・・フウッ。」
唇をすぼめ、耳に息を吹きかけた。
「さあ、ラスト一球!!投げたァーーーッ!!」
スッパァアアンッ!!空振り!!ストライク!バッターアウト!!ゲームセット!!
「試合終了ーーーー!!!バスターズ敗れるーーーーーーッ!!
最後のチャンスを活かせませんでした!駒田、崩れ落ちるーーーー!!」
「僕ら何のために呼ばれたんだ…。」
「だからあの子駒田じゃないって言ってるわよ。」
「シュ。」
「シュ?」
しんのすけの顔が真っ赤になって、口がひょっとこのようになっている。
そう。しんのすけは最大級に興奮するといつもこうだ。まるで暴走機関車のごとく熱暴走を起こしてしまう。
「シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ!!
ポッポーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」
野原しんのすけ。心のストライクど真ん中三振を取られた瞬間だった。
「す、すごいテンションね…。」
我に返ったしんのすけは彼女が気おされているのに気づく。
「お、お姉さん!!お名前は!?」
「私は、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。キュルケでいいわ。
一年前にゲルマニアから留学してきた身よ。ちなみに今、18歳。遅めの入学?でもこの若さでトライアングル。」
「オ、オラは野原しんのすけ!5歳!最近気になって来たのはこの間庭にまいたユウガオの種が芽を出したかどうか!!
みんなはこのオラをしんちゃんと呼ぶからキュルケちゃんもフレンドリーにしんちゃんと呼んでほしいゾ。」
「はーい。シンちゃん♪よろしくゥ!」
お互いフレンドリーな二人はあっさりと仲良くなれた。
「で、オラに何の御用ですか?まさかこの満点の星空の下で天体観測という名のデートのおさそいですか!?」
「あら、風流。なかなかロマンチストなのね。詩とか得意だったりする?」
「得意も何もこれで何人の女性の目を引き付けてきたことか~。で、オラといっしょに歩いていただけますか?」
しんのすけが紳士ぶった身のこなしでキュルケに手を差し出す。
「ええ。よろしくてよ。ぜひ貴方とは話がしたかったところですわ。」
今日は快晴、朝から晩まで雲ひとつない天気。
星空の元でのデートをするには絶好の日だった。
「シンちゃんは星には詳しいのかしら?」
「いいえ全然。こっちの星座は一つも見たこともありませんです。」
「何?そんな遠くから来たの?南半球から呼ばれたの?まあいいわ。
例えばあの一等星が三つ並んでるのは風韻竜座ね。」
「フーイン流?どこの流派?」
「そうじゃなくて風韻竜。ずっと昔に絶滅したと言われている伝説の竜のことよ。
竜ながら人と同じような知能を持ち、先住魔法を使い、人間に化けられると伝えられてるわ。
無論、絶滅した今は実際にそんな力があったのかはわからないけどね。」
「じゃああの赤っぽい星は?さそり座みたいな。」
「サラマンダー座ね。あの赤い星は尻尾の炎を表してるそうよ。私の使い魔のフレイムもサラマンダーよ。
今度見せてあげるわ。あれはオーク座ね。ジャイアントモール座は先月で見えなくなったんだっけ。」
「おおー!詳しいですな。その道のプロ?この道進んで13年?」
「あら。別にプロってほど詳しくはないわ。」
そう言ってキュルケは髪をかきあげる。その一つ一つの動作にしんのすけは釘づけだ。
しんのすけは憧れの目線を保ちながら次の質問を行う。
「じゃ、じゃああれは?なんか見たことあるけど。オリオン座?ヘラクレス座だっけ?」
キュルケはクスクス笑ってその質問の答えに答える。
「いいえ。あれはイーヴァルディ座よ。」
「威張るディティー?」
「イーヴァルディよ。知らない?平民ならみんな知ってると思ってたけど。」
平民ならみんな知っていると言われてもそもそもしんのすけはこの世界の住人ではない。
素直に説明を聞くことにする。
「イーヴァルディって言うのは『イーヴァルディの勇者』という物語の主人公の名前よ。
始祖ブリミルのご加護を受けた勇者イーヴァルディの事よ。仲間とともに力を合わせ、
目の前に立ちはだかる龍や悪魔、亜人や怪物など様々な敵を倒すって言うハルケギニアで最もポピュラーな
英雄譚なんだけど…。ホントに聞いたことない?」
「全然知らないゾ。オラこっちの事は何一つ知らないから。」
キュルケはしんのすけが即答したことに一瞬眉をひそめるが、気を取り直す。
「でも主人公が平民だから大抵の貴族にはお笑い種の話よ。私は別にこんなのがあってもいいと思うけど。
でもそのかわり平民たちにとってはイーヴァルディはヒーローなのよ。また、原典が存在しないし、地方で尾ひれ背びれがついて
伝わったからいろんな種類の物語がある。ノンフィクションの可能性もあって、今も研究を続けてるらしいわ。」
しんのすけは話の内容は半分くらいしかわからなかったが『ヒーロー』と言うワードに反応する。
「そのイボビタンDの話は今日始めて聞いたけど、オラの元いたところではアクション仮面が有名だよ。」
「アクション仮面?聞いたことないわ。どんな話なの?」
「悪の秘密結社たちに立ち向かう正義のヒーローのことだゾ!町の人たちを襲ったり、建物をこわしたり、
ミミ子ちゃんをさらったりする悪者たちと戦う史上最強の正義の味方だゾ!すっごく強くて、現にブラック・メケメケ団も雀の涙もみーんな
アクション仮面にやられて壊滅したんだゾ。オラのいた所ではアクション仮面を知らないなんて考えられなかったんだけど…。」
「うん。私のほうもそんなヒーローは知らないわ。今の今まで聞いたこともなかった。」
「たとえどんなピンチに陥っても最終的には絶対に正義が勝つ!というのがアクション仮面の持論なんだゾ。
現に今までオラが困った時どんなにアクション仮面に助けてもらったことか…。
ほら、こんな感じで必殺技を出すんだよ。」
しんのすけは言うが速くいつものモーションを見せようとする。
いつもながらアクション仮面の話をするときのしんのすけは輝いていた。
「『くらえーアクションビーム!!ビビビビビビ!!!!』『うわーやられたー!ドッカーーーン!!!』
『やったわ!アクション仮面!アクション仮面はやっぱり無敵のヒーローね!』『うむ!正義は勝つ!ワッハッハッハッハ!!!』
こんな感じのヒーローなんだゾ!!」
「うーん。よくわからないヒーローね。」
今やすっかり距離が縮まったと感じたキュルケ。
そろそろ当初の目的を果たそう。そうして話をもちかける。
「ねえ、シンちゃん。相談なんだけど、私の下で働かない?
貴方みたいに可愛くてメイジとも渡り合えるほど強い部下がいてくれたら嬉しいしとても心強いわ。
悪いふうにはしないわ。どう?私の部屋で住み込みの仕事。三食休憩有りで給料は週5エキュー出すわ。」
しんのすけは今の話の内容を考える。
キュルケの下で働く?住み込みで?つまりキュルケと四六時中いれて、しかもルイズよりも優遇してくれるそうだ。
5エキューが何なのかはわからないとかそんな細かいことは完全に忘れ、0.11秒で答えをだす。
「ほい!ぜひやらせていただきますです!!…あーでもオラルイズちゃんともうけーやくしちゃってるんだよなー。
コレどうしよう?」
そう、しんのすけが左手のルーンを見てつぶやく。
そうだ。すでに使い魔としての契約は果たされている。もうすでにしんのすけをどうこうする権利はルイズにあるはずだ。
…にもかかわらずキュルケは言う。
「あら。それがどうかしたの?そんなの私は別に気にしないからいいわ。そんなルーンなんかの束縛で
ツェルプストーの女を黙らせるなんてことは絶対に出来ないわ。ねえ?やってみる価値はあるはず…。」
「そうはさせるかァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
十一時の方向よりヘッドバット!狙うはしんのすけ!みごとに命中!!
「うおお…。ジャンプ力とか飛距離とかすご過ぎだゾ…。ていうかおもいっきり低空飛行してたように見えたゾ…。」
「じゃかしい!!ちょっとツェルプストー!!アンタ何私の使い魔をたぶらかしてるのよ!!」
ルイズが鬼神のごとき形相でしんのすけをにらんだ後、キュルケに怒鳴りつける。
「あらあら。ちゃんとこの子のことを引き付けておかないからこういうことになるんじゃなくて?ヴァリエール。
最もそんな貧相な体じゃ目もくれやしなかったみたいだけどもね。」
「なっ…!!」
ルイズの顔に赤みが増す。キュルケと顔をつき合わせたらいつもこうだ。
しかし無理やり冷静さを取り戻そして悪口を言い返そうとする。ああ、聞こえるようだ。あのテーマが。
「フン!アンタみたいに邪魔な物をつけなかっただけよ!!そんなに凹凸あったら
暑っ苦しいし、せまいところですぐつっかえちゃうんじゃなくって?そんな無駄乳なくてせいせいするわ!」
「あら、『微熱』の私にとってはあついなんて最高のほめ言葉だわ。まさに名は体を現すって
感じよね。『ゼロのルイズ』?」
ピクリ、とルイズのこめかみが動く。完全に頭に血が上っている。まさにキュルケ無双ってやつだ。
ルイズがかんしゃく起こすようにキュルケに怒鳴りつける。
「『ゼロ』がどうとか関係ないわ!それより、シンノスケを雇うですって?アンタたちは先祖代々私たちから何もかも
奪いとって!シンノスケは私の使い魔なの!手を出さないでよ!!」
しかし、キュルケはどこ吹く風だ。しんのすけを近くに引きよせ、言い返す。
「奪いとる、ね。たしかにほしい物は何が何でも自分の力で手に入れるって言うのが私のモットーよ。
でも人は本人が来たいって言うからきたんじゃないのよ。現にシンちゃんだって自分の意思で受け入れようと
してたわよ。」
「え…。そんな、冗談じゃないわよ…。だって…。」
完全にうろたえるルイズ。だがキュルケは追い討ちをかけるようにしんのすけをおもいっきり抱きしめる。
「シンちゃんもアンタみたいなへっぽこ貧乳メイジより、色々と豊かな私のほうを選んだのよ。
信じられない?そうね。本人の口から言って聞かせたほうが信じるわよね。
さあ、シンちゃん。言ってあげなさいよ。あなたより私の方がいいって…。シンちゃん?」
抱きしめたしんのすけの返事がない。ふと気になって胸のしんのすけを見る。
しかし抱きしめられたことによってモロにキュルケの巨乳にはさまれたしんのすけは…。
これまでに見せたことがないほど神々しく、安らかな笑顔を見せていた。しんのすけは鼻血を出しながらこう言った。
「オラ…。たとえオラがカスカベに帰れないまま…。この世界で死んでしまったとしても…。もう悔いはないゾ…。ウフフフ…。」
そのまま、しんのすけはやすらかに首を落とし、動かなかった。
ピクリとも動かなかった。
「この子…!死んでる…!」
「ええ!?」
「…みたいに動かないわ…。なんて安らかな顔して気絶してるの…。死に顔と勘違いしてしまいそうだわ…。」
「あら!?」
とりあえずずっこけるルイズ。
キュルケはなんか白けてしまったような顔でしんのすけをルイズに返す。
「なんか、返事はきけそうにないわね…。今日のところは返しておくわ。ま、引き止めたければせいぜい頑張りなさい。」
そのまま、キュルケは去っていった。
所変わってルイズの部屋。
「こぉのエロ犬!!とっとと起きろーーーーーーーーーッ!!」
ゴァン!!と音を立てて拳骨をおみまいするルイズ。
しんのすけはそのままあっさり復活した。
「オラの…オラの顔にやわらかいのが…ポヨっと当たって…もうなんか切ないような弾力…。」
「もう一回きつけしてほしい?」
おかげで寝ていたシロも完全に起きてしまった。
しんのすけは状況が読み込めないようにルイズに聞く。
「あれ?キュルケちゃんは?」
「もう帰ったわよ。それよりどういうことなの!?ツェルプストーの奴にたぶらかされるなんて!
男って奴はどうしてそうなのよ!!アンタ私に対する恩とかないの!?」
しんのすけは全然わからないようにシロのほうを向く。
「シロ、なんかわかるか?」
「ワウー??」
「本気で考えてんじゃないわよ!!アンタ、あの、色狂いの、イヤミなツェルプストーなんかに
骨抜きにされたりして…。この、エロ犬!」
しかししんのすけがルイズのおなじみの悪口をいわれたところで帰ってくる答えはひとつのみ。
「犬じゃないぞオラ野原しんのすけだゾ。犬はシロだゾ?」
「アン!!」
明らかにこっちを『どうかしてるんじゃないのこの人?』って感じの目で見る。
ルイズはとうとう疲れきったようにベッドに座り込む。
そしてしんのすけに背を向けてブツブツ文句を言い始めた。
「フン…。平民のガキンチョのくせにツェルプストーなんかの色仕掛けに引っかかったりしてさ、
信じらんないわよ。バカじゃないのアンタ…。」
「ほい!よく言われるゾ!だって、男の子だもん♪」
しかししんのすけに説教などして効果などまるでない。これなら魔法が使えるようになるほうがよっぽど確率が高い。
「アンタもやっぱり…小さいのはダメだって思ってんの?アンタもやっぱりおっぱいは大きいほうが…。」
こう聞かれてどこぞの青白パーカーとかだったら実は巨乳好きでも、ルイズにはハッキリ言わない。
だが思い出せ。今の使い魔は野原しんのすけ。巨乳のために人生をかけたギャンブルだってやってのける男だ。
「ハイ!その通り!巨乳がいいに決まってます!!」
あっさりと。本当に迷わず。
ルイズが言い終わらないうちにしんのすけは即答してみせた。
「ギーシュくんたちはああは言うけどどうしてもオラにはぺったんこのよさはわからないゾ!
ひまだって大きければもっとたくさん食事にありつけたはずだって愚痴をこぼしてたくらいだゾ!
固さっていってもそれは高校生視点の話で、オラみたいなうら若き5歳児にとっては
固さとか度外視が基本だし、貧乳なんてそのへんにありふれてるし、やっぱりめったにお目にかかれない巨乳のほうが…。」
しんのすけはそこまで言ってようやく自分の身の危険に気が付いた。
ヤバイ。このままだと殺される。
恐る恐るしんのすけは力説してるあいだにつぶっていた瞼をあけてルイズを見る。
「そんなにあっちが良ければ行っちゃえばいいじゃない…。」
しかし、ルイズは力なくそう行っただけで襲ってこなかった。
「あ、あれ?ルイズちゃん?」
しんのすけは持ち前の度胸を活かし、そろりとルイズに近づく。だがキレてもおかしくないと予想してたルイズ本人は…。
「…私だって、私だって好きで魔法が使えなくて、ヒグッ、好きで胸がない訳じゃ、…エグッ、ない、もん…。」
ルイズは泣いていた。目にいっぱい涙をため、こらえようとしても
涙をおさえることは出来なかった。
「あ、えっと、その…。ルイズちゃん?」
これにはしんのすけも慌てた。何時も電気オーブンみたいにすぐカッとなって怒る短気なみさえのような
タイプだと思っていたしんのすけは意表をつかれていた。
それはそうだ。目の前にいるのはみさえではなくルイズなのだ。母親の持つ強さなど持ってなかったのだ。
「私だって、グズッ、みんなにゼロって言われるのが、悔しくて、いっつも努力したし!
胸だって年頃になったらちい姉さまみたいに大きくなるって、エグッ、思ってたのに、
なんにも報われない!なんでよ!どうして私には何もないの!?
にっくきツェルプストーは完璧なプロポーションと、グスッ、魔法の才に恵まれたのに、
その何倍も努力した私は何もないの!?…ふえ、エグッ!」
しんのすけは今、初めてルイズの弱さを知った。
可憐な見かけとは裏腹に強気な子だと思っていたけど、実はずっと我慢してきたのだ。
見せ掛けの強さ。虚勢。強がり。
だがしんのすけは目の前で可愛い女の子が泣いていてほっておくような男じゃない。
考えるより先にシロにアイコンタクトをして行動に移る。
まずシロに野原しんのすけ隊員メットをかぶせ、ズボンとパンツを脱ぐ。
次にポケットの中に入れておいたビー玉二つとセロテープを取り出し、左右の尻に貼る。
そして逆立ちして開脚。最後に尻はルイズの方向にむけ、それを胸と見立てるようにシロを二本足で立たせて首を下半身に密着。
「もし、そこのお嬢さん。」
「…なによ。」
実に奇妙な格好の犬的な人がこちらを向いていた。
「ワシはおっぱい魔人!そんなにおっぱいがほしければワシがおまえのおっぱいになってやろう!!」
バシッ!バシッ!バシッ!!
一通り終えたルイズは制服のままベッドに横たわり、後には尻に大きなダメージを負い悶絶しているしんのすけと
「やめとけばよかったのに…。」と言わんばかりにしんのすけをみるシロだけだった。
じゃ、そーゆーことでー。
#navi(伝説を呼ぶ使い魔)
#navi(伝説を呼ぶ使い魔)
夜、シエスタたちのいる台所にてしんのすけ皿洗い中。
「皿洗いいっちょあがりー!!」
「お、ごくろーさん。じゃあそっちに運んどいてくれ…。」
ガッシャーーーン!!!
「・・・・・・。」
「・・・・・・あー。ま、こういう日もあるさ!ドン小西!だゾ。」
ゴン!!
「それを言うなら…ドンマイだぜ…。坊主。」
マルトーのおやっさんの愛の拳もまた痛かった。
「ああ!大丈夫ですかシンちゃん!!」
シエスタがかけよる。見たら、人差し指を少し切っている。
「あ、やっちったゾ。」
「もう…。危ないですよ…。」
その次の瞬間だ。シエスタが傷ついた指を咥えた。
「おお!?あ…そんな…!」
シエスタ自身は特に変な意識はなかっただろうがしんのすけは年頃の少年なのだ。
医療行為とはいえ、過敏に反応してしまう。すでにしんのすけは万年思春期なのだ。
「お…あ…あっあぁ~~んシエちゃんったら、もう。ダメ、ああ、ダッメェ~~ン!!」
しんのすけがクネクネしながらシエスタに指を咥えられたままもだえる。
彼はとても純情な少年なのだ。おまけに敏感だ。
「おお…シエちゃんテクニシャン…。もうオラおよめいけない…。シエちゃん、責任とってもらってくれない?」
「えーっと…私女の子だからおよめさんはいらないです…。」
とまあ、そんな事件も乗り越えて就寝時間。
「じゃ、オラルイズちゃんに心配かけてるかもしれないから。じゃ、そういうことで~。」
「おやすみなさい。シンちゃん。」
シエスタと別れ、ルイズとシロの待つ部屋に戻るしんのすけ。
空にはすでに二つの月が昇っている。今日は晴れていてまたたくような星が見下ろしている。
「やっぱり月が二つなんて落ち着かないゾ全然…。」
「あら?ここにいたのね?使い魔さん。」
ふと、疲れたように呟いたしんのすけに向けて、どこか妖艶さを纏う声が話しかけてきた。
その時、しんのすけの耳に何かが聞こえてくる…。
どこかの学校のグラウンドで野球の音が聞こえる。
「さあ、試合はいよいよ最終回、後攻、バスターズの攻撃。
実況は私、平賀才人、解説は浪人生 四郎、スーザン小雪でお送りいたします。」
「あの~。ボクグラビア買った帰りに散歩してただけなんだけど…。なんで草野球の解説を…。」
「そーよー。なんでよりによって私たち~?今後確実に出番ないからって~。店番任せっぱなしだからそろそろ返してくれない?」
「黙って!後でバイト料払いますから!さて得点は現在4-5。ツーアウト、ランナー満塁。
この打席でおそらく勝敗は決まるでしょう。バッターは7番、セカンド駒田。
この打席で勝敗は決まると思いますがどうでしょう?」
「いや…。正直僕らはどうでもいいよ…。」
「ていうか、あの子なんか言ってるわよ?なんか『私駒田じゃない』ってこっちに向かって叫んでるみたいだけど…。」
「さあ、ピッチャーが今モーションに入った!」
「「無視かよ。」」
部屋でルイズが胸騒ぎを覚える。
「おかしいわね…。シンノスケやけに帰りが遅いじゃない…。」
ルイズは椅子の上でしばらくうずうずしていたが、やがて我慢の限界が来たようだ。
「シロ、ちょっと部屋の番頼んだわよ。アンタの飼い主探してくるから。」
「アン!アン!」
夜空に輝く2つの月が二人を照らす。
しんのすけは自分の心臓が早鐘を打っているのに気が付いていた。
「お、おお…。」
「ようやく二人っきりになれたわね。少々お時間頂けませんこと?くりくり頭のすてきなムッシュー?」
目の前に現れたのは間違いなくしんのすけの好みに入る大人な美人だった。
「さあ、ピッチャー第一球!投げました!!」
スパァアン!ど真ん中見送り!ストライク!!
「うっわ~速ッ!」
「あんなの打てるとは思えないわよ~?」
「ふ、二人っきり?二人っきりってオラに言ってるの?」
「そうよ。あなたに言ってるの。あ・な・た。」
燃えるような赤髪に褐色の肌の女性。しんのすけの心を鷲掴みにする美貌。
女性にしては背は高いほうだろうか。スカートからスラリと伸びた足が見える。
ウエストもくびれていてモデルのような体型だ。
そして…。しんのすけの大好きな…大好きな巨乳!!
「続いてピッチャー第二球!投げたッ!!」
スパァアンッ!!空振り!ストライクツー!!」
「いくらなんでも…。」
「荷が重過ぎるわよね…。」
「こ、こ、この使い魔のオラに何の御用でしょうか!?」
「用?ウフフ。ちょっとだけ付き合ってくれるだけでいいのよ。ちょっと貴方に興味がわいたから。
私は強い人と、可愛い子がとっても大好きだから。だから、」
しんのすけの胸板をつつく。
「おお…。」
「わ・た・し・と・あ・そ・び・ま・しょ?」
そしてなめらかに人差し指で撫で回す。そして、
「・・・フウッ。」
唇をすぼめ、耳に息を吹きかけた。
「さあ、ラスト一球!!投げたァーーーッ!!」
スッパァアアンッ!!空振り!!ストライク!バッターアウト!!ゲームセット!!
「試合終了ーーーー!!!バスターズ敗れるーーーーーーッ!!
最後のチャンスを活かせませんでした!駒田、崩れ落ちるーーーー!!」
「僕ら何のために呼ばれたんだ…。」
「だからあの子駒田じゃないって言ってるわよ。」
「シュ。」
「シュ?」
しんのすけの顔が真っ赤になって、口がひょっとこのようになっている。
そう。しんのすけは最大級に興奮するといつもこうだ。まるで暴走機関車のごとく熱暴走を起こしてしまう。
「シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ!!
ポッポーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」
野原しんのすけ。心のストライクど真ん中三振を取られた瞬間だった。
「す、すごいテンションね…。」
我に返ったしんのすけは彼女が気おされているのに気づく。
「お、お姉さん!!お名前は!?」
「私は、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。キュルケでいいわ。
一年前にゲルマニアから留学してきた身よ。ちなみに今、18歳。遅めの入学?でもこの若さでトライアングル。」
「オ、オラは野原しんのすけ!5歳!最近気になって来たのはこの間庭にまいたユウガオの種が芽を出したかどうか!!
みんなはこのオラをしんちゃんと呼ぶからキュルケちゃんもフレンドリーにしんちゃんと呼んでほしいゾ。」
「はーい。シンちゃん♪よろしくゥ!」
お互いフレンドリーな二人はあっさりと仲良くなれた。
「で、オラに何の御用ですか?まさかこの満点の星空の下で天体観測という名のデートのおさそいですか!?」
「あら、風流。なかなかロマンチストなのね。詩とか得意だったりする?」
「得意も何もこれで何人の女性の目を引き付けてきたことか~。で、オラといっしょに歩いていただけますか?」
しんのすけが紳士ぶった身のこなしでキュルケに手を差し出す。
「ええ。よろしくてよ。ぜひ貴方とは話がしたかったところですわ。」
今日は快晴、朝から晩まで雲ひとつない天気。
星空の元でのデートをするには絶好の日だった。
「シンちゃんは星には詳しいのかしら?」
「いいえ全然。こっちの星座は一つも見たこともありませんです。」
「何?そんな遠くから来たの?南半球から呼ばれたの?まあいいわ。
例えばあの一等星が三つ並んでるのは風韻竜座ね。」
「フーイン流?どこの流派?」
「そうじゃなくて風韻竜。ずっと昔に絶滅したと言われている伝説の竜のことよ。
竜ながら人と同じような知能を持ち、先住魔法を使い、人間に化けられると伝えられてるわ。
無論、絶滅した今は実際にそんな力があったのかはわからないけどね。」
「じゃああの赤っぽい星は?さそり座みたいな。」
「サラマンダー座ね。あの赤い星は尻尾の炎を表してるそうよ。私の使い魔のフレイムもサラマンダーよ。
今度見せてあげるわ。あれはオーク座ね。ジャイアントモール座は先月で見えなくなったんだっけ。」
「おおー!詳しいですな。その道のプロ?この道進んで13年?」
「あら。別にプロってほど詳しくはないわ。」
そう言ってキュルケは髪をかきあげる。その一つ一つの動作にしんのすけは釘づけだ。
しんのすけは憧れの目線を保ちながら次の質問を行う。
「じゃ、じゃああれは?なんか見たことあるけど。オリオン座?ヘラクレス座だっけ?」
キュルケはクスクス笑ってその質問の答えに答える。
「いいえ。あれはイーヴァルディ座よ。」
「威張るディティー?」
「イーヴァルディよ。知らない?平民ならみんな知ってると思ってたけど。」
平民ならみんな知っていると言われてもそもそもしんのすけはこの世界の住人ではない。
素直に説明を聞くことにする。
「イーヴァルディって言うのは『イーヴァルディの勇者』という物語の主人公の名前よ。
始祖ブリミルのご加護を受けた勇者イーヴァルディの事よ。仲間とともに力を合わせ、
目の前に立ちはだかる龍や悪魔、亜人や怪物など様々な敵を倒すって言うハルケギニアで最もポピュラーな
英雄譚なんだけど…。ホントに聞いたことない?」
「全然知らないゾ。オラこっちの事は何一つ知らないから。」
キュルケはしんのすけが即答したことに一瞬眉をひそめるが、気を取り直す。
「でも主人公が平民だから大抵の貴族にはお笑い種の話よ。私は別にこんなのがあってもいいと思うけど。
でもそのかわり平民たちにとってはイーヴァルディはヒーローなのよ。また、原典が存在しないし、地方で尾ひれ背びれがついて
伝わったからいろんな種類の物語がある。ノンフィクションの可能性もあって、今も研究を続けてるらしいわ。」
しんのすけは話の内容は半分くらいしかわからなかったが『ヒーロー』と言うワードに反応する。
「そのイボビタンDの話は今日始めて聞いたけど、オラの元いたところではアクション仮面が有名だよ。」
「アクション仮面?聞いたことないわ。どんな話なの?」
「悪の秘密結社たちに立ち向かう正義のヒーローのことだゾ!町の人たちを襲ったり、建物をこわしたり、
ミミ子ちゃんをさらったりする悪者たちと戦う史上最強の正義の味方だゾ!すっごく強くて、現にブラック・メケメケ団も雀の涙もみーんな
アクション仮面にやられて壊滅したんだゾ。オラのいた所ではアクション仮面を知らないなんて考えられなかったんだけど…。」
「うん。私のほうもそんなヒーローは知らないわ。今の今まで聞いたこともなかった。」
「たとえどんなピンチに陥っても最終的には絶対に正義が勝つ!というのがアクション仮面の持論なんだゾ。
現に今までオラが困った時どんなにアクション仮面に助けてもらったことか…。
ほら、こんな感じで必殺技を出すんだよ。」
しんのすけは言うが速くいつものモーションを見せようとする。
いつもながらアクション仮面の話をするときのしんのすけは輝いていた。
「『くらえーアクションビーム!!ビビビビビビ!!!!』『うわーやられたー!ドッカーーーン!!!』
『やったわ!アクション仮面!アクション仮面はやっぱり無敵のヒーローね!』『うむ!正義は勝つ!ワッハッハッハッハ!!!』
こんな感じのヒーローなんだゾ!!」
「うーん。よくわからないヒーローね。」
今やすっかり距離が縮まったと感じたキュルケ。
そろそろ当初の目的を果たそう。そうして話をもちかける。
「ねえ、シンちゃん。相談なんだけど、私の下で働かない?
貴方みたいに可愛くてメイジとも渡り合えるほど強い部下がいてくれたら嬉しいしとても心強いわ。
悪いふうにはしないわ。どう?私の部屋で住み込みの仕事。三食休憩有りで給料は週5エキュー出すわ。」
しんのすけは今の話の内容を考える。
キュルケの下で働く?住み込みで?つまりキュルケと四六時中いれて、しかもルイズよりも優遇してくれるそうだ。
5エキューが何なのかはわからないとかそんな細かいことは完全に忘れ、0.11秒で答えをだす。
「ほい!ぜひやらせていただきますです!!…あーでもオラルイズちゃんともうけーやくしちゃってるんだよなー。
コレどうしよう?」
そう、しんのすけが左手のルーンを見てつぶやく。
そうだ。すでに使い魔としての契約は果たされている。もうすでにしんのすけをどうこうする権利はルイズにあるはずだ。
…にもかかわらずキュルケは言う。
「あら。それがどうかしたの?そんなの私は別に気にしないからいいわ。そんなルーンなんかの束縛で
ツェルプストーの女を黙らせるなんてことは絶対に出来ないわ。ねえ?やってみる価値はあるはず…。」
「そうはさせるかァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
十一時の方向よりヘッドバット!狙うはしんのすけ!みごとに命中!!
「うおお…。ジャンプ力とか飛距離とかすご過ぎだゾ…。ていうかおもいっきり低空飛行してたように見えたゾ…。」
「じゃかしい!!ちょっとツェルプストー!!アンタ何私の使い魔をたぶらかしてるのよ!!」
ルイズが鬼神のごとき形相でしんのすけをにらんだ後、キュルケに怒鳴りつける。
「あらあら。ちゃんとこの子のことを引き付けておかないからこういうことになるんじゃなくて?ヴァリエール。
最もそんな貧相な体じゃ目もくれやしなかったみたいだけどもね。」
「なっ…!!」
ルイズの顔に赤みが増す。キュルケと顔をつき合わせたらいつもこうだ。
しかし無理やり冷静さを取り戻そして悪口を言い返そうとする。ああ、聞こえるようだ。あのテーマが。
「フン!アンタみたいに邪魔な物をつけなかっただけよ!!そんなに凹凸あったら
暑っ苦しいし、せまいところですぐつっかえちゃうんじゃなくって?そんな無駄乳なくてせいせいするわ!」
「あら、『微熱』の私にとってはあついなんて最高のほめ言葉だわ。まさに名は体を現すって
感じよね。『ゼロのルイズ』?」
ピクリ、とルイズのこめかみが動く。完全に頭に血が上っている。まさにキュルケ無双ってやつだ。
ルイズがかんしゃく起こすようにキュルケに怒鳴りつける。
「『ゼロ』がどうとか関係ないわ!それより、シンノスケを雇うですって?アンタたちは先祖代々私たちから何もかも
奪いとって!シンノスケは私の使い魔なの!手を出さないでよ!!」
しかし、キュルケはどこ吹く風だ。しんのすけを近くに引きよせ、言い返す。
「奪いとる、ね。たしかにほしい物は何が何でも自分の力で手に入れるって言うのが私のモットーよ。
でも人は本人が来たいって言うからきたんじゃないのよ。現にシンちゃんだって自分の意思で受け入れようと
してたわよ。」
「え…。そんな、冗談じゃないわよ…。だって…。」
完全にうろたえるルイズ。だがキュルケは追い討ちをかけるようにしんのすけをおもいっきり抱きしめる。
「シンちゃんもアンタみたいなへっぽこ貧乳メイジより、色々と豊かな私のほうを選んだのよ。
信じられない?そうね。本人の口から言って聞かせたほうが信じるわよね。
さあ、シンちゃん。言ってあげなさいよ。あなたより私の方がいいって…。シンちゃん?」
抱きしめたしんのすけの返事がない。ふと気になって胸のしんのすけを見る。
しかし抱きしめられたことによってモロにキュルケの巨乳にはさまれたしんのすけは…。
これまでに見せたことがないほど神々しく、安らかな笑顔を見せていた。しんのすけは鼻血を出しながらこう言った。
「オラ…。たとえオラがカスカベに帰れないまま…。この世界で死んでしまったとしても…。もう悔いはないゾ…。ウフフフ…。」
そのまま、しんのすけはやすらかに首を落とし、動かなかった。
ピクリとも動かなかった。
「この子…!死んでる…!」
「ええ!?」
「…みたいに動かないわ…。なんて安らかな顔して気絶してるの…。死に顔と勘違いしてしまいそうだわ…。」
「あら!?」
とりあえずずっこけるルイズ。
キュルケはなんか白けてしまったような顔でしんのすけをルイズに返す。
「なんか、返事はきけそうにないわね…。今日のところは返しておくわ。ま、引き止めたければせいぜい頑張りなさい。」
そのまま、キュルケは去っていった。
所変わってルイズの部屋。
「こぉのエロ犬!!とっとと起きろーーーーーーーーーッ!!」
ゴァン!!と音を立てて拳骨をおみまいするルイズ。
しんのすけはそのままあっさり復活した。
「オラの…オラの顔にやわらかいのが…ポヨっと当たって…もうなんか切ないような弾力…。」
「もう一回きつけしてほしい?」
おかげで寝ていたシロも完全に起きてしまった。
しんのすけは状況が読み込めないようにルイズに聞く。
「あれ?キュルケちゃんは?」
「もう帰ったわよ。それよりどういうことなの!?ツェルプストーの奴にたぶらかされるなんて!
男って奴はどうしてそうなのよ!!アンタ私に対する恩とかないの!?」
しんのすけは全然わからないようにシロのほうを向く。
「シロ、なんかわかるか?」
「ワウー??」
「本気で考えてんじゃないわよ!!アンタ、あの、色狂いの、イヤミなツェルプストーなんかに
骨抜きにされたりして…。この、エロ犬!」
しかししんのすけがルイズのおなじみの悪口をいわれたところで帰ってくる答えはひとつのみ。
「犬じゃないぞオラ野原しんのすけだゾ。犬はシロだゾ?」
「アン!!」
明らかにこっちを『どうかしてるんじゃないのこの人?』って感じの目で見る。
ルイズはとうとう疲れきったようにベッドに座り込む。
そしてしんのすけに背を向けてブツブツ文句を言い始めた。
「フン…。平民のガキンチョのくせにツェルプストーなんかの色仕掛けに引っかかったりしてさ、
信じらんないわよ。バカじゃないのアンタ…。」
「ほい!よく言われるゾ!だって、男の子だもん♪」
しかししんのすけに説教などして効果などまるでない。これなら魔法が使えるようになるほうがよっぽど確率が高い。
「アンタもやっぱり…小さいのはダメだって思ってんの?アンタもやっぱりおっぱいは大きいほうが…。」
こう聞かれてどこぞの青白パーカーとかだったら実は巨乳好きでも、ルイズにはハッキリ言わない。
だが思い出せ。今の使い魔は野原しんのすけ。巨乳のために人生をかけたギャンブルだってやってのける男だ。
「ハイ!その通り!巨乳がいいに決まってます!!」
あっさりと。本当に迷わず。
ルイズが言い終わらないうちにしんのすけは即答してみせた。
「ギーシュくんたちはああは言うけどどうしてもオラにはぺったんこのよさはわからないゾ!
ひまだって大きければもっとたくさん食事にありつけたはずだって愚痴をこぼしてたくらいだゾ!
固さっていってもそれは高校生視点の話で、オラみたいなうら若き5歳児にとっては
固さとか度外視が基本だし、貧乳なんてそのへんにありふれてるし、やっぱりめったにお目にかかれない巨乳のほうが…。」
しんのすけはそこまで言ってようやく自分の身の危険に気が付いた。
ヤバイ。このままだと殺される。
恐る恐るしんのすけは力説してるあいだにつぶっていた瞼をあけてルイズを見る。
「そんなにあっちが良ければ行っちゃえばいいじゃない…。」
しかし、ルイズは力なくそう行っただけで襲ってこなかった。
「あ、あれ?ルイズちゃん?」
しんのすけは持ち前の度胸を活かし、そろりとルイズに近づく。だがキレてもおかしくないと予想してたルイズ本人は…。
「…私だって、私だって好きで魔法が使えなくて、ヒグッ、好きで胸がない訳じゃ、…エグッ、ない、もん…。」
ルイズは泣いていた。目にいっぱい涙をため、こらえようとしても
涙をおさえることは出来なかった。
「あ、えっと、その…。ルイズちゃん?」
これにはしんのすけも慌てた。何時も電気オーブンみたいにすぐカッとなって怒る短気なみさえのような
タイプだと思っていたしんのすけは意表をつかれていた。
それはそうだ。目の前にいるのはみさえではなくルイズなのだ。母親の持つ強さなど持ってなかったのだ。
「私だって、グズッ、みんなにゼロって言われるのが、悔しくて、いっつも努力したし!
胸だって年頃になったらちい姉さまみたいに大きくなるって、エグッ、思ってたのに、
なんにも報われない!なんでよ!どうして私には何もないの!?
にっくきツェルプストーは完璧なプロポーションと、グスッ、魔法の才に恵まれたのに、
その何倍も努力した私は何もないの!?…ふえ、エグッ!」
しんのすけは今、初めてルイズの弱さを知った。
可憐な見かけとは裏腹に強気な子だと思っていたけど、実はずっと我慢してきたのだ。
見せ掛けの強さ。虚勢。強がり。
だがしんのすけは目の前で可愛い女の子が泣いていてほっておくような男じゃない。
考えるより先にシロにアイコンタクトをして行動に移る。
まずシロに野原しんのすけ隊員メットをかぶせ、ズボンとパンツを脱ぐ。
次にポケットの中に入れておいたビー玉二つとセロテープを取り出し、左右の尻に貼る。
そして逆立ちして開脚。最後に尻はルイズの方向にむけ、それを胸と見立てるようにシロを二本足で立たせて首を下半身に密着。
「もし、そこのお嬢さん。」
「…なによ。」
実に奇妙な格好の犬的な人がこちらを向いていた。
「ワシはおっぱい魔人!そんなにおっぱいがほしければワシがおまえのおっぱいになってやろう!!」
バシッ!バシッ!バシッ!!
一通り終えたルイズは制服のままベッドに横たわり、後には尻に大きなダメージを負い悶絶しているしんのすけと
「やめとけばよかったのに…。」と言わんばかりにしんのすけをみるシロだけだった。
じゃ、そーゆーことでー。
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#navi(伝説を呼ぶ使い魔)
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