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#navi(ゼロのアトリエ)
青い髪の少女。タバサが、本を読んでいる。
授業を終えた後、タバサにとっては貴重な一人の時間。
「タバサ、いる?」
ドアがノックされた。
「タバサ、おーい、タバサちゃーん?」
無視したら、ノックの音が3倍に増えた。
仕方がないので扉へと向かう。こんな事をするのは決まっている。
「ねえ、面白そうなもの見つけたんだけど。」
満面の笑顔を浮かべながら飛び込んできたのは予想通り、キュルケだった。
ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師9~
ヴィオラートが召喚されてもうすぐ一ヶ月。
ルイズはたまには話でもしようと探す事もあるのだが、使い魔としての仕事をこなした後は、どこかに出かけているのか姿が見えない。
「まったく、なんていうの、自由時間はきっちり取る使い魔ってのはどうなのよそこんとこ。」
少し憤りを感じながら広場を歩いていると、キュルケとタバサのコンビが顔を出した。
「ねえ、ヴァリエール。」
「何の用?」
「あなたの使い魔さんがどこにいるのか、わかる?」
「別に。やることやった後は、自由にさせてるもの。」
「あら。気にならないの?あたしちょっと心当たりがあるんだけど。」
「…知ってるの?」
「ええ、噂に聞いたのだけれど、何だか面白いことやってるって。」
「面白い事?」
「なんだか壁の外で土遊びをしてるみたいよ?」
学園を囲む壁の外では。
「それーっ、いけいけー!」
ヴィオラートが、地中から半分体を出したヴェルダンデにまたがって、土を掘り返していた。
ルイズたちは呆然と、掘り返された地面を疾走するヴィオラートonヴェルダンデをただ見つめる。
「…何してるの?」
「あ、ルイズちゃん。見て、いっぱいとれたよ!」
体中が土で汚れているが、気にする様子もない。
収穫の喜びが、汚れの不快感を上回ってるようだ。
「じゃじゃーん!錬金術専用菜園~!」
菜園。なるほど。錬金術専用菜園。
「あれは何?」
「まめだよ。」
なるほど、まめである。これでもかというくらいまめだ。
「あれは?」
「ぶどうだよ。」
なるほど、ぶどうである。ぶどうとしか言いようがない。
「じゃ、あれは?」
「さんごだよ。」
なるほど。畑から生えたももいろさんごが、これ以上ないほど雄雄しく屹立している。
(さんごって、畑に生えるものだったのね…)
ルイズの常識が、また一つ書き換えられた。
「手伝ってもらってたんだよねー。」
ヴェルダンデは誇らしげに鼻を振って、ルイズたちを睥睨する。
「へえ、すごいじゃない。畑からさんごが生えてくるなんて。これがあなたの…『錬金術』?」
興味を示したキュルケが、ヴィオラートに質問する。
「うん、錬金術で畑を作ると、普通じゃできないようなものができたりするんだよ!」
(え?錬金術じゃないと、畑からさんごは生えない?)
ルイズの常識が、元に戻る。
菜園の隅に視線を移すと、乱雑に積み上げてあるレンガが目に入った。
「で、あっちの隅のほうにあるレンガはなんなの?」
「ああ、あれはヨーコーロ用のレンガ。」
「ヨーコーロ?溶鉱炉を1から作ってるってわけ?」
「うんそうだよ。土とか、がらくたとか使って。ちょっと時間かかったけどね。」
信じられないものを見たといった風情でヴィオラートを見るキュルケ。
「あなた、何者?」
そう問いかけられたヴィオラートは自信満々にこう答える。
「えへへー、あたしはヴィオラート!錬金術師だよ。」
「錬金術師…へえ、なんか面白そうね。」
興味深げにレンガを触るキュルケ。
こつこつと音をさせ何かを試しているようだ。
タバサは食い入るように畑にそびえ立つさんごを見つめる。
しばらく誰も言葉を発せず、各人何かに興味を引かれていたその時。
「こ、困るねえ、一体何をしているんだ?」
なんだか、いかにも命じられてきましたといった感じのコルベールがおっとり刀で駆けつけた。
やはり、大人数で騒いだのはまずかっただろうか。
コルベールは地面を見渡し、しかるのちに正当なる問いを発する。
「これは何だね?」
「錬金術の、菜園です!」
「じゃあ、あのレンガは何かね?」
「ヨーコーロを作ろうかなー、って思って。」
「溶鉱炉?君が、ここで?」
コルベールは信じられないといった面持ちで、ヴィオラートの真意を探ろうとする。
「設計図はあるかね?」
促されたヴィオラートは、設計図を取り出すと、コルベールに手渡す。
「ふむ、ちょっと見せてもらえないかね?ふむ。」
手渡されたコルベールはしきりに感心して、設計図を指差しながら構造を確認する。
「ほー、これは…ゲルマニア式?いや、それよりも効率そのものは良くなっているようだな、ふむ。」
「あの、先生?」
「いや、これはこれは。」
「素晴らしい!」
「はい?」
「火の司るものは破壊の力ばかりではない!私は常々そう考え、その実践の方法を模索してきた。」
「は、はあ。」
「いや実は私も、溶鉱炉の設置は考えてはいたんだが、金がなくてね。」
「ええと…」
「いや、しかし原材料からほぼ全て手作りでここまでの施設を!錬金術師とは、本当に凄い存在なのだね!」
「そ、そう、ですね。はい、あはは…」
禿頭がゆだるような熱さで、伝えきれない感動を表すコルベール。
コルベールが、火の力とその民生における社会的有用性についての考察に熱弁をふるうこと小一時間。
燃料が切れてきたのか、話の方向がようやく現実レベルの話へと回帰する。
「…ものは相談なんだが、私が、学院長への根回しやら他の雑事をしておくからだね…」
コルベールは見せ付けるようにわざとらしく咳払いをすると、
「君の作る施設を、使わせてもらってもいいだろうかね?」
取引をもちかけた
「え、ええと。いいですよ、はい…」
「そうか!いやー、今日はいい日だ!長年の念願がこんな形でかなうとは!」
いやー感動した!としきりに呟きながら、コルベールは去っていった。
その様子をただじっと見ていたルイズは、ヴィオラートに視線を向けると、何かを決意するように語り始める。
「ねえ、ヴィオラート。」
「ん?」
「その錬金術って。私にも、魔法の使えないこの私にも…できるかな?」
「うん。勉強すれば、必ず答えてくれると思うよ。魔法は、必要ないから。」
「そう。それなら、ちょっと…一日一時間くらい。」
「やっても、いいかな。」
「あら。あなたがやるならあたしもやろうかしら?」
ルイズに対抗意識を燃やしたのか、キュルケも錬金術師に立候補する。
そして静かに手を上げるタバサ。
「いいかしら?ヴァリエール。あたしたちも参加して?」
「い、今私が拒否したらなんか、なんか。けちくさいじゃない。」
ちょっと不満げな顔をして、ルイズはヴィオラートに向き直る。
「いいよね、ヴィオラート?」
問いかけられたヴィオラートは、お日さまのような笑みを浮かべ、高らかに宣言した。
「よーし、じゃあ、皆で色々作ってみようか!」
ハルケギニアの錬金術師、その起源。
この瞬間は後の世にそう記される事になるが、彼女達は未だその事実の重みに気付いてはいなかった。
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