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第三話「Waiting For...」
――結論から言えば、ルイズが使い魔の召還に成功したことは、あまり評価されていない。
彼女を“ゼロ”と蔑み、見下し、鬱憤の捌け口にしていた少年少女たちは、
ギーシュとの戦いで使い魔の実力を見せ付けられ、過去に自分達の言ったことを思い出し、
教師たちにしてみれば、あのような恐るべき戦闘能力を持った使い魔を、
誰であろう、あのルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが召還した事で、
ある共通の懸念を抱いていたのだ。
自分たちは彼女の事をあまりにも軽んじ、蔑ろにしていたではないか。
そのルイズが今、『力』を手に入れた。
彼女の本質を知らぬ者にしてみれば、いつ激昂し、復讐の為に使い魔の力を振るうかもわからない。
召還するならするで、何の能力も持たない平民でも呼び出していれば良かったのに。
口にこそ出さないが、誰もがそう思っているのは事実であった。
一方で、ルイズの召還成功を我が事のように喜ぶ者もいた。
ツェルプストー家の令嬢、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーである。
キュルケにとってルイズとは出来の悪い――或いは魔法以外においては出来の良い――妹のような存在だ。
その妹が、ついに初めて魔法を成功させ、あまつさえギーシュをやっつけてのけたのだ!
しかもシエスタから、こっそり聞き出した話によれば……どうやら他の貴族も一人叩きのめしたのだとか。
『メイジを見るには使い魔を見よ』
この格言を用いるのならば、ルイズの実力は一目瞭然である。
そう、どういう理由かはわからないが、今まで表に出なかっただけでルイズには才能がある。
とてつもない魔法の才能があると、証明されたのだ。
これが嬉しくない筈がない。
「ちょっと、ツェルプストー! あんまり0号に近寄らないでよ!」
「んふふー……良いじゃない、べつに減るもんじゃないでしょ、ダーリンは?」
「そ、その……減りはしないですけど、0号さんは一人なので、独占はちょっと……」
だから今日の放課後も、こうしてルイズや0号、シエスタ達と共に中庭でお茶を楽しんでいる。
まあ、0号の寡黙な態度に心惹かれたという理由も多分にあるのだが、
何にしたって賑やかなのは良い事だ。ついついタバサも引っ張りこんでしまった。
「………………」
とはいえ、彼女は何時も通り本を読んでいるだけなのだけれど。
0号と相俟って、二人だけで放っておくといつまでも黙っていそうで怖い。
「ぜ、0号は、わたしの使い魔なの! それにあんたがいると、勉強に集中できないじゃない!」
「……まあ僕としては見目麗しい女性が増えるのは歓迎し痛い痛い痛いッ!モンモランシー、抓らないでッ!」
「ふんッ」
そう、変わったといえばもう一つ、ルイズの性格――精神性だ。
良い意味でも悪い意味でも傲慢だった彼女は、0号と出会って以来、少しずつ変わり始めている。
例えて言うならば……責任とでも呼ぶべきなのだろうか。
ありえないほど強大な『力』を手にし、そして0号が自らの意思でそれを振るえないと悟った彼女は、
恐らく、それだけならば暴走し、好き勝手にあの――奇妙な鎧の力を行使しただろう。
だが0号は、他の何よりも、そう言った『暴虐』を嫌い、憎悪していた。
そう言った二つの事情が相俟って、ルイズはまず『力』の使い方を学ぶことを決意する。
驚くべきは、この後。
彼女が師事を仰いだのが、誰であろう先日0号が叩きのめしたギーシュ・ド・グラモンだったのだ。
普段の軽薄な行動と相俟って、学院の誰もが忘却しているが彼はこれでも元帥の息子である。
教師を除けば、彼以上に軍事に関して詳しいものは学院に存在しない、と言っても過言ではあるまい。
0号という強大な力――兵力をどう扱えば良いのか。
問われたギーシュは、当初こそ0号に対する恐怖から渋々とルイズに教えを説いていたが、
やがて0号自身に害意がないこと、そしてルイズの意図を知ると共に打ち解け、自然に彼女たちと会話する機会が増えた。
これに我慢ならなかったのがモンモランシーである。
0号が決闘をする原因ともなったギーシュの浮気事件の後、何とか寄りを戻したばかりだというのに、
ルイズかキュルケかタバサか、もしくはシエスタとかいうメイドに手を出そうとしているのではないか。
もはや直接手段を用いるしかないと決意した彼女は、ついに『監視』という名目でお茶会――勉強会に乱入した。
未だツンツンとした態度は変わらないものの、それも時間の問題であろう。
「……しかし、この0号の鎧――いやガイバーだっけか。随分と奇妙な力ばかり持っているね」
「そうね。わたしも……初めて見た時は、信じられなかったもの」
「……ルイズ、あんまりギーシュに近寄らないで」
「それなら0号に引っ付いてるツェルプストーを何とかしてよ」
「あら、良いじゃない。恋愛は自由よ、ねぇダーリン?」
ぎゃいぎゃいと喚く外野を他所に、ルイズは熱心に帳面にペンを走らせる。
其処には彼女なりに考えた0号の力の使い方や、
0号から聞き出した――要領を得ない――鎧の力などが記されていた。
頭部の熱線。
口元の金属球が発する音。
腕の突起から転じる刃。
そして胸部から放たれる、恐るべき光。
今のところ0号が扱える力の全てが、これだ。
転じてルイズが手綱を握らなければならない力。
だが――――……別に其処まで気負う必要は、無いんじゃないだろうか。
わいわいと皆で騒いでいる姿を見ると、不意にそんな事も考えてしまう。
まあ、それは間違いでは無い。
より正確に言うならば、その必要が無くなった、という意味だが……。
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