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「悪魔も泣き出す使い魔-mission14」(2008/02/28 (木) 18:18:27) の最新版変更点
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~優しき右腕~
トリステインに向かえ
ジョゼフ王の使い魔召喚騒動から二日経ったその夜。
召喚された一人の青年を持て成すためのささやかな晩餐が、
ガリアの首都に位置する、ヴェルサルテイルの宮殿で開かれていた。
「いらぬのか?遠慮するでないぞ!」
テーブルには豪勢な料理が敷き詰められ、その上座に位置する席にいるジョゼフ王は、
向かいの席で、ガラの悪い格好で座っているネロへ、ニコニコしながら料理を勧めた。
ネロはそれに返事をすることなく、ふてぶてしい態度で、真っ直ぐとジョゼフを睨む。
ジョゼフ王の両サイドを固めていた、王の長女イザベラと、愛人であるモリエール婦人が、
それを見かねて交互にネロを咎めた。
「つつしめ!王の御膳であるぞ!」
「平民の分際で。まあ、何たる無礼な振る舞いですこと!」
その瞬間、ダンッ!と、テーブルに何かを叩き付ける音が、会場に響き渡った。
その音と振動に驚いて、「ひいっ」と声を合わせて短く悲鳴を上げるイザベラとモリエール。
ネロが両足を組んでテーブルの上に乗せたのだった。
ただそれだけだったのだが、イザベラとモリエールを黙らせるには充分なプレッシャーだった。
以後、二人がこの場で口を開くことは無かった。
ネロは召喚されてからこの二日間、宮殿の寝室で泥のように眠っていた。
ジョゼフの城に招待されから聞いた、
自分が使い魔として、別世界に召喚されたという説明を、
帰る方法が無いという事実を、真っ向から否定するために。
夢だと思いたかった。次に目を覚ませば、きっと元の見慣れた世界だ。自分の目覚めを待つ幼馴染に会える、と。
しかし何時まで経っても夢から覚めない。そうだ、夢なんだ。
二つの月が浮かぶこの世界も。魔法だの何だの訳の分からない事をのたまう目の前の連中も。この空腹感も。
この数日で起きた色んな出来事のせいで、疲れてしまった自分が見ている馬鹿馬鹿しい夢だ。
ルーンをその身に刻まず、使い魔とならなかったのが、ネロを頑なにそう思わせる原因なのかもしれない。
平和な日本に生まれた、どこぞの楽観主義な高校生と違って、ネロはとにかく、今この目に映る現実を直視したくなかった。
しかし、これが夢であると、ある程度自分を納得させたネロは、段々と心を落ち着かせてきた模様で、
半ば、自暴自棄の状態とも言えなくも無いが、ジョゼフの言葉も少しずつ耳に入るようになってきていた。
そして今、自分が何の為にここに呼ばれたのか、ネロはジョゼフに聞こうとしていた。
「それで、俺に頼みってのは何だよ」
ジョゼフから見れば、召喚した初日と比べて、今のネロは大分落ち着いた様子でいた。
ジヨゼフは、ネロの機嫌を何とか損ねさせないように、言葉を選びながら慎重に、且つ自分のペースを乱さない会話を試みた。
「うむ。本来ならば私の使い魔として契約してもらう筈なのだが・・・、そんな小さい器に収まる君では無かろう?」
「言いたい事は手短に話せ」
それからジョゼフは、ネロの要望に応えるよう、簡潔に意見をまとめて言った。
「我が国の大使として、隣国のトリステインへ調査にいって来て欲しい」
「・・・それで?」
ネロは、聞いたことが無い国の名前を出されても、反応しようが無い様子だったが、
ジョゼフは構わず話を続けた。
「最近あの国では、少々不穏な動きが見え隠れしてな。見たことも無い様な魔獣が徘徊しているとか・・・」
「それで?」
「本物の"悪魔"を見たとか、な。・・・今では色々と、妙な噂が絶えない国となっておるのだ」
ジョゼフの口から発せられたトリステインの惨状に、イザベラとモリエールの顔が引きつる。ありえない、と。
そんな話は、平民の噂程度にも耳に入ったことが無かったからであった。
しかし、そんなジョゼフの戯言に、ネロは何の疑いも無く、むしろそれが当たり前であるかのように返答してみせた。
「悪魔なんか、その辺の外でも歩けば、ゴロゴロ這いつくばってるだろう?見た事無いのかよ」
「ハハハ。君は私の知らない様な、広い世界を見てきているのだな。羨ましい限りだ!」
この青年はやはり、自分が手引きする"あの組織"が、
近頃から交信が途絶えた事に、何か関係しているのではないか。
そんな思惑を巡らせるジョゼフは、更に心を躍らせるが、昂る気持ちを押し殺す。
それからジョゼフが気がついた時には、ネロが自分から会話の続きを始めていた。
「世間知らずの王様に、悪魔の一匹でも捕まえて見せて来いってか?」
「そうまでして貰えると有難いが、その国を見て来てもらうだけで構わん。観光するのもよいだろう。
君が見たまま聞いたままの情報を、私に持って帰ってきて欲しい」
「それで?」
「それが済んだら君は自由だ。好きにしてよい」
ネロは、王の依頼を確認したと同時に、テーブルの上のパンを一つ手に取ってから、席を立った。
「行ってやるよ。・・・どうせ夢だしな」
ネロの了承を聞いて歓喜したジョゼフが、部屋から出て行くネロの背中を追うように叫んだ。
「そうか!行ってくれるか!?
では、ロマリアの客人が、明日の朝トリステインへ向かう。その者へ、君を連れて貰う様に頼んでおこう!」
扉が閉まり、夕食の会場に静けさが漂う。
それから暫くして、ジョゼフの後ろから、ビダーシャルの声が響いた。
その顔は、散々ネロに痛めつけられたというのに、傷一つ無かった。
「いらぬ世話だが、あれと契約せずとも良かったのか?」
それは、使い魔となるかもしれない者を、破格の条件で外に出しても良いのか?という意味も込められていた。
ジョゼフがニヤリとしながら、それに答える。
「あの様な暴君を従わせる術を、余は知らぬ。
それにあの者の、使い魔としての資質は、そう、ガンダールヴであろうな。
そして余が求める使い魔は、"知"の暴君と言うべきか。神の頭脳を持つミューズだ。あれは要らぬ」
その真意からも、ジョゼフはネロが帰ってこようがこまいがどうでもいい、という意図が読み取れた。
ビダーシャルが納得した所で、今度がジョゼフが問い質した。
「お前はあれを悪魔と呼んでいたが、あれがエルフのお前達が言っている、"シャイターン"なのか?」
「違う。あのようなものは、一度も触れたことが無い。ただあの者の腕は・・・」
会話の内容に完全に怯えきっているイザベラとモリエールを、それぞれ一目見てから、
ビダーシャルは言葉を続けた。
「お前達の信仰に用いる悪魔そのものに、私は見える。違うか?」
「フン。神学には興味が無い」
それから「眠い」と言って席を立ったジョゼフは、エルフを連れて、娘と愛人を残し自室へと戻って行った。
そしてその翌朝。
ジョゼフに命じられたメイドの手引きで、ガリア大使としての身分を証明する為の書類を渡されてから、
外に連れ出されたネロは、一人の青年と一匹の竜と対面する。
竜を手懐けている青年が、目の前の生き物を見て呆気に取られているネロに気がつき、
声を掛けながら近付いた。
「やあ、君が噂の大使様だね?」
ロマリアという国から、自らも特命大使として世界を駆け巡っているというこの青年は、
ネロに対して気さくに話しかけた。
「ハハッ、風竜を見るのは初めてかい?紹介するよ。おいで、アズーロ」
「あぁ・・、もう何でも有りだな俺の夢は」
風竜を、頭から尻尾まで舐める様に見るネロの様子が面白くて、青年は冗談ぽく言ってみせた。
「あっはっはっ、大丈夫だよ。噛み付きはしないって」
「別に怖がっちゃいねえよ」
それから、青年はアズーロに颯爽と跨り、左右の色が違うオッドアイの目を輝かせながら、
ネロに右手を差し伸べた。
それに対して、左手で応えるネロ。
青年は首を傾げたが、袖を下ろし手袋をしているネロの右手を見ると、直ぐに納得した様だった。
「さあ出発だ。詳しい話は道中聞かせてもらうよ」
その言葉通り、竜を駆る青年は、空の上で喋りっぱなしだった。
生まれはどこか?
家族は何人か?
恋人はどんな人か?
自分の身の上話も織り交ぜつつ、兎に角、ネロに話しかけきた。
ネロは、それがうざったくて堪らなかったが、
見知らぬ国から国へ連れて行って貰っているという負い目もあったのか、
答えられるものは、言葉少なく答えた。
「君は見たところ、ここの国の人じゃ無さそうだね。一体どこから来たんだい?」
「フォルトゥナだ」
ネロの口から出た地名を聞いて、青年は顎をさすりながら、上に浮かぶ雲を見た。
「うーん。聞いた事が無い国だな。・・・君、ひょっとして新教徒の連中じゃないだろうね?」
「何でそう思う?」
「フフッ、何だか僕らと似通っているけど、それとは違う様な格好を、君がしてるからさ。
背負ってるその剣は相当場違いだけどね。本当に振れるのかい?それ」
ネロは、"場違い"という言い回しにも引っかかったが、
"教徒"というキーワードから、ついこの間までの出来事を鮮明に思い出し、
それまでの心境を独り言のように呟いた。
「教団か・・・。奇麗事を並べてる裏じゃ、人に汚い仕事ばっか押し付けやがって・・・。
どいつもコイツもいい歳して、神様ごっこに夢中だったよ。
気に入らない連中を全員ブン殴って、抜け出したばっかりさ。いや、追っ払ったって所か?」
それを聞いた青年が不意に笑い出した。
「あっはっはっ!それ面白いよ!何だか君とは気が合いそうだね!」
「・・・勘弁してくれよ」
自分の後ろで大層嫌な顔をしているネロを余所に、青年はハッとした顔になって、ネロに自分の名を名乗った。
「自己紹介がまだだったね。僕はジュリオ。これでも神官なんだよ」
ジュリオの名を聞いて、自分も名乗らないといけない様な気がして、
ネロもジュリオに口数少なく名乗った。
「ネロだ」
「ネロか。うん、憶えやすくて良い名前だね。君とは良い友達になれそうだ!」
「・・・勝手にしろ」
風竜は、それぞれ国が違う2人の大使を乗せて、トリステインを目指した。
#navi(悪魔も泣き出す使い魔)
~優しき右腕~
トリステインに向かえ
ジョゼフ王の使い魔召喚騒動から二日経ったその夜。
召喚された一人の青年を持て成すためのささやかな晩餐が、
ガリアの首都に位置する、ヴェルサルテイルの宮殿で開かれていた。
「いらぬのか?遠慮するでないぞ!」
テーブルには豪勢な料理が敷き詰められ、その上座に位置する席にいるジョゼフ王は、
向かいの席で、ガラの悪い格好で座っているネロへ、ニコニコしながら料理を勧めた。
ネロはそれに返事をすることなく、ふてぶてしい態度で、真っ直ぐとジョゼフを睨む。
ジョゼフ王の両サイドを固めていた、王の長女イザベラと、愛人であるモリエール婦人が、
それを見かねて交互にネロを咎めた。
「つつしめ!王の御膳であるぞ!」
「平民の分際で。まあ、何たる無礼な振る舞いですこと!」
その瞬間、ダンッ!と、テーブルに何かを叩き付ける音が、会場に響き渡った。
その音と振動に驚いて、「ひいっ」と声を合わせて短く悲鳴を上げるイザベラとモリエール。
ネロが両足を組んでテーブルの上に乗せたのだった。
ただそれだけだったのだが、イザベラとモリエールを黙らせるには充分なプレッシャーだった。
以後、二人がこの場で口を開くことは無かった。
ネロは召喚されてからこの二日間、宮殿の寝室で泥のように眠っていた。
ジョゼフの城に招待されから聞いた、
自分が使い魔として、別世界に召喚されたという説明を、
帰る方法が無いという事実を、真っ向から否定するために。
夢だと思いたかった。次に目を覚ませば、きっと元の見慣れた世界だ。自分の目覚めを待つ幼馴染に会える、と。
しかし何時まで経っても夢から覚めない。そうだ、夢なんだ。
二つの月が浮かぶこの世界も。魔法だの何だの訳の分からない事をのたまう目の前の連中も。この空腹感も。
この数日で起きた色んな出来事のせいで、疲れてしまった自分が見ている馬鹿馬鹿しい夢だ。
ルーンをその身に刻まず、使い魔とならなかったのが、ネロを頑なにそう思わせる原因なのかもしれない。
平和な日本に生まれた、どこぞの楽観主義な高校生と違って、ネロはとにかく、今この目に映る現実を直視したくなかった。
しかし、これが夢であると、ある程度自分を納得させたネロは、段々と心を落ち着かせてきた模様で、
半ば、自暴自棄の状態とも言えなくも無いが、ジョゼフの言葉も少しずつ耳に入るようになってきていた。
そして今、自分が何の為にここに呼ばれたのか、ネロはジョゼフに聞こうとしていた。
「それで、俺に頼みってのは何だよ」
ジョゼフから見れば、召喚した初日と比べて、今のネロは大分落ち着いた様子でいた。
ジヨゼフは、ネロの機嫌を何とか損ねさせないように、言葉を選びながら慎重に、且つ自分のペースを乱さない会話を試みた。
「うむ。本来ならば私の使い魔として契約してもらう筈なのだが・・・、そんな小さい器に収まる君では無かろう?」
「言いたい事は手短に話せ」
それからジョゼフは、ネロの要望に応えるよう、簡潔に意見をまとめて言った。
「我が国の大使として、隣国のトリステインへ調査にいって来て欲しい」
「・・・それで?」
ネロは、聞いたことが無い国の名前を出されても、反応しようが無い様子だったが、
ジョゼフは構わず話を続けた。
「最近あの国では、少々不穏な動きが見え隠れしてな。見たことも無い様な魔獣が徘徊しているとか・・・」
「それで?」
「本物の"悪魔"を見たとか、な。・・・今では色々と、妙な噂が絶えない国となっておるのだ」
ジョゼフの口から発せられたトリステインの惨状に、イザベラとモリエールの顔が引きつる。ありえない、と。
そんな話は、平民の噂程度にも耳に入ったことが無かったからであった。
しかし、そんなジョゼフの戯言に、ネロは何の疑いも無く、むしろそれが当たり前であるかのように返答してみせた。
「悪魔なんか、その辺の外でも歩けば、ゴロゴロ這いつくばってるだろう?見た事無いのかよ」
「ハハハ。君は私の知らない様な、広い世界を見てきているのだな。羨ましい限りだ!」
この青年はやはり、自分が手引きする"あの組織"が、
近頃から交信が途絶えた事に、何か関係しているのではないか。
そんな思惑を巡らせるジョゼフは、更に心を躍らせるが、昂る気持ちを押し殺す。
それからジョゼフが気がついた時には、ネロが自分から会話の続きを始めていた。
「世間知らずの王様に、悪魔の一匹でも捕まえて見せて来いってか?」
「そうまでして貰えると有難いが、その国を見て来てもらうだけで構わん。観光するのもよいだろう。
君が見たまま聞いたままの情報を、私に持って帰ってきて欲しい」
「それで?」
「それが済んだら君は自由だ。好きにしてよい」
ネロは、王の依頼を確認したと同時に、テーブルの上のパンを一つ手に取ってから、席を立った。
「行ってやるよ。・・・どうせ夢だしな」
ネロの了承を聞いて歓喜したジョゼフが、部屋から出て行くネロの背中を追うように叫んだ。
「そうか!行ってくれるか!?
では、ロマリアの客人が、明日の朝トリステインへ向かう。その者へ、君を連れて貰う様に頼んでおこう!」
扉が閉まり、夕食の会場に静けさが漂う。
それから暫くして、ジョゼフの後ろから、ビダーシャルの声が響いた。
その顔は、散々ネロに痛めつけられたというのに、傷一つ無かった。
「いらぬ世話だが、あれと契約せずとも良かったのか?」
それは、使い魔となるかもしれない者を、破格の条件で外に出しても良いのか?という意味も込められていた。
ジョゼフがニヤリとしながら、それに答える。
「あの様な暴君を従わせる術を、余は知らぬ。
それにあの者の、使い魔としての資質は、そう、ガンダールヴであろうな。
そして余が求める使い魔は、"知"の暴君と言うべきか。神の頭脳を持つミューズだ。あれは要らぬ」
その真意からも、ジョゼフはネロが帰ってこようがこまいがどうでもいい、という意図が読み取れた。
ビダーシャルが納得した所で、今度がジョゼフが問い質した。
「お前はあれを悪魔と呼んでいたが、あれがエルフのお前達が言っている、"シャイターン"なのか?」
「違う。あのようなものは、一度も触れたことが無い。ただあの者の腕は・・・」
会話の内容に完全に怯えきっているイザベラとモリエールを、それぞれ一目見てから、
ビダーシャルは言葉を続けた。
「お前達の信仰に用いる悪魔そのものに、私は見える。違うか?」
「フン。神学には興味が無い」
それから「眠い」と言って席を立ったジョゼフは、エルフを連れて、娘と愛人を残し自室へと戻って行った。
そしてその翌朝。
ジョゼフに命じられたメイドの手引きで、ガリア大使としての身分を証明する為の書類を渡されてから、
外に連れ出されたネロは、一人の青年と一匹の竜と対面する。
竜を手懐けている青年が、目の前の生き物を見て呆気に取られているネロに気がつき、
声を掛けながら近付いた。
「やあ、君が噂の大使様だね?」
ロマリアという国から、自らも特命大使として世界を駆け巡っているというこの青年は、
ネロに対して気さくに話しかけた。
「ハハッ、風竜を見るのは初めてかい?紹介するよ。おいで、アズーロ」
「あぁ・・、もう何でも有りだな俺の夢は」
風竜を、頭から尻尾まで舐める様に見るネロの様子が面白くて、青年は冗談ぽく言ってみせた。
「あっはっはっ、大丈夫だよ。噛み付きはしないって」
「別に怖がっちゃいねえよ」
それから、青年はアズーロに颯爽と跨り、左右の色が違うオッドアイの目を輝かせながら、
ネロに右手を差し伸べた。
それに対して、左手で応えるネロ。
青年は首を傾げたが、袖を下ろし手袋をしているネロの右手を見ると、直ぐに納得した様だった。
「さあ出発だ。詳しい話は道中聞かせてもらうよ」
その言葉通り、竜を駆る青年は、空の上で喋りっぱなしだった。
生まれはどこか?
家族は何人か?
恋人はどんな人か?
自分の身の上話も織り交ぜつつ、兎に角、ネロに話しかけきた。
ネロは、それがうざったくて堪らなかったが、
見知らぬ国から国へ連れて行って貰っているという負い目もあったのか、
答えられるものは、言葉少なく答えた。
「君は見たところ、ここの国の人じゃ無さそうだね。一体どこから来たんだい?」
「フォルトゥナだ」
ネロの口から出た地名を聞いて、青年は顎をさすりながら、上に浮かぶ雲を見た。
「うーん。聞いた事が無い国だな。・・・君、ひょっとして新教徒の連中じゃないだろうね?」
「何でそう思う?」
「フフッ、何だか僕らと似通っているけど、それとは違う様な格好を、君がしてるからさ。
背負ってるその剣は相当場違いだけどね。本当に振れるのかい?それ」
ネロは、"場違い"という言い回しにも引っかかったが、
"教徒"というキーワードから、ついこの間までの出来事を鮮明に思い出し、
それまでの心境を独り言のように呟いた。
「教団か・・・。奇麗事を並べてる裏じゃ、人に汚い仕事ばっか押し付けやがって・・・。
どいつもコイツもいい歳して、神様ごっこに夢中だったよ。
気に入らない連中を全員ブン殴って、抜け出したばっかりさ。いや、追っ払ったって所か?」
それを聞いた青年が不意に笑い出した。
「あっはっはっ!それ面白いよ!何だか君とは気が合いそうだね!」
「・・・勘弁してくれよ」
自分の後ろで大層嫌な顔をしているネロを余所に、青年はハッとした顔になって、ネロに自分の名を名乗った。
「自己紹介がまだだったね。僕はジュリオ。これでも神官なんだよ」
ジュリオの名を聞いて、自分も名乗らないといけない様な気がして、
ネロもジュリオに口数少なく名乗った。
「ネロだ」
「ネロか。うん、憶えやすくて良い名前だね。君とは良い友達になれそうだ!」
「・・・勝手にしろ」
風竜は、それぞれ国が違う2人の大使を乗せて、トリステインを目指した。
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