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「虚無と最後の希望 Level01」(2010/02/08 (月) 23:06:36) の最新版変更点
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#navi(虚無と最後の希望)
level-1 「悪魔」
「何か言うことは」
言ったのは全身を特殊複合装甲で包まれた強化服を着た人物。
緑を基調とし、各関節保護は黒、そしてヘルメットの前面。
顔の部分には金色と橙色を混ぜ合わせた色合いの、鏡面体のヘルメット。
そこに映り込んでいたのは怯え、座り込んでいた一人の少年貴族。
「ま、まいった……」
突きつけられた銃口を前に、二つ名『青銅』のギーシュ・ド・グラモンは薔薇型の杖を離す。
途端、軽い金属音が鳴り響き青銅のゴーレム『ワルキューレ』が崩れ落ちた。
それを確認してから銃口を下げる人物……、知らぬ者が見れば人型のゴーレムにでも見えただろう。
「その勇気は買うが、無謀はいただけない」
アサルトライフルを背中に担ぎなおす 、周りの人垣は音が消えたように静まっていた。
それもそのはず、襲い掛かったワルキューレが激しい音とともに一撃で下されたのだ。
一体目はグリップで顎を殴り飛ばされ、頭部が学院の屋根を越えて消えた。
二体目は左拳で殴りつけられ、バラバラになりながら地面に転がった。
三体目は速度の乗った右足に蹴られ、周囲のギャラリーを越えて学院の壁に激突した。
5体居たワルキューレ、彼とギーシュの直線状にいたのは3体。
その3体のワルキューレがものの数秒で消え、気が付いた時にはギーシュの目前へと迫り、一瞬のうちに勝敗が決まった。
ギーシュには考えが足りなかった、「ゼロのルイズ」の使い魔如きに負ける筈が無いと高を括ったのだろう。
慢心、それが無様な負けを演出した最大の要因。
考えが足りない、心構えがなっていない、そして彼と対峙するには実力が足りない。
そう、ギーシュが相手にするのは格上の実力者。
もしギーシュが彼を確実に倒そうとするならば、今の100倍の数は必要だろう。
この男を相手にするには、それなりの死線をいくつも超えなければならなかった。
「チーフ!」
歴然たる勝利を手にした人物は『チーフ』と呼ばれ、振り返ると彼の主たるピンクブロンドの小柄な少女。
『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』が駆け寄ってくる。
「えっと……」
駆け寄ったは良いが掛ける言葉が見つからない。
正直負けると思っていた、全身鎧を着けているけどギーシュのゴーレムの攻撃を防げるとは思っていなかった。
いや、下手すれば殺されるとも思っていた。
だが現実は逆、一瞬でワルキューレを叩き潰し、ギーシュを降参させた。
周りのギャラリーも同様の考えだったのだろう、次第に水を打つ静けさが消え、歓声が沸き起こる。
「ゼロのルイズが召還した使い魔が勝った!」
「嘘だろ、平民がメイジに勝った!」
「ギーシュが負けたぞ!」
当の本人、マスターチーフは歓声が耳に入ってない。
それを見て、なにかおかしいと気が付いたルイズは声を掛けた。
「どうしたの……?」
チーフは左手を握っては開き、開いては握るを繰り返していた。
「いや、なんでもない」
「ど、どこか怪我したの!?」
「大丈夫だ」
慌てるルイズをよそに、質素な返事を返した。
このような決闘と相成った事の顛末はギーシュが落とした香水。
学園専属のメイドであるシエスタがそれを拾い、ギーシュに届けるがそれが原因で二股がばれて二人に振られてしまった。
シエスタが必死に謝るが、ギーシュは怒り心頭で聞く耳を持たなかった。
あまつさえ手を上げようとしたのを止めたら、矛先がチーフに向き決闘と相成った。
彼の威容を見て一瞬怯えたギーシュではあったが、ルイズが召喚した使い魔だと知った瞬間大いに開き直っていた。
公然と恥をかかせられると意気揚々決闘場となったヴェストリの広場に来てみればこの有様だった。
無論、負けたギーシュは色んな意味で冷たかった。
「勝ちましたね」
「勝ってしまったのう」
『遠見の鏡』で決闘の一部始終見ていた三人。
学院長のオールド・オスマンと学院教師のコルベール、そしてオールド・オスマンの秘書ミス・ロングビル。
「ドットとは言えメイジを退けるほどじゃ、素直にミス・ヴァリエールの使い魔になって貰えるか頼んでみようかの」
「……どうでしょうか、彼は帰る方法を探しているようでしたし」
「ふむ、何れにせよ直接話をしてみるしかなさそうじゃ。 ミス・ロングビル、ちょっと用事を頼まれてくれんかの」
「彼をお連れすればよいのですね?」
「そ……うっ!」
ニッコリと笑うロングビルの足元にはネズミ、今にも踏み潰されそうだった。
「は、話が早くて助かる」
ネズミに乗せていた足を降ろし、ロングビルは一礼して引き下がった。
「ふう、踏み潰されるかと思ったわい」
オスマンの膝元に上ってきたネズミを撫でる。
それを訝しげな視線で見るコルベール。
「これに懲りて、大人しくした方が良いと思いますが」
「老人の楽しみを奪わないでくれい……」
使い魔たるネズミ「モートソグニル」を撫でながら、オスマンは窓の外を見て呟いていた。
ルイズが先頭を切って歩く、その後ろにはチーフ。
ギーシュとの決闘後、学院長であるオールド・オスマンからの呼び出しを受け、いつも以上に堂々と歩くルイズは内心焦っていた。
(ど、どうしよう、使い魔と契約出来ていないから……、たたた退学とか!?)
ルイズは召還されたチーフと契約を行ったが、使い魔の証たるルーンがどこにも見あたら無かった。
当然契約失敗と思われ、一時保留と言う事になっている。
(どどどどどうしよう!)
心拍数上昇、学院長室に近づくにつれヒートアップしていく。
心なしか呼吸も荒く、手が震えている。
考える事は父や母、二人の姉。
家族皆が優秀で、自分だけが魔法をまともに使えない劣等メイジ。
今までは魔法の実技以外で常に上位に食い込み続け退学を免れていたが、今回は苦手と言うか全く使えない魔法での試験。
百に届くサモン・サーヴァントの果てに召喚した使い魔とは契約が出来ていない状態、文句無しに退学させられる状態。
ルイズは退学と言う二文字が頭の中を回り続けていた。
「ストップだ」
「ど、どうしたのよ」
チーフはルイズを呼び止め、見つめる。
ヘルメット内、ヘッドアップディスプレイにはルイズの身体情報が表示されていた。
激しく動いても居ないのに過度の呼吸、体温上昇、多量の発汗など明らかな異常。
「落ち着け」
「おおおおちついてるわよ!」
呼吸を荒げ、反論するルイズ。
目に見えて顔色が悪い、緊張による重度の過呼吸と判断した。
そう、初めて戦場に出る新兵も同様の症状をよく引き起こしている為に見間違う事など無い。
「は、はやくいくわよ!!」
ルイズの体が揺れている、意識もぼやけているだろう。
「行く必要は無い」
振り返ったルイズを後ろから抱き上げる、所謂お姫様だっこ。
周囲に対処法できる袋が無いため、医療室へ連れて行くのを選んだ。
「ちちちちょっと!?」
「学院長室より先に医療室だ」
「そういうわけには行かないでしょ!」
じたばたと暴れ始めるルイズ、腕力は常人の軽く数倍を誇るチーフ。
ルイズがいくら暴れても動かないで居るのと同義だった。
「……分かった、一人で歩けるなら学院長室に行こう」
ふん、そんなこと簡単よと言いたげに下りるが途端にふらつき倒れそうになる。
「うっ」
それを支え、チーフは言った
「医療室だ」
ルイズは反論できない。
なすすべなく同じように抱き上げられ、医療室へ直行した。
#navi(虚無と最後の希望)
#navi(虚無と最後の希望)
level-1 「悪魔」
「何か言うことは」
言ったのは全身を特殊複合装甲で包まれた強化服を着た人物。
緑を基調とし、各関節保護は黒、そしてヘルメットの前面。
顔の部分には金色と橙色を混ぜ合わせた色合いの、鏡面体のヘルメット。
そこに映り込んでいたのは怯え、座り込んでいた一人の少年貴族。
「ま、まいった……」
突きつけられた銃口を前に、二つ名『青銅』のギーシュ・ド・グラモンは薔薇型の杖を離す。
途端、軽い金属音が鳴り響き青銅のゴーレム『ワルキューレ』が崩れ落ちた。
それを確認してから銃口を下げる人物……、知らぬ者が見れば人型のゴーレムにでも見えただろう。
「その勇気は買うが、無謀はいただけない」
ギーシュ・ド・グラモンを見ながらアサルトライフルを背中に担ぎなおす 、周りの人垣は音が消えたように静まっていた。
それもそのはず、予想を反して襲い掛かったワルキューレが激しい音とともに一撃で下されたのだ。
一体目は銃のグリップで顎を叩き殴られ、頭部が学院の屋根を越えて消えた。
二体目は左拳のボディブローで殴りつけられ、バラバラになりながら地面に転がった。
三体目は速度の乗った右足で胸を蹴られ、周囲のギャラリーを越えて学院の壁に激突した。
5体居たワルキューレ、彼とギーシュの直線状にいたのは3体。
その3体のワルキューレがものの数秒で消え、気が付いた時にはギーシュの目前へと迫り、一瞬のうちに勝敗が決まった。
ギーシュには考えが足りなかった、「ゼロのルイズ」の使い魔如きに負ける筈が無いと高を括ったのだろう。
慢心、それが無様な負けを演出した最大の要因。
考えが足りない、心構えがなっていない、そして彼と対峙するには実力が足りない。
そう、ギーシュが相手にするのは格上の実力者。
もしギーシュが彼を確実に倒そうとするならば、今の100倍の数は必要だろう。
この男を相手にするには、それなりの死線をいくつも超えなければならなかった。
「チーフ!」
歴然たる勝利を手にした人物は『チーフ』と呼ばれ、振り返ると彼の主たるピンクブロンドの小柄な少女。
『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』が駆け寄ってくる。
「えっと……」
駆け寄ったは良いが掛ける言葉が見つからない。
正直負けると思っていた、全身鎧を着けているけどギーシュのゴーレムの攻撃を防げるとは思っていなかった。
いや、下手すれば殺されるとも思っていた。
だが現実は逆、一瞬でワルキューレを叩き潰し、ギーシュを降参させた。
周りのギャラリーも同様の考えだったのだろう、次第に水を打つ静けさが消え、歓声が沸き起こる。
「ゼロのルイズが召還した使い魔が勝った!」
「嘘だろ、平民がメイジに勝った!」
「ギーシュが負けたぞ!」
当の本人、マスターチーフは歓声が耳に入ってない。
それを見て、なにかおかしいと気が付いたルイズは声を掛けた。
「どうしたの……?」
チーフは左手を握っては開き、開いては握るを繰り返していた。
「いや、なんでもない」
「ど、どこか怪我したの!?」
「大丈夫だ」
慌てるルイズをよそに、質素な返事を返した。
このような決闘と相成った事の顛末はギーシュが落とした香水。
学園専属のメイドであるシエスタがそれを拾い、ギーシュに届けるがそれが原因で二股がばれて二人に振られてしまった。
シエスタが必死に謝るが、ギーシュは怒り心頭で聞く耳を持たなかった。
あまつさえ手を上げようとしたのを止めたら、矛先がチーフに向き決闘と相成った。
彼の威容を見て一瞬怯えたギーシュではあったが、ルイズが召喚した使い魔だと知った瞬間大いに開き直っていた。
公然と恥をかかせられると意気揚々決闘場となったヴェストリの広場に来てみればこの有様だった。
無論、負けたギーシュは色んな意味で冷たかった。
「勝ちましたね」
「勝ってしまったのう」
『遠見の鏡』で決闘の一部始終見ていた三人。
学院長のオールド・オスマンと学院教師のコルベール、そしてオールド・オスマンの秘書ミス・ロングビル。
「ドットとは言えメイジを退けるほどじゃ、素直にミス・ヴァリエールの使い魔になって貰えるか頼んでみようかの」
「……どうでしょうか、彼は帰る方法を探しているようでしたし」
「ふむ、何れにせよ直接話をしてみるしかなさそうじゃ。 ミス・ロングビル、ちょっと用事を頼まれてくれんかの」
「彼をお連れすればよいのですね?」
「そ……うっ!」
ニッコリと笑うロングビルの足元にはネズミ、今にも踏み潰されそうだった。
「は、話が早くて助かる」
ネズミに乗せていた足を降ろし、ロングビルは一礼して引き下がった。
「ふう、踏み潰されるかと思ったわい」
オスマンの膝元に上ってきたネズミを撫でる。
それを訝しげな視線で見るコルベール。
「これに懲りて、大人しくした方が良いと思いますが」
「老人の楽しみを奪わないでくれい……」
使い魔たるネズミ「モートソグニル」を撫でながら、オスマンは窓の外を見て呟いていた。
ルイズが先頭を切って歩く、その後ろにはチーフ。
ギーシュとの決闘後、学院長であるオールド・オスマンからの呼び出しを受け、いつも以上に堂々と歩くルイズは内心焦っていた。
(ど、どうしよう、使い魔と契約出来ていないから……、たたた退学とか!?)
ルイズは召還されたチーフと契約を行ったが、使い魔の証たるルーンがどこにも見あたら無かった。
当然契約失敗と思われ、一時保留と言う事になっている。
(どどどどどうしよう!)
心拍数上昇、学院長室に近づくにつれヒートアップしていく。
心なしか呼吸も荒く、手が震えている。
考える事は父や母、二人の姉。
家族皆が優秀で、自分だけが魔法をまともに使えない劣等メイジ。
今までは魔法の実技以外で常に上位に食い込み続け退学を免れていたが、今回は苦手と言うか全く使えない魔法での試験。
百に届くサモン・サーヴァントの果てに召喚した使い魔とは契約が出来ていない状態、文句無しに退学させられる状態。
ルイズは退学と言う二文字が頭の中を回り続けていた。
「ストップだ」
「ど、どうしたのよ」
チーフはルイズを呼び止め、見つめる。
ヘルメット内、ヘッドアップディスプレイにはルイズの身体情報が表示されていた。
激しく動いても居ないのに過度の呼吸、体温上昇、多量の発汗など明らかな異常。
「落ち着け」
「おおおおちついてるわよ!」
呼吸を荒げ、反論するルイズ。
目に見えて顔色が悪い、緊張による重度の過呼吸と判断した。
そう、初めて戦場に出る新兵も同様の症状をよく引き起こしている為に見間違う事など無い。
「は、はやくいくわよ!!」
ルイズの体が揺れている、意識もぼやけているだろう。
「行く必要は無い」
振り返ったルイズを後ろから抱き上げる、所謂お姫様だっこ。
周囲に対処法できる袋が無いため、医療室へ連れて行くのを選んだ。
「ちちちちょっと!?」
「学院長室より先に医療室だ」
「そういうわけには行かないでしょ!」
じたばたと暴れ始めるルイズ、腕力は常人の軽く数倍を誇るチーフ。
ルイズがいくら暴れても動かないで居るのと同義だった。
「……分かった、一人で歩けるなら学院長室に行こう」
ふん、そんなこと簡単よと言いたげに下りるが途端にふらつき倒れそうになる。
「うっ」
それを支え、チーフは言った
「医療室だ」
ルイズは反論できない。
なすすべなく同じように抱き上げられ、医療室へ直行した。
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