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#navi(ゼロ・HiME)
&setpagename(ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第九話(前編))
準備を整えたルイズ達はロングビルを案内役に早速出発した。
馬車は道中での襲撃があった場合に備えて運搬用の荷馬車を使い、自ら御者を買って出
たロングビルに手綱を任せて現場に向かった。
ちなみに出発前にどこからか静留もフーケ探索に行くことを聞きつけたギーシュが自分
も同行させろと騒いだが、額に青筋を立てたモンモランシーによって阻止された。その後、
彼がどうなったかは神のみぞ知る……。
「そう言えば、なんでミス・ロングビルが御者してはるん? 貴族さんらはこういことせ
えへんような気がするんやけど」
静留が御者席で黙々と手綱を握るロングビルに向かって話しかける。学院の下働きや衛
兵達以外=貴族と認識していた静留は、てっきり彼女も貴族だろうと思ってそう尋ねたの
だが――
「いえ、わたくしは貴族の名を無くした者ですから……」
ロングビルは静留の問いに、どこか諦めの入った表情で微笑んだ。
「え? だけど貴女は、オスマン氏の秘書でしょう?」
横で二人の話を聞いていたルイズが不可解だという表情でロングビルに尋ねる。
「ええ、でもオスマン氏は貴族や平民だということにあまり拘らないお方ですから」
「へえ、貴族いうても色々なんやねえ」
「まあ、いささかセクハラが過ぎるのが欠点ですが」
感心するような静留の言葉に続いてロングビルの口から放たれた忌憚ないオスマンの人
物評に皆が苦笑した。
そうこうしている間にも馬車は薄暗い森の中へと入り、やがて、馬車道が途切れたあた
りで停止した。
「ここから先は、徒歩で行きましょう」
ロングビルの言葉に促されて馬車を降ると、ルイズ達は馬車道から続く小道を辿って更
に森の奥へと向かう。
程なく一行は開けた場所に出た。それなりの広さのある草原で、真ん中ぐらいに元は木
こりの炭焼き小屋だったと思われる朽ちた廃屋があった。
「わたくしの聞いた情報だと、あの廃屋に潜んでいるようです」
ロングビルが廃屋を指差して言う。一行は廃屋近くの茂みに移動して身を潜めると、タ
バサを中心に作戦会議を行う。
「ほな、うちが合図したら打ち合わせ通りに……デルフはん、いきますえ」
「おうよ、姐さん」
作戦会議の結果、偵察にいくことになった静留は背中のデルフリンガーを鞘から抜くと、
廃屋へと近づく。
窓に近づいて中を覗くと、そこには家具や空の酒ビンが雑然と転がっているだけで人の
姿はない。 さらにドアを薄く開けて覗き込んで確認するが、やはり誰も居なかった。
(妙やね……使われとる様子も、だれぞいた形跡もあらへん……)
静留は小首を傾げるが、誰もいない場合の合図を送って皆を呼び寄せる。
「では、私はこの辺りを偵察してきますので」
ロングビルはそう言うと森の中に消えた。
ルイズに外の見張りを任せ、廃屋に入った静留、キュルケ、タバサの三人はフーケの残
した手がかりがを求めて家捜しを始めた。
そして、タバサが壊れかけたベッドの下にあった1メイルほどの細長いチェストの中か
ら『破壊の杖』を見つけ出した。
「破壊の杖……」
タバサは確認するように呟き、チェストの中に鎮座する『破壊の杖』を無表情で指差す。
「なんだか随分とあっけなく見つかったわね」
「……これが破壊の杖なん?」
「ええ、間違いないわ。以前、宝物庫を見学した時に見たもの」
静留の問いにタバサがコクリと頷き、キュルケが肯定する。静留は『破壊の杖』をまじ
まじと見つめると、眉根を寄せて考え込んだ。
(……なんでこないなもんがこの世界にあるんやろ?)
「きゃあああああ」
「……!」
ふいに外から見張りをしていたルイズの悲鳴が聞こえ、全員が廃屋の外へと飛び出すと、
そこには地面からむっくりと起き上がってくる土ゴーレムの姿があった。
「ゴーレム!」
キュルケが叫ぶと同時に、タバサが呪文を放つがゴーレムはびくともしない。ついでキ
ュルケが呪文を唱えたが結果はやはり同じだった。
「無理よ、こんなの」
「退却」
状況が不利と判断したタバサは冷静にそう呟き、口笛を吹いてシルフィードを呼び寄せ
ると、その背に乗るように皆をうながす。
「ルイズ様、逃げますえ」
静留はルイズを抱きかかえてシルフィードに向かおうとするが、ルイズは腕の中でバタ
バタと暴れて抵抗した。
「シズル、放して! あのゴーレムは私が倒すんだから!」
「ルイズ様、無茶言うたらあきまへん! 破壊の杖はもう回収したんやし、戦う必要は
ありませんえ」
「もう逃げるのは嫌! 私は貴族よ、魔法を使える者が貴族じゃない! 敵に後ろを見
せない者を貴族って呼ぶのよ!」
「――ルイズ様!」
ルイズは静留の腕を振り払うと、ゴーレムに向かって走り出した。それを感知したゴー
レムが足を振り上げ、ルイズを踏み潰そうとする。
ルイズは呪文を放つがやはりゴーレムには通用せず、その足がルイズの眼前に迫る。ル
イズは目をつぶってしゃがみ込んだ。
「……っ!」
次の瞬間、静留がゴーレムとルイズの間に飛び込んで、ゴーレムの足をデルフリンガー
で弾き返すように切り裂くと、ルイズを片手に抱えて後方に飛びのいた。バランスを崩し
たゴーレムは後方にひっくり返り、周囲に土煙が舞い上がる。
「……シズル?」
「さあ、ルイズ様! 今のうちにはようタバサさんの竜の所へ! 」
静留は抱えていたルイズを地面に下ろすと、ゆっくりと再生しはじめたゴーレムに向け
てデルフを構えた警戒態勢のままで移動を促す。
「で、でも、わたしは……」
「ルイズ様、勇敢さと無謀さを履き違えたらあきまへんえ。ここにきた目的は『破壊の
杖』の回収ですやろ? だったらルイズ様は余計な心配せんと杖を持って帰ることだけ考
えればええんどす。露払いはうちがしたりますさかいに」
「姐さんの言うとおりだぜ、娘っ子。分かったなら、さっさといきな!」
静留とデルフの言葉を受けてルイズが立ち上がると、そこにキュルケとタバサを乗せた
シルフィードが舞い降りた。
「ルイズ、乗って!」
「あなたも早く」
キュルケがルイズの手を掴んでシルフィードの上に引き上げ、タバサが静留に声をかけ
る。
しかし、静留はシルフィードには乗らずに、動き出だしたゴーレムの方に向かっていく。
「――シズル!」
「心配せんでもあの木偶の坊を倒したら、すぐに追いかけますさかいに。タバサさん、
ルイズ様を頼みましたえ」
静留は振り返ってシルフィードの上から怒鳴るルイズに答えると、タバサに先に行くよ
うに合図を送る。
「分かった……」
タバサは一瞬、躊躇するような表情を浮かべたが、すぐにこくりと頷き、シルフィード
を飛び上がらせた。
「姐さん、危ねえ!」
デルフが叫ぶと同時に静留の足元の地面が波打つようにうねり、そこにゴーレムの右の
拳が振り下ろされる。
「……くっ!」
間一髪、静留は横に跳躍してゴーレムの拳をかわす。一瞬、拳が地面にめり込んだ衝撃
でバランスを崩しかけたものの、なんとか無事に着地する。
「やれやれ、このあたしが仕留め損なうとは、随分とヤキが回ったもんだ」
ふいに森の方から女の声がしたかと思うと、黒いフードとローブを身に纏った人物が草
原に姿を表した。
「ようやっと姿を表しはりましたな、『土くれのフーケ』はん」
静留に声をかけられたその人物――土くれのフーケは、それに答えずに無言で杖を振る
う。するとゴーレムは表面を土から鈍い光沢を放つ鋼鉄へと変化させ、先ほどの鈍重さが
嘘の様なスピードで静留に襲い掛かった。
#navi(ゼロ・HiME)
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&setpagename(ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第九話(前編))
準備を整えたルイズ達はロングビルを案内役に早速出発した。
馬車は道中での襲撃があった場合に備えて運搬用の荷馬車を使い、自ら御者を買って出
たロングビルに手綱を任せて現場に向かった。
ちなみに出発前にどこからか静留もフーケ探索に行くことを聞きつけたギーシュが自分
も同行させろと騒いだが、額に青筋を立てたモンモランシーによって阻止された。その後、
彼がどうなったかは神のみぞ知る……。
「そう言えば、なんでミス・ロングビルが御者してはるん? 貴族さんらはこういことせ
えへんような気がするんやけど」
静留が御者席で黙々と手綱を握るロングビルに向かって話しかける。学院の下働きや衛
兵達以外=貴族と認識していた静留は、てっきり彼女も貴族だろうと思ってそう尋ねたの
だが――
「いえ、わたくしは貴族の名を無くした者ですから……」
ロングビルは静留の問いに、どこか諦めの入った表情で微笑んだ。
「え? だけど貴女は、オスマン氏の秘書でしょう?」
横で二人の話を聞いていたルイズが不可解だという表情でロングビルに尋ねる。
「ええ、でもオスマン氏は貴族や平民だということにあまり拘らないお方ですから」
「へえ、貴族いうても色々なんやねえ」
「まあ、いささかセクハラが過ぎるのが欠点ですが」
感心するような静留の言葉に続いてロングビルの口から放たれた忌憚ないオスマンの人
物評に皆が苦笑した。
そうこうしている間にも馬車は薄暗い森の中へと入り、やがて、馬車道が途切れたあた
りで停止した。
「ここから先は、徒歩で行きましょう」
ロングビルの言葉に促されて馬車を降ると、ルイズ達は馬車道から続く小道を辿って更
に森の奥へと向かう。
程なく一行は開けた場所に出た。それなりの広さのある草原で、真ん中ぐらいに元は木
こりの炭焼き小屋だったと思われる朽ちた廃屋があった。
「わたくしの聞いた情報だと、あの廃屋に潜んでいるようです」
ロングビルが廃屋を指差して言う。一行は廃屋近くの茂みに移動して身を潜めると、タ
バサを中心に作戦会議を行う。
「ほな、うちが合図したら打ち合わせ通りに……デルフはん、いきますえ」
「おうよ、姐さん」
作戦会議の結果、偵察にいくことになった静留は背中のデルフリンガーを鞘から抜くと、
廃屋へと近づく。
窓に近づいて中を覗くと、そこには家具や空の酒ビンが雑然と転がっているだけで人の
姿はない。 さらにドアを薄く開けて覗き込んで確認するが、やはり誰も居なかった。
(妙やね……使われとる様子も、だれぞいた形跡もあらへん……)
静留は小首を傾げるが、誰もいない場合の合図を送って皆を呼び寄せる。
「では、私はこの辺りを偵察してきますので」
ロングビルはそう言うと森の中に消えた。
ルイズに外の見張りを任せ、廃屋に入った静留、キュルケ、タバサの三人はフーケの残
した手がかりがを求めて家捜しを始めた。
そして、タバサが壊れかけたベッドの下にあった1メイルほどの細長いチェストの中か
ら『破壊の杖』を見つけ出した。
「破壊の杖……」
タバサは確認するように呟き、チェストの中に鎮座する『破壊の杖』を無表情で指差す。
「なんだか随分とあっけなく見つかったわね」
「……これが破壊の杖なん?」
「ええ、間違いないわ。以前、宝物庫を見学した時に見たもの」
静留の問いにタバサがコクリと頷き、キュルケが肯定する。静留は『破壊の杖』をまじ
まじと見つめると、眉根を寄せて考え込んだ。
(……なんでこないなもんがこの世界にあるんやろ?)
「きゃあああああ」
「……!」
ふいに外から見張りをしていたルイズの悲鳴が聞こえ、全員が廃屋の外へと飛び出すと、
そこには地面からむっくりと起き上がってくる土ゴーレムの姿があった。
「ゴーレム!」
キュルケが叫ぶと同時に、タバサが呪文を放つがゴーレムはびくともしない。ついでキ
ュルケが呪文を唱えたが結果はやはり同じだった。
「無理よ、こんなの」
「退却」
状況が不利と判断したタバサは冷静にそう呟き、口笛を吹いてシルフィードを呼び寄せ
ると、その背に乗るように皆をうながす。
「ルイズ様、逃げますえ」
静留はルイズを抱きかかえてシルフィードに向かおうとするが、ルイズは腕の中でバタ
バタと暴れて抵抗した。
「シズル、放して! あのゴーレムは私が倒すんだから!」
「ルイズ様、無茶言うたらあきまへん! 破壊の杖はもう回収したんやし、戦う必要は
ありませんえ」
「もう逃げるのは嫌! 私は貴族よ、魔法を使える者が貴族じゃない! 敵に後ろを見
せない者を貴族って呼ぶのよ!」
「――ルイズ様!」
ルイズは静留の腕を振り払うと、ゴーレムに向かって走り出した。それを感知したゴー
レムが足を振り上げ、ルイズを踏み潰そうとする。
ルイズは呪文を放つがやはりゴーレムには通用せず、その足がルイズの眼前に迫る。ル
イズは目をつぶってしゃがみ込んだ。
「……っ!」
次の瞬間、静留がゴーレムとルイズの間に飛び込んで、ゴーレムの足をデルフリンガー
で弾き返すように切り裂くと、ルイズを片手に抱えて後方に飛びのいた。バランスを崩し
たゴーレムは後方にひっくり返り、周囲に土煙が舞い上がる。
「……シズル?」
「さあ、ルイズ様! 今のうちにはようタバサさんの竜の所へ! 」
静留は抱えていたルイズを地面に下ろすと、ゆっくりと再生しはじめたゴーレムに向け
てデルフを構えた警戒態勢のままで移動を促す。
「で、でも、わたしは……」
「ルイズ様、勇敢さと無謀さを履き違えたらあきまへんえ。ここにきた目的は『破壊の
杖』の回収ですやろ? だったらルイズ様は余計な心配せんと杖を持って帰ることだけ考
えればええんどす。露払いはうちがしたりますさかいに」
「姐さんの言うとおりだぜ、娘っ子。分かったなら、さっさといきな!」
静留とデルフの言葉を受けてルイズが立ち上がると、そこにキュルケとタバサを乗せた
シルフィードが舞い降りた。
「ルイズ、乗って!」
「あなたも早く」
キュルケがルイズの手を掴んでシルフィードの上に引き上げ、タバサが静留に声をかけ
る。
しかし、静留はシルフィードには乗らずに、動き出だしたゴーレムの方に向かっていく。
「――シズル!」
「心配せんでもあの木偶の坊を倒したら、すぐに追いかけますさかいに。タバサさん、
ルイズ様を頼みましたえ」
静留は振り返ってシルフィードの上から怒鳴るルイズに答えると、タバサに先に行くよ
うに合図を送る。
「分かった……」
タバサは一瞬、躊躇するような表情を浮かべたが、すぐにこくりと頷き、シルフィード
を飛び上がらせた。
「姐さん、危ねえ!」
デルフが叫ぶと同時に静留の足元の地面が波打つようにうねり、そこにゴーレムの右の
拳が振り下ろされる。
「……くっ!」
間一髪、静留は横に跳躍してゴーレムの拳をかわす。一瞬、拳が地面にめり込んだ衝撃
でバランスを崩しかけたものの、なんとか無事に着地する。
「やれやれ、このあたしが仕留め損なうとは、随分とヤキが回ったもんだ」
ふいに森の方から女の声がしたかと思うと、黒いフードとローブを身に纏った人物が草
原に姿を表した。
「ようやっと姿を表しはりましたな、『土くれのフーケ』はん」
静留に声をかけられたその人物――土くれのフーケは、それに答えずに無言で杖を振る
う。するとゴーレムは表面を土から鈍い光沢を放つ鋼鉄へと変化させ、先ほどの鈍重さが
嘘の様なスピードで静留に襲い掛かった。
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