「ゼロと聖石-22」(2007/12/02 (日) 10:09:46) の最新版変更点
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#navi(ゼロと聖石)
「店長、オーダー入りました」
「うーん、ルイズちゃん頑張るわねぇ。でも、ミ・マドモワゼルと呼んで頂戴?」
「はい。お世話になってるのに何もしないのは気が引けますから、ミ・マドモワゼル」
シエスタとの旅立ちから一週間。
途中の追っ手を振り切って預けられた場所は『魅惑の妖精亭』という場所。
「私が囮になって、振り切った後に迎えに来ます」
そう言って、私はここに預けられた。
最初は抵抗があったが、スカロンさんはいい人だ。
それと―――
「ルイズ、十番のテーブルお願い」
「はーい」
従業員のまとめ役のジェシカも気が合う。
彼女はチップを集めるのがうまく、私とは年季が違う。
私も見習おう。
「ワインをお持ちいたしました」
「お、ルイズちゃんか」
この人はいつもの常連さん。
私が働き始めてからは、いつも指名してくれる。
若干目が危ないように見えるのは私の気のせいか?
「いやぁー、今日もルイズちゃんの所に来ちゃったよ」
「ありがとうございます。奥さんと仲良くしてますか?」
このやり取りも定番になった。
注文も解っているので、いつもの? と聞くだけで済む。
こうして、毎日頑張るのだった。
シエスタが預けてった女の子、ルイズ。
働き始めこそぎこちなかった物の、数日でその緊張は取れてしまった。
徐々にだが、固定客が付き始めている。
数ヶ月働けば、それだけで私に追いつけるだろう。
「故郷を救ってくれた人、か」
その実感は湧かない。
シエスタが言うには、デュライ家にしか使えない魔法を完全に使いこなすそうだ。
傍流の私ですらその一端に触れるのが精一杯なのに。
まぁ、私はその代わりの技を持っているが。
彼女がそれなりの力を持っていたとしても、それが発揮されることはないのだろう。
ここはあくまで酒場。
そんな剣とか魔法とか必要なほど荒れないだろうし、荒れても私がとっちめる。
おっと、仕事に戻ろう。
しばらくはチップレースの下地造りだ。
ここに来てから大体二週間目だろうか?
来週はチップレースというイベントだ。
チップをどれだけ集めたかという内容になるわけだ。
今までの動きから見て、ジェシカはそのための布石を張っていたらしい。
そんな嵐の前、私とジェシカは買い物に来ていた。
酔い覚ましの薬の購入と食材などを買いに来たのだが…
「はぐれちゃった」
現在絶賛迷子中。
東方の食材を見ていたら、隣にいたはずのジェシカがいなくなっていた。
それだけだったら良かったのだが―――
「君、平民にしてはかわいいね。一緒にお茶しない?」
横にまとわりつく貴族様が、正直邪魔。
さっきから執拗に誘ってくるのだが、早いとこジェシカと合流して帰りたいのだ。
チップも貰えずに媚なんか売ってたまるものですか。
「あの、すみません。友人が待っていますので」
「ほう、貴族の誘いを断るのか」
貴族様が杖を抜く。
周囲は人ごみに包まれていて、誰が何をしているかなんて注目している人はいない。
だからこそ、杖を抜いて脅しに走ったのだろう。
杖に光が灯り、いつでも魔法を放てるぞと、勝ち誇った顔でこちらを見る。
情けない、その程度の魔法で―――
「だとしたら、何をするんでしょうか?」
「その友人を叩きのめして君と」
脅そうって思うほうが悪い。
右足の踵を強く踏みしめる。
同時に飛び出る剣を掴んで、貴族の喉下に突きつける。
記憶を失う以前から持っていた、不思議な剣。
このギミックを取り付けた記憶を失う前の自分に感謝した。
「き、貴族に逆らって生きていられるとでも思ったか…!」
「大丈夫ですよ。たかが平民ごときに負けたなんて恥ずかしくて言えないでしょう?」
左足の踵も同じように踏みしめ、同じ剣を左手に収める。
同時に杖に対して剣を振り、真っ二つにする。
「ね?」
「お、覚えていろよ、貴様の親族縁者もろとも台無しにしてくれる!」
捨て台詞を残して去っていく貴族様。
さて、早い所ジェシカと合流しないと。
市場の入り口を目指して、歩を進めていった。
屋根の上に陣取っていた私は、ルイズの方を見る。
最初はぐれた時、すぐ見つけることは出来た。
しかし、その周辺に貴族が居て、杖を抜きそうになった瞬間に私は建物の屋根の上まで跳んだ。
実力を見てみたいと思った。まぁ、最悪私が行けば大丈夫だし。
それにしても―――
「アレが村を救った人の裏側、か」
最初のうちは、いつものルイズだった。
少しだけ慌てながらも、客をあしらう時の手法でやんわりと断っていた。
だが、貴族の方が杖を抜いた瞬間目つきが変わった。
ブーツから剣が飛び出し、喉元に突きつける。
今までずいぶんゴツイブーツ飾りだなと思っていたものが、まさか剣だったなんて。
ただの翼の形をしたアクセントだと思っていた。
驚きを隠せないでいると、もう一本同じものを出して杖を破壊する。
どうやら二刀流のようだ。
まあ、私はジョブ特性で持っているから問題ないが。
さて、ルイズが動き出した。
私も早めに戻らないと、ルイズを困らせてしまう。
屋根の上を走りながらルイズの元へと向かっていった。
「いたいた、おーいルイズー!!」
「あ、ジェシカ。よかったぁ~」
市場の出口に着いた後、ジェシカが走り寄ってくる。
ジェシカの手元には食材の詰まった袋が。
「ごめんね、結局買い物手伝えなかった………」
「いいよいいよ、それよりも早く帰ろう?」
申し訳なくなりながら、食材の入った袋を持つ。
肉や野菜で一杯になった袋は、ずっしりと重い。
「でも、ジェシカって運動神経いいよね」
「え? どうして?」
「だって、私が市場の入り口に向かってるとき、屋根の上走ってたじゃない」
気が付いたのは偶然だった。
変な気配がすると思って見上げたとき、ジェシカが屋根の上を疾走していた。
私が走るよりも速く、それでいて全くといっていいほど響かない足音。
「ま、まぁそこは軽い技術ってことで」
変なごまかし方をするジェシカを不思議に思いつつ、魅惑の妖精亭に戻るのだった。
いまだに、私がどこの誰なのか思い出せない。
それでも今の生活は楽しい。
だけど、時々来る思いださないといけないって脅迫概念みたいなものは何なんだろう?
―――渦なす……色…震え…止める光…七つの扉…力の…虚栄…到らん………あるがままに
失わずに残った記憶、というよりかは言葉の羅列。
この順番で正しいのかどうかも分からない。
そして、その羅列の最後に響く四文字。
「アルテマ」
この言葉を呟くたびに出る、青白い光の粒は何なのだろうか?
それに、剣を握ったときに見えるイメージ。
二対の翼を持つ、天使の姿。
わからない、全てが。
アルテマが何なのか、私が誰なのか。
何も解らないまま、日は過ぎていく。
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#navi(ゼロと聖石)
#navi(ゼロと聖石)
「店長、オーダー入りました」
「うーん、ルイズちゃん頑張るわねぇ。でも、ミ・マドモワゼルと呼んで頂戴?」
「はい。お世話になってるのに何もしないのは気が引けますから、ミ・マドモワゼル」
シエスタとの旅立ちから一週間。
途中の追っ手を振り切って預けられた場所は『魅惑の妖精亭』という場所。
「私が囮になって、振り切った後に迎えに来ます」
そう言って、私はここに預けられた。
最初は抵抗があったが、スカロンさんはいい人だ。
それと―――
「ルイズ、十番のテーブルお願い」
「はーい」
従業員のまとめ役のジェシカも気が合う。
彼女はチップを集めるのがうまく、私とは年季が違う。
私も見習おう。
「ワインをお持ちいたしました」
「お、ルイズちゃんか」
この人はいつもの常連さん。
私が働き始めてからは、いつも指名してくれる。
若干目が危ないように見えるのは私の気のせいか?
「いやぁー、今日もルイズちゃんの所に来ちゃったよ」
「ありがとうございます。奥さんと仲良くしてますか?」
このやり取りも定番になった。
注文も解っているので、いつもの? と聞くだけで済む。
こうして、毎日頑張るのだった。
シエスタが預けてった女の子、ルイズ。
働き始めこそぎこちなかった物の、数日でその緊張は取れてしまった。
徐々にだが、固定客が付き始めている。
数ヶ月働けば、それだけで私に追いつけるだろう。
「故郷を救ってくれた人、か」
その実感は湧かない。
シエスタが言うには、デュライ家にしか使えない魔法を完全に使いこなすそうだ。
傍流の私ですらその一端に触れるのが精一杯なのに。
まぁ、私はその代わりの技を持っているが。
彼女がそれなりの力を持っていたとしても、それが発揮されることはないのだろう。
ここはあくまで酒場。
そんな剣とか魔法とか必要なほど荒れないだろうし、荒れても私がとっちめる。
おっと、仕事に戻ろう。
しばらくはチップレースの下地造りだ。
ここに来てから大体二週間目だろうか?
来週はチップレースというイベントだ。
チップをどれだけ集めたかという内容になるわけだ。
今までの動きから見て、ジェシカはそのための布石を張っていたらしい。
そんな嵐の前、私とジェシカは買い物に来ていた。
酔い覚ましの薬の購入と食材などを買いに来たのだが…
「はぐれちゃった」
現在絶賛迷子中。
東方の食材を見ていたら、隣にいたはずのジェシカがいなくなっていた。
それだけだったら良かったのだが―――
「君、平民にしてはかわいいね。一緒にお茶しない?」
横にまとわりつく貴族様が、正直邪魔。
さっきから執拗に誘ってくるのだが、早いとこジェシカと合流して帰りたいのだ。
チップも貰えずに媚なんか売ってたまるものですか。
「あの、すみません。友人が待っていますので」
「ほう、貴族の誘いを断るのか」
貴族様が杖を抜く。
周囲は人ごみに包まれていて、誰が何をしているかなんて注目している人はいない。
だからこそ、杖を抜いて脅しに走ったのだろう。
杖に光が灯り、いつでも魔法を放てるぞと、勝ち誇った顔でこちらを見る。
情けない、その程度の魔法で―――
「だとしたら、何をするんでしょうか?」
「その友人を叩きのめして君と」
脅そうって思うほうが悪い。
右足の踵を強く踏みしめる。
同時に飛び出る剣を掴んで、貴族の喉下に突きつける。
記憶を失う以前から持っていた、不思議な剣。
このギミックを取り付けた記憶を失う前の自分に感謝した。
「き、貴族に逆らって生きていられるとでも思ったか…!」
「大丈夫ですよ。たかが平民ごときに負けたなんて恥ずかしくて言えないでしょう?」
左足の踵も同じように踏みしめ、同じ剣を左手に収める。
同時に杖に対して剣を振り、真っ二つにする。
「ね?」
「お、覚えていろよ、貴様の親族縁者もろとも台無しにしてくれる!」
捨て台詞を残して去っていく貴族様。
さて、早い所ジェシカと合流しないと。
市場の入り口を目指して、歩を進めていった。
屋根の上に陣取っていた私は、ルイズの方を見る。
最初はぐれた時、すぐ見つけることは出来た。
しかし、その周辺に貴族が居て、杖を抜きそうになった瞬間に私は建物の屋根の上まで跳んだ。
実力を見てみたいと思った。まぁ、最悪私が行けば大丈夫だし。
それにしても―――
「アレが村を救った人の裏側、か」
最初のうちは、いつものルイズだった。
少しだけ慌てながらも、客をあしらう時の手法でやんわりと断っていた。
だが、貴族の方が杖を抜いた瞬間目つきが変わった。
ブーツから剣が飛び出し、喉元に突きつける。
今までずいぶんゴツイブーツ飾りだなと思っていたものが、まさか剣だったなんて。
ただの翼の形をしたアクセントだと思っていた。
驚きを隠せないでいると、もう一本同じものを出して杖を破壊する。
どうやら二刀流のようだ。
まあ、私はジョブ特性で持っているから問題ないが。
さて、ルイズが動き出した。
私も早めに戻らないと、ルイズを困らせてしまう。
屋根の上を走りながらルイズの元へと向かっていった。
「いたいた、おーいルイズー!!」
「あ、ジェシカ。よかったぁ~」
市場の出口に着いた後、ジェシカが走り寄ってくる。
ジェシカの手元には食材の詰まった袋が。
「ごめんね、結局買い物手伝えなかった………」
「いいよいいよ、それよりも早く帰ろう?」
申し訳なくなりながら、食材の入った袋を持つ。
肉や野菜で一杯になった袋は、ずっしりと重い。
「でも、ジェシカって運動神経いいよね」
「え? どうして?」
「だって、私が市場の入り口に向かってるとき、屋根の上走ってたじゃない」
気が付いたのは偶然だった。
変な気配がすると思って見上げたとき、ジェシカが屋根の上を疾走していた。
私が走るよりも速く、それでいて全くといっていいほど響かない足音。
「ま、まぁそこは軽い技術ってことで」
変なごまかし方をするジェシカを不思議に思いつつ、魅惑の妖精亭に戻るのだった。
いまだに、私がどこの誰なのか思い出せない。
それでも今の生活は楽しい。
だけど、時々来る思いださないといけないって脅迫概念みたいなものは何なんだろう?
―――渦なす……色…震え…止める光…七つの扉…力の…虚栄…到らん………あるがままに
失わずに残った記憶、というよりかは言葉の羅列。
この順番で正しいのかどうかも分からない。
そして、その羅列の最後に響く四文字。
「アルテマ」
この言葉を呟くたびに出る、青白い光の粒は何なのだろうか?
それに、剣を握ったときに見えるイメージ。
二対の翼を持つ、天使の姿。
わからない、全てが。
アルテマが何なのか、私が誰なのか。
何も解らないまま、日は過ぎていく。
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