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#navi(ゼロのアトリエ)
絶好の洗濯日和。ヴィオラートは元の世界の習慣どおり朝のうちに洗濯を済ませてしまおうと、フライングボードに乗り、空の上から洗い場の目星をつける。
「おっせんたく~、おっせんたく~。」
歌いながら降り立ったそこには先客がいたが、まあ、多分メイジだから驚きはしないだろう。そう思っていたヴィオラートだったが、しかし、彼女は黒檀のような美しい瞳を驚愕に見開き、
「こ、このような所に貴族様が…あ、あの、洗い物なら私がしますから…」
ヴィオラートに、それだけで滑稽に見えてくるほど頭を下げていた。何回も、何回も。
ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師3~
洗濯物を洗いながら、二人はとりとめのない話を始めた。
「貴族様では…ないんですか?」
彼女はシエスタ。この学院で奉公しているメイドだという。
「うーん、この世界の貴族様とかよくわからないけど、あたしはヴィオラート。錬金術師だよ。」
「れんきんじゅつしさん、ですか?」
何かひっかかっているような、不明瞭な表情を見せるシエスタ。
「うん、ルイズちゃんの使い魔、ってことになってるみたいだね。」
「あ、ミス・ヴァリエールの使い魔さん?」
「知ってるの?」
「ええ。ミス・ヴァリエールが平民を召喚したって、噂になってますわ。」
くすりと笑うと、何かを思い出したのか、ぽんと手を打つ。
「あ、そうだ。うちの祖母が、話して聞かせてくれていましたわ。れんきんじゅつしさんのこと。」
「え、あたし以外にも錬金術師が?」
「いえ、別の世界で、れんきんじゅつしさんと一緒に旅をしたと。昔の話をする時の祖母はいつも楽しそうでした。」
シエスタは遠くを見つめながら、亡き祖母の名誉が守られたことに感謝する。
祖母のれんきんじゅつしさんは、本当にいたんだと。
「とっても強かったんですよ。引退するまで、ずっと村を守っていたって聞いてます。」
シエスタと同じ黒目黒髪だったこと。古代竜を倒した話を事あるごとに聞かせてくれたこと。そして、錬金術師という人を探していたということ。
「もしかしたら、ヴィオラートさんと同じ世界から来たのかもしれませんね。」
洗濯物をすすぎながら、井戸端会議の花を咲かせていると、
「きゃ…」
水で濡れた地面がモコモコと盛り上がり、見たこともないような巨大なモグラが顔を出した。
「わあ、かわいい! あなたも誰かの使い魔なの?」
モグラはきゅーきゅー鼻を鳴らすと、ヴィオラートの秘密バッグのにおいをかぎ始めた。
何かが不思議なのだろうか、時折首をかしげてヴィオラートの様子をうかがっている。
「よしよし。ゼッテルの匂いが好きなのかな?」
ヴィオラートは、優しくモグラの頭をなでてみた。
なでられると満足したのか、モグラは鼻をひくひくさせながら土の中に消える。
「へ、平気なんですか?」
「大丈夫だよ、怖くなかったし、危ない魔物さんは見ればわかるしね。」
「…」
それを聞いたシエスタは、ヴィオラートを眩しがるような笑みを浮かべる。
「ヴィオラートさんはすごいですね。やっぱり、私とは…違いますよ。」
「あたしは、貴族か平民か、って言われると…生粋の平民だと思うんだけどなあ。」
気の抜けたようなヴィオラートの表情に安堵を憶えながら、
「…ヴィオラートさんは、貴族様よりもっと、貴族様ですね。」
シエスタは、自分の好感情を、頭に浮かんだ原石のままヴィオラートに伝える。
「なんだかそこまで言われると照れちゃうなあ。もー。」
「ふふっ、何を言ってるのか自分でもわかりません。でも、私はそう思います。」
二人とも互いに懐かしい何かを見つけたような、心地よい時間が流れてゆく。
シエスタは最後まで、ヴィオラートをただの平民とは認めてくれなかったけれども。
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