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#navi(ゼロのMASTER)
「ああ、うん。一応、職業は保険調査員なんだけど・・・」
私は目の前の少女にとりあえず簡単な自己紹介をした。・・・理解は、出来ていないようだ。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
また子供達がどっと笑う。目の前の少女は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」
「間違いって、ルイズはいつも間違いだらけじゃん」
「よっ!さすがはゼロのルイズ!」
子供達はルイズ、ルイズという言葉を頻繁に出しながら笑っている。この少女の名前だろうか?
私はだんだんと腹が立ってきた。このルイズという少女がどんな過失をしたのかは知らないが、
あまりにも笑いすぎだし、からかいすぎというものだろう。
私は周りを見渡し、落ち着いて口を開く。
「君達、何がそんなにおかしいんだ?この子が何をしたのかは知らないが、少しからかいすぎなんじゃないか?」
子供達は一瞬、呆気に取られた表情をしたが、すぐにまた笑い始めた。
「だって、平民を召喚したんだぜ!聞いたこともないよな」
「ルイズにしか出来ない奇跡ってやつだろ」
またどっと笑い出す。いけない、どうやら逆効果だったようだ。目の前の少女は・・・
それこそ湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にしている。彼女は肩をわなわなと震わせながら、大声で
「ミスタ・コルベール!」
と叫んだ。程なく、子供達の中から中年の男性が現れた。
なんというか・・・この男性もまた凄まじい。他の子達と同様、まさしく魔法使いの格好だった。
落ち着いた雰囲気の持ち主のようであり、この場をなんとかおさめてくれそうではあったが。
「なんだね、ミス・ヴァリエール」
「あの!もう一回召喚させてください!よりにもよって、使い魔がこんな平民のおじさんだなんて、あんまりです!」
私は少し傷ついた。確かにおじさんなんだろうけど、そこまでハッキリと言わなくても・・・。
「それは駄目だ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君達は〈使い魔〉を召喚する。今やっている通りだ。例外は認められない」
使い魔?召喚?それこそ童話や神話で聞いたような言葉が私の脳に響く。
「それによって現れた使い魔で今後の属性を固定し、それにより専門課程に進むんだ。
一度呼び出した使い魔は変更することが出来ない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。
好むと好まざるに関わらず、彼を使い魔にするしかない」
コルベールという中年の男性はハッキリと、また有無を言わせない口調で話した。
落ち着いていながらも、やや厳格な人物のようだ。
「でも!平民を使い魔にするなんて、聞いたことがありません!」
それでもルイズという少女は食い下がる。彼女も彼女で勝気な性格のようだ。
「これは伝統なんだ、ミス・ヴァリエール。彼は・・・ただの平民のおじさんかも知れないが、
呼び出した以上は君の使い魔にならなければならない。古今東西、人を使い魔にした例はないが、
春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する」
少女はがっくりと肩を落とした。どうやら余程残念なことらしい。
「さて、では儀式を続けなさい」
「え゛、この人とですか?」
彼女はあからさまに嫌な声を出した。何か私にするようだが。
「そうだ。早くしなさい。次の授業が始まってしまうじゃないか。君は召喚にどれだけ時間をかけたと思っているんだね。
何回も何回も失敗して、ようやく呼び出せたんだ。早く契約しなさい」
「あの・・・お取り込み中すみませんが、契約ってなんですか?」
私はコルベール氏に話しかける。が、彼はというと
「ああ、すぐすみますから」と言ったきりだった。
「ねえ」
今度は少女が口を開く。
「ちょっと、しゃがみなさいよ。届かないじゃない!」
「え?あ、ああ。はいはい。これでいいかな?」
私は言われた通り、少女の前にしゃがみこむ。何をするのだろうか?
「まったく・・・なんで私がこんなおじさんと!あなた、感謝しなさいよね。
貴族にこんなことをされるなんて、普通は一生ないんだから」
貴族?この子は貴族なのだろうか。なるほど、勝気な性格だが、確かに行動の端々に気品さが感じられる。
周りの子供達もどこか裕福な家庭の子息、令嬢のように思えた。
少女は目を瞑る。そして、手に持った小さな杖を私の目の前で振り始めた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
幻想的な光景だった。かつての古代文明もこの子のような子供達が神に祈りを捧げていたのだろうか。
そう思うとつい油断してしまって
「んむっ!!??」
がしっと私の頭を掴んだ挙句、キスをされた。キスをされてしまった。こんな小さな子に。
なんということだろうか。過去の依頼で子供からお礼にキスをされたことぐらいはある。
だが、あれは頬だったし・・・。まさか、ここまでとは。
私が呆然していると、彼女は私から離れてこう言った。
「終わりました」
* * *
彼女は一言、こう言った。どうやら照れているらしい。この年頃の子は大胆なのだろうか?
百合子は・・・まさか。
いやいや、実の娘を疑うのは父親失格だ。それよりも、この行為の理由を聞かなければならない。
「あの」
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんと出来たね」
またもや私の言葉を遮って、コルベール氏が嬉しそうに言った。
「相手がただの平民だから契約できたのさ」
「そいつが高位の幻獣だったら契約なんか出来ないって」
子供達が冷やかすように言う。ルイズは子供達を睨みつけながら
「馬鹿にしないで!わたしだってたまにはうまくいくわよ!」
「本当にたまによね。ゼロのルイズ」
見事な巻き髪を持つ少女が出てきた。
ひときわ目立つその姿。これは・・・なんというか。まさしく「貴族のお嬢さん」みたいな子だな。
いまどきこういった娘はそうはいないな。
一人でそう思っていると、ルイズと少女は言い争いを始めた。
巻き髪の子はモンモランシーというらしい。名前も素晴らしいな。
コルベール氏は二人をなだめている。両方勝気だから、さぞ大変だろう。ちょっと同情してしまった。
が、そのとき。
「ぐ、ぐああ!?あ、熱い!!」
私の身体が急に熱くなった。熱い!本当に熱い!まるで全身をオーブンにいれられているようだ。
私が転げまわっていると
「すぐ終わるわよ。待ってなさい。『使い魔』のルーンが刻まれているだけだから」
「つ、使い魔の、ルーンだって・・・?」
彼女が何を言ってるのかはわからないが、私の身に尋常ならざる事態が起きているのは確かだろう。
あまりの苦しさにもはやこれまでかと思いきや、一瞬にして熱さは無くなった。
身体をさする・・・。火傷はしていないようだ。
あれだけの熱だと全身火達磨になっているのではないかと思ったのだが。
「ふむ・・・」
コルベール氏が近付き、私の左手の甲を取った。何だろうか?
私もつられて見ると、そこにはみたことも無い文字が刻まれていた。
考古学を修めた以上、ある程度の古代文字は見慣れていたが、こんな文字はみたことがなかった。
それ以前に、なぜ私の手の甲にこんなものが?
まさか、さっきの熱―――
焼印のようなものなのかと思うと、ますます私の気は遠くなっていった。
「珍しいルーンだな」
コルベール氏が首をかしげながら言う。彼等にとって珍しいのだろう。私にとっては災難だが。
「さてと、皆教室に戻るぞー」
コルベール氏は私の手の甲に刻まれた文字をじろじろと眺めた挙句、生徒達に声をかける。
いきなり宙に浮いた。浮いたのである。コルベール氏は生徒達と共に空中に浮き、
そのまま石造りの建造物に向けて飛んでいってしまった。
私はぽかんと口を開けて、それを見送った。電気ショック、キス、熱、そして宙に浮いたコルベール氏と生徒達。
私の頭脳はショート寸前になっていた。
子供達は飛び去っていくときでもルイズに向けてからかいの言葉を残していった。
どうやら、彼女は彼等のように飛ぶことは出来ないらしい。
ルイズはしばらく黙っていたが、急に振り返って私の方を見るなり
「あんた、なんなのよ!!」
と怒鳴った。なぜ私に怒るのか理由がわからない。
「あの・・・ルイズ、さん。正直、私には何が何だかわからないんだ。もし良かったら説明してくれると嬉しいんだけど。
彼等のこととか、この・・・文字のこととか」
私は手の甲に刻まれた文字を彼女に見せながら言った。
だが、彼女はよほど怒り心頭なのか、私の話に落ち着いて耳を傾けてくれそうにはなかった。
代わりに返って来た言葉は、物凄い文句の嵐だった。
ここはかの高名なトリステイン魔法学校だということ、彼等は全員本物の『魔法使い』だということ、
ヴァリエール家の三女が、由緒正しい古い家柄を誇る貴族のわたしが
なぜあんたのような平民のおじさんを使い魔にしなければならないのかということ、ファーストキスだったということ
全部聞き終わった私は気絶した。いや、むしろさせられたと言ったほうがいいかもしれない。
百合子・・・お父さんは・・・。
目が覚めた私はルイズと話していた。彼女の部屋らしい。気絶したあとに運び込まれたようだ。
上品さを体現したかのような部屋だった。私の部屋もこれぐらい・・・いや、似合わないか。
昼と比べ、やや落ち着いたのか、ルイズは私の話にも興奮せずに聞いてくれているようだ。
「私はイギリスという国のロンドンという街にいたんだ」
「信じられないわ」
「私だって信じられないよ。子供の頃に聞いた魔法使いが目の前にいるというんだからね」
「魔法使いはいて当たり前なのよ。だいたい、別世界から来たなんて、そんな御伽噺じゃあるまいし」
同感だよ・・・。
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