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「BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_06」(2007/10/30 (火) 02:10:41) の最新版変更点
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学院長室でオスマンとコルベールは、4人の報告を聞いていた。
「ふむ、つまり宝物は失ったが、そのお陰でフーケは捕らえることができたんじゃな」
霧亥は無言で頷いて、それを肯定する。秘薬とメイジの治療を受けたとはいえ、巻かれた包帯は痛々しいものだった。
「失った物は仕方が無い。フーケを捕らえ、なおかつ死人が出なかったことを幸いとしよう。
今回の君たちの勇敢な働きに応えるべく学院は君たち3人へ『精霊勲章』の推薦を行った。追って沙汰があるじゃろう」
3人の顔がぱぁっと輝いた。
「本当ですか?」
キュルケは驚いた声で言った。オスマンは静かにうなずく。
「……」
霧亥はオスマンを黙って見つめていた。オスマンに聞く事が、彼には存在した。
ルイズはそんな霧亥の視線を、少し勘違いしてはいるものの察することができた。
「オールド・オスマン。霧亥には何も無いんですか?」
「残念ながら彼は貴族ではないからの。使い魔である以上、彼の功績は自動的に主人である君に反映されるのじゃよ」
「そうですか……」
オスマンは思い出したかのように手を打つ。
「さて、今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。トラブルはあったが外側だけでも宝は取り戻せたし、フーケも捕まった。
予定通りに執り行うとしよう。楽しむといいじゃろう」
キュルケの顔はぱっと輝いた。
「そうでしたわ!フーケの騒ぎですっかり忘れておりました!」
「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしてきたまえ。せいぜい着飾るのじゃぞ」
3人は礼をするとドアに向かった。だが霧亥は微動だにしない。
ルイズもキュルケもタバサも霧亥のことチラっと見つめて立ち止まった。
「先に行け。俺は聞くことがある」
切り替えが早いキュルケは笑顔で立ち去り、タバサが後に続く。最後のルイズも、頷いて出て行った。
「何かね?君は今回の最大の功労者じゃから、できる限りの力にはなろう」
「3つ聞きたいことがある」
「言ってみなさい」
コルベールは興味深げに、2人の会話に耳を傾けた。
「視界に文字が見える人間の話を聞いたことはあるか?」
オスマンは首を横に振った。
「あの『異界の板』は、いつ、どこで手に入れた?」
「ワシの命の恩人の遺品じゃよ。30年も前になるか…ワイバーンに襲われているところ、その者に助けられてのう」
「……助けた?」
「うむ、いきなり空に出現して落下してきたのでワシも驚いていたのじゃが、運悪くワイバーンも驚いてしまってな。
そのとき咄嗟に放った魔法は今でも忘れんよ。見えない力がワイバーンの首を綺麗に刎ねた、あの光景はな」
「それからどうなった」
「いきなり彼は倒れてしまったよ。今思えば、あれは彼の最後の力ではなかったかと……そう思うこともある」
「そのときに『異界の板』を手に入れたのか」
「彼は奇妙な鎧に身を包んでいたがそれはどうやっても外せんかったし、杖は一緒に埋葬するべきだと思ったからのう」
オスマンは遠い目をしていた。
「その男の遺体はどこにある」
「うむ?」
「墓を調べる必要がある」
「待ちなさい、どういうことかね?」
「男は俺と同じ世界から来た可能性が高い」
「世界?つまり君は別の世界から来たということかね?」
「ほほう。興味深いのう」
これにはコルベールが反応した。オスマンの目も光る。
「今から、というわけにはいかないが、墓は近いうちに見せてあげることはできるじゃろう」
「よろしいのですか?」
「かまわんよミスタ・コルベール。彼の功労無くしてはこの一件、君も含めた教員を動かさねばならんところじゃった」
「……もうひとつ聞きたいのは、これだ。何か知っている事はあるか?」
霧亥は自身のルーンの事も伝えた。自分の力では制御できない未知の存在。優秀な補助機能だが干渉が強制的なのも確かだ。
ルーンに関する知識を持たない彼にとってこれは危険なデバイスという認識だった。
そちらの方はすぐに正確な解答を得られることができた。
ガンダールヴ。魔法の祖の使い魔。あらゆる武器を使いこなす存在。魔法の詠唱を行う主の防衛を目的とする。
大剣と長い槍を用いたとされるがその武器が現存するかは不明。その知名度を利用した贋作も多数存在。
「ルイズは伝説の魔法使いなのか?」
「わからん。彼女はむしろ魔法の実技に関して言えば最低レベルと言ってもいいじゃろう。しかしな…」
「彼女の失敗は通常の失敗とも違う。少なくともあんな失敗例は正直なところ、異常です」
「と、ミスタ・コルベールの言うとおり、少し気になる点があるのも事実じゃ」
「……」
とにかく、とオスマンは言った。
「君には感謝している。あまり力にはなれないかもしれないが、私もコルベールも君の味方じゃ、ガンダールヴ。
おぬしがどういう理屈でここにいるのか、似たような事例は無いのか、私なりにあたってみるとしよう。でも」
「……?」
「何も判らんでも恨まんでくれよ?なぁに、この世界も住めば都。何なら嫁さんも探してやろう。ふぉふぉふぉ」
「…………」
霧亥は話は終わりだと言わんばかりに、踵を返して部屋を出た。そしてデルフリンガーに話しかける。
「デルフリンガー」
「ダメだ、思い出せない」
「そうか」
「悪ぃな相棒……」
「気にするな」
アルヴィーズ食堂の上層が大きなホールになっていて、舞踏会はそこで行われていた。
なぜ人々が踊るのかを霧亥は知らない。だが特に行くあてが無いので、会場の隅にひっそりと立っていた。
キュルケは男たちに囲まれて笑っている。タバサは料理と格闘中だ。
「こんばんは、キリイさん。噂では大変な活躍をしたと伺いました。あ、肉料理はいかがですか?」
「……くれると助かる」
給仕をしていたシエスタが話しかけてくる。あちこちで忙しそうに人々が動き回っていた。
「お怪我はよろしいのですか?」
「ああ」
モグモグと動物性のたんぱく質を摂取する。シエスタは気を利かせて、ワインの瓶を渡してくれた。
「不純物が多い」
「それは澱(おり)って言うそうですよ。古くて良いワインには、そういうものがあるそうです」
「そうなのか」
「マルトーさんの受け売りですけどね……でもキリイさん、凄いですね。フーケを捕まえちゃうなんて」
「偶然だ。運が良かった」
このセリフはデルフリンガーの受け売りだ。どうせ何度か聞かれるだろうから、という彼の見込みは正解だった。
運というのは、この世界では確率よりも通りが良くて当たり障りの無い表現だ。
霧亥は特に反対する理由は無いので、こういう状況での言動はデルフリンガーの提案を採用することにした。
「でも、やっぱりすごいですよ」
「それが役割だ。俺にシエスタのような技術は無い」
「役割ですか」
「洗濯は苦手だ」
「……キリイさんって、実は面白い人ですね」
くすくすとシエスタが笑い出した。なぜ笑っているのか霧亥には理解できない。
「あ、私、そろそろ仕事に戻らなくちゃ。何か欲しいものがあったら言ってくださいね」
「わかった」
シエスタが去ってから暫くして、ホールの壮麗な門が開かれていった。
騎士と思しき兵装の男が、声高々にルイズの到着を告げる。
楽師達が音楽を奏で、多くの男たちが今まで小馬鹿にしていた美しい少女へとダンスの誘いへ向かっていく。
しかしルイズはそれらの誘いを全て断ると、霧亥の元へと真っ直ぐ歩いてきた。
「楽しんでる?」
「……」
無言で肉料理をルイズへ差し出す霧亥。ルイズはひとつそれを口に運ぶと、美味しい、と言った。
霧亥は近くにあったテーブルにトレイを戻すと、ふたたび壁に寄りかかる。
「おお。馬子にも衣装じゃねーか」
デルフリンガーもルイズに気づいたのか、そう言った。
「文句ある?」
ルイズはどこに持っていたのか、杖を取り出す。
「いえ、全然大丈夫です」
「踊らないのか」
霧亥はルイズに尋ねた。
「相手がいないの」
「あれは誘いじゃなかったのか?」
ルイズは無言で霧亥へ手を差し出した。
「どうした」
「お、踊ってさしあげても、よくってよ」
霧亥は首を横に振る。
「それは俺の役割じゃない。それに両腕が完治しないとあの動作は困難だろう」
「あ……そっか、腕……」
ルイズはしばらく無言だった。音楽だけが、静かに流れている。
「ねえ、霧亥。私、信じてあげるわ」
「……?」
「あなたが別の世界から来たってこと。あんな道具、私、見たこと無いもの」
「そうか」
「私の姉さまが王立魔法研究所の研究員だから、私も少しはマジックアイテムなんかには詳しいの。
それで、その道具がマジックアイテムかどうかを調べる魔法があるんだけど、その魔法では引っかからなかったみたいね」
「……」
ルイズは俯いた。
「ねえ。帰りたい?」
「戻って確認したいことがある。その為にも情報が必要だ」
そうよね、と彼女は呟いた。それから頬を赤らめると、思い切ったようにこういって来た。
「ありがとう。その、フーケに人質に取られたとき、助けてくれて」
「気にするな」
そう霧亥は答えた。
「俺は使い魔としての役割を果たしただけだ」
「おでれーた!」
静かにパーティを眺める2人の後ろでデルフリンガーが感嘆の声を漏らす。
「主に踊りを誘われる使い魔も見るのも、それを断る使い魔を見るのも、俺ァ初めてだぜ!」
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