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「サイヤの使い魔-11」(2010/01/04 (月) 19:36:35) の最新版変更点
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#navi(サイヤの使い魔)
その晩、トリステイン魔法学院は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
なんせ、秘宝の『破壊の杖』が盗まれたのである。それも、巨大なゴーレムが白昼堂々、塔の外壁を叩き壊すという荒技で。
外壁の厚さは優に50サントはある。ちょっとやそっとの衝撃で壊れる代物では無かったはずだった。
宝物庫には、学院中の教師が集まり、壁に空いた大きな穴を見て、口をあんぐりと開けていた。
壁に刻まれたフーケの犯行声明を見て、口々に勝手な事を喚いている。
「まさか、この魔法学院が賊に襲われるとはのう」オールド・オスマンが重い口を開いた。
「申し訳ありません。私の責任です」日中の見回りをしていたコルベールが頭を垂れる。
「いやいやいや、まさか外からあんな形で襲ってくるとは誰も予想しとらんかったからの。責任をお主一人に押し付けるのはちと筋違いじゃ」
日中の見回りは、主に宝物庫の扉を中心とした「室内」に対し行われる。壁の外までは、警戒対象に含まれていなかった。
夜間であれば、外にある詰所に当直の教師が待機する事になっているのだが、よりによってメイジがひしめくこの魔法学院に好き好んで進入する賊などいる筈が無い、という驕りから、真面目に当直をする教師はいなかった。
オスマン氏は壁に開いた穴を見つめた。
「このとおり、賊は大胆にも白昼堂々忍び込み、『破壊の杖』を奪っていきおった。つまり、我々は油断していたのじゃ。
責任があるとするなら、我ら全員にあるといわねばなるまい。…で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この4人です」コルベールがさっと進み出て、自分の後ろに控えていた4人を指差した。
ルイズにキュルケにタバサ、そしてギーシュである。悟空もいるが、使い魔なので数に入っていない。
「ふむ…君たちか。詳しく説明したまえ」
ルイズが進み出て、見たままを述べた。
「あの、大きなゴーレムが現れて、ここの壁を壊したんです。肩に乗ってた黒いメイジがこの宝物庫の中から何かを……、その『破壊の杖』だと思いますけど……。
盗み出したあと、またゴーレムの肩に乗りました。ゴーレムは城壁を越えて歩き出して……、最後には崩れて土になっちゃいました」
「それで?」
「後には、土しかありませんでした。肩に乗ってた黒いローブを着たメイジは、影も形もなくなってました」
「ふむ……」
オスマン氏はヒゲを撫でた。
悟空は、この老人を見て(カオは亀仙人のじっちゃんに似てっけど、声は神様ソックリだな)と思っていた。
「後を追おうにも、手がかり無しというわけか……。そういえば、ミス・ロングビルの姿が見えんのう。お前さん、一緒じゃなかったんかい?」
「はあ、今朝方宝物庫の前でお会いしましたが、それからは……」
「宝物庫じゃと?」
「はい。何でも、目録を作っているとかで」
「はて、わしそんな事頼んだっけかな?」
そんな風に噂をしていると、ミス・ロングビルが現れた。
「ミス・ロングビル! 何処に行ってたんですか! 大変ですぞ! 事件ですぞ!」
興奮した調子で、コルベールがまくし立てる。しかし、ミス・ロングビルは落ち着き払った態度で、オスマンに告げた。
「申し訳ありません。調査のため、外出しておりました」
「調査?」
「そうですわ。明るい内の犯行ですから、もしかしたら周辺地域に目撃者がいるかと思いましたの」
「仕事が早いの。ミス・ロングビル」
コルベールが慌てた調子で促した。
「で、結果は?」
「はい。フーケの居所がわかりました」
「な、何ですと!」コルベールが素っ頓狂な声をあげた。
「誰に聞いたんじゃね?」
「近在の農民に聞き込んだところ、夕刻に、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。
恐らく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」
「黒ずくめのローブ? それはフーケです! 間違いありません!」
オスマン氏は目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。
「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか」
「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」コルベールが叫んだ。
「ばかもん、その間に逃げてしまうわい。第一、降りかかる火の粉を己で払えぬようで何が貴族じゃ。
魔法学院の宝が盗まれた、これは即ち魔法学院の問題じゃ。当然我らで解決する!」
ミス・ロングビルは微笑んだ。まるで、この答えを待っていたかのようだった。
その様子を傍から見ていた悟空は、ある違和感に気付いた。
「なあ、おめえフーケじゃねえのか?」
場の注目が、一斉に悟空に向けられた。
「あ、あんたいきなり何言い出すのよ!?」面食らったルイズが悟空に問う。
「あいつからフーケと同じ気を感じんだ」
「嘘!? だって今、ミス・ロングビルがフーケは男だって……」
「あー、失礼。そのキってのは、一体何だね」興味を引かれたコルベールが悟空に尋ねた。
「気配…っつえばいいのかな、オラもうまく説明できねえんだけど」
「それは一人一人がハッキリ識別できるくらい、違っているのかな?」
「ああ。たまに似てる奴とかはいっけど」
血縁関係にある者は基本的に気が似ている。
また、この世界に来てから悟空は気付いたのだが、同じ系統の魔法を使うメイジも血縁関係とはまた違う共通点があった。
あえて例えるなら、血縁関係の気は匂いが似ていて、系統関係の気は色が似ていると言った感じだ。
「そ、それには例外はないんですか? た…たまたま同じキを持つ人が他にいた、とか……」
いきなり糾弾されたミス・ロングビルが冷や汗を垂らしながら悟空に訊く。
ルイズが、「ほら、あんたが変な事言うから怖がってるじゃない」と悟空を肘で突ついた。
「ん~……。まあ、あるっちゃあっけどよ……」
つい最近、悟空はその人物と戦ったばかりであった。
元レッドリボン軍の天才的科学者、ドクター・ゲロの作り出した驚異の人造人間・セル。
彼はその細胞に悟空たちの細胞を含んでいるおかげで、彼らの能力を使えるだけでなく、その気も彼らのそれが混じり合ったものになっていた。
故に、同じ気が複数存在するという事は有り得る。
ましてここは、地球に似てはいるものの、悟空にとって異世界だ。同じ気を持つ存在がいてもおかしくは無い。
現に悟空は先日その実例を見たばかりだった。
タバサが炎のメイジと決闘していた時、近くに倒れていた赤毛の少女。
あの少女――その正体はタバサが持ち込んだ人形であった――は、タバサが言うには、複製元の人物と全く同じ能力を持つらしい。
既に死んでいたので気は感じられなかったが、恐らく生きていれば、あの後やってきた少女と気もそっくり同じだったのだろう。
自分が知らないだけで、やはりこの世界には同じ気をもつ人間が存在する手段がいくつかあるのかもしれない。
「……うん。オラが知んねえだけかもな。悪いな、疑っちまって」
「い、いえ……」
自分に疑いがかかる事が余程驚きだったのか、ミス・ロングビルの顔は青褪めていた。
オスマン氏は咳払いをすると、有志を募った。
「では、捜索隊を編成する。我は戸思うものは、杖を掲げよ」
誰も杖を掲げない。困ったように、顔を見合わすだけだ。
「おらんのか? おや? どうした? フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」
その時、一輪の薔薇がかざされた。
「ミスタ・ポケモン!」オスマン氏がその人物の名を呼ぶ。
「グラモンです」
「ああすまん」
ギーシュであった。
次いで、ルイズも杖を掲げた。
「ミス・ヴァリエールまで!」ミセス・シュヴルーズが驚いた声をあげた。
「何をしているのです! あなたがたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか」
ルイズの指摘通りだった。教師陣は互いに気まずそうな顔で目配せをするだけであった。
「それに、今回のこの騒動、僕にも責任の一端があります」
「それはどういうことじゃな、ミスタ・グラモン」今度は間違えなかった
「騒動が起こった時、僕はミス・ヴァリエールの使い魔と互いの技量を競い合っていました。その際、勢い余って本塔の外壁に傷をつけてしまったのです。
奇しくもその位置は、丁度宝物庫の辺りでした」
「何が言いたいんじゃ」
「あの外壁が無傷だったら、もしかしたら今回の盗難事件は起こらなかったかもしれない、という事です」
「それはあくまで仮定じゃな。じゃが、その責任感は認めよう。貴族として何より必要な素質じゃな」
「ありがとうございます」
更に杖を掲げた人物がいた。今度はコルベールが驚いた声をあげる。
「ツェルプストー! 君まで!」
「ふん、ヴァリエールには負けられませんわ」キュルケはつまらなさそうに言った。
キュルケが杖を掲げるのを見て、タバサも掲げた。
「タバサ。あんたはいいのよ。関係ないんだから」
キュルケがそう言うと、タバサは短く「心配」とだけ答えた。悟空とキュルケを一緒にしておくのが、である。
その点を微妙に誤解したキュルケは感動した面持ちでタバサを見つめた。ルイズも礼を告げる。
「ありがとう……タバサ……」
そんな二人の様子を見て、オスマン氏は笑った。
「そうか。では、頼むとしようか」
「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒たちをそんな危険に晒すわけには!」
「では君が行くかね? ミセス…ええと、シュヴルーズ」
「い、いえ……わたしは体調がすぐれませんので……」
「彼女達は、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」
タバサは返事もせずにぼけっと突っ立っている。教師達は驚いたようにタバサを見つめた。キュルケも「本当なの、タバサ?」と驚いている。
「なあ、シュヴァリエって何だ?」悟空がルイズに訊いた。
「王室から与えられる爵位よ。位は低いけど、それでもタバサぐらいの歳のメイジが持てるようなもんじゃないわ」
「へー、凄えんだなあ」
宝物庫がざわめいた。シュヴァリエは他の爵位と違い、金さえ出せば手に入る類のものではないからである。純粋に業績に対して与えられる、いわば実力の証だ。
次いでオスマン氏はキュルケを見つめた。思わず視線が胸元に吸い寄せられる。
「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自信の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」
胸の谷間から目を離せないオスマン氏の言葉に、キュルケは得意げに髪をかき上げた。
やっとの思いでキュルケの乳から目を逸らしたオスマン氏がギーシュに目を向ける。
「ミスタ・グラモンはあのグラモン元帥の息子じゃったな。貴族としての素質は十分じゃし、その実力もドットメイジながらラインに勝るとも劣らないそうじゃが」
「光栄です」
それから、ルイズが自分の番だとばかりに可愛らしく胸を張った。オスマン氏は困ってしまった。誉めるところが見つからない。
こほん、と咳をすると、オスマン氏は目を逸らした。
「その……ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが?
んでー、その使い魔は……、あー、何だ」
悟空を見るが、悟空とギーシュの決闘を見ていない彼には何ともコメントのしようが無い。
唸り始めたオスマン氏に、ギーシュが助け舟を出した。
「オールド・オスマン。彼は戦力として非常に優秀です。僕が保証します」
「私も」タバサも同調する。
「おお、そうかそうか! うむ、なら文句は無いのう」
実力者2人の推薦とあれば、断る理由は無い。オスマン氏は目に見えて安堵した表情を浮かべた。
コルベールが興奮した調子で、後を引き取った。
「そうですぞ、なにせ、彼はガンダむぎゅ」
オスマン氏が慌ててコルベールの口を押さえた。
「ガンダム?」
「いえ! なんでもありません! はい!」
すっかり黙ってしまった教師陣に向かって、オスマン氏は威厳のある声で言った。
「さて、誰かこの4人に勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ」
誰もいない。オスマン氏は悟空を含む5人に向き直った。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
ルイズとタバサとキュルケとギーシュは、真顔になって直立すると「杖にかけて!」と同時に唱和した。それから女性陣はスカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。ギーシュは右手を胸に当てて一礼した。悟空も見様見真似でギーシュに倣った。
「では、明朝出発としようかの。それまでに馬車を用意しておく。魔法は目的地に着くまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」
「はい。オールド・オスマン」
「彼らを手伝ってやってくれ」
「もとよりそのつもりですわ」ミス・ロングビルは頭を下げた。
「うむ。では、本日は解散とする。4人とも明日に備えて充分英気を養っておくように」
翌朝――
5人はミス・ロングビルを案内役に、早速出発した。ミス・ロングビルが御者を買って出た。
黙々と手綱を握る彼女にキュルケがちょっかいを出すのをルイズが諌めた後、悟空に向き直る。
「ゴクウ、まだフーケのキは感じない?」
「いや、昨日からずっと探ってんだけど、全然感じねえんだ」
前夜ルイズが、悟空に瞬間移動でフーケの所に行き、一気に捕まえる事を提案したのだが、悟空がいくら集中してもフーケの気を捉える事はできなかった。
系統魔法の一発でも使ってくれれば、すぐに見つけられるのだが、その兆候もない。
唯一、ミス・ロングビルからフーケと同じ気を感じるだけであった。
「何だギーシュ、浮かねえ顔だな」
「実を言うと、今になって怖くなってきた……。同じ土系統だからわかるんだ、あの土ゴーレムは僕のワルキューレじゃ歯が立たない」
「大丈夫だ。おめえだって何かの役には立つさ」
「そう、かな……」
馬車は深い森に入っていった。鬱蒼とした森が、女性陣の恐怖を煽る。昼間だというのに薄暗く、気味が悪い。
「ここから先は、徒歩で行きましょう」
ミス・ロングビルがそう言って、全員が馬車から降りた。
森を通る道から、小道が続いている。
「なんか、暗くて怖いわ……、いやだ……」
キュルケが悟空の腕に手を回してきた。
「おい、くっつくなよ」
「だってー、すごくー、こわいんだものー」
とてもそうは見えない。むしろこの状況を楽しんでいる。
悟空はルイズに何か言ってもらおうと振り向いたが、さっきまでルイズがいた筈の所には誰もいない。
と、反対側の腕に誰かがしがみ付いた。
「お、おめえもか」
「つ…使い魔ならまず主人を守りなさいよね!」何故か顔を赤くしたルイズが悟空に言った。
その姿を見たギーシュが「両手に花とは妬けるね」と一人ごちた。
暫く歩いていると、開けた場所に出た。目撃証言通り、森の中の空き地といった場所に木こり小屋だったらしき廃屋がぽつんと立っている。
6人は小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したまま廃屋を見つめた。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
ミス・ロングビルが廃屋を指差して言った。
人が住んでいる気配は全く無い。
「ゴクウ、どう?」
「いや、やっぱフーケの気は感じねえ。けど、気を消して隠れてるだけかもしんねえぞ」
作戦会議が始まった。タバサが中心となり、皆の提案をまとめて地面に木の枝で模式図を描いていく。
まず、斥候として1名が小屋に潜入。フーケがいたら、捕縛ないし外に誘い出し、残りのメイジが魔法で一気に攻撃する。
斥候役は、満場一致で悟空に決定した。1対1でフーケと戦えそうなのは彼だけだ。
ミス・ロングビルの様子がおかしい事に気付いたギーシュが、彼女に声をかけた。
「ミス・ロングビル、顔色がすぐれませんが、大丈夫ですか?」
「ええ、実を言うと少し、怖くなってまいりました」
「もしもの事がありますから、今のうちに安全な場所まで避難しておいた方がいいかもしれません」
「そうですね。では、お言葉に甘えさせて頂きます」
ミス・ロングビルが来た道を引き返していった。
悟空は小屋のそばまで一瞬で移動した。ガラスの割れた窓からそっと室内の様子を伺う。
小屋の中は、一部屋しかないようだった。部屋の真ん中に置かれたテーブルに積もった埃から察するに、ここで誰かが最近生活していた様子は無さそうだ。
隅には薪が積み上げられており、その隣には木製のチェストが置いてあった。大きいが、人が隠れられるほどではない。
悟空は暫く考えた後、皆を連れてくる事にした。一度瞬間移動でルイズ達の元に戻る。
「どうだった?」
「中には誰もいねえな。隠れられる所も無さそうだ」
「逃げたのかしら?」
「とりあえず小屋に入ってみよう。手がかりがあるかもしれない」
「ギーシュに賛成」
再び小屋まで移動する。タバサがドアに向けて杖を振るい、「罠は無いみたい」と呟いて、ドアを開け、中に入っていく。
キュルケ、ギーシュ、悟空が後に続く。ルイズは外で見張りをすると言って、その場に残った。
床を見たギーシュがある事に気付いた。
「最近誰かがここに来たのは間違い無さそうだ。部屋の中の足跡が新しい」
見ると、確かに床の埃の上に最近ついたと思しき足跡があった。真っ直ぐチェストに向かい、それから引き返したようだった。
チェストに再度タバサが杖を振るい、罠が無い事を確認するとそっと蓋を開ける。
中には、黒い箱が入っていた。鍵が掛けられていたようだが、開いている。
「それが破壊の杖?」
「多分そう」
タバサが箱の蓋を開け――固まった。
「どうしたの?」キュルケが箱の中を覗き込み、「へ?」と素っ頓狂な声をあげた。ギーシュと悟空も中を見る。
「……これが…『破壊の杖』……?」
「オラ見た事ねえけど、本当にこれが宝物庫にあったのか?」
「うん……前に宝物庫を見学した時、確かにこの箱のそばに『破壊の杖』って書かれた銘板があったわよ」
「…まあ、杖は杖だね、一応」
「けど何でこんな事に……」
「もしかしたら、フーケが?」
「可能性はある」
その時、悟空が急激に増大する気を感じた。
今度は間違い無い。
フーケだ。
そして、外で見張りをしていたルイズの悲鳴が聞こえた。
「きゃぁああああああ!」
「どうした! ルイズ!」
一斉にドアを振り向いた瞬間、轟音を立てて小屋の屋根が吹っ飛ぶ。
青空をバックに、巨大なフーケの土ゴーレムが悟空達を見下ろしていた。
一方その頃……
「お…俺は無視かよ……」
ルイズの部屋で、デルフリンガーが腐っていた。
#navi(サイヤの使い魔)
&setpagename(ついにフーケあらわれる!)
#navi(サイヤの使い魔)
その晩、トリステイン魔法学院は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
なんせ、秘宝の『破壊の杖』が盗まれたのである。それも、巨大なゴーレムが白昼堂々、塔の外壁を叩き壊すという荒技で。
外壁の厚さは優に50サントはある。ちょっとやそっとの衝撃で壊れる代物では無かったはずだった。
宝物庫には、学院中の教師が集まり、壁に空いた大きな穴を見て、口をあんぐりと開けていた。
壁に刻まれたフーケの犯行声明を見て、口々に勝手な事を喚いている。
「まさか、この魔法学院が賊に襲われるとはのう」オールド・オスマンが重い口を開いた。
「申し訳ありません。私の責任です」日中の見回りをしていたコルベールが頭を垂れる。
「いやいやいや、まさか外からあんな形で襲ってくるとは誰も予想しとらんかったからの。責任をお主一人に押し付けるのはちと筋違いじゃ」
日中の見回りは、主に宝物庫の扉を中心とした「室内」に対し行われる。壁の外までは、警戒対象に含まれていなかった。
夜間であれば、外にある詰所に当直の教師が待機する事になっているのだが、よりによってメイジがひしめくこの魔法学院に好き好んで進入する賊などいる筈が無い、という驕りから、真面目に当直をする教師はいなかった。
オスマン氏は壁に開いた穴を見つめた。
「このとおり、賊は大胆にも白昼堂々忍び込み、『破壊の杖』を奪っていきおった。つまり、我々は油断していたのじゃ。
責任があるとするなら、我ら全員にあるといわねばなるまい。…で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この4人です」コルベールがさっと進み出て、自分の後ろに控えていた4人を指差した。
ルイズにキュルケにタバサ、そしてギーシュである。悟空もいるが、使い魔なので数に入っていない。
「ふむ…君たちか。詳しく説明したまえ」
ルイズが進み出て、見たままを述べた。
「あの、大きなゴーレムが現れて、ここの壁を壊したんです。肩に乗ってた黒いメイジがこの宝物庫の中から何かを……、その『破壊の杖』だと思いますけど……。
盗み出したあと、またゴーレムの肩に乗りました。ゴーレムは城壁を越えて歩き出して……、最後には崩れて土になっちゃいました」
「それで?」
「後には、土しかありませんでした。肩に乗ってた黒いローブを着たメイジは、影も形もなくなってました」
「ふむ……」
オスマン氏はヒゲを撫でた。
悟空は、この老人を見て(カオは亀仙人のじっちゃんに似てっけど、声は神様ソックリだな)と思っていた。
「後を追おうにも、手がかり無しというわけか……。そういえば、ミス・ロングビルの姿が見えんのう。お前さん、一緒じゃなかったんかい?」
「はあ、今朝方宝物庫の前でお会いしましたが、それからは……」
「宝物庫じゃと?」
「はい。何でも、目録を作っているとかで」
「はて、わしそんな事頼んだっけかな?」
そんな風に噂をしていると、ミス・ロングビルが現れた。
「ミス・ロングビル! 何処に行ってたんですか! 大変ですぞ! 事件ですぞ!」
興奮した調子で、コルベールがまくし立てる。しかし、ミス・ロングビルは落ち着き払った態度で、オスマンに告げた。
「申し訳ありません。調査のため、外出しておりました」
「調査?」
「そうですわ。明るい内の犯行ですから、もしかしたら周辺地域に目撃者がいるかと思いましたの」
「仕事が早いの。ミス・ロングビル」
コルベールが慌てた調子で促した。
「で、結果は?」
「はい。フーケの居所がわかりました」
「な、何ですと!」コルベールが素っ頓狂な声をあげた。
「誰に聞いたんじゃね?」
「近在の農民に聞き込んだところ、夕刻に、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。
恐らく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」
「黒ずくめのローブ? それはフーケです! 間違いありません!」
オスマン氏は目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。
「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか」
「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」コルベールが叫んだ。
「ばかもん、その間に逃げてしまうわい。第一、降りかかる火の粉を己で払えぬようで何が貴族じゃ。
魔法学院の宝が盗まれた、これは即ち魔法学院の問題じゃ。当然我らで解決する!」
ミス・ロングビルは微笑んだ。まるで、この答えを待っていたかのようだった。
その様子を傍から見ていた悟空は、ある違和感に気付いた。
「なあ、おめえフーケじゃねえのか?」
場の注目が、一斉に悟空に向けられた。
「あ、あんたいきなり何言い出すのよ!?」面食らったルイズが悟空に問う。
「あいつからフーケと同じ気を感じんだ」
「嘘!? だって今、ミス・ロングビルがフーケは男だって……」
「あー、失礼。そのキってのは、一体何だね」興味を引かれたコルベールが悟空に尋ねた。
「気配…っつえばいいのかな、オラもうまく説明できねえんだけど」
「それは一人一人がハッキリ識別できるくらい、違っているのかな?」
「ああ。たまに似てる奴とかはいっけど」
血縁関係にある者は基本的に気が似ている。
また、この世界に来てから悟空は気付いたのだが、同じ系統の魔法を使うメイジも血縁関係とはまた違う共通点があった。
あえて例えるなら、血縁関係の気は匂いが似ていて、系統関係の気は色が似ていると言った感じだ。
「そ、それには例外はないんですか? た…たまたま同じキを持つ人が他にいた、とか……」
いきなり糾弾されたミス・ロングビルが冷や汗を垂らしながら悟空に訊く。
ルイズが、「ほら、あんたが変な事言うから怖がってるじゃない」と悟空を肘で突ついた。
「ん~……。まあ、あるっちゃあっけどよ……」
つい最近、悟空はその人物と戦ったばかりであった。
元レッドリボン軍の天才的科学者、ドクター・ゲロの作り出した驚異の人造人間・セル。
彼はその細胞に悟空たちの細胞を含んでいるおかげで、彼らの能力を使えるだけでなく、その気も彼らのそれが混じり合ったものになっていた。
故に、同じ気が複数存在するという事は有り得る。
ましてここは、地球に似てはいるものの、悟空にとって異世界だ。同じ気を持つ存在がいてもおかしくは無い。
現に悟空は先日その実例を見たばかりだった。
タバサが炎のメイジと決闘していた時、近くに倒れていた赤毛の少女。
あの少女――その正体はタバサが持ち込んだ人形であった――は、タバサが言うには、複製元の人物と全く同じ能力を持つらしい。
既に死んでいたので気は感じられなかったが、恐らく生きていれば、あの後やってきた少女と気もそっくり同じだったのだろう。
自分が知らないだけで、やはりこの世界には同じ気をもつ人間が存在する手段がいくつかあるのかもしれない。
「……うん。オラが知んねえだけかもな。悪いな、疑っちまって」
「い、いえ……」
自分に疑いがかかる事が余程驚きだったのか、ミス・ロングビルの顔は青褪めていた。
オスマン氏は咳払いをすると、有志を募った。
「では、捜索隊を編成する。我は戸思うものは、杖を掲げよ」
誰も杖を掲げない。困ったように、顔を見合わすだけだ。
「おらんのか? おや? どうした? フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」
その時、一輪の薔薇がかざされた。
「ミスタ・ポケモン!」オスマン氏がその人物の名を呼ぶ。
「グラモンです」
「ああすまん」
ギーシュであった。
次いで、ルイズも杖を掲げた。
「ミス・ヴァリエールまで!」ミセス・シュヴルーズが驚いた声をあげた。
「何をしているのです! あなたがたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか」
ルイズの指摘通りだった。教師陣は互いに気まずそうな顔で目配せをするだけであった。
「それに、今回のこの騒動、僕にも責任の一端があります」
「それはどういうことじゃな、ミスタ・グラモン」今度は間違えなかった
「騒動が起こった時、僕はミス・ヴァリエールの使い魔と互いの技量を競い合っていました。その際、勢い余って本塔の外壁に傷をつけてしまったのです。
奇しくもその位置は、丁度宝物庫の辺りでした」
「何が言いたいんじゃ」
「あの外壁が無傷だったら、もしかしたら今回の盗難事件は起こらなかったかもしれない、という事です」
「それはあくまで仮定じゃな。じゃが、その責任感は認めよう。貴族として何より必要な素質じゃな」
「ありがとうございます」
更に杖を掲げた人物がいた。今度はコルベールが驚いた声をあげる。
「ツェルプストー! 君まで!」
「ふん、ヴァリエールには負けられませんわ」キュルケはつまらなさそうに言った。
キュルケが杖を掲げるのを見て、タバサも掲げた。
「タバサ。あんたはいいのよ。関係ないんだから」
キュルケがそう言うと、タバサは短く「心配」とだけ答えた。悟空とキュルケを一緒にしておくのが、である。
その点を微妙に誤解したキュルケは感動した面持ちでタバサを見つめた。ルイズも礼を告げる。
「ありがとう……タバサ……」
そんな二人の様子を見て、オスマン氏は笑った。
「そうか。では、頼むとしようか」
「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒たちをそんな危険に晒すわけには!」
「では君が行くかね? ミセス…ええと、シュヴルーズ」
「い、いえ……わたしは体調がすぐれませんので……」
「彼女達は、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」
タバサは返事もせずにぼけっと突っ立っている。教師達は驚いたようにタバサを見つめた。キュルケも「本当なの、タバサ?」と驚いている。
「なあ、シュヴァリエって何だ?」悟空がルイズに訊いた。
「王室から与えられる爵位よ。位は低いけど、それでもタバサぐらいの歳のメイジが持てるようなもんじゃないわ」
「へー、凄えんだなあ」
宝物庫がざわめいた。シュヴァリエは他の爵位と違い、金さえ出せば手に入る類のものではないからである。純粋に業績に対して与えられる、いわば実力の証だ。
次いでオスマン氏はキュルケを見つめた。思わず視線が胸元に吸い寄せられる。
「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自信の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」
胸の谷間から目を離せないオスマン氏の言葉に、キュルケは得意げに髪をかき上げた。
やっとの思いでキュルケの乳から目を逸らしたオスマン氏がギーシュに目を向ける。
「ミスタ・グラモンはあのグラモン元帥の息子じゃったな。貴族としての素質は十分じゃし、その実力もドットメイジながらラインに勝るとも劣らないそうじゃが」
「光栄です」
それから、ルイズが自分の番だとばかりに可愛らしく胸を張った。オスマン氏は困ってしまった。誉めるところが見つからない。
こほん、と咳をすると、オスマン氏は目を逸らした。
「その……ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが?
んでー、その使い魔は……、あー、何だ」
悟空を見るが、悟空とギーシュの決闘を見ていない彼には何ともコメントのしようが無い。
唸り始めたオスマン氏に、ギーシュが助け舟を出した。
「オールド・オスマン。彼は戦力として非常に優秀です。僕が保証します」
「私も」タバサも同調する。
「おお、そうかそうか! うむ、なら文句は無いのう」
実力者2人の推薦とあれば、断る理由は無い。オスマン氏は目に見えて安堵した表情を浮かべた。
コルベールが興奮した調子で、後を引き取った。
「そうですぞ、なにせ、彼はガンダむぎゅ」
オスマン氏が慌ててコルベールの口を押さえた。
「ガンダム?」
「いえ! なんでもありません! はい!」
すっかり黙ってしまった教師陣に向かって、オスマン氏は威厳のある声で言った。
「さて、誰かこの4人に勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ」
誰もいない。オスマン氏は悟空を含む5人に向き直った。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
ルイズとタバサとキュルケとギーシュは、真顔になって直立すると「杖にかけて!」と同時に唱和した。それから女性陣はスカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。ギーシュは右手を胸に当てて一礼した。悟空も見様見真似でギーシュに倣った。
「では、明朝出発としようかの。それまでに馬車を用意しておく。魔法は目的地に着くまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」
「はい。オールド・オスマン」
「彼らを手伝ってやってくれ」
「もとよりそのつもりですわ」ミス・ロングビルは頭を下げた。
「うむ。では、本日は解散とする。4人とも明日に備えて充分英気を養っておくように」
翌朝――
5人はミス・ロングビルを案内役に、早速出発した。ミス・ロングビルが御者を買って出た。
黙々と手綱を握る彼女にキュルケがちょっかいを出すのをルイズが諌めた後、悟空に向き直る。
「ゴクウ、まだフーケのキは感じない?」
「いや、昨日からずっと探ってんだけど、全然感じねえんだ」
前夜ルイズが、悟空に瞬間移動でフーケの所に行き、一気に捕まえる事を提案したのだが、悟空がいくら集中してもフーケの気を捉える事はできなかった。
系統魔法の一発でも使ってくれれば、すぐに見つけられるのだが、その兆候もない。
唯一、ミス・ロングビルからフーケと同じ気を感じるだけであった。
「何だギーシュ、浮かねえ顔だな」
「実を言うと、今になって怖くなってきた……。同じ土系統だからわかるんだ、あの土ゴーレムは僕のワルキューレじゃ歯が立たない」
「大丈夫だ。おめえだって何かの役には立つさ」
「そう、かな……」
馬車は深い森に入っていった。鬱蒼とした森が、女性陣の恐怖を煽る。昼間だというのに薄暗く、気味が悪い。
「ここから先は、徒歩で行きましょう」
ミス・ロングビルがそう言って、全員が馬車から降りた。
森を通る道から、小道が続いている。
「なんか、暗くて怖いわ……、いやだ……」
キュルケが悟空の腕に手を回してきた。
「おい、くっつくなよ」
「だってー、すごくー、こわいんだものー」
とてもそうは見えない。むしろこの状況を楽しんでいる。
悟空はルイズに何か言ってもらおうと振り向いたが、さっきまでルイズがいた筈の所には誰もいない。
と、反対側の腕に誰かがしがみ付いた。
「お、おめえもか」
「つ…使い魔ならまず主人を守りなさいよね!」何故か顔を赤くしたルイズが悟空に言った。
その姿を見たギーシュが「両手に花とは妬けるね」と一人ごちた。
暫く歩いていると、開けた場所に出た。目撃証言通り、森の中の空き地といった場所に木こり小屋だったらしき廃屋がぽつんと立っている。
6人は小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したまま廃屋を見つめた。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
ミス・ロングビルが廃屋を指差して言った。
人が住んでいる気配は全く無い。
「ゴクウ、どう?」
「いや、やっぱフーケの気は感じねえ。けど、気を消して隠れてるだけかもしんねえぞ」
作戦会議が始まった。タバサが中心となり、皆の提案をまとめて地面に木の枝で模式図を描いていく。
まず、斥候として1名が小屋に潜入。フーケがいたら、捕縛ないし外に誘い出し、残りのメイジが魔法で一気に攻撃する。
斥候役は、満場一致で悟空に決定した。1対1でフーケと戦えそうなのは彼だけだ。
ミス・ロングビルの様子がおかしい事に気付いたギーシュが、彼女に声をかけた。
「ミス・ロングビル、顔色がすぐれませんが、大丈夫ですか?」
「ええ、実を言うと少し、怖くなってまいりました」
「もしもの事がありますから、今のうちに安全な場所まで避難しておいた方がいいかもしれません」
「そうですね。では、お言葉に甘えさせて頂きます」
ミス・ロングビルが来た道を引き返していった。
悟空は小屋のそばまで一瞬で移動した。ガラスの割れた窓からそっと室内の様子を伺う。
小屋の中は、一部屋しかないようだった。部屋の真ん中に置かれたテーブルに積もった埃から察するに、ここで誰かが最近生活していた様子は無さそうだ。
隅には薪が積み上げられており、その隣には木製のチェストが置いてあった。大きいが、人が隠れられるほどではない。
悟空は暫く考えた後、皆を連れてくる事にした。一度瞬間移動でルイズ達の元に戻る。
「どうだった?」
「中には誰もいねえな。隠れられる所も無さそうだ」
「逃げたのかしら?」
「とりあえず小屋に入ってみよう。手がかりがあるかもしれない」
「ギーシュに賛成」
再び小屋まで移動する。タバサがドアに向けて杖を振るい、「罠は無いみたい」と呟いて、ドアを開け、中に入っていく。
キュルケ、ギーシュ、悟空が後に続く。ルイズは外で見張りをすると言って、その場に残った。
床を見たギーシュがある事に気付いた。
「最近誰かがここに来たのは間違い無さそうだ。部屋の中の足跡が新しい」
見ると、確かに床の埃の上に最近ついたと思しき足跡があった。真っ直ぐチェストに向かい、それから引き返したようだった。
チェストに再度タバサが杖を振るい、罠が無い事を確認するとそっと蓋を開ける。
中には、黒い箱が入っていた。鍵が掛けられていたようだが、開いている。
「それが破壊の杖?」
「多分そう」
タバサが箱の蓋を開け――固まった。
「どうしたの?」キュルケが箱の中を覗き込み、「へ?」と素っ頓狂な声をあげた。ギーシュと悟空も中を見る。
「……これが…『破壊の杖』……?」
「オラ見た事ねえけど、本当にこれが宝物庫にあったのか?」
「うん……前に宝物庫を見学した時、確かにこの箱のそばに『破壊の杖』って書かれた銘板があったわよ」
「…まあ、杖は杖だね、一応」
「けど何でこんな事に……」
「もしかしたら、フーケが?」
「可能性はある」
その時、悟空が急激に増大する気を感じた。
今度は間違い無い。
フーケだ。
そして、外で見張りをしていたルイズの悲鳴が聞こえた。
「きゃぁああああああ!」
「どうした! ルイズ!」
一斉にドアを振り向いた瞬間、轟音を立てて小屋の屋根が吹っ飛ぶ。
青空をバックに、巨大なフーケの土ゴーレムが悟空達を見下ろしていた。
一方その頃……
「お…俺は無視かよ……」
ルイズの部屋で、デルフリンガーが腐っていた。
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