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「とある魔術の使い魔と主-14」(2009/10/11 (日) 16:31:22) の最新版変更点
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ルイズは夢を見ていた。まだ小さい頃、トリステイン魔法学院に行く前の時の事だった。
「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの? ルイズ! まだお説教は終わっていませんよ!」
ルイズは、生まれた故郷、ラ・ヴァリエールのとある屋敷の中庭を逃げ回っていた。
騒いでいるのは母、追ってくるのは召使である。理由は簡単で、デキのいい姉達と魔法の成績を比べられ、物覚えが悪いと叱られていた最中逃げ出したからだ。
幸い、中庭には迷宮のような埋め込みの陰が多々ある。その中の一つに隠れてやり過ごそうとしたのだが……
「ルイズお嬢様は難儀だねえ」
「まったくだ。上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……」
召使の会話を聞いて、ルイズは奥歯を噛み締める。悲しくて、悔しくて、どうしうも出来ない自分に腹立てていた。と、召使達は埋め込みの中をがさごそと捜し始めた。
マズイ、とすぐに自分が見つかってしまうとビジョンをルイズは思い浮かべ、すぐさま逃げ出した。
そう、彼女の唯一安心出来る場所、『秘密の場所』となる中庭の池へと向かう。
途中見つからないようにと、小さい体をさらに小さくして細心の注意をはらう。
あまり人が寄りつかない、うらぶれた中庭。池の周りには季節の花が咲き乱れ、小鳥が集う石のアーチとベンチがあった。池の真ん中には小さな島があり、そこには白い石で造られた東屋が建っている。
その小さな島のほとりに小船が一艘浮いていた。船遊びを楽しむ為の小船も、今は使われない。姉も、母も、父も、皆そんなものどうでもよくなったのだ。
そんなわけで、この忘れられた中庭の島のほとりにある小船を気に留めるのはルイズ以外誰もいない。ルイズは叱られると、毎回この中に隠れてやり過ごす。
予め用意してあった毛布に潜り込み、のんびり時間を過ごそうとしていると……
一人のマントを羽織った立派な貴族が、ルイズの小さな視界に写りこむ。
年は大体十代後半、このルイズは六、七歳であるから、十ばかり年上だろうと感じた。
「泣いているのかい? ルイズ」
つばの広い帽子に顔が隠されても、ルイズは声でわかる。子爵だ。最近、近所の領地を相続した年上の貴族。
ドキッ、とルイズは胸を熱くした。憧れの子爵。。晩餐会をよく共にし、父と彼との間で交わされた約束をルイズは覚えている。
「子爵さま、いらしてたの?」
慌てて目の前にいる子爵から視線を外す。見られたくない自分の顔を、憧れの人に見られてしまったので、顔を赤く染める。
「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あのお話の事でね」
「まぁ!」
ルイズはそれがなんなのか知っている。知っているからこそ、今度は顔全部が染まり、俯いた。
「いけない人ですわ。子爵さまは……」
「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」
いつもと変わらぬ口調で子爵が言った。ルイズは首を横に振り、
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」
ルイズははにかんで言った。自分の素直な気持ちを理解してくれたのか、帽子の下の顔がにっこりと笑った。あぁ……、とルイズは頭の中の思考が停止する。そう、この笑顔が素晴らしいんだ。
「子爵さま……」
「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ」
普段のルイズから真っ先に掴むのだが、今回は躊躇われる。
「でも……」
「また怒られたんだね? 安心しなさい。ぼくからお父上にとりなしてあげよう」
さぁ、と再び手を差し延べてくる。大きな、憧れの手。
ルイズに断る余裕はない。ただ頷いて、立ち上がり、その手を握ろうとした。
そのとき、一陣の風が吹いて、貴族の帽子が飛んだ。
「あ」
帽子がなくなり、覗きでてきた顔を見て、ルイズは思わず当惑の声をあげた。夢であるので、いつの間にか恰好が、十六の今の歳へと変わっていた。
「な、なによあんた」
帽子の下から現れた顔は、憧れの子爵ではなく、使い魔の当麻であった。
「残念でしたなー!」
「な、なにがよ。そもそも何であんたがここにいるのよ」
「いやー、ルイズに憧れている子爵がいる聞いてなー。ちょっと演じてみてさ。そしたらどうよ、お前のあの顔! ププップー、いや、最高!」
憧れの子爵の恰好をした当麻は、くの字になって笑い出している。
なんというか凄い腹の立つ当麻である。いや、ぶっちゃけるといつもと変わらないが。
「ばかじゃないの! 何ちょっと一緒に踊ったからって、調子に乗らないで!」
「ささっ、早くこちらへ来てわたくしと一緒にお父様へと報告しましょうか」
ガシッとルイズの腕を掴んで引っ張ってくる。
「わわっ!」
いきなりの事で、体勢を取れないルイズは、そのまま当麻の胸へとダイビング。ちなみに今の当麻は、絶対にそんな事はしない。
「な……やめてよ! ばか!」
離れようとするルイズを当麻はしっかりと両手でカバー、抱きしめる。夢だからありなのです、この当麻は。
「なんであんたなのよ! もう!」
ぽかぽか、という擬音が似合うように当麻を殴り付けたが、きかないきかない~、と笑っている。
ルイズの顔がカーッと赤くなる。なぜかわからないけど、今の自分の感覚は妙な気分だ。故に、ルイズはさらに苛立ちを覚えるのであった。
鼻血がでた。
深夜、トイレへと行っていた当麻は、突如鼻から真紅の液体が流れてきた。原因は恐らく夜食として食べまくったピーナッツである……と思う。
「っと……」
慌てて顔を少しだけ上げて、血の勢いを止めた。
トイレから出ると、ティッシュを求めて急いでルイズの部屋へと戻る。
当麻以外起きている人は恐らくいない。ギッ、とテンポよく床を蹴る音がはっきしと聞こえるぐらい静まっていた。
もちろん扉を開ける時は、行きと同じように主のルイズを起こさないようにする。
ギィィ、と扉が悲鳴をあげる。その音に当麻の心臓は、自分の体から飛び出そうになった。
ここは月が二つある為、たとえ深夜になろうとも、うっすらと明るい。ビクビク怯えながらベッドの上にいるルイズを見る。
う~ん、う~んと唸り声をあげて寝ている。よっぽど悪い夢を見ているのだろうか? と当麻は思う。
(そんな事よりティッシュティッシュ~)
と、辺りを見回す当麻の視界に、ティッシュ箱が目に入る。
そこはベッドのすぐ隣の小さな置き場にあった。
あったあった、と小さく喜びながら早速取りに行く。
が、もちろんそのまま手に入るというわけにはいかない。忘れてはダメだ、彼は『不幸』である。
ガッ、と当麻は思いっきり何かに躓く。それはランプであったが、そんな事当麻は気にする余裕がない。
(やべっ、倒れ――)
慌てて態勢を保とうとするが、完全に虚をつかれた為、努力の甲斐なく倒れ込んだ。
ルイズが寝ているベッドへと。
「へ……な、なによ! ちょっと!」
当麻はルイズのふくらみが全くない胸へと突っ込んだ。寝つきのいいルイズも、さすがにこれには目が覚める。
すぐさま自分の置かれた状況に気付き、当麻を押し倒す。
「いっ!? てぇぇぇぇ」
ベッドから突き落とされ、当麻は床に後頭部をぶつける。
ゴチン! と何やらよろしくない音が鳴り、当麻は頭を両手で抱えながら暴れ回る。
「あああああんたはなななにをやってるの!」
ルイズの声が震えだし、こめかみに血管が浮かび上がっている。
「何でもないです、何でもないです! 俺は鼻血を――」
と言って気付く。そういえば前にこんな事あったような……
目の前にはネグリジェしか身に纏っていない睡眠中のルイズ、そこに倒れ込んだ――いや、ルイズにとっては襲いかかってきた上条当麻、そしてトドメの鼻血。
Q1、この状況でベッドから起こされた女の子視点ではどう映りますか?
当麻の全身からブワッと噴き出した。前に体験した分、余計に嫌な予感がしてくる。その予感が現実へと変わるように、ベッドの上で両腕を組んで、大の字となっている少女の目がどんどんお怒りモードになりつつある。
何て言うか、当麻はもうこの惨劇(バッドエンド)を回避出来そうにないと悟った。
ルイズは無言で立っている。その目は何か遺言は? と訴えている。
「し、――――」
何をしても殺される、ならば最後は……あれ、これも前にあったなーと思いながら当麻は、
「――――新ジャンル『ドキッ☆使い魔と主の一夜』!?」
数秒後、当麻の絶叫が響き渡った。
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#navi(とある魔術の使い魔と主)
ルイズは夢を見ていた。まだ小さい頃、トリステイン魔法学院に行く前の時の事だった。
「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの? ルイズ! まだお説教は終わっていませんよ!」
ルイズは、生まれた故郷、ラ・ヴァリエールのとある屋敷の中庭を逃げ回っていた。
騒いでいるのは母、追ってくるのは召使である。理由は簡単で、デキのいい姉達と魔法の成績を比べられ、物覚えが悪いと叱られていた最中逃げ出したからだ。
幸い、中庭には迷宮のような埋め込みの陰が多々ある。その中の一つに隠れてやり過ごそうとしたのだが……
「ルイズお嬢様は難儀だねえ」
「まったくだ。上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……」
召使の会話を聞いて、ルイズは奥歯を噛み締める。悲しくて、悔しくて、どうしうも出来ない自分に腹立てていた。と、召使達は埋め込みの中をがさごそと捜し始めた。
マズイ、とすぐに自分が見つかってしまうとビジョンをルイズは思い浮かべ、すぐさま逃げ出した。
そう、彼女の唯一安心出来る場所、『秘密の場所』となる中庭の池へと向かう。
途中見つからないようにと、小さい体をさらに小さくして細心の注意をはらう。
あまり人が寄りつかない、うらぶれた中庭。池の周りには季節の花が咲き乱れ、小鳥が集う石のアーチとベンチがあった。池の真ん中には小さな島があり、そこには白い石で造られた東屋が建っている。
その小さな島のほとりに小船が一艘浮いていた。船遊びを楽しむ為の小船も、今は使われない。姉も、母も、父も、皆そんなものどうでもよくなったのだ。
そんなわけで、この忘れられた中庭の島のほとりにある小船を気に留めるのはルイズ以外誰もいない。ルイズは叱られると、毎回この中に隠れてやり過ごす。
予め用意してあった毛布に潜り込み、のんびり時間を過ごそうとしていると……
一人のマントを羽織った立派な貴族が、ルイズの小さな視界に写りこむ。
年は大体十代後半、このルイズは六、七歳であるから、十ばかり年上だろうと感じた。
「泣いているのかい? ルイズ」
つばの広い帽子に顔が隠されても、ルイズは声でわかる。子爵だ。最近、近所の領地を相続した年上の貴族。
ドキッ、とルイズは胸を熱くした。憧れの子爵。。晩餐会をよく共にし、父と彼との間で交わされた約束をルイズは覚えている。
「子爵さま、いらしてたの?」
慌てて目の前にいる子爵から視線を外す。見られたくない自分の顔を、憧れの人に見られてしまったので、顔を赤く染める。
「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あのお話の事でね」
「まぁ!」
ルイズはそれがなんなのか知っている。知っているからこそ、今度は顔全部が染まり、俯いた。
「いけない人ですわ。子爵さまは……」
「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」
いつもと変わらぬ口調で子爵が言った。ルイズは首を横に振り、
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」
ルイズははにかんで言った。自分の素直な気持ちを理解してくれたのか、帽子の下の顔がにっこりと笑った。あぁ……、とルイズは頭の中の思考が停止する。そう、この笑顔が素晴らしいんだ。
「子爵さま……」
「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ」
普段のルイズから真っ先に掴むのだが、今回は躊躇われる。
「でも……」
「また怒られたんだね? 安心しなさい。ぼくからお父上にとりなしてあげよう」
さぁ、と再び手を差し延べてくる。大きな、憧れの手。
ルイズに断る余裕はない。ただ頷いて、立ち上がり、その手を握ろうとした。
そのとき、一陣の風が吹いて、貴族の帽子が飛んだ。
「あ」
帽子がなくなり、覗きでてきた顔を見て、ルイズは思わず当惑の声をあげた。夢であるので、いつの間にか恰好が、十六の今の歳へと変わっていた。
「な、なによあんた」
帽子の下から現れた顔は、憧れの子爵ではなく、使い魔の当麻であった。
「残念でしたなー!」
「な、なにがよ。そもそも何であんたがここにいるのよ」
「いやー、ルイズに憧れている子爵がいる聞いてなー。ちょっと演じてみてさ。そしたらどうよ、お前のあの顔! ププップー、いや、最高!」
憧れの子爵の恰好をした当麻は、くの字になって笑い出している。
なんというか凄い腹の立つ当麻である。いや、ぶっちゃけるといつもと変わらないが。
「ばかじゃないの! 何ちょっと一緒に踊ったからって、調子に乗らないで!」
「ささっ、早くこちらへ来てわたくしと一緒にお父様へと報告しましょうか」
ガシッとルイズの腕を掴んで引っ張ってくる。
「わわっ!」
いきなりの事で、体勢を取れないルイズは、そのまま当麻の胸へとダイビング。ちなみに今の当麻は、絶対にそんな事はしない。
「な……やめてよ! ばか!」
離れようとするルイズを当麻はしっかりと両手でカバー、抱きしめる。夢だからありなのです、この当麻は。
「なんであんたなのよ! もう!」
ぽかぽか、という擬音が似合うように当麻を殴り付けたが、きかないきかない~、と笑っている。
ルイズの顔がカーッと赤くなる。なぜかわからないけど、今の自分の感覚は妙な気分だ。故に、ルイズはさらに苛立ちを覚えるのであった。
鼻血がでた。
深夜、トイレへと行っていた当麻は、突如鼻から真紅の液体が流れてきた。原因は恐らく夜食として食べまくったピーナッツである……と思う。
「っと……」
慌てて顔を少しだけ上げて、血の勢いを止めた。
トイレから出ると、ティッシュを求めて急いでルイズの部屋へと戻る。
当麻以外起きている人は恐らくいない。ギッ、とテンポよく床を蹴る音がはっきしと聞こえるぐらい静まっていた。
もちろん扉を開ける時は、行きと同じように主のルイズを起こさないようにする。
ギィィ、と扉が悲鳴をあげる。その音に当麻の心臓は、自分の体から飛び出そうになった。
ここは月が二つある為、たとえ深夜になろうとも、うっすらと明るい。ビクビク怯えながらベッドの上にいるルイズを見る。
う~ん、う~んと唸り声をあげて寝ている。よっぽど悪い夢を見ているのだろうか? と当麻は思う。
(そんな事よりティッシュティッシュ~)
と、辺りを見回す当麻の視界に、ティッシュ箱が目に入る。
そこはベッドのすぐ隣の小さな置き場にあった。
あったあった、と小さく喜びながら早速取りに行く。
が、もちろんそのまま手に入るというわけにはいかない。忘れてはダメだ、彼は『不幸』である。
ガッ、と当麻は思いっきり何かに躓く。それはランプであったが、そんな事当麻は気にする余裕がない。
(やべっ、倒れ――)
慌てて態勢を保とうとするが、完全に虚をつかれた為、努力の甲斐なく倒れ込んだ。
ルイズが寝ているベッドへと。
「へ……な、なによ! ちょっと!」
当麻はルイズのふくらみが全くない胸へと突っ込んだ。寝つきのいいルイズも、さすがにこれには目が覚める。
すぐさま自分の置かれた状況に気付き、当麻を押し倒す。
「いっ!? てぇぇぇぇ」
ベッドから突き落とされ、当麻は床に後頭部をぶつける。
ゴチン! と何やらよろしくない音が鳴り、当麻は頭を両手で抱えながら暴れ回る。
「あああああんたはなななにをやってるの!」
ルイズの声が震えだし、こめかみに血管が浮かび上がっている。
「何でもないです、何でもないです! 俺は鼻血を――」
と言って気付く。そういえば前にこんな事あったような……
目の前にはネグリジェしか身に纏っていない睡眠中のルイズ、そこに倒れ込んだ――いや、ルイズにとっては襲いかかってきた上条当麻、そしてトドメの鼻血。
Q1、この状況でベッドから起こされた女の子視点ではどう映りますか?
当麻の全身からブワッと噴き出した。前に体験した分、余計に嫌な予感がしてくる。その予感が現実へと変わるように、ベッドの上で両腕を組んで、大の字となっている少女の目がどんどんお怒りモードになりつつある。
何て言うか、当麻はもうこの惨劇(バッドエンド)を回避出来そうにないと悟った。
ルイズは無言で立っている。その目は何か遺言は? と訴えている。
「し、――――」
何をしても殺される、ならば最後は……あれ、これも前にあったなーと思いながら当麻は、
「――――新ジャンル『ドキッ☆使い魔と主の一夜』!?」
数秒後、当麻の絶叫が響き渡った。
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