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『拝啓 親愛なるちいねえさまへ――』
トリステイン郊外に位置する、ラ・ヴァリエール領主の居城。その中の植物と動物で溢
れる賑やかな部屋で、部屋の主――カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド
・ラ・フォンティーヌは、ここ数週間で何度も読み直し、擦り切れてしまった手紙を見つ
めていた。
『二年生になって始めての手紙ですが、お元気でいらっしゃいましたか?』
相変わらず体の調子は優れないが、妹の元気そうな様子を考えるだけで、活力が湧いて
くるようだった。
手紙の文面は、真面目な妹らしい堅苦しい挨拶から始まり、向こうの近況報告とこちら
の様子を伺う内容で占められていた。
「ルイズの使い魔……いったいどんな子かしら?」
手紙には、今年の春一番に召喚したという使い魔の事も書かれていた。
いつも騒々しくて、迷惑ばかりかけられていると書いてあるが、その裏では使い魔の事
を気に入っている様な表現も見受けられる。
きっと、良い使い魔を召喚したのだろう。
『突然ですが、今度の長期休暇の折に、使い魔を連れて帰郷しようと考えています』
外には滅多に出られない。退屈を持て余していたカトレアにとっては、久しぶりに可愛
い妹に会えるのだ。嬉しくない筈がない。
カトレアは手紙を持ったまま、鼻歌を歌って鉢植えに水をやった。手紙を貰った頃には
まだ芽吹いたばかりだったこの植物も、今では立派に花を咲かせている。
『是非その際には、ちいねえさまは勿論の事、お父様やお母様、エレオノール姉様に見て
頂きたいものがあります』
エレオノールを最後に持ってくる辺り、ルイズの長姉に対する苦手ぶりが滲み出ていて、
カトレアにはその様子が少し笑えた。
『とうとう私にも魔法が使えるようになったのです! それと一緒に――』
「一緒に」の後はインクで塗りつぶされていて読み取れない。字を失敗したのか、それ
とも会う時まで秘密にしておきたいのか。どちらにしろ、新しい羊皮紙で書き直さなかっ
たルイズのずぼらな所が、可愛らしいと思うカトレアだった。
それにしても……。
「あの子が魔法を使えるようになるなんて。何系統でしょうね?」
魔法を使えない事に劣等感を持ち、家の者にまで厳しくされていたルイズが遂に魔法を
失敗しなくなったらしい。これは一大事だ。
この事は手紙が届いてすぐに家族に伝えてある。今日帰ってくるルイズのために、一家
総出で祝う予定だ。今頃、厨房は戦場だろう。
『それでは、また会う日を楽しみにしています。
《楽団長》ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』
最後の楽団長というのは、ゼロに変わる新しい二つ名なのだろうか。
カトレアは、妹が一体どんな魔法を使うのか最後の文章で一層楽しみになった。
そこへ、外から飛んできた大きなフクロウが窓の端に飛び乗った。
「馬車が門をくぐりました。もうすぐルイズさまがお戻りになられます」
「そう。ありがとう、トゥルーカス」
仕事を終えて飛び去ったフクロウを見送り、カトレアは窓から顔を出して外を見た。
階下が騒がしい。もう出迎えの準備は済んでいるらしい。
カトレアは自室を出ると、自身も妹を迎えるために玄関へ向かった。
一階の玄関には父、母、アカデミーの研究を放り出して戻ったエレオノール、そしてカ
トレアと使用人一同。準備は万端だ。
扉が開く。それと同時に、やたら賑やかな楽器の演奏が流れてきた。楽士なんて呼んで
いただろうか?
両親は目を丸くし、長姉は口を開いて驚いている。カトレアは一人楽しそうに笑みを浮
かべ、扉をくぐった四人を見た。
「さあ、私の可愛い小さなルイズ。あなたは一体どんな魔法を見せてくれるのかしら?」
『幽“零”楽団 ~ Magical Ensemble』 完
『拝啓 親愛なるちいねえさまへ――』
トリステイン郊外に位置する、ラ・ヴァリエール領主の居城。その中の植物と動物で溢れる賑やかな部屋で、部屋の主――カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌは、ここ数週間で何度も読み直し、擦り切れてしまった手紙を見つめていた。
『二年生になって始めての手紙ですが、お元気でいらっしゃいましたか?』
相変わらず体の調子は優れないが、妹の元気そうな様子を考えるだけで、活力が湧いてくるようだった。
手紙の文面は、真面目な妹らしい堅苦しい挨拶から始まり、向こうの近況報告とこちらの様子を伺う内容で占められていた。
「ルイズの使い魔……いったいどんな子かしら?」
手紙には、今年の春一番に召喚したという使い魔の事も書かれていた。
いつも騒々しくて、迷惑ばかりかけられていると書いてあるが、その裏では使い魔の事を気に入っている様な表現も見受けられる。
きっと、良い使い魔を召喚したのだろう。
『突然ですが、今度の長期休暇の折に、使い魔を連れて帰郷しようと考えています』
外には滅多に出られない。退屈を持て余していたカトレアにとっては、久しぶりに可愛い妹に会えるのだ。嬉しくない筈がない。
カトレアは手紙を持ったまま、鼻歌を歌って鉢植えに水をやった。手紙を貰った頃にはまだ芽吹いたばかりだったこの植物も、今では立派に花を咲かせている。
『是非その際には、ちいねえさまは勿論の事、お父様やお母様、エレオノール姉様に見て頂きたいものがあります』
エレオノールを最後に持ってくる辺り、ルイズの長姉に対する苦手ぶりが滲み出ていて、カトレアにはその様子が少し笑えた。
『とうとう私にも魔法が使えるようになったのです! それと一緒に――』
「一緒に」の後はインクで塗りつぶされていて読み取れない。字を失敗したのか、それとも会う時まで秘密にしておきたいのか。どちらにしろ、新しい羊皮紙で書き直さなかったルイズのずぼらな所が、可愛らしいと思うカトレアだった。
それにしても……。
「あの子が魔法を使えるようになるなんて。何系統でしょうね?」
魔法を使えない事に劣等感を持ち、家の者にまで厳しくされていたルイズが遂に魔法を失敗しなくなったらしい。これは一大事だ。
この事は手紙が届いてすぐに家族に伝えてある。今日帰ってくるルイズのために、一家総出で祝う予定だ。今頃、厨房は戦場だろう。
『それでは、また会う日を楽しみにしています。《楽団長》ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』
最後の楽団長というのは、ゼロに変わる新しい二つ名なのだろうか。
カトレアは、妹が一体どんな魔法を使うのか最後の文章で一層楽しみになった。
そこへ、外から飛んできた大きなフクロウが窓の端に飛び乗った。
「馬車が門をくぐりました。もうすぐルイズさまがお戻りになられます」
「そう。ありがとう、トゥルーカス」
仕事を終えて飛び去ったフクロウを見送り、カトレアは窓から顔を出して外を見た。
階下が騒がしい。もう出迎えの準備は済んでいるらしい。
カトレアは自室を出ると、自身も妹を迎えるために玄関へ向かった。
一階の玄関には父、母、アカデミーの研究を放り出して戻ったエレオノール、そしてカトレアと使用人一同。準備は万端だ。
扉が開く。それと同時に、やたら賑やかな楽器の演奏が流れてきた。楽士なんて呼んでいただろうか?
両親は目を丸くし、長姉は口を開いて驚いている。カトレアは一人楽しそうに笑みを浮かべ、扉をくぐった四人を見た。
「さあ、私の可愛い小さなルイズ。あなたは一体どんな魔法を見せてくれるのかしら?」
『幽“零”楽団 ~ Magical Ensemble』 完
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