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「ワイルドの使い魔-3」(2007/07/11 (水) 00:12:01) の最新版変更点
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僕は実の所、朝早く起きるのはそう苦にならない性質だ。
朝早く起きて寝不足のときでも、トイレに行けば大概絶好調になる。
だから、朝の弱いタイプのことはよく分からない。
たとえば僕の主人のような。
「朝だよ、ルイズ」
起きない。全くの反応無し。困ったなぁ。
「ご主人様、起きないと朝食食べ逃したりするかもしれないよ?」
ヤッパリ反応が無い。
ちなみにそのご主人様のルイズは、どう間違った寝相ならそうなるのか?って感じのヨガもびっくりなポーズだったりする。
「・・・このポーズなら口から火を吹いたり出来そう・・・」
「・・・ムニュ・・・・・・ナマステー・・・」
「・・・本当に寝てる?」
何だか微妙な寝言が聞こえた気もするけど、どうでもいい。
仕方ないなぁ、ご主人様には悪いけど朝ごはん食べに行こう。シエスタさんに誘われてるし。
そう思って廊下に出ると、丁度他の部屋から出てきた赤毛の女の人に出くわした。
うわ、何だかすごい『美女』って感じの人だ。スタイルも凄いし・・・同年代なのにルイズとのこの違いは何だろう?
「あら、貴方誰?そこはルイズの部屋でしょ?あの子もついに男を部屋に泊めるようになったのかしら?」
・・・確かに言ってる内容は間違ってないけど、何か違う気がするのは気のせいかな?
まぁ、どうでもいいけど。
「あ、思い出した。あの子平民を使い魔にしたって話だったわね。へぇ、本当に人間なんだ」
感心してるのかただの興味か判らないけど、そんなに無遠慮にジロジロ見回されてもなぁ・・・それに口調が小ばかにしてる気がする。
でも、ルイズをあの子って言えるって事は知り合いってことだろうし、あまり波風立てるのも良くないかな。
「はい、キタローって言います。えっと、失礼ですけどどなたですか?ご主人のお知り合いですか?」
「私はキュルケ。ルイズの・・・そうねぇ、友人ってことにしておいて頂戴。この子はフレイム。私の使い魔よ」
友人かぁ・・・まぁ、ルイズに聞けば判るかな。それよりも、キュルケさんの後ろから現れたモノの方が僕にとっては気になるや。
尻尾に火がついてるトカゲって・・・ヒ○カゲだよねぇ、これ。成長するとどんなポ○モンになるんだろう?
「あら、流石にサラマンダーは珍しいようね。当然よね。好事家に見せたらどれ位の値を付けるか判らないもの」
「いや、そうじゃなくて・・・けっこう可愛いなぁって」
「アラ?」
何となく撫でてみるたけどサラマンダーは嫌がるそぶりも無い。猫をあやす様に喉の下を撫でたら嬉しそうに転がり始めた。
・・・い、いや、どうでもいいけど壁とかに尻尾の火が点かないのかな?建材も魔法製?
僕がそんな微妙な事に気を取られていると
「貴方、面白いわね。平民じゃなかったら、随分楽しい事になるのに」
そんな声が投げかけられた。あれ?さっきまでの口調とは違うような・・・?
「それに良く見ると・・・いえ、かなりイイじゃない。これは色々楽しめそうだわ」
・・・何だろう?視線が変わった?・・・何だか、これ以上ここに居ると良くない事が起こりそうな気がする。
それに、そろそろ朝ごはんも食べたいし。
「えっと、キュルケさん。僕今から厨房に行くのでこれで失礼します」
「あら、そう?じゃ、行ってらっしゃい」
僕は逃げるようにその場を後にした。・・・多分、僕の判断は正しかったんだと思う。
食堂に向かう途中、寮の方で何か大きな物音が聞こえたから。
更にその後で、寝起きのルイズとキュルケさんの魔法合戦が朝の風物詩だと教えられたから。
良かった、巻き込まれなくて。
逃げなければ良かった。
目の前でおいしそうな料理が並んでいるのに、それを食べてはいけないってのは拷問だと思う。
「何物欲しそうな顔してるのよ。主人を放って自分だけ朝食を食べようとする使い魔が食べられるものなんて在る訳無いでしょう?」
豪勢な朝食をこれまた勝ち誇ったように食べる僕のご主人様。
だからってそんな風に見せびらかすように目の前で料理を食べなくてもイイと思うのに。
そもそも、僕はルイズを起こしたよ?起きなかったのはルイズなのに・・・
「何か言った!?」
「何も言ってないよ、ご主人様」
確かに、無理やり起こそうと思えば起こせたのは確かだから。
でも、正直に・・・正直に言うと、ルイズの寝相をあれ以上見るのが怖かったんだ。
見てるだけで痛くなる体勢ってあるんだよ?
どうしてあの体勢で寝てて眠れて、しかも今平気そうなの?
どうでもいい、で済ませたくないくらい気になるんだけど。
でも・・・今はそれ所じゃないなぁ・・・僕、痩せの大食いタイプだから、食べないと辛いんだけど。
「本当は使い魔は外なのよ?ここに居られるだけでも在り難く思いなさいよね」
「いっそ外の方がよっぽどましな気がするよ・・・」
ああ、だからシエスタさんは厨房に直接来るように言ったのかぁ。
そのシエスタさんは食堂中を給仕として忙しそうに走り回ってる。
時折僕の事を心配そうに見てくれてる。・・・あとで、余り物か何かもらえないか聞いてみようかな。
そうこうしている内に、朝食の時間は過ぎていく。
目の前の料理も、僕の口に入ることなく消えていく。
こうして、召喚生活初めての朝食は拷問もどきに取って代わられてしまった。
「これ、ミス・ヴァリエールに判らないようにこっそり食べてね?」
そう言って、シエスタさんが掌に隠れる位のパンを幾つかこっそり渡してくれなかったら、本当に拷問だった・・・
シエスタさん、僕には貴方が女神様に見えるよ。
午前の授業の時間は為になったし大変だった。
この世界の魔法の理論とルイズの異名。何よりその『失敗魔法』の威力を目の当たりに出来たから。
魔法の系統の基本的な考え方と、術者と使い魔のつながり。
それは僕に自分自身が何なのか、という疑問も抱かせた。
使い魔である以上、僕はこの世界で言う四大系統の一つに属するんだろう。
5つ目の系統とかもあるって言ってたけど、それが何なのか判らないのでは、判別しようが無いし。
いや・・・と、そこまで考えて思い直す。
この世界に来る前に見たあの夢。あの青い部屋は、例えば何に属するんだろう?
例えば僕のように異世界から呼ばれた者は、この世界の理論で括られるものなんだろうか?
それに、僕の『ご主人様』のあの失敗魔法。
正直、あの爆発力は凄いと思う。あれが只の失敗で済むだろうか?
爆発は、高温と衝撃波、それに乗った破片という、この世界で言えば炎と風と土の系統が混ざり合ってるようなものだと思う。
あれを、虚無の一言で片付けていいんだろうか?
僕の『ご主人様』は何者なんだろう?
「あら?何を考え込んでるの?シチュー、美味しくない?」
「そんな事無いです。あんまり美味しくて、ついぼーっと・・・」
物思いにふけっていた僕を、シエスタさんの声が現実に引き戻す。
嘘は言ってない。朝食を少しのパンでしのいだ僕にとって、この暖かなシチューは最高のごちそうだった。
思わずトリップしそうになった位。ただ、少し前までの授業が気になったのも確かだ。
「本当に?・・・お世辞でも喜んでくれて嬉しいわ」
「本当です。朝もそうだけどお世話になってばかりで・・・何か僕にできる事があったら言ってください」
本当にこのメイドのお姉さんにはお世話になりっぱなしだ。
此処で少しでも恩を返さないとバチが当たる気さえする。
「キタロー君は義理堅いんですね。それじゃ、もう直ぐデザートの時間ですから運ぶの手伝ってくれますか?」
それくらいなら、僕にも出来そうな気がする。何より、シエスタさんの手伝いだ。例え出来なくてもやらないと。
こうして、僕は臨時のウェイターになった。やってみると、案外簡単で面白い。
元々陸上や水泳で身体は鍛えているし、記憶力にも自信がある。ただ、問題は運んでるデザートがやけに美味しそうな事。
この食堂の『客』である魔法使い・・・貴族達はこの時間お喋りに夢中で、無為にデザートの一番美味しいタイミングを逃しているように見える。
本当にもったいない。
そんな事を思っていると、食堂の片隅に人ごみが集まりだした。
食堂のほぼ反対側に居る僕のところにも、怒鳴りつけるような声が聞こえる。
何かと思って覗き込んでみて・・・僕はすぐさまその只中に飛び込んでいた。
そこには、高慢そうな金色の巻き毛の魔法使いに暴言を浴びせかけられるシエスタさんの姿があったんだ。
「なんだ、君は?」
「キタロー君!?や、止めて・・・私は大丈夫だから・・・」
急に飛び込んできた僕を見て、金巻き毛の魔法使いは訝しげに目を見る。
僕はそれを無言で睨みつける。
僕には、シエスタさんが何故この魔法使いに好き放題言われているのか判らない。
でも、今涙さえ浮かべてるこのお姉さんをこのままには出来なかった。
背後からシエスタさんの消え入りそうな声が聞こえるけど、それでも僕は此処をどく気はない。
「お、おい。あれ虚無のルイズが呼び出した使い魔だろ?」
「使い魔なのに平民で、召使みたいになってるアレか?」
「使用人つながりで助けてるんだろ?美しいねぇ・・・二股がばれて修羅場になった誰かとは大違いだな」
「おいギーシュ、お前もメイドに八つ当たりしてないで、この平民使い魔を見習ってみたらどうだ」
ドッと周りから笑いが漏れる。同時に真っ赤になるギーシュと呼ばれた巻き毛の魔法使い。
「ど、どうやらこの平民は貴族に対する礼儀がなっていないようだね」
「・・・そんなの、どうでもいい」
「な、何!?」
「二股がばれて、その憂さを抵抗できない誰かにに当り散らす事しか出来ないような貴族への礼儀なんて、どうでもいい」
「~~~~~~~っ!!!」
再び巻き起こる笑いと更に紅に染まるギーシュの顔。
だけど、本当にどうでもよかった。
僕の後ろで・・・震える手で僕の服を握るシエスタさんに比べたら。
「良かろう、君には貴族への礼儀を教えてやる。そのデザートを配り終えたらヴェストリ広場に来たまえ」
そう言い残して友人達と立ち去るギーシュ本人の事すら。
僕には、どうでもいいくらいに取るに足らないものだった。
僕は実の所、朝早く起きるのはそう苦にならない性質だ。
朝早く起きて寝不足のときでも、トイレに行けば大概絶好調になる。
だから、朝の弱いタイプのことはよく分からない。
たとえば僕の主人のような。
「朝だよ、ルイズ」
起きない。全くの反応無し。困ったなぁ。
「ご主人様、起きないと朝食食べ逃したりするかもしれないよ?」
ヤッパリ反応が無い。
ちなみにそのご主人様のルイズは、どう間違った寝相ならそうなるのか?って感じのヨガもびっくりなポーズだったりする。
「・・・このポーズなら口から火を吹いたり出来そう・・・」
「・・・ムニュ・・・・・・ナマステー・・・」
「・・・本当に寝てる?」
何だか微妙な寝言が聞こえた気もするけど、どうでもいい。
仕方ないなぁ、ご主人様には悪いけど朝ごはん食べに行こう。シエスタさんに誘われてるし。
そう思って廊下に出ると、丁度他の部屋から出てきた赤毛の女の人に出くわした。
うわ、何だかすごい『美女』って感じの人だ。スタイルも凄いし・・・同年代なのにルイズとのこの違いは何だろう?
「あら、貴方誰?そこはルイズの部屋でしょ?あの子もついに男を部屋に泊めるようになったのかしら?」
・・・確かに言ってる内容は間違ってないけど、何か違う気がするのは気のせいかな?
まぁ、どうでもいいけど。
「あ、思い出した。あの子平民を使い魔にしたって話だったわね。へぇ、本当に人間なんだ」
感心してるのかただの興味か判らないけど、そんなに無遠慮にジロジロ見回されてもなぁ・・・それに口調が小ばかにしてる気がする。
でも、ルイズをあの子って言えるって事は知り合いってことだろうし、あまり波風立てるのも良くないかな。
「はい、キタローって言います。えっと、失礼ですけどどなたですか?ご主人のお知り合いですか?」
「私はキュルケ。ルイズの・・・そうねぇ、友人ってことにしておいて頂戴。この子はフレイム。私の使い魔よ」
友人かぁ・・・まぁ、ルイズに聞けば判るかな。それよりも、キュルケさんの後ろから現れたモノの方が僕にとっては気になるや。
尻尾に火がついてるトカゲって・・・ヒ○カゲだよねぇ、これ。成長するとどんなポ○モンになるんだろう?
「あら、流石にサラマンダーは珍しいようね。当然よね。好事家に見せたらどれ位の値を付けるか判らないもの」
「いや、そうじゃなくて・・・けっこう可愛いなぁって」
「アラ?」
何となく撫でてみるたけどサラマンダーは嫌がるそぶりも無い。猫をあやす様に喉の下を撫でたら嬉しそうに転がり始めた。
・・・い、いや、どうでもいいけど壁とかに尻尾の火が点かないのかな?建材も魔法製?
僕がそんな微妙な事に気を取られていると
「貴方、面白いわね。平民じゃなかったら、随分楽しい事になるのに」
そんな声が投げかけられた。あれ?さっきまでの口調とは違うような・・・?
「それに良く見ると・・・いえ、かなりイイじゃない。これは色々楽しめそうだわ」
・・・何だろう?視線が変わった?・・・何だか、これ以上ここに居ると良くない事が起こりそうな気がする。
それに、そろそろ朝ごはんも食べたいし。
「えっと、キュルケさん。僕今から厨房に行くのでこれで失礼します」
「あら、そう?じゃ、行ってらっしゃい」
僕は逃げるようにその場を後にした。・・・多分、僕の判断は正しかったんだと思う。
食堂に向かう途中、寮の方で何か大きな物音が聞こえたから。
更にその後で、寝起きのルイズとキュルケさんの魔法合戦が朝の風物詩だと教えられたから。
良かった、巻き込まれなくて。
逃げなければ良かった。
目の前でおいしそうな料理が並んでいるのに、それを食べてはいけないってのは拷問だと思う。
「何物欲しそうな顔してるのよ。主人を放って自分だけ朝食を食べようとする使い魔が食べられるものなんて在る訳無いでしょう?」
豪勢な朝食をこれまた勝ち誇ったように食べる僕のご主人様。
だからってそんな風に見せびらかすように目の前で料理を食べなくてもイイと思うのに。
そもそも、僕はルイズを起こしたよ?起きなかったのはルイズなのに・・・
「何か言った!?」
「何も言ってないよ、ご主人様」
確かに、無理やり起こそうと思えば起こせたのは確かだから。
でも、正直に・・・正直に言うと、ルイズの寝相をあれ以上見るのが怖かったんだ。
見てるだけで痛くなる体勢ってあるんだよ?
どうしてあの体勢で寝てて眠れて、しかも今平気そうなの?
どうでもいい、で済ませたくないくらい気になるんだけど。
でも・・・今はそれ所じゃないなぁ・・・僕、痩せの大食いタイプだから、食べないと辛いんだけど。
「本当は使い魔は外なのよ?ここに居られるだけでも在り難く思いなさいよね」
「いっそ外の方がよっぽどましな気がするよ・・・」
ああ、だからシエスタさんは厨房に直接来るように言ったのかぁ。
そのシエスタさんは食堂中を給仕として忙しそうに走り回ってる。
時折僕の事を心配そうに見てくれてる。・・・あとで、余り物か何かもらえないか聞いてみようかな。
そうこうしている内に、朝食の時間は過ぎていく。
目の前の料理も、僕の口に入ることなく消えていく。
こうして、召喚生活初めての朝食は拷問もどきに取って代わられてしまった。
「これ、ミス・ヴァリエールに判らないようにこっそり食べてね?」
そう言って、シエスタさんが掌に隠れる位のパンを幾つかこっそり渡してくれなかったら、本当に拷問だった・・・
シエスタさん、僕には貴方が女神様に見えるよ。
午前の授業の時間は為になったし大変だった。
この世界の魔法の理論とルイズの異名。何よりその『失敗魔法』の威力を目の当たりに出来たから。
魔法の系統の基本的な考え方と、術者と使い魔のつながり。
それは僕に自分自身が何なのか、という疑問も抱かせた。
使い魔である以上、僕はこの世界で言う四大系統の一つに属するんだろう。
5つ目の系統とかもあるって言ってたけど、それが何なのか判らないのでは、判別しようが無いし。
いや・・・と、そこまで考えて思い直す。
この世界に来る前に見たあの夢。あの青い部屋は、例えば何に属するんだろう?
例えば僕のように異世界から呼ばれた者は、この世界の理論で括られるものなんだろうか?
それに、僕の『ご主人様』のあの失敗魔法。
正直、あの爆発力は凄いと思う。あれが只の失敗で済むだろうか?
爆発は、高温と衝撃波、それに乗った破片という、この世界で言えば炎と風と土の系統が混ざり合ってるようなものだと思う。
あれを、ゼロの一言で片付けていいんだろうか?
僕の『ご主人様』は何者なんだろう?
「あら?何を考え込んでるの?シチュー、美味しくない?」
「そんな事無いです。あんまり美味しくて、ついぼーっと・・・」
物思いにふけっていた僕を、シエスタさんの声が現実に引き戻す。
嘘は言ってない。朝食を少しのパンでしのいだ僕にとって、この暖かなシチューは最高のごちそうだった。
思わずトリップしそうになった位。ただ、少し前までの授業が気になったのも確かだ。
「本当に?・・・お世辞でも喜んでくれて嬉しいわ」
「本当です。朝もそうだけどお世話になってばかりで・・・何か僕にできる事があったら言ってください」
本当にこのメイドのお姉さんにはお世話になりっぱなしだ。
此処で少しでも恩を返さないとバチが当たる気さえする。
「キタロー君は義理堅いんですね。それじゃ、もう直ぐデザートの時間ですから運ぶの手伝ってくれますか?」
それくらいなら、僕にも出来そうな気がする。何より、シエスタさんの手伝いだ。例え出来なくてもやらないと。
こうして、僕は臨時のウェイターになった。やってみると、案外簡単で面白い。
元々陸上や水泳で身体は鍛えているし、記憶力にも自信がある。ただ、問題は運んでるデザートがやけに美味しそうな事。
この食堂の『客』である魔法使い・・・貴族達はこの時間お喋りに夢中で、無為にデザートの一番美味しいタイミングを逃しているように見える。
本当にもったいない。
そんな事を思っていると、食堂の片隅に人ごみが集まりだした。
食堂のほぼ反対側に居る僕のところにも、怒鳴りつけるような声が聞こえる。
何かと思って覗き込んでみて・・・僕はすぐさまその只中に飛び込んでいた。
そこには、高慢そうな金色の巻き毛の魔法使いに暴言を浴びせかけられるシエスタさんの姿があったんだ。
「なんだ、君は?」
「キタロー君!?や、止めて・・・私は大丈夫だから・・・」
急に飛び込んできた僕を見て、金巻き毛の魔法使いは訝しげに目を見る。
僕はそれを無言で睨みつける。
僕には、シエスタさんが何故この魔法使いに好き放題言われているのか判らない。
でも、今涙さえ浮かべてるこのお姉さんをこのままには出来なかった。
背後からシエスタさんの消え入りそうな声が聞こえるけど、それでも僕は此処をどく気はない。
「お、おい。あれゼロのルイズが呼び出した使い魔だろ?」
「使い魔なのに平民で、召使みたいになってるアレか?」
「使用人つながりで助けてるんだろ?美しいねぇ・・・二股がばれて修羅場になった誰かとは大違いだな」
「おいギーシュ、お前もメイドに八つ当たりしてないで、この平民使い魔を見習ってみたらどうだ」
ドッと周りから笑いが漏れる。同時に真っ赤になるギーシュと呼ばれた巻き毛の魔法使い。
「ど、どうやらこの平民は貴族に対する礼儀がなっていないようだね」
「・・・そんなの、どうでもいい」
「な、何!?」
「二股がばれて、その憂さを抵抗できない誰かにに当り散らす事しか出来ないような貴族への礼儀なんて、どうでもいい」
「~~~~~~~っ!!!」
再び巻き起こる笑いと更に紅に染まるギーシュの顔。
だけど、本当にどうでもよかった。
僕の後ろで・・・震える手で僕の服を握るシエスタさんに比べたら。
「良かろう、君には貴族への礼儀を教えてやる。そのデザートを配り終えたらヴェストリ広場に来たまえ」
そう言い残して友人達と立ち去るギーシュ本人の事すら。
僕には、どうでもいいくらいに取るに足らないものだった。
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